【11】 ひきこもり、ルナ ~テオの世界~
「ねえルナちゃん、魔法教えてよ」
5000年前の記憶がよみがえる。
「ねえルナちゃん、いいでしょ」
「教えてよ!」
夜の街。3人の男たちが、ルナの周りを取り囲む。
「いや! やめて、来ないで!」
静寂に響く叫び声。
「いいでしょ、ルナちゃん」
「俺たち、友達、だろ?」
詰め寄る男たち。
「やめて、お願い・・・!」
ルナの頬が紅潮する。
「やめてぇぇ!」
次の瞬間、男たちは1キロのかなたに飛ばされた。
彼女の周囲には、巨大な、「壁」が形成された。
「えっと、大丈夫? ルナちゃん」
急に上の空になったルナ。
「うん、だいじょうぶ。」
「できれば、魔法、教えてもらいたいんだけど・・・」
そう、僕は魔法を教えてもらいに来たんだ。半分忘れてた。
「とりあえず、外に、出る」
「!?」
ちょっと待った。外に出る、って言った?
言っちゃ悪いが、彼女は見るからに「ひきこもり」だ。ゴシック風の服装も、この高い壁の中に住む、警戒心も、見るからにコミュ障、なしゃべり方も。引きこもりの達成要件をすべて満たした、いわば、「引きこもりの典型」のような女の子が、今、出るって?
「いや、なの?」
「いや、じゃないけど・・・」
聞いてくれたのはとても助かる。気が付いたら目の前に高い壁、みたいなのはもうこりごりだ。
「なら、飛ぶの!」