【9】 ルナの友達 〜テオの世界〜
「だーかーら! 私が学長なの!」
「それで、何しに来たの!」
小さな影が、ぬいぐるみの裏で叫んでいる。
「魔法を教えてもらおうと…」
「うそ! ぜったいうそ! うそつき!」
間髪入れずに言葉が飛んでくる。控えめに言ったつもりだったのだが、傷つけただろうか…
「なんで、いまさら! いるはずないもん!」
いちいち叫ぶルナ。見るからに大変そうだ。
「どうしてそんな…」
「最後に人が来たの! 50世紀前! 魔法を知らない人なんて! いないもん! 当たり前のこと! 聞かない、でっ!」
ぬいぐるみの後ろで、何かが倒れた。様子を見ようと、近づく。
「ぶつぶつ、ぶつぶつ」
何やら声が聞こえる。
「ルナ、何やってるn」
その瞬間。ぬいぐるみが倒れ、少女の姿があらわになる。白いロングのツインテール、上目遣いの不安そうな目。
「名前は、なに。」
「ケイ、です。」
無自覚にも、ルナの喋り方が少し移っている。
10秒ほどの沈黙が流れた。
「しょうが、ない。あなたは、ルナの、5000年ぶりの、おともだち。よろしく、ね。」
この世界は常識が通用しない。しかし、例え相手が7000歳の少女だとしても、「可愛い」の基準、それだけは、普遍だった、ようだ。




