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第一幕 夜半
グロテスク表現注意
―――日曜、夜半―――
ひとつ、例えるならば胎内であるかの様にうねり動いて変化していく、その情動と言えばいいのだろうか。
阿形敏郎は、元来そういった感情の揺れによわかった
名状しがたい強い圧迫によって横隔膜を跳ねさせ、意識の無いままに「うっ」と呻いてしまう。
………それだけならばどれほど良かったか。
彼の前には、異形の物がゴロリ、ゴロリと蠢いていた。
頭についているはずの目、鼻、口は無く、まるで最初からそこになかったかのような、のっぺりとした皮。
胴は無くそこからは足が生えるのみ。
―――あぁ、今夜も夜が開ければ、冷たい石畳の上は死屍累々か―――
頭の裏っかわにチリ、と灼けるように自戒の呪が浮かぶ。
彼、阿形敏郎は睡眠時遊行症(夢遊病)により、この京都を夜な夜な徘徊する日々を送っていた。
夜半に出歩くものは皆彼にとっては同じもの。
成りきらないものへの異常性愛が彼を突き動かしていた。