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貴方の異能、仕事に活かしませんか?

作者: とある人。

異能はNo

だけれどknow


はい。とある人と申します。不真面目なほうの作品となります。


4月 都内某日 事務所にて。


質素倹約という言葉が似合いながらも見事に調和のとれた事務所内には影が2つあった。

1つは所謂、所長席に座り腐った目つきをしながら、今時にしてはオーパーツとされている実体のあるパソコンをカタカタと、軽快に鳴らしながら作業をしている青年の姿である。

もう1つはその青年の膝の上に乗っている幼女である。

幼女である。


ロリコンの紳士ヘンタイ諸君には静かに座っていて欲しい。




青年が作業の手を止めずに、幼女が和菓子を食べる音のみとパソコンを鳴らす音のみであった空気を破るかのように言った。

「ねぇ、菫ちゃん。どうしてこんなに仕事が減らないんだろうか?」


幼女こと 三浦 菫はしっかりと和菓子を味わい、緑茶を堪能してから答えた。


「理由その1。パソコンだから。」

「理由その2。案件が特殊だから。」

「理由その3。私が魅力的過ぎて仕事にならないから。」


幼女にしては流暢に、まるで大人と同じ程の発音で、されど声音は平坦に、自慢も入れて青年に返答した。


「確かに菫ちゃんは魅力的だと思うよ?」

「艶のある黒髪に、この世の者では無いと思ってしまう程の綺麗な顔立ち。」

「それは遥か昔から存在している日本人形を凌駕する美しさ、だけれど。そうじゃない。」


「どうしてこんなに僕の元に使い道に困る能力者達が集まるんだ…。」

そうしっかりと菫を評価しながら死にそうな声で返事をした彼は 三浦 萩吉 。

発掘屋と呼ばれる能力者を斡旋する業者である。


「類は友を呼ぶ。以上。」

シンプルに現実を突きつけた幼女であった。


「そう。それなんだよ。」

「使い道の困る能力の使い方を共に考え、仕事を斡旋するのは良いんだよ。楽しいからね。」

「けど、忙しいのは大っ嫌いなんだ。」

普通の青年では無かった 三浦 萩吉はとても残念な青年だった。


「ガンバロー。ファイト。」

どれだけ忙しかろうと、この幼女は仕事をしない。

幼女であるから。



場面は変わって夕方。



死んだ目つきをしていた青年が死んでいた。

否。死んだように眠っていた。机の上の画面には青年を写す、パソコン。

仕事を終えたのだと推察出来る。そしてソファには眠っている幼女。

幼女可愛い。だって幼女だから。



すると突然、菫は目を覚まし、萩吉に聞こえる声で言った。


「お客さん来た。」


その声に反応するかのように萩吉は目を覚まし、身なりを軽く整えたと同時に、事務所内に扉をノックする音が響く。


「どうぞ。お入り下さい。」


すぐさま招かれるとは思っていなかったのか扉の奥の人影は同様した気配をみせた。

しかし、数秒の静寂の後、扉が開く音がして人影は姿を現した。


『どのような能力でも仕事を斡旋して下さると風の噂に聞き及んできたのですが、それは本当のことでしょうか?』

現れたのは所在なさげに漂う影が薄そうな印象を受ける女性であった。


「はい。貴方様がどのような能力であろうと仕事を紹介させていただきます。」

先ほどの死んだ目つきをしていた青年とは打って変わって、自信を纏う煌びやかな目をした青年がそこにいた。


「まずはお座り下さい。」

そこにコーヒーを持った菫が女性にコーヒーを渡して萩吉の膝の上(定位置)に座る。


「ああ。この子は気にしないで下さい。」


『はぁ。わかりました。』

女性は疑問が消化不良といった形ながらも納得したようだ。


「では…」

萩吉が本題に入ろうとすると女性が遮る程の声をかけてきた。


『あの!』


「はい。何でしょうか?」


『貴方には私が認識出来るのですか?』


「ええ。出来ますよ。」

当然だと言わんばかりの強い肯定を返すと、女性は無人島で人と逢えたかのような笑顔になったのだった。


「改めて自己紹介からさせていただきますね。」

萩吉はそんな女性の反応を少し疑問に思いながらも、仕事に取り掛かる。


「私の名前は三浦 萩吉。」

「能力者に仕事を斡旋させていただく事を生業としている者です。」

「まずは、貴方様の能力からお教えくださいますか?」


出されたコーヒーを飲んで落ち着いていた女性は安心した空気を滲ませながら語り始める。



『私の能力名は 悪役側のヒーロー 。』

『効果としては、自らに向けられた悪意を自らの力とする身体強化系の能力なんです。』


聞いた限りでは何とも強力な能力だ。ここで話が終わればの場合だが。









『ただ…。私自身がとても影の薄い人間なんです。』

終わるはずが無かった。


「成る程。どうりで先ほど、あの様な質問をなされたのですね。」

普通なら絶句しようものを、流石は発掘屋である。

冷静に対応してみせた。



『驚かれないのですね。』

『ええ。そうなんです。目の前に居ても気付かれない影の薄さなんです。』

『なので、どうして私を認識出来たのかが不思議で仕方ないんです。』

影が薄過ぎるために悪意すら向けられない残念仕様であった。





「認識出来た理由は簡単なんですよ?」

「この子の能力で認識出来たのだと思われます。」

そう言って、定位置にいる幼女を示す。



「この子の能力は The map(外れないブックマーク)

「指定した人物の半径5m以内のマップを表示させる能力なんです。」

勿論。そんな強力なだけの能力ではないが…。



『そうだったのですね。』

『発掘屋さんに来て良かったです。』

女性は顔を綻ばせる。

質素な事務所内に一輪の白い花が咲いたかのような綺麗な笑みだった。



「さて、貴方様の能力の使える職場としての候補ですが…」

こうして残念系能力の使い道と仕事を探して提供する発掘屋の日常は始まったのだった。
















後日談


いつもの事務所内には影が2つある。

無論のこと、萩吉と菫の2人である。


「ねぇ、菫ちゃん。」

「影が薄いことのせいで能力が使えなかった女性からお礼の手紙が届いたよ。」

ソファに座り、ゆっくりと言った。


「律儀&古風」

相変わらずの幼女である。可愛いから許す。


「新しい職場で楽しくやってるみたいだよ。」

「紹介のしがいがあるってもんだよね。」

菫の物言いに苦笑しつつ話を続ける。



「影が薄い。けど能力ではない。」

「なら。何か被ればいい。」

「人として影が薄かろうと。着ぐるみを被れば無問題モーマンタイ。」

幼女でありながら、鋭い推察をしてみせた菫であった。



「それに丁度ヒーローショーの悪役人員を探している劇団があって良かったよ。」

付け加えるかのように付随して萩吉は言う。



「能力ありのヒーローショー。」

「萩吉。今度見に行く。」

この世界のヒーローショーは能力が使用された派手なものを観ることが出来る。

人気なコンテンツの1つである。



「そうだね。今度、観に行こうか。」

幼女とデートとなる。

萩吉よ。背後に気をつけろよ?




「菫ちゃん。事務所の看板を表にしてきて。」

「さぁ、仕事を始めようか。」













貴方の異能を仕事に活かしませんか?

三浦事務所

誤字脱字

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幼女がとても可愛いです 依頼主さんの能力にあんな使い方があったなんて..と思わず納得してしまいましたw [気になる点] かぎかっこは統一なされた方がよろしいのでは...?と思いました [一…
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