表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

09

「ターゲットスキャン、探査開始」

「ターゲットを確認!」


戦術行動士官がこちらを見て発射許可を求めてきた。

俺は頷くことで許可する。


「トマホーク発射準備よし!」

「発射!」


VLSのハッチから発射炎が吐き出され、白煙を引きながらトマホークが撃ちだされる。


「ミサイル発射、着弾まで30秒」


あっという間に30秒は過ぎる。


着弾(インターセプト)まで5秒前・・・4、3、2、1!」


ふっ、とレーダースクリーンから光点が消えた。


「マークインターセプト!!」









「お疲れ様です。゛艦隊司令゛」


初めての作戦指示に緊張し疲れていた俺に真奈美はそう声をかけてきた。


俺たちは初めて発見した大陸――オリオン大陸からかなり離れた海域でトマホークの発射試験を行っている。その主目的はトマホークの性能を確認することだけではなく、特に俺の作戦指示能力を高めるのが目的だった。


「司令。お疲れのところ申し訳ありませんが、今後の行動予定と村の復興についての報告があります。艦長室までご足労いただけますか?」


ちなみに彼女が俺の事を艦隊司令と言っている理由はすぐにわかる。


演習を始める前より何倍にも重くなった気がする体を椅子から上げて、CICを出る。


「うっ・・・・」


CICは薄暗かったため、照明ですら眩しく感じてしまう。


艦長室に入って椅子に腰かけるとさっそく真奈美は報告を始める。


「まず、今後の予定ですが、12:30(ヒトフタサンマル)にルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦、ヘンリー・J・カイザー級給油艦、ワスプ級強襲揚陸艦と合流予定です」


「3艦の位置は?」


「オリオン大陸から50キロ離れた場所に待機中です。今のところ危機的状況に陥ったという報告はありません」


どちらとも無事でほっとした。

今回の演習にあたり、前回助けた女性たちの支援にあたっている3艦は残しておくしかなかった。ワスプにもまだロクな武装がないのでハラハラしていたが俺の心配も空振りしたようでなりよりだ。


「それで?村の復興状況は?」


「はっ!全体の復興は50%ほど完了したとのことです。警備に関しては、装甲戦力、および歩兵戦力を動員し警備にあたらせています。ドブネズミは一匹も入らせないのでご安心を」


真奈美は微笑む。


怖ッ!


彼女はやんわりと微笑んでいるつもりなのだろうが、目が笑っていなかった。彼女の瞳にあるものはなんていうか・・・・・表現しずらい。いや、表現することを脳が拒否している?


微笑みかけられた俺の喉からは、乾いた笑いしか出てこなかった。



   ◇



およそ2時間の航海を海鳥とともに過ごしながらようやくオリオン大陸まで帰って来た。途中でトラブルなく3艦とも合流し、順調すぎるくらいだ。


「おーらい~おーらい~はい、止め!」

「おい!ぼさっとしてないでさっさと働け!」


ヘリで降り立った村では、いたるところで作業音が響いていた。


しかし、50%とは言っていたが、全然そんな風には見えない。ほとんどの住宅は新品同然に直っていて、元からこうだったと言われれば率直に信じてしまいそうだ。


表の道では子供もが隊員から教えてもらったサッカーで元気いっぱいに遊んでいる。


「あっ、まなみお姉ちゃんだ!」


子供達が俺とともについてきていた真奈美に気づき、駆け寄ってくる。


「みんな元気にしてた?」


「「「うん!!」」」


「おーい?」


子供たちの目は彼女にしか向いていない。

あれ?これもしかして・・・・


「あ、お兄ちゃんいたの?」


「気づかなかった。ね~」


「「「ね~」」」


悪気がないのは分かってるッ!分かってるけども・・・・・うぅ・・・・


泣きたい気持ちを必死に抑え、笑顔で子供たちに向き合う。


「お姉ちゃん遊ぼ!」


「あそぼー!」


「ごめんね。お姉ちゃん、仕事があるから・・・・」


「「「えぇ~~」」」


真奈美はすがり付く子供たちをやんわり引き離し、「は、早く行きましょう!」と先を促してきた。


「いいよ?子供と遊んできても・・・・」


「いけません。子供のために司令を放っておくなどできるわけでないです」


本人がいいというなら強くは言わないけど・・・あきらかに震えてるし、あとで子供と遊ばせる時間を作ってあげよう。


そう思いながら、俺たちは女性たちとの会談場所に向かった。



「遅れてすいません。待ちましたか?」


「いいのよ。私たちも雑談に興じてたところだから」


初老の女性がそう入ってきた俺に笑いかけてくれる。

仮設テントの中には彼女だけではなくメリーの姿もあった。


「さて、始めましょうか」


用意された椅子に座ると真奈美が切り出した。

その言葉に全員が居住まいを正す。


「さて、今後の村の方針についてですが・・・まずは現村長のガリッタさん。意見などはありますでしょうか?」


「・・・・まず、遅れたけどあなた達にお礼を言わせて・・・・・ありがとう」


深々と頭を下げるガリッタさん。


「あなた達がいなければ、私たちはおろか、外で元気に暮らしている子供たちも奴隷にされていたかもしれない・・・・それだけに留まらず村の復興まで手伝ってくれて・・・・なんて言ったらいいか・・・・」

「顔を上げてくださいガリッタさん」


顔を上げた彼女の瞳は潤んでいた。


「我々はこの世界で生活するための知識さえありませんでした。それを教えてくれたのはあなた方です。お礼を言うのはむしろこちらのほうです」


俺らが彼女達を助けた功績は彼女達が教えてくれた膨大な量の知識によって相殺されている。だからお礼などいらないのだ。


ガリッタさんにハンカチを渡し、彼女が落ち着くのを待ってから再び会議を再開した。


全体的な流れとしては真奈美が艦で言った事を彼女達にも伝え、それに対し質問や要望などを言う形になった。


「あっ!そうそう忘れていたけど、前の村長が新しく就任したことをどこか大きい街の役場に伝えないといけないって言ってたわね」


唐突なガリッタさんの言葉に会議の流れは大きく変わってしまう。


「え!?そんなこと聞いたことないんですけど・・・・」


「メリーちゃんは知らなくて当然よ。これは内緒で教えてくれた話だったから」


彼女曰く、秘密にしていたのは村長と言う役職につくのは大体が年をとってしまった人物だそうで、この世界では街と街を行き来するだけでも危険がたくさんある。盗賊、魔物、気候・・・etc。上げだしたらキリがない。そんな中を村長が行くとなると当然護衛をつけなくはいけない。護衛をつけると金がかかってしまうのでそれをケチで知られる歴代村長たちが嫌がっていたそうで、秘密裏に街に行っていたそうだ。

・・・・幸いなことに命を落としたものは一人もいなかったらしい。


「そこで、あなた達に護衛をお願いしたいんだけど受けてもらえないかしら?」


別に断る理由は無い。それに大きな街に行くとなれば、この世界について更に知る事が出来るメリットもある。


俺は2秒で決断した。


「いいでしょう。お受けします」



  ◇


いや~村が海沿いにあって本当に良かった。


俺は現在砂浜にいる。べつに砂浜にいるからといって遊んでいる訳でも青春を謳歌しているわけでもない。


目の前には大きなイカダのような3つ物体が砂浜に乗り上げ、鎮座している。

LCAC。つまりホバークラフトがその大口を開け、海兵隊の車両を呑み込んでいるところだった。


さて、今回の編成を紹介しよう。



ハンヴィー(M2付き2両)

LAV25 1両

弾薬運搬用トラック 1両


まあ、非常に軽い編成となっている。そこまでの脅威はないと考えたからだ。(真奈美は一個師団を派遣すべきです!!と言ってきたが、別に戦争しにいくわけではないので軽く受け流しておいた)

しかし、念のため増援として装甲戦力の多くを強襲揚陸艦に積載している。


積載完了時刻まで一時間もある。


射撃や格闘術を真奈美に教えてもらうとするか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ