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08

「ちっ!おいお前ら!ちんたら歩いてるとぶっ殺すぞ!!」


遅々として進まない列に苛立った奴隷商人の頭―ガッデムはその手に握る曲刀を不気味にちらつかせ女性たちを威嚇した。


あと、森を二つも抜けなくてはいけないのにこんなところで時間を食っていたら受け渡しの時間に間に合わなくなってしまう。

そんなことになってしまえば、わざわざ魔物の出ないルートを調べ、村まで襲って手に入れた女の価値がいっきになくなってしまう。


焦燥に頭を乱されてると、小柄な男がガッデムが乗る馬に近づいてきた。


「か、頭ぁ!こんまま行って間に合うんすかね?」


「あぁ?だからこうして急いでんだろうが!だいたいお前らが調子に乗って馬車の上で女たちを゛弄って゛なけりゃ今頃この森を抜けてんだよ!」


ガッデムの怒声に小柄な男は血色の悪そうな顔をさらに白くさせ、今にも倒れそうだ。


「ヒッ!す、すみません!」

「分かってんならこんなところで油なんか売ってないでさっさと――」


その時、視界の隅に何か映った。

目を凝らしてみると、どうやら人のようだ。周囲を崖に囲まれている道のど真ん中で座り込んでいる。


「おいっ!確認して来い」

「わ、分かりやした!」


小柄な男はホッとした表情をしながら仲間を3に連れてその人影に向かっていく。


「頭ぁ!頭ぁ!ちょいと来てくださぁーい」


・・・・無能どもが。3人いて対処もできないのか。


舌打ちしながら馬を進ませる。


近寄ってみると先ほどの人影は少年だった。

どこにでもいるような顔立ちの好青年だが、服はところどころ破れ泥を被っていて背中には木箱を背負っている。どこかボーっとしたような様子からもしかしたら遭難でもしたのかもしれない。


しかし、ガッデムは内心微笑んでいた。


肉好きがよく、顔もまあまあいい感じだ。これぐらいならどこかの貴族が高値で買い取ってくれる。今捕まえている女どもと合わせれば、土地が買えるぐらいの大金が自身に転がり込んでくることになる。


なるべく穏便に捕まえようとガッデムは馬を下りながら顔に似合わない笑顔を浮かべながら少年に近寄る。


「よぉ、小僧。こんなところで何してんだ?」


「・・・・・」


声をかけるが少年はさきほどと同じようにボーっといていてこちらの言葉に答える様子はない。


「道にでも迷ったか?ん?」


「・・・・そうです」


ようやく目の前の少年が喋った。


「そうか・・・・この辺には魔物が出る。なんなら俺らが町まで送り届けるが・・・ついてくるか?」


これはもちろん嘘である。

町まで連れて行くふりをし、奴隷商人に売りさばく。自身の完璧な計画にどうしても顔のニヤつきを抑えることが出来なかった。


「いえ、結構です・・・・この先に村があるそうなので自力で見つけてそこで泊めさせてもらいます」


「いやいや、遠慮すんな。だいいち、今から行くとなると魔物に襲われちまうぞ」


「大丈夫ですから」


「村より町のほうが安全だ。いいから来いよ」


しかし、次の言葉がガッデムの表情を不快なものに変えさせた。


「村に行ってはいけない理由でもあるんですか?」


・・・・・ちっ感付かれた。この小僧、見た目の割に頭が回るな。


実際は、ガッデムの物言いが悪かっただけなのだが、当然本人に自覚はなしである。


周囲にいた3人に目で合図を送ると、すぐさま少年にとびかかりその身を縄で縛ったりして動けなくする。


「ちょっ!いきなり何を!」


「悪いなぁ小僧。俺らは親切心でお前に近寄ったわけじゃねぇんだ。人を簡単に信じるなってお前のママに教わんなかったか?ハハハハハ!」


周りの男たちもつられて笑う。

少年は悔しそうに顔を伏せる。この動作でガッデムは少年を完全に手中に収めたことを確信した。


「おら!さっさと歩け!!」


少年を突き飛ばし、女どもと同じように列に並ばせた。


「ボス!こいつが背負っていた木箱からこんなものが入ってました!」


配下の男が投げてよこしたのは手に収まるくらいの容器に入った茶色い液体だった。


「・・・・なんだこれ?」


「これ、高価な゛こうしんりょう゛ってやつじゃねぇんですか?名の通った商人に売ると儲かりますよ~」


そう言った男は幸せな未来を想像したのか幸福感に顔が緩みまくっている。

ガッデムも想像し、もう1領主としてやっていけるのではないかとこの時は思っていた。


―ーそんなガッデムに少年が薄く笑っていたことは気付くことはなかった。




  ◇


俺は内心高笑いを上げていた。


――計画通りッ!


俺は剣の切っ先で突かれながら女性の列におとなしく並んだ。

切っ先を向けてきた男はふっと鼻で俺を笑うと見張りに戻っていった。


「あなた・・・・大丈夫?」


服がかなりボロボロだったからだろうか。心配した列の女性が声をかけてくれる。


「ええ、問題ありません。それより―――」


俺は事の顛末を語り、話しかけてくれた女性に協力を求めた。

もし、この事を伝えなかったら制圧するとき彼女達にも銃弾が当たってしまうかもしれない。俺が囮になったのは男たちを油断させることとと彼女達に警告することが目的だった。


「ばれないように静かに伝えてください。お願いします。合図は゛脱兎゛です。これが聞こえたらその場に伏せるようにお願いします。」


「任せて」


幸いにもリーダーとおぼしき男は俺が背負っていた木箱に入っていた醤油にくぎ付けになっておりしばらくはこの場を動かなそうだ。


2分も経たず、全員がこちらを見つめ一様に合図を待つようになっていた。

さすが、女性の情報伝達能力は早い。


「こんな間抜けなリーダーがいるんだね~」


制圧する前に少しおちょくってやろうと思い、周りに響くような大声で言った。

案の定と言うべきかリーダー格の男が木箱を物色する手を止めこちらを振り返った。


「あぁ!?」


「耳まで遠くなったか?間抜けなリーダーがいるもんだな!って言ったんだよ。間抜け」


次の瞬間、俺の頬に強烈な激痛がはしった。

殴られたと気付いた時は俺は地面に膝をついていた。


「ぐっ」

「もういっぺん言ってみろこのクソガキ!!」


髪を鷲掴みにされ宙ぶらりんになる。

リーダー格の男は腰にぶら下げた短剣を抜き放ち俺の喉元に添えた。


「ガッデムさん。殺さないよう穏便に・・・・・」

「うるせぇ!こいつは俺を侮辱した!こいつだけは許さねぇ!!」


おっと意外とプライドの高い奴だったようだ。完全に頭に血が上り後先考えずの行動に出ようとしている。


「あとで何度でも言ってやるよ!クソ野郎!――総員、脱兎!!!」


俺の言葉に女性達は身を屈めた。


同時に今まで溜めていた殺気を濃密に放ちながら道の先、後ろ、上、様々な方向から隊員達が飛び出していた。




   ◇




―――殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す



事の顛末を見守っていた真奈美は怒り、いや殺意で頭が支配されていた。


あのリーダーの男は私の艦長の頬を殴りあまつさえ自分が上かのような発言をしたのだ。生きて返す理由はない。


いきなり現れた真奈美たちに男たちはすぐには対応できていなかったようだが、長年の経験なのか自身の得物を抜き放ちこちらに向かってきた。


先陣を切っていた真奈美が一番最初に会敵することとなった。


「おらぁあああああ死ねやぁあああ」


・・・・・品のない言葉だ。


冷静にM4カービンにつけられたACOGサイトを男の頭に照準。引き金を引き絞る。

快音。男は深紅の液体を頭からぶちまけながらその場に倒れ伏した。


後続の男達は距離が離れていたのに頭から血を流した男を見て動揺する。

もちろん、真奈美はその隙を見逃さない。その場に片膝を立てて膝撃ちの体制をとり、一発ずつ男たちの頭にお見舞いして行った。


(なぁ、俺らいらなくない?)

(だよなぁ~副長だけで片付けちゃってるし・・・・)


真奈美が一人で突っ込んで行き、しかも多くの敵を葬っている光景を見ながら隊員達は小声で呟きあっていた。


数分後、その場に立っているのは血が付いたナイフとM4を片手にそれぞれ持った真奈美ただ一人だった。


少し息を整え、上官の元に向かう。


「艦長!大丈夫ですか?」


「いててて・・いやー殴られるのは痛いよ・・・」


頬をなでながらそんな事を漏らす上官に真奈美は頬を緩ませた。


「うわぁあああああ!」


突如、叫び声が上がりその方向を見るとどさくさに紛れリーダーの男が逃げ出そうとしていた。


バンッ!


「げふっ!いてぇえええええ」


真奈美が放った銃弾がリーダー男の右足に穴を穿つ。

悶え苦しむリーダーを冷ややかな視線を送りながら彼女は言う。


「あら、まだ生きていたの。しぶといやつね」


この言葉を言った瞬間、男はぴくりと叫ぶのをやめガタガタと震えだした。

その姿を見ているとこの男が視界に入るのがだんだん我慢ならなくなってきた。苦しませる予定だったがまあいい。


M4の引き金に指をかけ、引き絞る――その銃口をそっと白井がさげさせた。


彼は念のため携帯していたM9をホルスターから抜き、男に向かって発射した。

















「艦長は、お優しいですね」


「別にそんなことは無いさ」



白井は男の右頬を掠める形で照準を合わせ引いた。

その結果、男は気絶している。


「衛生兵!この男を治療してやってくれ!真奈美、みんなをヘリで野営地まで送るぞ」

「了解しました」


そして今まで伏せていた女性達の所に行く。


「みなさんもう顔を上げても大丈夫ですよ。危機は去りました」


言った瞬間一斉に、わぁーと列のあちこちで歓声が聞こえてきた。


その光景を見ていると不意にピピッ!と音が鳴った。

メニューの音かと思い、開いてみるとそこには衝撃的な事が書かれていた。


「まじか・・・・・・・」






※必要条件を満たしたため『海兵隊』が解除されました。












イージス艦の無双は次の次ぎぐらいに描きたいと思っています。

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