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14

用事が忙しいため、かなり雑になっているやもしれません。ご容赦ください。


※15話として投稿予定だった話と14を統合させていただきました。


「港町ってのはこんなに人が多いものなのか・・・・」


馬車から見える景色は、人、人、人。右を見れば行商人、左を見れば住人、視界内にざっと50人以上はいるのではないか?


「おや、シライはこういうところに来たことがないのか?」


興味深そう・・・いや、まるで田舎からきた世間知らずを見たような口調でイザベルは尋ねてくる。


「来たことがないわけじゃないけど、俺がいたところじゃ観光客でもこんなにいなかった」


「・・・そうなのか。この町は比較的、少ないと私は思うんだがな」


え?これで少ない?


とうの彼女自身ではそんなに珍しくもないことなのだろう。ただ、田舎暮らしの少年にはその感覚はまったくもって理解できない。

 またしても引きつった笑みを浮かべながら窓に目線を戻す。外は相変わらずの光景だが、それを除いて見ればとても美しい町並みであることが分かった。

建物はどれも目が覚めるような白で統一され、見上げるような高さの建物が聳え立っている。元の世界の地中海に面する国の建物そのままが今、白井の目の前にある。


懐かしい


 テレビで見ただけの異国の建物だが、それでも白井にとっては元の世界を感じることができた瞬間だった。


「っ・・・・」


イザベルが不思議そうにこちらを覗き込む。

・・・・しっかりしないとな。


溢れそうになる想いを必死に理性で押しとどめ、表情が崩れないように――


「なんでもないよ」


笑顔を繕う。




すぐに俺達が乗る馬車は人が多いメインストリートから離れ、今度は町はずれの森の中に入っていく。

 しかし、町はずれで人気は無くともそこがただの森でないことは馬車が通る道で分かった。地面に凹凸は無く、歪みのない舗装された道が、いかにもという雰囲気を醸し出している。

大門はほどなくして見えてきた。

門の両脇では太陽の光にあてられて光る鎧を着た二人の衛兵が直立不動で侵入する者を断固として拒んでいた。


「来客だ。門を開けろ」


ガシャッ!派手派手しいく鎧を鳴らした衛兵が重々しい門を開けていく。

 そこは、さっきまでの森とは切り離された別世界のよう思えた。


「すげぇ・・・」


綺麗に切りそろえられた芝生の上には、いくつもの女性の像が置かれており、一見して金と労力が使われていることが分かる。さらに奥に目線を向ければ美しいデザインの噴水が見て取れ、奥に建つ木造の大理石の屋敷をさらに高級感あふれるものにしていた。

さらにさらに屋敷の前にはメイドが大挙して馬車を待っているのだが――


「ん?」


メイドの一人がこちらを向いてにっこりと笑いかけてきた。日本人の性なのか、ぺこりと俺も頭を下げる。一瞬、なにか光る物が見えた気がするが・・・気のせいと信じよう。うん、気のせいだ。

そんなことをしているうちに馬車は屋敷の前で止まり、外側から扉が開かれた。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


大挙して出迎えてきたメイドの中から一人の年配の女性が進み出て、一礼する。


「お出迎えありがとう」


「いえいえ、わたくしめの労力などお嬢様の功績の前では掠れてしまいましょう」


「相変わらずね・・・紹介するわ。こちらが、私を助けてくれた艦隊の司令官であるシライジュンイチよ。部屋を用意してあげられる?」


年配の女性がこちらを振り向き、一礼する。

頭を上げた彼女の顔にはこの上ない微笑みが浮かんでいたが、同時にその奥にある感情は全面的に白井を歓迎しているわけではなさそうだ。

まあ、この米海軍が採用しているNWU迷彩服を見ればそりゃ怪しむよな。


「かしこまりました」


その後は、メイド達に付き添われながら屋敷に入る。イザベルよりも付添いのメイドが多いのは、おかしなことをすれば、お前のような者などすぐに始末できると暗に誇示してきているのだ。先程見えた゛光る物゛がその思考が間違っていないことを物語っている。


 外から見た時の屋敷はそこまで大きくないように感じられたが、中身は全然違った。まるで迷路のように入り組む廊下を、高級品だと思われる調度品を見ながら進んでいると、メイドの一人がこちらを見ている事に気が付いた。

 さすがに見られ続けるのは精神的に辛いため小声で俺は話しかる。


「あの・・・なにか?」


話かけらると思っていなかったのか彼女は慌てたように黄金色のような金髪を振りまきながら顔を逸らした。

そして、か細い声で呟く。


「いえ、その・・・この辺りで見ない顔立ちの人だと思いまして・・・・」


あぁ、得心がいった。

彼女は単に俺の顔が珍しかったのだ。

 この世界では、日本人・・・いや、アジア人という人種自体が存在しない。つまり俺は世界でただ一人の日本人。亡国の民というわけだ。


「まぁ、私以外の存在しないでしょうからね・・・・」


俺の言葉にメイドは小首をかしげたが、幸いその先を聞かれることはなかった。

先頭を歩く、年配の女性――メイド長というらしい――が彼女をぴしゃりと叱りつけたからだ。


「メラ、口を慎みなさい――――どうかご容赦を」


言われた彼女はそれ以降、喋ろうとはしなかった。


 やがて一団は、一際大きい扉の前で止まった。

その扉を優雅な動作でメイド長は3回、ノックした。


「失礼します。ご主人様、お嬢様とお客様をお連れしました」


「入っていいぞ」


すぐに返事は返ってきた。もう一度、「失礼します」といい彼女は扉を開けた。


「お姉さまぁ!!」

「うぉ!?」


ドンと腹に何かが当り、その衝撃を殺し切れず後頭部を思いっきり床にぶつけた。

痛みに悶えながら起き上ろうとするが、なにやらやわらかいものが手のひらを押してきた。


「ん?」


二度三度、握り返す。まるで、高品質の枕のような――――


「ひゃ、ひゃぁ!!??」


その声で我に返る。

はっ!?俺は今までなにを?


そう考えた直後、俺の頬には今で感じたことが無い強烈な衝撃が走った。








「ははははははは」


室内に一人の若い男性の笑い声が響く。

まったく楽しそうなことで。


「まさか、うちの娘の尻を揉むとは。シライ殿はそういうご趣味の持ち主かですかな?」

「全力で否定させていただきますっ!」


扉から出てきた少女は、この家の次女のアリス、つまりイザベルの妹にあたる。

 どうやら、長い従軍生活のおかげで会うことが出来ず、嬉しさのあまりいたずらをしてやろうと思い飛び出してきたらしい。

そして話の通りである。俺は知らぬ間に変態扱いだ。

 しかも、隅の方で当の本人が頬を膨らませて睨みつけてくるし、付添いは「あの人には近付いちゃだめですよ。なにされるか分かりませんから」と言っている始末。

誰か不可抗力という言葉を知っている者はいないのか?


「まあ、仕方がない。事故だしね・・・・アリスもはしたない真似はやめなさい。もとはと言えばお前が飛び出すのが悪いんだから」


「むぅー」


父親に叱られさらに頬を膨らませるアリス。

そんな彼女を父親と俺は置いてきぼりにして、話を先に進めることにした。


「回は、娘を助けていただいて本当にありがとう。詳細なことはさっきイザベルから聞かせてもらいました。なんでも鬼神の如き戦いぶりだったらしいではないですか」


なにやらかなり脚色されている。実際に動いたのは、部下と艦のシステムなのだが。


「私はあくまで指揮をとっただけです。実際に動いたのは部下ですから」


自分ではあくまで事実を言っただけなのだが、相手はそれを謙遜と受け取ったらしい。


「はははっ!御謙遜を。私もここから眺めていたが、あれほどの船を動かせるのだからきっとさぞかし功績を打ち立てられたのでしょう?しかもそれが少年ともなれば、もう畏怖の念しか出てきませんよ」


めんどくさい。

いまさら訂正したらもっとややこしい事になりそうな気がする。ここはあえて放っておこうか。


話しの後、「冷めないうちに召し上がれ」と目の前に広がるさまざまな肉の、ステーキ、塩漬け、燻製、ソーセージを前に俺は戦慄した。

目の前の当主やアリス、そしてイザベルはこれが当たり前かのように器用にフォークとナイフを使って食べている。しかし庶民の俺からすればこれは食べられるのか?というレベルの多さだ。いや、もはや食べれるかどうかの問題では無い。あきらかに胃の許容量を超える。


「どうしたシライ殿?お口に合いませんでしたかな?」


これを言われてしまえば、もう退路は断たれた。

男はだれしも立ち向かわなければいけない試練がある!


俺はフォークとナイフを手に持ち、目の前の肉の山に果敢に挑みかかった。










    ◇



「ふわぁーーいまごろ司令は昼食かな?」


あくびを噛み殺しながらそう言うのは真奈美だ。

 先程の戦闘で破損個所は無いか、そして今後の予定についてのブリーフィング、停泊中の隊員の上陸についてなどの会議をしていたために昼食の機会を取り逃し、しかも疲労がたまっていたためこうして甲板でぼーっとしていたのだった。

昼食は頼めば用意してくれるだろうが、どうしてもそんな気になれない。食欲が湧いてこないのだ。


「メリーちゃんと、ガリッタさんは街の方にでちゃったし・・・・はぁーこんなことなら無理してでも司令について行くべきだったなぁ~」


街に不慣れそうだったガリッタとメリーのことも気になるには気になるが、やはり優先されるのは司令だ。

ついていかなかったのにはちゃんとした理由がある。

あのウルグと名乗った男が上陸について口を出してきたからだ。

いわく「貴族の屋敷にぞろぞろと護衛の者を引き連れて行っては失礼にあたる。一人で行かせろ」

 停泊させてもらっている立場としては、ノーとは言えない。黙って従うしかなかったのだ。


「あの男・・・いつか全身の皮を剥いでから木に吊るしてやる・・・・!」


真奈美が静かにどう殺そうか思考を巡らせている時に誰かが近づいてくる気配がした。

どうやら急ぎらしい。


「報告します!!」


息を切らせて駆け込んできた隊員は早口でまくしたてる。


「現在、港入り口で上陸中の隊員から言い争いの報告が飛んできました」


「はぁ?それがどうしの。確かにいざこざは印象を悪くするけど、それはお前たちでも解決できるでしょう?」


「そ、それが隊員達と言い争っている相手は、この近辺を警護する治安組織だと言っていまして・・・・その・・艦を臨検させろと・・・・・」


いきなり艦に押しかけてきて臨検させろとは、ここは少々客人に対する礼儀と言うものを知らないんじゃないか?

真奈美はため息をふかくつくと、作業帽を被り直した。


「念のため全乗務員は陸戦態勢・・・・・・・・・礼儀を知らぬ客人にはお帰り願いましょう」


まったく、死体の数が増えそうだ。






真奈美が駆けつけると数人の隊員と住人が言い争っているのが見えた。

 ただ、腰には長剣を下げた住人など聞いたことが無いのであれが報告に合った゛自警団゛で間違いないだろう。


「おい!さっさとここを通せ!」

「だからさっきから言ってるでしょう!?ここは通せないって!」

「通せないのは、なにかやましいことをしてるからなんじゃないのか!ここに停泊する艦船はわれわれ自警団が検査することが決まりなんだよ!」


 断片的な会話からでも分かるこの理不尽さ。怒鳴り声を上げて隊員を押しのけようとする゛自警団゛は相当、話の通じない相手のようだ。

 現に押し問答している隊員の表情には、諦めともつかない困惑した表情が浮かんでいる。


 私はそうそうに会話による介入が無意味であることを悟り、右足に着けたレッグホルスターから拳銃を抜き出して空に2発、発砲した。

 軽い反動が腕を伝って降りてくるのと同時に吐き出される爆音は怒号に包まれる現場を静まり返らせるには十分だった。

 もっとも慣れていない男たちは「ひっ!」と言いながら腰を抜かしていたが。


「私がここの責任者です。お話はこちらで。・・・・通せ」


 最後に付け加えた私の言葉に隊員は渋々といった様子で引き下がり、いまだに地面にへばりつく男たちに手を貸していた。

 無様な姿をさらしていた男達だったが、落ち着いてくるとまたさっきの威勢を取り戻す。


「ようやく責任者が来たか。今度はさぞ物わかりのいい人物なんだろうな?」

 

 そう言って私の体に粘りつくような視線を向けてくる。

 はっきり言って不快。もしも、敵兵であれば即座に銃で撃ち殺すようなマネはせずじっくりいたぶって殺している所だろう。

 こいつらが敵対的な行動をしてくれればそんな私の願いも叶うのだが。


 胸に燻る殺意を男たちの嫌悪感を抱かせる視線と共に余所へ受け流しつつ、何人かの隊員とともに、入港と同時に割り当てられた寝泊りするための小屋へと彼らを案内した。


 部屋に入ると同時に木が腐ったような匂いが鼻孔をついてくるが、今は気にせず並べられた椅子に腰を下ろす。


「それで、我が艦を臨検したいとの話でしたが、それはいったいどのような理由で?」


「部下から聞かなかったか?そういう規則になってるんだよ!」


 やはり、馬鹿は馬鹿らしい。具体的な理由もなしに許可がもらえるとでも思っているのだろうか?そんなことが許されるのは、幼稚園生までだ。

 

 「では、もし私が行動を許可したらあなた方は何をされるおつもりか?」


 その質問に男たちは不気味な笑みを浮かべる。そして、私の耳元まで顔を近づけると囁いた。


「楽しめるぜぇ~責任者さんよぉ~?」


 予想はしていたがここまで馬鹿とは。

 男の一言で私はすべてを悟った。この男たちが今まで何をしてきたかまで。


「お引き取り願います」


 私の言葉に男たちは少し予想外な顔をした。

 そして、瞬時に顔を茹ダコかのように真っ赤に染め上げると部屋中に響く大音量で喚き散らす。


「き、貴様!俺が誰か分かっていってるのか!!」


「なぜ私があなたの素性を知らないといけないのですか?」


「な、な、なんだと!!」


 さらに喚こうとする男より先に別の男が口を開く。


「おいそこの女!いい加減にしないと・・・・」


「いい加減にしないとなんです?私はあなた方に、お引き取り願います、と言いました。そちらこそ、いい加減にしないとそこで喚く男と一緒にすぐにでも゛排除゛することができますが」


 これ以上、下劣な男どもと一緒の部屋で一緒の空気を吸う事が我慢らならなくなってきた。馬鹿につける薬はない、とはまさにこの事か。

 私は顎をしゃくると、左右から銃を持った隊員達が男たちを囲い込む。そのまま、小屋の外まで出ていってもらおうとしたのだが――


「ふざけるなぁああああ!!」


 あろうことか喚き散らしていた男が腰の長剣を抜剣すると、突き刺すような形で私に向かってきた。急な事態に隊員達も、なぜか他の男たちも青ざめる。

 しかし、いち早く立ち直った隊員が銃を構えようとするのを私は目線だけでやめさせる。

 こんなところでライフルなんて撃ってしまえば、木造の小屋などいともたやすく貫通しどんな被害が出るか分からない。


 向かってくる男の長剣をステップだけで回避する。

 バランスを崩した男はそのまま前へつんのめるように体制を崩す。その隙を見逃すはずもなく、足払いをかけ本当に前へと倒す。


「ぐふっ!・・・」


 勢いよく壁へと突っ込む男、実に無様な光景だ。

 剣技に関しては素人の私でも今の男の激情に任せての一撃はまさしく三流の所業。いや、それ以下かもしれない。


 レッグホルスターから拳銃を取り出した私は、男の頭へと照準を合わせる。

 冷たく感情を排した一言。


「お引き取り願いたい」


 驚愕から立ち直った取り巻きの男たちは、襲いかかってきた男をつれてとぼとぼと小屋を後にしていく。その時、彼らの胸中にあったのは、怒りか、恐怖か。

 しかし、ただ一人はっきりしていた人物がいた。


「おぼえてろよぉ!!貴様らぁ!俺に盾突いた事をあとで後悔しても知らないからなぁ!」


 壁にぶつかった衝撃なのか、時折、取り巻きの肩を借りながらふらふらとした足取りで小屋を出ていく時、男はそう言った。

 

「゛侯爵家゛に盾突いたことをなぁ?」


 去り際に聞こえた男の言葉は妙に不気味だった。


 


  ◇


「ふぅー」


 出されたお茶をすすりながら、改めてこれだけの量を食べられた自分を褒めてやりたい。すでに胃の許容量を超えており、腹にパンチでもくらってしまえばリバースするのは確実だった。

 だが、目の前には化け物がいる。


「おや?シライ殿、顔が青いようですが大丈夫ですか?」

 

 出された布巾で口元についたソースを拭いながら化け物こと当主様はそう問いかけてきた。

 普通の人が見たら「食えない、絶対に」という量をぺろっと平らげ、あまつさえ涼しい顔をしているなど人間業とは思えない。前の世界の世界中の大食いの人たちをもってしても、貴族という化け物には勝てないかもしれない。

 解剖学者に解剖していいといったら喜んで腹を切り開きそうだ。

 

・・・・・娘まで完食してるし、本当にこの一家の胃は某掃除機なみに吸引力に優れているに違いない。


 暴れる胃をなだめながら、当主にならって口元についてソースを布巾でぬぐっていると「あ、そうだ」と当主はなにかを思い出したかのように手を打つ。

 そして、にやにやしながら話を切り出してきた。


「シライ殿、あなたにぜひ出て頂きたい依頼(クエスト)があるのですが・・・・」


「依頼・・・ですか?話を聞きましょう」


「実は、ここ最近町の西側にオークが大量に住み着いてしまっているんです。何度もギルドに依頼して討伐してもらってはいるんですが、狩っても狩ってもどんどん出てくる始末でして・・・ほとんど飽和状態になってしまっているんです」


 悔しそうに当主は呟く。

 だが、しかし腑に落ちない。それならば問題が解決するまで迂回路を使えばいいだけの話ではないのか?


「迂回路は使えないんでしょうか?オークとやらがどこかに移り住むまでの期間だけで」


「・・・・もちろん、それは検討しました。しかし西の森を通るルートは陸の交通の要所ですし、他のルートはあそこほどの輸送量を確保することができません」


 おそらくこれから俺が提案することはすべて検討され尽くしたものなのだろう。経営者が利益を守りたいのは、どこの世界でも同じのようだ。これ以上の損失は許容されないまでに事態が悪化しているのは、当主のにやにや顔に隠された感情を読み取ることですぐに理解することができた。


「そこで、我々は大規模な討伐隊を編成し一気にオークを殲滅することにしました・・・・あなた方にもぜひ参加していただきたい」


 万策尽きたらこそ、娘を救った実力未知数の俺たちを頼るという選択肢をとったのだろう。


「いいでしょう。お受けします」


 その答えに当主は大きく頷くと「ありがとう、ありがとう!」と繰り返しお礼を言っていた。

 どの道、数日はここにいるつもりだったし行き掛けの駄賃で殲滅させて頂こう。



 俺は断りを入れると、席を立つ。 

 今後の作戦について艦隊に通告するためだ。


「討伐日まであと四日あるから、じっくり用意してくれたまえ!」



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