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「ご助力に感謝する」


そう言いながら、胸に手をあてる――おそらく敬礼だと思う――行動を目にしながら白井も元の世界の敬礼で答礼する。


「して、一つお聞きしたいことがあるのだが・・・・」


目の前にいる森の様に鮮やかな緑の髪の美人に聞かれたことならば、何でも答えよう!


「あなた達はどこの国の海軍なのだろうか?」


いきなり答えにくい質問ナンバーワンが出てきちゃったよ。


「あーそのーま、まぁそれはおいおい話すといたします。あっ!あなたの部下の治療状況を報告しようと思てたんですよ!」


無理やり話題を逸らしたが、「ぜひ、聞かせてくれ」と幸いにも言ってくれたので話題逸らしは成功したらしい。

真奈美を呼び、彼女が手に持っていたタブレット端末を受け取る。


「先の戦闘で発生した負傷者3名の治療は順調に進んでおります。その中の一名は重症でしたが、手早い搬送のお蔭で命に別状はありません」


待機していた海兵隊の一個小隊がヘリで素早く目標地点に降下してくれたおかげだ。あと数分でも治療が遅れていれば助からなかったとあとで真奈美が教えてくれた。


さすが、海兵隊。どんなところでも素早く駆けつける、だな。


俺の報告を聞き終えた女性はほっと安堵のため息をつく。


「それと、あなた方の船ですが損傷が激しくこれ以上航行不能とのことでしたので我が艦が曳航し、城塞都市メイヤの港とまでお運びいたします。ただ」


これが重要だ。

これを確約してもらわないとそもそも話してきた内容全てが成り立たなくなってしまう。


「ただ?」


「港に我々が停泊する許可をいただきたい。これを許可していただければ今まで話したこと全て実行可能です」


女性はしばし考えこむ様子を見せる。

しかし、それもすぐで、すぐに答えが返ってきた。


「・・・分かりました。港湾管理局に事情を話せばすぐに取れるでしょう」


ふぅ・・・・


俺は詰めていた息を吐き出す。

これであとでとやかく言われる心配もなくなった。


「ありがとうございます。我々が責任をもってあなた方をメイヤにまでお届けします」


もう一度、敬礼すると俺はその場を後にした。



  ◇



「・・・・あれがあの未知の者達の責任者だとでもいうの?」


彼女は半信半疑だった。

彼の周りを囲んでいるのはあきらかに彼より指揮官に向いてそうな人物ばかりだ。

それも、あの巨艦を操るともなると、もうわけが分からない。


「そう・・見たいですね。あの少年が先程の事をやったと思うと、恐ろしいですね」


部下の一人がイザベルと同じように信じられないと言った様子で呟いた。


その時、イザベルたちの上を鉄の生き物が2匹、通過する。


「(あの巨艦に・・鉄の生き物たち・・そしてあの長射程の砲・・・・)」


彼らを敵にしなかった神様にイザベルは今なら100以上の感謝の言葉を述べられそうな気がする。


「イザベルさん・・・曳航の件でお話があるんですが・・・・」


さきほどの少年の秘書官をしているという女性が近づいてきた。


「はい、どうされましたか?」


イザベルはにこやかな笑顔で応じた。




  ◇



「イザベルはまだ戻らないのか!」


城塞都市メイヤの一等地に建てられた屋敷で、男性――イザベルの父親が支配人に娘の安否を確認していた。


「はい・・民間船は全線入港を確認したのですが、お嬢様の乗る戦艦だけが確認できないそうです」

「そ、そんな!じゃあその民間船の中に!」

「それも確認しましたが・・・・お嬢様の姿はなかったそうです」


イザベルの母は泣き崩れ、父は悔しそうに俯いた。


「乗せるべきじゃなかったのか・・・・いい船だと言うから乗せたのにっ!結局はダメじゃないか」


父親は吐き捨てるのと同時に、部屋のドアが開き小柄な人影が飛び込んできた。


「アリス・・・まだ起きてたの?」


「お父様、お母様、お姉さまに・・・なにかあったのぉ?」


アリスと呼ばれた少女は目を擦りながら聞いた。


「あぁ・・・大丈夫だよ。もうすぐ帰ってくるから部屋に戻って寝ていなさい。いいね?ボーラ、寝かせつけてくれ」


「かしこまりました」


アリスはメイドにつれられ部屋を後にする。


「お父様、お母様」


だが、出ようとしたところで少女は両親を振り返った。


「お姉さまは生きていらっしゃいます。それと――」


まだ、7歳とは思えない妖艶な笑みをアリスが浮かべる。


「楽しい方たちをお連れになっているようですね」


それだけいうと本当に部屋を出て行った。


「あの子のいう事、本当なのかしら・・・・」

「夢でも見たんだろう・・・信じることは無い」


その後の部屋には不気味な静寂が漂っていた。




  ◇



ワスプ級強襲揚陸艦に接続されたガリオン船は特に問題も無く曳航されていた。

若干、気を使わないといけなかったのは、速度だろう。

早くしてしまえば、曳航ロープをつけたマストが折れてしまうからだ。


機関科の隊員はかなり不満そうにしていたが・・・・




「レーダーに感、多数10、11、12、どんどん増えていきます」


どうやらメイヤに向かう輸送船をレーダーで捕捉したらしい。

ということはメイヤはすぐそこだ。


『艦隊司令!見てください!みんなこっち見て手を振ってますよ』


艦橋の見張り員の隊員が興奮気味に報告する。


「手を振っていいぞ。笑顔も忘れずにな。今のうちに愛想ふりまいとけ」

『了解』

「それと艦隊、面舵10度、微速前進ヨーソロ」

『よーそろー!』


ぶつからないように両舷微速を命じた後、真奈美に連絡をとる。


「真奈美、ワスプに連絡して海兵隊1小隊をスタンバイさせてくれ。ついでにAH-1Z「ヴァイパー」2機にも出撃待機命令」


『了解しました』


頼むからヴァイパーを使わせるような事態にはなってくれるなよ・・・・




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