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一週間以上、待たせてしまい申し訳ありませんでした!

「ほぇ~」

「ほわ~」


意味不明な呟きを漏らしながら彼女達は目前の巨艦の目を奪われていた。


一体、どんな魔法を使えばこんな船が作れるのだろう?


その点において彼女達の思考は統一されていた。


「あの、ガリッタさん?大丈夫ですか?」


1分近く二人とも動かないので、さすがに心配になってくる。


「・・・・・え、ええ、大丈夫よ・・・・」


彼女自身、動揺を隠そうとしたようだが全然隠せていない。むしろ伝わりやすくなってしまっている。

まあ、特に追求すべき点でもないのでそのままにしておく。

俺達が乗っているLCACをワスプ級の後方につける。無線機を取り出しその相手に話しかける。


「いいぞ!ウェルドックを開放してくれ!」


すぐさま開放が始まり出した。


「ね、ねぇ・・シライ?あれ沈まないの?」


「ん?別に大丈夫だと思うが・・・どうかしたのか?」


「沈まなければいいのよ・・・沈まなければ・・・・」


どうやら艦に大穴が開いたのを見て不安になったようだ。

LCACが歩みを再開し、ついに強襲揚陸艦の中に納まった。


俺らを迎えたのは、士官たちによる敬礼だった。


「総ぉ員気ぉーつけぇ!!敬礼!!」


バッと一斉に敬礼される。うん、何度見てもすごいと思う。


「彼女達を士官室ににお通ししろ。生活しやすいようにな。頼んだぞ」


「はっ!この命に代えても!」


生活しやすいようにと言っても、実際はそんなに時間はかからない。

彼女たちにはバスのような気分でいてもらえたら幸いだ。


「あら、このいいお兄さんたちが案内してくれるの?」


相変わらずガリッタさんは物怖じしていない。


後のことを乗員たちに任せ、俺はワスプの艦橋に向かった。


「艦隊司令、上がられます」


「全艦の状況は?」


「はい、全艦出港準備が整っています」


「よし、これより15ノットで城塞都市メイヤを目指す。全艦――抜錨ッ!!」


ゆっくりとその艦隊は動き出した。



  ◇


「今日も海風は気持ちいわぁ~」


森の様に鮮やかな緑の髪の女性が、船の縁から身を乗り出し目前に広がる大海原を眺めていた。

彼女が乗る船の周りにも大小さまざまな船が5隻、幌を風にたなびかせながら航行している。


「船団長・・・さすがに気が緩み過ぎではありませんか?」


そんな彼女の緩さを見咎めた部下が口に出す。


「いいのよぉ~こんな航海もうあまりできないかもでしょ?」


「それは・・・そうですが」


海鳥が鳴き、気温も上々。そして丁度良い風。これほどまでに好条件が揃う航海と言うのも最近はめっきり減ってしまっている。

どれもこれもお偉い方がやらかしてくれた゛ミス゛のおかげだ。

船団長―イザベルは舌打ちでもしたい気分だった。


その゛ミス゛のせいで民間船まで徴発しての城塞都市メイヤへの物資輸送作戦。我が国の威信にかけてもこの作戦は絶対に成功させなければならない。


一見、気の抜けた表情の中に彼女は重いプレッシャーを感じていた。


「あとどのくらい?」


「えっともうすぐ着くと思います。海鳥の多さからして陸地はそう遠くは・・・・」


報告していた部下の目が一点に留まる。

表情から感情が抜け、顔面は蒼白になっている。


「どうしたの?」


「船団長!船がこちらに向かってきます!数はおよそ――15!」


「なっ!?」


彼の表情から察するに嘘は言っていまい。

そう判断した彼女はすぐさま部下に指示を飛ばす。


「総員、合戦用意!」

「アイサー!」


がたいの良い水夫たちが返事をし、大砲の弾込めや乗り込まれた際の武器の準備を既に行っていた。


だが、先に気づけたとはいえ戦力差は歴然だった。

こちらには大砲などを積んでいる艦がこの船しかない。残りはすべて民間船であり乗り込んでいる人間も水上での戦闘の経験などは皆無だ。

しかも現れるタイミングから敵はこの辺を荒らしまわっている海賊団だろう。当然、大砲を積んでいる艦が何隻といる。


イザベルは部下に知られないよう歯噛みした。


「敵船からメッセージ!――゛おとなしく、持っている食料、武器、金銀を引き渡せば命だけはくれてやる・・・・・あっ!ついでに女もよろしくな!゛だそうです!」

「・・・・・・」


なんてざけた連中だッ!

この船団の女性はただひとりイザベルだけ。もし、引き渡されようものなら・・・・・・考えるだけで虫唾が走る。


「(同伴してい船を救うには要求を呑むしかない・・・でもそれでは任務が失敗してしまう。でも、一か八か戦っても結果は・・・・・)」


「船団長、ご英断を」


部下が「なにがあってもあんたに命を預ける」と目で訴えかけてきていた。

イザベルは一度目を伏せた。


――そして勢いよく目を見開き目前の敵を睨んだ。


「これより海戦に突入する。敵船に返信、内容は――゛馬鹿め゛と返信して」

「アイサー」


部下は彼女の返答に満足そうな顔をする。

旗を持って駈け出す部下を見送った後、見張り台を見上げた。


「敵船との距離は?」

「掴みで300ってとこっす!」


彼女自身も望遠鏡を取り出し迫りくる敵船を見た。

海賊たちは必死に大砲などの準備をしているが、その表情にはどこか余裕が窺い知れた。どうせ「ちょろ獲物だ!」と言っているのだろう。今に見ていろ、吠え面かかせてやる。


会敵まで2分。


イザベルは自身の船以外をメイヤへと急がせた。ここで彼らが沈んでしまっては意味が無い。


会敵まで1分。


すべての大砲の発射準備が整い、男たちは抜剣する。


会敵まで――



5秒。



「全門ッ・・・・・」



0――海戦は始まった。



「てぇーーー!!」


すさまじい爆音を周囲に轟かせながら勝ち目のない戦いは始まった。













イザベルの戦いが始まる少し前




「レーダーコンタクト。2時の方向」


アーレイバーク級ミサイル駆逐艦「グリッドレイ」のCICに移動していた白井はそんな報告を受けた。


「数は?」


「10、こちらに気付いている様子はありません」


予定だと城塞都市メイヤはそろそろのはずだ。数からいってもおそらく輸送船団かなにかだろう、というかそうでないと困る。あれが戦闘部隊だったら笑えない。


「ッ!?新たな目標が出現。数、15!先程の目標に向かっていきます」


「別の輸送船団か何かか?」


「現時点では分かりませんね・・・・・」


うーん。判断に迷うところだ。一番最初に探知した目標は早急に対処する必要はないと思うが、後に現れた15隻がどうにも気になる。


・・・まぁ、いい。備えあれば憂いなしだ。


「総員戦闘配置」


けたたましい警告音が鳴り響き、乗員たちが持ち場につく。


「10隻の方を゛アルファ゛、15隻の方を゛ブラボー゛と呼称します。艦隊司令、対処は?」

「グリッドレイに追随している艦はその場で機関停止、待機せよ。我々が前に出る。我が艦は情勢を見極め介入する」


俺はレーダースクリーンに映る光点を見つめた。

実際何も起きなければこのまま戦闘態勢を解除し、メリー達をメイヤまで送り届ければよいのだ。

しかし、俺の勘はどうやらその考えを捨ててほしいようだった。


「なにも起きてくれるなよ・・・・」


面倒事に巻き込まれる・・・・そんな予感が俺の頭の中でずっと居座り続けていた。


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