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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
99/118

審問

 所属不明の輸送ヘリコプターを襲撃した甘根が捕縛したエイミーを

取り調べするために軍艦フェンティーア内の使っていない倉庫を

取調室にすることになった。

ディアナと中村が取り調べを担当することになった。

中村は嘘発見器のような働きをする神器「ソウルクリスタル」を

取調室のテーブルに設置した。

ディアナと中村はその部屋で甘根がエイミーを連れてくるのを待っていた。


 取調室の扉にノックが響いた。

「どうぞ。」とディアナが声を出すと見習い士官が扉を開けた。

「炎国王子と女性の方が来られました。」と見習い士官が言った。

「入って頂いてください。」とディアナが応えた。

甘根がエイミーの手を引いて入室してきた。

エイミーは軍服姿のままである。暗黒剣も所持している。

「おい。甘根。武装解除って言葉も知らんのか。」

呆れたように中村は甘根に言った。

「知らんかった。武器は外の兄ちゃんに預かってもらおうか?」

うっかりしてたといった具合に甘根は応えた。

中村はニヤっと笑ったあとに

「面白い。ええよ。ここには強いもんしかおらん。

お姫さんがこの女性が怖いっていうんなら武器を預けてもらえばいい。」

先ほどからずっと室内で中村とディアナが険悪なムードであった。

「わたしは特にかまいません。

もしも、攻撃してくれば明らかにこちら側に敵意があるという事になります。」

ディアナもエイミーの武器の所持を承認した。

「じゃ、わしは取り調べが終わるまで食堂で飯を食ってこようかなぁ。」

「甘根はここにおれ。」

「なんやねん。タロウ。取り調べなんて退屈な事はわしの性にあわん。」

「いや、お前みたいに強い男がおってくれた方がええ。

僕は人間に暴力を振るえないしディアナ姫も体調が優れないようだしな。」

「え。そうなん。姫さんが体調が悪いんやったらしゃあないな。

わしがここにおってエイミーが悪さをしないように見張っとくか。」

ディアナは中村をとても冷たい目で見つめていた。

中村はその視線を無視した。

「お前ら、2人とも金髪で青い目しているのに仲悪いんか?」

「そやねん。僕はフレンドリーやのにお姫さんが僕に喧嘩を売ってくんねん。」

中村のその言葉にディアナはノーリアクションだった。

「甘根は僕の向かいの席に座って。」

「おう。」

「はじめまして。エイミーさん。

ではエイミーさんはディアナ姫の向かいに座ってください。」

「わかった。取り調べに天使様がいるなんて驚いた。

エイミーだ。よろしくたのみます。」

「よろしく。形式的な事情聴取やから気楽に質問に答えてください。

答えたくなければ答えなくてもかまいません。」

中村はエイミーに優しい微笑みでそう言った。

「そうか。さすが天使様、紳士的だな。

取り調べなんていうから拷問される事も覚悟していた。」

「拷問か。そんなことをする必要はないからね。」と中村は言った。

エイミーと甘根が着席した瞬間に

中村の前のソウルクリスタルの色が白く輝いた。

「天界結界発動」と中村が唱えるとブワっと法力が部屋中に広がった。

室内はどうやら結界が構築されて覆われたようだった。

「天意魂魄封印」と中村が続けて唱えると

白く輝いていたソウルクリスタルが透明に戻った。

「よし。成功した。」と中村が嬉しそうにつぶやいた。

「それは何や?」と甘根が興味深い様子で言ってきた。

「これか?うそ発見器みたいなもんやな。」

「そうけ。便利なもんもっとるのう。」

ソウルクリスタルの色が複雑に入り乱れ始めた。

中村は難しそうにソウルクリスタルを見つめると

「ふむ。なるほど。結構、闇が深いなぁ。」と小声で言った。

中村はエイミーをジッと見つめると

「それでは、取り調べの前にエイミーさんに注意事項を説明します。」

「どうぞ。」とエイミーは頷く。

「これは取り調べではありますが大天使による簡易審問会でもあります。

簡易とはいえ天界の正式な儀式です。儀式中はこの室内は天界と同義です。

もしも審問会に対する妨害行為やこの部屋から逃亡した場合は

重大な罪を背負います。しかし、質問に対して嘘をついても罪にはなりません。

嘘の定義というのは曖昧ですから。

ですから嘘というのはこちらで勝手に判断いたします。

もちろん黙秘権はありますので都合の悪い事は黙って頂いて結構です。

今の説明は非常に重要です。そして審問会の間は貴方の魂は

このソウルクリスタルに拘束しています。

人間の魂の管理は天界が権限を持っています。

異議があるなら申し立てて頂いてかまいませんがこちらが管理権限を放棄したら

貴方はこの世界から外れた存在になりますので自然消滅します。

転生もせず別の大陸に移籍もできずただの消滅です。ご注意ください。

エイミーさん、ここまでで何かご質問はありますか?」

エイミーは首を振って口を開いた。

「いいえ。ありません。黙秘権もあって嘘もつけるのであれば

何も文句のつけようもありません。人権を尊重して頂けて感謝します。」

「そうですか。では、ディアナ司令官代行。取り調べをお願いします。」

ディアナは頷いて口を開いた。

「はい。では、取り調べを行います。

司令官代行のディアナ・アルブルド上級大将です。

皆さまよろしくお願いします。

では、あなたのお名前を教えて頂けますか?」

「エイミーです。」

ファミリーネームを教えて頂けますか?」

「。。。。。。。。。」

「貴方は何の目的でこの海域に来られたのですか?」

「。。。。。。。。。」

「では、貴方はフェンティーア都市国家の敵対していますか?」

「。。。。。。。。。」

「おお。少し濁った。多少でも動揺が出てるって事は

あなたはおそらく敵なんでしょうね。」と中村は嬉しそうに言う。

中村の言葉を聞いてもエイミーは無表情に沈黙を守っている。

「では、ディアナ司令官代行。

僕から1つエイミーさんに質問してもよろしいでしょうか?」

「はい。いいでしょう。タロウ様に許可いたします。」

「では、エイミー。あなたの所属艦はフェンティーア都市国家にいますか?」

その質問が終わると同時にエイミーは全身を量子化する事で姿を消した。

量子化は霊体化のように不可視になることができる闇黒天あんこくてん特有の能力である。

量子化は限界継続時間は5秒。それ以上は体を再構築できなくなる。

中村はそれを見ても何も慌てていない。

「あれ?エイミーがおらんようなった!」と甘根は慌てた。

次の瞬間、エイミーの姿が現れて中村の前にある祭壇を蹴り上げて破壊した。

中村は事前に予測していたのかソウルクリスタルを懐にしまっていた。

エイミーはまた全身を量子化して姿を消した。

ディアナは危険を感じて立ち上がると腰の剣に柄の握りに手をかける。

エイミーは姿を現すとディアナの顔めがけて素早く暗黒剣を突いてきた。

ディアナは剣を抜く動作で剣の柄頭で暗黒剣を下側から跳ね上げた。

暗黒剣と接触した瞬間にディアナの体中のマナが打ち消された。

ディアナは体のマナが消失した事で

マナによる身体強化術が解除されてしまった。

マナの強化が無くてはいつものようには体は動かない。

ディアナは生まれて初めて死を覚悟した。

ディアナはそれでも剣を抜いて構える。

エイミーはまた姿が消した。

ディアナは周囲を警戒しながら壁に背を当てる。

次の瞬間に暗黒剣が姿を現しディアナの首筋に向かって横に切り込んでくる。

ディアナは首を庇おうと左腕をあげたが間に合わない。

エイミーは暗黒剣を猛烈な速度で横に振り抜いた。

たった刃渡り30cmの暗黒剣がプリンを切るかのように

ディアナの首を切断した。ディアナの首はゆっくりと落下し床に落ちた。

エイミーはまたすぐに量子化し、そのまま部屋の外に出ようと思った。

エイミーは壁をすり抜けようと量子化したまま壁に

突っ込むと壁に跳ね返されて量子化が解除された。

エイミーは何が起こったのかわからず動揺したが

甘根と中村を警戒して暗黒剣を構えて腰を低くする。

「エイミー。。。なにしてくれてんねん!」と甘根は目が覚めたように

エイミーに殺気を向けると、甘根の肩を中村が手で押さえた。

「はいはーい。チャンバラの時間はおしまい。おしまい。

エイミーさんお姫さんとの決闘は楽しかった?

じゃあエイミーさん座席に戻って戻って。時間がもったいない。」

中村はそう言って床に割れたガラスのコップが

散乱している元いた座席に座った。

「おい中村!なに落ち着いてんねん!姫さん死んでもうてんぞ!」と

甘根は中村に詰め寄ると

「顔が近い。顔が近い。」と甘根を中村は手で押し返した。

エイミーは天使に攻撃することができなかった。

天使に攻撃するという気持ちに普通の人間はなれない。

だからと言って甘根に攻撃したら瞬殺されて

何度も体をバラバラにされて殺される。

エイミーは仲間のジャックが甘根にバラバラにされる光景を

さっき輸送ヘリコプター内で嫌という程に間近で見た。

結果的に甘根にそうやって殺されるとしても

エイミーは自分から自殺行為な攻撃したくはない。

エイミーは闇黒天の奥の手の能力である「覚醒」まで使っていた。

暗黒剣でマナを打ち消してディアナを弱体化させ、

覚醒能力で超人的なスピードと腕力で押し切って

見事にディアナを倒すことができた。

覚醒能力使用後は体内の量子ナノマシンがオーバーヒートする。

そのため、ナノマシンの効果である自動肉体修復機能まで停止する。

今のエイミーは肉体を自動修復できず1回死んだらそれまでだった。

エイミーがディアナを討ち取ったことで小隊の仲間達にギャラが入るはずだ。

仲間に最後の土産を渡して死ねれば本望だとエイミーは思った。

「まったく。甘根は完全に油断してたやん。

それじゃあ、エイミーを殺すのか?

お前はもう情が沸いて殺せへんのちゃうか?

お前がエイミーの武装を解除しなかったのが

そもそもの原因やろ。現実を受け止めろ。

こういう事になるのを未然に防ぐために普通は武装解除させるんや。」

「なんやねん。なんでやねん。

タロウもエイミーを武装解除させんかったやんけ。」

「ああ。させんかった。お姫さんも武装を許可した。

お姫さんは自分の強さに自信があったやろうな。

それを油断といい。慢心ということやねん。」

「もう!武装がどうとかそんなんどうでもいい。

姫さんが死んだなんて。シュウになんて言えばええねん。」

そう言って甘根はガックリと肩を落として落ち込んだ。

そして、エイミーに目を向けた。

「エイミー。なんで姫さん殺してん。わしを狙えばよかったやろ。

弱い者いじめはあかんとかいいながら姫さんを狙うんか!」

エイミーは剣の構えを解くと口を開いた。

「だね。でも、最初から姫様狙いだったんだよ。わたしの目的は達成された。

さぁ、あんたの好きにすればいい。わたしはもう抵抗しないからさ。」

そう言って甘根の前まで歩くと直立して目を瞑った。

甘根が拳をエイミーの額に押し当てた。

「2人ともいい加減にせい!僕は2人に席に座れと言っている。

この審問会はまだ終わってないんやで。ルールを守れ。

エイミーを殺すんやったら後でもええやろ。

事情を聴いてからでも遅くないんとちゃうか?」

甘根はエイミーに押し当てた拳を下ろすと

「。。。。。エイミー。座れ。」と言った。

エイミーは頷くと口を開く。

「ああ。わかったよ。でも、もうわたしはもう何も話す事はないよ。」

甘根とエイミーは元の座席についた。ディアナは床にほったらかしである。

2人が席についたのを中村は目で確認すると口を開いた。

「とりあえず言うけれども君らは何か勘違いしてるんとちゃうか?

これは天界の儀式である。この室内は簡易結界ではあるが天界やで。

現実世界とは隔離されているんや。死ぬ事がまず出来ないわな。」

甘根は意味がわからず口を開いた。

「タロウ。お前の方こそ寝ぼけんな。何いうとんねん。

姫さんは現実に死んでるやんけ!」

エイミーは目の前にディアナの体が見えるので何かに気付いたようである。

「まさか。そんなこと。」と

エイミーはディアナの首の無い体を凝視して呟く。

「お姫さん。いつまで寝てんねん!負けて恥ずかしいんか?」

エイミーにはディアナのお腹が複式呼吸しているのが見えた。

床に横たわるディアナの生首の目が開いた。

ディアナの生首と甘根は目が合った。

「うわ~~~~!!!!ヤバい。。ゾ。。。ゾンビや!!!」

甘根は腰を抜かして椅子を後ろに倒した。

エイミーは自動肉体修復に慣れているためそこまでは動揺を見せない。

「あのなぁ。悪魔がゾンビにビビんな。

そもそも天界には死の概念が無い。だって天界って天国やぞ。

というわけでディアナ司令官代行。

首を自分で元の位置に戻して席についてください。たぶんくっつくでしょ。」

ディアナは横たわる首の無い体で首を掴むと首にくっつけた。

ディアナの首はくっついた。首に傷跡は残っていない。

ディアナはほっとして胸を撫で下ろすと上体を起こして口を開いた。

「。。。驚きました。タロウ様、こんな重要な事なら最初から教えてください。

首が落ちた時はしばらくは自分は本当に死んだと思っていました。

これが臨死体験か。と思い、薄目でみなさんの様子を見ていました。」

中村が口を開いた。

「いや、だって、使わない効果なら教える必要は無いでしょ。

お姫さんが負けなければ知らないで終わってたんやから。」

「タロウ様。その言い方。本当に意地悪ですね。

それがなければわたしは素直に尊敬できるのにタロウ様は損をしていますよ。」

「でも、僕は結果的にディアナ司令官代行の命を救ったやろ。

別に感謝してほしいから救ったわけやない。でも感謝はしてや。

どんな形であれ善行は善行やろ。お姫さんがさっき司令官室で言った言葉やで。」

「そうですね。素直にタロウ様に感謝を奉げます。」と

ディアナは笑顔でタロウに向かって

両手を握り合わせて神に祈るような仕草をした。

さっきまで険悪であった2人とは思えない生暖かい空気がその場に流れていた。

甘根はあっけらかんとした笑顔で口を開く。

「姫さんよかったな。

姫さん死んだなんてシュウになんて言ったらええかってほんま悩んだわ。

それでエイミーは残念やったな。でも、これでわしもエイミーを殺す理由もない。」

エイミーは俯き気味の姿勢で沈黙している。

覚醒能力を使用したので、エイミーはもう闇黒天の能力は失っている。

エイミーには何も選択肢は残されていない。

あとは運命をこの場にいる自分以外の3人に任せるほかなかった。

中村は足元のガラス片をサンダルで横に押し出しながら口を開いた。

「では、皆さんが落ち着いたところで審問会とりしらべを再開しようか。」

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