祭壇
輸送ヘリコプターで捕らえた小隊長エイミーの取調べを行うために
ディアナと中村は3つ下の甲板までエレベーターで下りた。
3つ下の甲板でエレベーターを降りて
ディアナと中村の2人は艦尾に向かい歩き出す。
「なぁお姫さん。どこで取り調べするん?」
「艦尾の搬入用フロアに今は使っていない倉庫があるそうです。
そちらで取り調べ致します。テーブルを運んでもらいました。」
「そうか。ちょっと取り調べをする前に
この他人の心を色で表すというソウルクリスタルを使う準備せなあかん。
これって一応、神器やからな。使うために簡易祭壇を作る。」
「そのままでは使えないのですか。」
「そや。だって神器だからな。これがただの心を映し出す便利道具だと
思っていたらビックリすることになるで。」
「それは他にも何か効力を発揮するのですか?」
「うん。効力は他にもあるんやけれども今回は使わないかもな。」
「随分ともったいぶるんですね。タロウ様、少し子供っぽいです。」
「あれ?お姫さまは今日はご機嫌が麗しくないんですか?」
「いえ、そんなことはございません。」
「ああ。女の子の日ですか。」
「タロウ様。堕天しますよ。いや、もう堕ちてください。」
「手厳しいな。大丈夫、僕はまだ少年法で守られている年齢やからな。」
「は?何を言ってるのかが意味がわかりません。
先ほどの無礼な物言いは少年というより中年男性の発言ではありませんか。
とても不愉快な気分になりました。」
「そんな事で怒るなんてまだまだ修行が足りませんね。
僕くらいの年齢の男子はそういう発言をするものです。
あえてそういう男子を演じておどけてみせたのです。」
「わたしに何の修行が足りないというのですか?
大天使様に対して失礼だと思いますが
女の子の日などといういかがわしい表現で
婦女子をからかう男子は10歳以下だと思います。」
「そうかこれが僕の若さというものなのか。
お姫さんは僕を中年男性だと言ったり10歳以下と言ったり
発言が支離滅裂ですよ。情緒不安定ではありませんか。
取り調べが終ったらお姫さんもソウルクリスタルを使いますか?」
「。。。。。。。。。。。。」
「う。おい。無視か。天使を無視すんのか。」
「わたしは心が情緒不安定なので天使が見えなくなってしまった。」
「。。。。本当に怒ってるやん。おひめ。悪かった謝罪する。」
「は?天使さまは悪いとわかって言ってましたよね。
そんな風に他人を馬鹿にしたところがわたしは好きになれません。
悔い改めてください。さもないと本当に堕天しますよ。」
「。。。。。。えっと、もうそろそろ倉庫につく?」
「知りません。」
「。。。。。。。。。。。。。。。。」
2人はしばらく会話せずに廊下を歩き続けた。
艦尾のとても広い物資搬入用フロアに入る直前に
右側の大きな扉がある。その大きな扉の前でディアナが足を止める。
扉の前には帝国の見習い士官が立っていた。
見習い士官がディアナと中村にすぐに気付いて敬礼すると
「こちらでございます。もうテーブルを設置しましたので
取り調べの準備はできております。」と言うと目的の部屋の扉を開けた。
広めの部屋にはテーブルと椅子と照明以外には何も無い。
部屋に入ってすぐ手前の椅子を引いてディアナが座ろうとすると
「ちょっと待った。そこではなくこっちの席に座って。
儀式の配置の関係で僕は北側の席に座る。
お姫さんは東側の席に座ってもらう。
お姫さんの向かいに容疑者に座ってもらう。
甘根には南の席に座ってもらうことにしよう。」
ディアナは怪訝な表情を中村に向けたがその言葉に従って東側の椅子に座った。
天使は椅子に座ると肩下げ鞄の膝の上においてゴソゴソと鞄の中をあさる。
ガラス製の四角い灰皿をテーブルの上においてガラス製のコップを
灰皿の四隅あたりに配置した。
「それが祭壇ですか?」
「そそ。この4隅のコップは第二大陸、第三大陸、第四大陸、第五大陸を
表してる。そして、中央の灰皿はこの第一大陸を表している。」
「ほう。」とディアナは立ち上がって中村の横に寄り添い祭壇をジッと眺める。
「ほんなら姫さんこれをよく見ときや。」と言って
中村は懐からおもむろにソウルクリスタルを出した。
「はい。よく見ておきます。面白そうですから。」
「ほな。このソウルクリスタルを灰皿の上に置くとやな。」
そう言って中村はソウルクリスタルをそっと灰皿の上の虚空に置くと
ソウルクリスタルは灰皿の上の空中で停止してゆっくりと回りだす。
ソウルクリスタルからは薄っすらと光の粒が放射されていた。
「美しい。綺麗な輝きですね。」とディアナは目を輝かせた。
「今はニュートラルな状態や。このソウルクリスタルは天界と同調してる。」
「これが天界の光。」
ディアナは目を瞑って両手を握り合わせると祈るような姿勢をした。
「おい。お祈りはええからよくこの光をよく見てみ。」
「はい。」
ディアナはジッとソウルクリスタルの輝きを見つめた。
「どや。さっきの不機嫌な気持ちとかどっか行ったやろ。」
「ええ。心底、タロウ様を軽蔑していた気持ちが和らいでいきます。」
「そうか。軽蔑されとったんか。そっか。。。だが、それや!
このソウルクリスタルの光は穢れを浄化する作用がある。
光を見た人の心の穢れに対しても浄化作用があるんや。
心身の健康にもええからよくこの光を見とき。
霊感商法みたいに聞こえるかもしれんけれどほんまやからな。
この光は滅多に地上で見られるもんじゃないで。
この強い浄化作用のあるソウルクリスタルの中に対象者の魂を転移させる。
すると、ソウルクリスタルが魂に対して反応を起こす。
それがソウルクリスタルの色や濁りとなって表れる。
ソウルクリスタルの浄化作用で対象者が
素直に話してくれる効果も期待できるというもんやな。」
「素晴らしい。あれ?タロウ様が天使に見えてきました。」
「おお。やっと、ディアナさんは真実を見る目を取り戻したようだね。」
ディアナはタロウに苦笑を返して自分の席に戻った。




