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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
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命の数

 フェンティーア闇黒天4名が乗る輸送ヘリコプターの中にて

火の粉が大量発生した。不思議な火の粉に闇黒天たちは動揺した。

その火の粉の中から少年が現れた。

その少年「甘根興次」は不敵な笑みを闇黒天達に向けたのだった。


 闇黒天4人はただ目の前の少年をどう解釈したらいいのかわからない。

エイミーは直観的にこの少年が勇者ではないかと思った。

ブラッドフォードから勇者は子供だと聞いていたからだ。

だが、ブラッドフォードから聞いた勇者の印象と

目の前の少年の印象は違っている気もした。

目の前の少年はの印象は何かとてつもなく邪悪な存在。

例えるなら悪魔だ。いや悪魔よりももっと強大な何か。

エイミーは判断を迷った。勇者なら降伏するしかない。

しかし、目の前の少年は何者なのか?目的は?謎だらけだ。

このエイミーの判断の迷いはいい結果には繋がるのか。


 目の前の少年の紅蓮に輝く瞳は蛇のように

獲物を飲み込もうとする明らかな殺気を帯びていた。

長身で細身のジャックは緊張で全身から汗が噴き出していた。

ジャックの暗黒剣を持つ右手はびっしょりと汗で湿り

暗黒剣の切っ先は手の震えでブルブルと震えていた。

暗黒剣が通用しない。本当に通用しないのか?

目の前の少年の得体が知れないチカラ。

死を予感させる空気への緊張感にジャックは精神が悲鳴を上げ始めている

「どうする?」とジャックは声には出さずにエイミーに目配せした。

ジャックはこの場の判断を隊長であるエイミーに目だけで問うたのだ。

エイミーは迷った。迷ってしまった。1つ間違えたらきっと殺される。

少年に話しかけたらきっと殺される。少しでも動いたらきっと殺される。

体内のナノマシンによって肉体が再生する半不死身の闇黒天。

その闇黒天が歴戦の戦士の勘で一寸先の死をひしひしと感じていた。

カレンは足が震えて力が入らず腰を床に落としてしまった。

カレンは祈るように目の前に暗黒剣を両手で握っている。

ボビーは歯を食いしばりながら腰の暗黒剣を握っている。

もしも、闇黒天の誰かが少年に、あなたは勇者ですか?

なんて訊ねて案の定で勇者だったら呪いで豚になる可能性だってある。

闇黒天たちは皆、こんな絶望的な状況になるとは知らずに

遊び気分でノコノコと敵の本隊にやってきた事を後悔しつつあった。

ジャックは隊長であるエイミーの優柔不断な態度に焦った。

目の前の得体の知れない少年に殺される前に

状況を少しでも有利な流れに変えたいという焦りから

自然と足が前に前にと踏み出す。

その瞬間、目の前の少年は姿が消えた。

次の瞬間。ジャックの体は四散してバラバラに吹き飛んでいた。

ジャックの粉々に吹き飛んだ返り血や肉片を

エイミー、ボビー、カレンの3人は全身に浴びた。

3人は放心状態になった。

ジャックの吹き飛んだ肉片や血は瞬時に元の位置に集まり体を再生し始める。

ジャックの体の横で直立する少年は何も言葉を発さない。

肉体再生して全裸で寝転がっているジャックの胸元に

少年はかがんでそっと右拳を当てた。

その瞬間、ズババッババババ---ン!!!と大きな音を立てて

ジャックの体がまた粉々に破裂して辺りに肉片と血液が四散する。

ジャックはまたすぐに肉体が再生した。

少年はまた右拳をジャックの胸元に当てる。ジャックの肉体は粉々に破裂する。

またすぐにジャックの肉体は再生する。少年はまた右拳をジャックに当て破壊する。

何度も何度も少年は好奇心の目をジャックに向けながら同じ行為を繰り返す。

甘根に何度も何度も繰り返し繰り返し粉々にされたジャックの肉体は

段々と再生速度が遅くなっていった。

再生が追い付かず肉体が不完全な状態で再生される。

肺が破れたままで機能せず呼吸困難状態。

心臓もうまく機能せず酸素が行きわたらないチアノーゼ状態。

内臓機能障害や全身の骨が複雑骨折状態。

ジャックは全身の痛みと苦しみで涙を流しながら

「たすけて。たすけてくれ。もうやめてくれ。」と声なき声をあげる。

エイミーは直立してジャックを見おろしていた。

ボビーはさっきと同じ姿勢では汗びっしょりであったが

死ぬ覚悟は出来たという顔をしながら

「まったくなんて日だ。」とつぶやいた。

カレンは放心状態でお祈りの言葉をつぶやいている。

ジャックが苦しむ姿を見下ろしながら初めて少年は声を出した。

「おい!あんたら不死身じゃないんけ?命の数はいくつだ?」

その場の誰も甘根の質問の答えを返せない。

その場の誰も肉体の再生回数の限界数はわからないのだ。

「ふ~ん。まぁええわ。

命の数がわからんと殺してしまうから訊いたんやけれど

戦士が死を恐れるわけないか。わしの気の使いすぎやな。

あんたらめっちゃくちゃ強いんちゃうんけ?

なんでジッとしてるん?ここじゃ狭くて戦いにくいんけ?

戦いやすいところに移動して戦おうか。」

甘根は純粋で優しい目でそう提案してきた。

「こいつイカれてやがる。」とボビーは心の中で舌打ちした。

沈黙を貫いていたエイミーが初めて口を開いた。

「もう、わたしらの負けさ。わたしらの事はあんたの好きにすればいい。」

エイミーは目の前の少年が何者か知る必要が無いと悟った。

何者であるか知ったって死ぬだけだ。意味がない。

エイミーの無気力なその言葉に甘根の表情は歪んだ。

「おい!あんたらは戦士なんちゃうんけ?なぁ?強いんちゃうんけ?

強い敵であるあんたらが突然やって来た。

だからここにわしが来た。わしはだからここにいるんや!

おい!おい!おい!この落とし前はどうつけてくれるんや!」

エイミーに甘根は詰め寄って胸倉を掴んだ。

エイミーの足元近くで蹲るカレンは耳をふさいで目を瞑っている。

エイミーは殺されるのを覚悟で口を開いた。

「なんだい!戦えば気が済むのかい?いいよ。やってやる!

でもね。もうそんなのただのあんたの弱い者いじめさ!」

その言葉を聞いた甘根の目には大粒の涙がいっぱい噴出してきた。

甘根は純粋にすごく悔しくて仕方ないようだった。

「なんや!いじめってなんや!弱いくせに戦場に来るなよ!

お前らなんやねん!!!

勝手に攻めてきて負けたら敵をいじめっ子扱いすんのか!

クソッ!!!でも落とし前はつけなあかん。あんたらの目的はもうどうでもいい。

俺の気持ちの落とし前もつけなあかん。ここの責任者は誰や?」

「わたしが隊長のエイミーだ。」とエイミーは

真っすぐに甘根の瞳を見つめて言った。

「ふん!そうけ。大将のあんたはわしが軍艦に連れて帰る。

あんたらの事情なんてどうでもいい。

それを訊くのはわしの役目やないからな。

あんたは戦士やのに戦わなかった。だからわしはあんたが大嫌いや。」

「すまない。」とエイミーは一言言った。

「でも、あんたを連れていく事に免じてここにいる他の奴らの命は助けたる。

弱い者いじめはわしの性分じゃないからな。

みんなは強いんやと思ってて勘違いしてたわ。謝るわ!

みんなが強くなったらまた改めて喧嘩しようや。

いつでもわしは挑戦受け付けとるで。」

ボビーは無言で何度も頷いた。カレンも恐る恐る頷く。

ジャックはもう意識を失っていたが肉体再生が持続しており命は助かるだろう。

エイミーは仲間を見渡すと「みんなが無事に帰ったら私の代わりに

ブラッドにゴメンって言っておいて。」と泣きそうな笑顔で言った。

「ああ。必ず伝えるぜ。エイミー。生きて帰れよ。俺らはずっと待ってるぜ。」

ボビーはそう言うとエイミーに握手を求めた。

エイミーは大きく頷くと何も言わずボビーと固く握手した。

そして、エイミーはしゃがむとカレンの頭を優しくなでた。

「カレン、頑張って闇黒天将になるんだよ。」

「姉御。。。。姉御。。。絶対に帰ってきておくれよ。」と

すがるようにエイミーの腕をカレンはさすった。

「ジャックの事頼んだよ。」とエイミーはカレンに言うと立ち上がる。

「不甲斐ない兵士ですまない。」ともう一度、エイミーは甘根に謝罪した。

「もうええよ。わしも初陣で舞い上がっとったんや。

いじめたかったわけやない。それはわかってくれ。」

「ああ。理解した。あと、チャーリー。ミック。元気で。」

「エイミーずっと待ってる。」と

操縦士ミックは後ろを向かず手を上げ親指を立てる。

「君は我々の命を救った英雄さ。君の無事の帰りを信じて待ってる。」と

操縦士チャーリーは後ろを振り返りエイミーに敬礼した。

甘根はエイミーをひょいっとお姫様だっこした。

「あら。この歳で若い男にこんなことしてもらえるなんてね。

わたしの仲間の命を助けてくれて本当にありがとう。」と

エイミーは甘根に言った。

甘根は照れくさそうに優しく笑うと

「ふん。セクハラとか言わんとってや。こうしな運べんやろ。

俺はエイミー姉ちゃんの事が大嫌いやけれど

男は普通はほっとかへんくらいのべっぴんやとは思うで。

ほな行くで。なぁ、ボビーのあんちゃん、扉を開けて~や。」

「オーケー。エイミーのことはあんたに頼んだぜ。」

「おい!そんなん敵のわしに頼まんとって~や。

あんたらが強くなってエイミーを取り返しに来たらええだけやろ。

男やったらこんな胸糞悪い初陣をわしにさせた責任を重く感じてや。」

「ああ。ボーイが初陣だとは驚きだ。

次にあんたにあったら時はもう少しマシになっておくぜ。」

甘根はニヤっとボビーに笑みを返すと扉から飛び出した。

甘根の背中から大きな紅蓮の翼を広げて西に向かって飛んで行った。

「オーマイガッ!本当に空を飛んだ。

あのイカれたボーイは結局は一体何者だったんだ。」

ボビーは扉を閉めながら疑問が膨らんできてモヤモヤした。

カレンは扉を閉めたボビーに寄りそうと

「あたしは悔しいよ。

こんな思いはまっぴらだ。絶対に強くなってみせる。」と自分自身に誓った。

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