対策会議(後編)
ユンディー教団の軍艦ルクセンビュリュック号から発進した輸送ヘリが
フェンティーア連合国艦隊に近づく。
謎の飛行隊がフェンティーア連合国艦隊に
近づいているかもしれないという周三からの伝言を
グリフォンから報告を受けたロアンは
艦内の諸将を集めて対策を話し合う。
ディアナ、ロアン、コーラント、ミュアン、甘根が話し合っていたが
中村太郎が途中参加してきた。
司令室の椅子に中村太郎が座った。
ロアンは今までの話し合いの内容を中村に説明した。
中村は特に動揺した様子もなくロアンの話を黙って聞いていた。
中村は会議の内容を聞き終えると口を開いた。
「なんていうかなぁ。
とりあえず、皆は何でたった1機の飛行機に何を恐れてるん?
この軍艦を1機で沈めれる兵器が敵にあるの?
この軍艦の軍人を少数で制圧する技量が敵にあるの?
闇黒天って不死身っていうけれどほんまに死ない?
そんなわけない。絶対に死ぬ。死なない人間なんておらん。
死なないっていうのは0から1を作れる存在や。
それは神もしくは半神ってことになる。
非科学を否定しているその教団が神モドキを作れるんかな?」
ロアンが口を開く。
「たしかにそうですがシュウがカエデという暗黒騎士と話した時に
暗黒騎士は闇黒天という半神なれると言っていたそうです。
矛盾だらけの教団ですのでユンディーの力を顕現させる方法も
開発されたとも考えられませんか?」
中村は首を振って口を開いた。
「いやいや。ロアンさんそれはないない。
そもそもユンディーがなにかがわからん。
この第三大陸の管理をしているのは第一大陸やで。
だから天使を信仰する聖天主教団が正しいんや。
人類に対して自由に生殺与奪ができる絶対なる存在である天使に
少しでも人権を尊重してもらえるようにと
聖天主教団は天使と必死で仲良くしてきたんやろ。
戦争なんて愚かな行為ではなく
尊い善行を積み重ねる事で人間が善であると天使にアピールして
第三大陸に人権と自由を手に入れたんやで。
ユンディー教団の奴らはこの世界を捨てて
どっかに行ってしまったユンディーという存在に何を期待しとるんや?
現実逃避もええとこや。腹が立ってくるわ。
ユンディー教団が神の力を顕現なんて出来るわけがない。
できるとすれば第一大陸にユンディーが降臨して神となった時だけや。
この第三大陸を管理しているのはあくまで第一大陸なんや。
自称神がどうこうできるわけがないやろ。
ユンディー教団め!あんまり調子乗っとったら
ユンディー教団は第一大陸に邪教として認定されて
『聖なる鐘』を発動されてまうで。」
甘根が不機嫌な中村に面白げに口を開いた。
「ホリーベルってなんやねん?強いんけ?」
中村は甘根の質問に答えるべく口を開いた。
「うん。強い。この第三大陸の全ては第一大陸が管理してる。
人間が天使に管理されていると感じるとストレスを感じるっていうから
人間への行動に対する管理はかなり緩い。
緩いというか、もう無関心と言っていいくらいや。
それも聖天主教団が長い年月かけて天使との信頼関係を築いたからや。
そやけれど第一大陸に対する脅威が
人間から発生したと判断された場合に
天界から鐘の音が鳴って天界が緊急会議を開く。
次の鐘が鳴った時は会議終了の合図や。
第三大陸の危険人物が全て人間籍を抹消される。
その後の事は甘根の方が詳しいんちゃうか。」
甘根は笑みを浮かべて口を開いた。
「わかった。人間ではなくなった存在たちは
魔界から悪魔籍が与えられるってわけや。
わしんとこの戦力が増強されていいやん。
そんな鐘やったらどんどん鐘鳴らしてや。」
中村はぶすっとした顔で口を開く。
「人道的に頻繁には鳴らさんわ!天使やねんからな!
ディアナ司令官代行。艦隊上空の防衛は僕ら天使隊がするわ。
もしも攻撃してきたら捕縛して天界の審判にかけてやる。
天使に歯向かうような奴らは第二大陸の虫けらに転生させたる。」
ディアナ、コーラント、ミュアン、ロアンは沈黙していた。
天界と魔界は仲が悪い訳ではなくシステムとして繋がっている。
人間は知らない約束事が天界と魔界で交わされているのだろう。
ディアナは口を開いた。
「では、コウジ王子には飛行体への哨戒に出て頂きます。
タロウ大天使には上空から艦隊護衛をお願いします。
各艦は警戒態勢のままで航行するように。
シュウがいないので祝勝会は延期としましょう。
これにて会議を終了します。
あとは各位で話し合い行動してください。
わたしは司令室にて待機しますので連絡はこちらにて受け付けます。」
甘根は嬉しそうに口を開いた。
「姫さん。ありがとな。これがわしの真の初陣やで。ほんまに嬉しいわ。」
中村が口を開いた。
「甘根。無益な殺生はくれぐれもすんなよ。」
「なんやねん。わかったわ。でも、有益な殺生はすんで。」
「有益な殺生ってなんや。まぁええわ。
命がけの戦場やから殺生せなあかん場面もあるやろ。強制はせん。
ディアナ司令官代行。僕が空に出るからには
この艦隊への敵の侵入などさせませんから。
ここにいる他の皆さんも安心していてくれてかまいませんよ。」
中村の言葉を聞いてディアナは立ち上がると
「お二人とも頼りにしています。
どうかご武運をお祈りしております。」と中村と甘根に言った。
コーラントは立ち上がり中村と甘根に敬礼して
「ご武運を。」と一言言った。
ミュアンは立ち上がると
「王子の雄姿を直に見れないのが残念です。王子ファイトっす。
天使様たちの護衛ならうちの腰の剣の出番はなさそうですね。
うちはお二人を信頼してただただ待ってます。」と言って敬礼した。
ロアンも立ち上がると
「すごいですね。攻めに魔族の王子と守りに大天使とはなんと贅沢な布陣。
わたしもグリフォンで出撃したくなりましたよ。」と微笑んだ。
「それは困るわ!手柄を独り占めさせて!お願い!」と
ロアンに甘根は手を合わせて懇願した。
「大丈夫です。わたしは艦で吉報をお待ちしております。」と
ロアンは笑顔で甘根に言った。
中村は司令官室を出ると軍艦フェンティーアを出て補給艦に戻り
すぐに天使隊を各隊に分けて艦隊上空に配備した。
中村自身は10名の小隊で軍艦フェンティーア上空に陣取った。
甘根は司令室を出て軍艦フェンティーアから
自分の艦隊に戻ると配下の将に事情を説明して
自分の艦隊はシエルに後を任せた。
甘根は自分の艦から飛び出すと軍艦フェンティーアの上空に出た。
「ほな行ってくるわ。後ろは任せたで。」と甘根は中村に言った。
「おお。頑張ってな。もし敵を発見しても
すぐに殺したりせずに相手の事情とか聞いてやれよ。」
「うるさい!わかっとるわ!殺人鬼扱いすんな!」
そう言い返して甘根は紅蓮の翼をはためかせて、さらに上空に舞い上がった。
甘根の体は大きな紅蓮の炎の包まれて炎が四散して姿を消した。
その様子を見て中村は唖然として口を開いたまま周囲を見渡した。
「何?あいつって何?瞬間移動とか出来る能力者なのか?」と
一瞬で姿を消した甘根に対して中村は驚いた様子を見せた。




