輸送ヘリコプター
闇黒天エイミーは3名の闇黒天を選抜して
輸送ヘリコプターに乗り込み軍艦ルクセンビュリュック号から発進した。
目標はフェンティーア都市国家連合国艦隊。
目的はアルブルド帝国第三皇女ディアナの暗殺であった。
フェンティーア都市国家の
西の海域へ向かうユンディー教団の輸送ヘリ内部に
前後向かい合わせに戦闘服を着た4名の男女が座っている。
若い赤毛の女性がダルそうな表情で
この小隊の隊長であるエイミーに向かって口を開いた。
「なぁ姉御。なんでわざわざ連合軍と戦うんだよ。
もう西の悪魔水軍は逃げちまったんだろ。
臆病なブラッドフォードは海賊艦隊を撤退させちまうしさ。
勇者が怖いのはわかるけど消極的過ぎるだろ。」
「ま、勇者が怖いっていうのは普通の反応だろうね。
わたしだって怖くないって言えば噓になる。
お前らもしも勇者と対峙したら絶対に撤退すんだよ。わかったね。」
エイミーは全員に向かってそう注意した。
大柄な男性がリラックスした雰囲気で
「エイミーさんよぉ。勇者が留守の艦隊を
狙ってわざわざ勇者を刺激する事ないんじゃないか?
今回はフェンティーア都市国家を
侵攻する為の挟み撃ちって話だったんだし
勇者なんていうおとぎ話の存在が敵勢力の総大将になって現れたんでは
カンベインの呪いの発動条件が増えすぎてリスキーだぜ。
俺は呪いという名の地雷を踏んで豚にはなりたくない。
だって、人間に生んでくれたお父さんとお母さんに申し訳ないだろう。」
向かいに座っていた長身の男性が笑った。
「ふははははは!闇黒天になったお前がそれを言うのか。
闇黒天になった時点で人間を辞めてしまったではないか。
カンベインの呪いなどお前は受ける資格自体が無い。
いつまでも人間気分に浸っていたいということか。」
エイミーはウンザリした顔をしながら
「あんたらはプロの傭兵なんだろ。
今回、戦闘行為がなけりゃ教団からはノーギャラなんだ。
闇黒天としての教団から評価も受けられない。
お前らは旅行でこんなとこまで来たんじゃないだろ。
こじつけの方便とはいえ帝国の姫様の暗殺依頼を
貴族様にせっかく出してもらったんだ。
姫様暗殺のギャラだってバッチリと出るんだからさ。
仕事の内容はどうあれ稼ぐのが傭兵ってもんだろう。」
「姉御。今回は傭兵じゃなく殺し屋だろ。」と赤毛の女性が言った。
「人殺しって意味では同じだがな。」と大柄の男性が言った。
「カレン。ボビー。2人ともそういう下品な言い方はやめて。
わたしたちは聖なる神の騎士なのだから。」
長身の男が肩を震わして笑いをこらえている。
エイミーは隣に座る長身の男の肩を不機嫌そうに手で押した。
「隊長さん。そう怒るな。いつから神の騎士は
人殺しを商売にしてしまったんだろうな。
教団は信徒は見返りを求めずに奉仕しろって強要してくるから
下っ端である暗黒騎士には給料が出ない。
その代り給料が出ないから奉仕を断る自由がある。
任務よりバイトを優先してもいい。
任務に失敗しても教団に怒られもしない。
だが闇黒天は貴重だから成功報酬に多額のギャラがでる。
信徒としての地位が上がったら信仰心ではなく金で奉仕する。
なんとも皮肉だなぁと思って笑いが込み上げてきたんだ。」
エイミーは笑みを浮かべてから口を開いた。
「フフ。たしかにジャックの言う通りだ。わたしらは信仰心で
闇黒天になれたわけじゃない。戦場で結果を残してなれたんだ。」
ボビーは困った顔をして口を開いた。
「俺は敬虔なる信者だぜ。だがな。
ノーギャラで命をかけて戦えって言う方が頭がおかしいと俺は思うぜ。
神は金がなくても生活できる世界をお作りにはならなかった。
神が金が必要な世界を作ったんだから金をもらう事は尊いさ。」
「姉御。そのお姫さんって強いのかい?
弱い者を殺すのはあたしの流儀じゃねぇな。」
「ん。確か強いはずさ。世界一強い剣術家って肩書をしょってるって話さ。
でも、所詮は人間の中ではだけれどね。」とエイミーは説明した。
「隊長。もしも、フェンティーア連合国艦隊自体に打撃を与えたら
教団からギャラは出るのか?」とジャックがエイミーに訊ねた。
「もちろんさ。」とエイミーが答えた。
「姉御。作戦はどうすんだよ?」
「作戦かい?敵艦隊はどうやら今夜、祝勝会を開くって
勇者が言っていたとさっきブラッドフォードから連絡があってね。
祝勝会があるなら多分、旗艦に諸将が集まっているだろう。
これを叩くつもりさ。どさくさに紛れて諸将の首まで取れたら
教皇様からの評価が上がって
ポイントがもらえるチャンスだから頑張れ。もちろんわたしも頑張る。
具体的には敵旗艦の上空で維持しながら輸送ヘリで飛び降りて
落下傘を開いて着地するつもりだが着地の瞬間に我々は
闇黒天だけが使える肉体量子化能力を使って甲板を
すり抜けて軍艦内部に侵入する。
例えるなら量子化とは肉体を霊体化して壁をすり抜けるような能力だが
敵の攻撃をかわすのにも有効な能力なんだし積極的に戦闘でも使ってくれ。
魔法や錬金術や召喚術などという神の奇跡を利用した技術を
暗黒剣によって無効化にするブラックマター粒子散布機能を継続的に使う。
暗黒剣を握ると暗黒剣からブラックマター粒子が発生するが
有効範囲が限られているので調子に乗って暗黒剣を敵に投げたりしないこと。
暗黒剣は最初は無料でもらえるが2本目からは有料なので
失くさないようにな。地味に痛い出費になるぞ。
我々は少数なので固まって行動する。勝手な行動をして迷子になるな。
暗黒騎士は個人活動が多いから協調性が無い者が多い。
そんなんで戦場で結果を出した稀有な暗黒騎士が闇黒天になる。
天才的な才能が無いとなかなか1匹狼が戦功をあげれないのはわかるが
今回は勇者が帰ってきたら撤退するので個々がバラバラの場所にいると
輸送ヘリで一斉に皆を回収する事ができなくなる。
燃料次第では置いてけぼりくらう奴が出るぞ。
ヘリには燃料があまりないので我々が着地したら
輸送ヘリは我々を追ってきている旗艦に一旦帰艦させて燃料補給を行う。
やむおえず作戦をすぐ中止せざるおえない状況になった場合は
海上に退避して海上にて輸送ヘリの到着を待たなければならない。
作戦について質問があれば答えるが質問はあるか?」
「隊長。ギャラは姫を殺した人だけがもらえるのですか?」
「いや。全員で平等に折半する。
仲間うちで姫の争奪戦になったら目もあてられないからな。」
「了解。折半でいい。」
「姉御。最初から覚醒状態にするの?」
「するわけないだろ!
闇黒天の奥の手である身体の覚醒状態には時間制限があるから
ここぞという時に各自の判断に任せる。」
「はいよ。無駄に覚醒しないようにすっわ。」
「エイミー。全員でインカムはつけていくか?」
「インカムはつけない。もしも海に飛び込んだら壊れるからね。
備品は壊すと買い取りだからね。ギャラが減るよ。
だから皆はお互い目視できる範囲内で行動するように。」
「仲良くお手手繋いでってか。まぁいいぜ。」
「では、パラシュートを着用して待機だ。
パラシュートも自費なのでパラシュートを使わないならそれでもいいぞ。」
「姉御。ブラッドフォードが火器を使うなって言ったのって
銃の弾丸の経費がかかるからじゃないだろうな?
ヘリの燃料も負担させられるとかだったらもう笑えないぞ。」
「大丈夫だ。ヘリの燃料代はわたしが持つ。
わたしが言い出した事だからね。それくらいは払う。」
「エイミー。燃料代ってバカにならねぇぞ。
ブラッドフォードに泣きついて経費で落としてもらったらどうだ。
宗教関係者の俺がいうのもなんだが慈善事業じゃねぇんだからよ。」
「いいんだよ。あいつに迷惑かけたくないからね。」
「姉御。ブラッドフォードに惚れてんのか?」
「なんでそういう話になるんだよ。そんなんじゃないよ。」
「隊長。俺というものがありながら。」
「どういうものだよ。お前とは一緒に食事した事もないだろ。」
「まったく。エイミーは男に苦労させられるタイプだな。
男に上手に甘えられる女になった方がいいぜ。
エイミーはいい女だが惚れた男に利用されやすいタイプだな。」
「ボビー。あんたも結婚に失敗してんのに何を偉そうに言ってんだい。」
輸送ヘリはフェンティーア連合国艦隊を目視できるくらいにまで迫っていた。




