表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
90/118

通信

 周三はユンディー教団の聖職者ブラッドフォードに

フェンティーア都市国家の入国を許すが

フェンティーア都市国家の北東に位置する帝国軍軍港に

停泊する事を条件とする。

ブラッドフォードは周三の条件を承諾する。

周三は周囲海域に武装勢力がいないかどうかを

偵察するためにグリフォンに騎乗し東の空に飛んだ。


 周三が飛び立った旗艦ルクセンビュリュック号。

ブラッドフォードは第一艦橋に戻ると艦長席でヘッドフォンをつける。

ブラッドフォードはヘッドフォンのマイクに話しかける。

「おい。エイミー。聞こえるか。ブラッドフォードだ。」

そのヘッドフォンから妙齢な女性の声がした。

「ハーイ。ブラッド。勇者様はまだいるのかい?」

「いや、先ほど偵察するために東の海域に向かった。」

「フーン。それで撤退する海賊艦隊は大丈夫なの?」

「大丈夫だ。勇者は海賊艦隊は東に撤退するなら見逃してくれるそうだ。」

「あら。甘ちゃんだねぇ。勇者様はお優しいんだね。」

「ふむ。確かに俺が抱いてた印象とは違ったな。

だが、あの勇者は甘くも優しくもない。」

「そうなのかい?」

「ああ。こちらの出方次第では第三大陸からユンディー教団を排除するだろう。」

「どういうことだい。どんな男だったんだい?」

「ただの子供だった。話をしていても甥っ子と話しているような気分になる。」

「へぇ~。幼いのかい?」

「うむ。年齢も若く幼いが、しかし、全て計算ずくで話をしてくる。

話の的が外れきらない末恐ろしい。

頭は回るのに、たった一人で海賊艦隊と対峙する為にここに来たそうだ。」

「いいねぇ。勇気なのか。無謀なのか。それとも愚かなのか。

実力があるのかはわからないがそういう男はわたしは好きだよ。」

「実力もあり政治力もあるのだろう。俺はそう感じた。

勇者は我が艦隊のフェンティーア都市国家に入国を許すそうだ。」

「ほう。どういう意図があっての事なんだろね。」

「おそらくは我が艦隊の動きを止めて監視するためだろう。

フェンティーア都市国家内の帝国軍港に停泊するように条件を出された。

もし、艦隊を反転して東に向かえば追うと脅された。」

「ふーん。で、勇者は相当に強そうなのかい?」

「わからぬ。しかし、勇者だ。

500年前で今はおとぎ話の主人公のような存在である勇者という称号だが

この広大な第三大陸だけではなく全大陸を事実上制圧した男の称号だ。

実際にいまだにカンベインの呪いに怯えて海賊は迷わず撤退している。

敵の懐に一人で飛び込んでいるのに警戒心も恐怖心も無かったように思う。

勇者はとても気さくに楽しそうに話す。

敵対せねばいい友人になれるだろうな。」

「っふふふ。ブラッドは勇者を気に入ったのかい?あははは。

で、このまま勇者の指示通りに行動するのかい?」

「そうだな。帝国軍港には行かねばならぬが西に寄り道をする。

お前のヘリの燃料はギリギリだろう。敵に鹵獲されても困る。

行けるところまで西に向かってお前たちを回収したのちに軍港に入る。」

「わたしらに、帰ってこい。とは言わないんだね。」

「もはや、作戦目的の達成が不可能な今。

お前たちがポイントを稼ぐ機会はこの戦いでありはしない。

せめて、悔いが無いよう最後のあがきはくらいはしてきてくれたまえ。」

「最後のあがきが大戦果になるって事もあるかもしれないじゃない。」

「そうだな。そんな期待はしたいがそこまで楽観もできない。」

「どうして?」

「勇者は自軍の放り出して単独で自由行動をしている。

敵軍には相当な手練れがいる可能性が高いと思わないか。

帝国軍は強いがお前の敵ではないだろう。

だが、カエデの情報では第二大陸と第五大陸の軍隊が合流しているそうだ。

どちらも実力は未知数だが人間ではないだけに戦闘力は予想もつかん。」

「第二大陸の悪魔の軍隊と第五大陸の神族に綱らる戦士達か。

悪魔とはやれそうだが第五大陸はまったく未知の存在だね。

わたしらは生きて帰れないかな。それでも大将の首は道連れにして

ユンディーから闇黒天将に選ばれるべく評価を上げたい。

それだけが唯一の闇黒天の生き様だからね。」

「俺はエイミー以下、優秀な闇黒天達をここで失いたくはない。

勇者にユンディー教団の軍事行動を認知されるのもまずい。

敵軍とはヘリや火器の使用はしないでほしい。」

「マジ!?あたしらに丸腰で戦えなんて無茶ぶりしてくんの?

あんた鬼畜だねぇ。それは指揮官としての命令かい?」

「、、、命令と取ってくれてかまわない。

もしも勇者と対峙したら迷わずに逃げろ。わかったな。」

「了解。制限が多いねぇ。このままじゃ捕虜にもなれないね。

わたしらの中から敵に捕縛されるケースも想定しておく必要があるね。」

「捕まりそうな雰囲気ならさっさと逃げてこい。

とはいえ布石も必要ではあるか。

フェンティーア連合艦隊の帝国軍責任者は

おそらくフェンティーア駐留軍責任者である皇女ディアナだ。

あの皇女は幸か不幸か剣術の天才らしい。

ディアナは剣帝ゲルグの正統血統。

そして剣術の天才でありアルブルド剣術の後継者でもある。

ディアナの兄で皇帝の嫡男であるリチャード王子よりも

ディアナを女帝に即位させたいと画策する勢力があるそうだ。

それゆえに権力闘争から遠ざけるために

皇帝は皇女ディアナを帝国から遠ざけたとの噂がある。

では、これを利用して、教団信徒の貴族に教団に

ディアナ暗殺の依頼を出して頂けるように根回ししよう。

それでもしも捕虜になってもお前らの名目も立つだろ。」

「へぇ~。わたしらは皇女様の暗殺部隊か。

うん。そうだねぇ。そこらが落としどころか。

チンケな暗殺者らしく剣とナイフで暴れてくるさ。」

「無理はするなよ。」

「ああ。わたしも結婚もせずに死にたくはないからね。」

「そうか。前に一度結婚に失敗して懲りたんじゃなかったか。」

「ムカつく物言いだねぇ。女心は単純じゃないのさ。

ブラッドはわたしらの武運を祈って待っててくれればいい。」

「なんとか生きて帰れよ。」

「了解したよ。根回しは頼んだよ。交信終了!」


 ブラッドフォードは通信士に向かって

「モアルテスター大聖堂に通信を繋いで

マルク枢機卿に通信に出てもらえるように伝えろ。」

通信士がブラッドフォードの指示に従い交信を始める。

「つながりました。」と通信士がブラッドフォードに伝えた。

「こっちに回線を回せ。」と通信士に指示すると

ヘッドフォンから若い男性の声が聞こえた。

「ブラッドフォード卿。いきなりどうしたんだい?」

「すみません。マルク枢機卿にご依頼したい事がございます。」

「そうか卿からの頼みなら断れまい。言ってくれたまえ。」

「ありがたき幸せ。まずは、現在の状況から説明せねばなりません。」

ブラッドフォードはマルクに現在の状況を簡潔に説明した。

「ほう。勇者が現れたか。面白い。僕も会いたいものだ。

海賊艦隊を僕に無断で帰還させたのは軽率な気がするね。

卿の判断も間違いとは言えない。

しかし、この作戦は真祖公の意思。

どれだけ損害が出ようともフェンティーア都市国家に突撃をするべきでした。

フェンティーア都市国家が経済の中心になる時代を終わらせるのです。

第三大陸に平等な市場経済を構築せねばなりません。

たとえ新しい勇者に海賊艦隊が

全滅させられようともかまわないではないですか。

フェンティーア都市国家に物理的打撃を与えるために努力するのです。

カンベインの呪いの発生源とされるフェンティーア都市国家の国土の全てを

この世から消滅させてやりたい。どんな犠牲が出ようともです。

カンベインへの敵意ではありません。呪いがにくいのです。

一応、呪い対策にいま言い訳しておきます。保険です。

甚大な被害を受けようとも第三大陸の正常化のためには

必要な犠牲なのですからね。

保身や守りに入って行動をしていては

時間ばかりが過ぎて何も進まんと卿は肝に銘じて精進してくれたまえ。」

「はは!肝に銘じます。」

「うむ。わかってくれたらいいんだ。卿には期待している。

今回の事は君だけのせいではない。影の国の敗走がおもな原因だ。

悪魔は撤退しないと思っていたのだが全軍が撤退とは根性無しどもめ。

悪魔軍に送り込んだカエデは任務が失敗しても気にもしていない。

まことにまことに嘆かわしい。

だからカエデはいつまでたっても

レギュラーでシフトを入れているという警備員のバイトで

正社員になれないのだ!

バイト歴が長いのに正社員になれないというのは責任感がない証拠です。

まぁ、愚痴はよしましょう。

皇女ディアナへの暗殺依頼の件はすぐに手配しよう。

それにしてもエイミー隊長はいいですね。

卿と違って肉を食いちぎられて骨になろうとも

敵に向かっていくような闘志。さすが闇黒天になられるほどの方だ。

勇者に対抗できるという伝説の闇黒天将あんこくてんしょう

なられるのはエイミー・アンソン殿かもしれませんね。」

「はは!」

「第三大陸の癌であるアルブルド帝国の皇女ディアナの首は

新しい時代の幕開けの狼煙にふさわしいです。

エイミーの朗報を期待しましょう。では、報告をお待ちしています。

そうだ。フェンティーア都市国家に滞在するなら

所属教会を回ってください。

信徒から集めたお布施をキチンと教団に全額納めるように指導をよろしく頼みます。

あと僕へのお土産はフェンティーア名物フィオッキ菓子店の焼き菓子を希望します。」

「人気の菓子詰め合わせセットでよろしいですね。購入しておきます。」

「そちらも楽しみにしています。では交信を終了する。」

ブラッドフォードはヘッドフォンを外すとグッタリと背もたれに体重をあずけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ