表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
9/118

午前のティータイム

 帝国第三皇女ディアナと会った翌日。


フェンティーアに来て2日目の朝。


ハウルとリアと周三はカノレル雑貨店の


奥の間のテーブルで朝食を済ませた。


午前中にリアとお買い物に出かけた。



 「リアさん。


今日も天気が良くてよかったですね。


ここがヴィノサラ市場ってところなんですね。」



 「そうよ。この近辺の住民はここに買いに来るわ。


食材の品揃えが豊富で


しかも値段も御手頃だからとても便利な市場ね。」


買い物客がいっぱいいて



 「すげぇ活気があって賑やかですねぇ。」


ヴィノサラ市場は


色とりどりな屋根の屋台が沢山あり


色々な食材だけでなく生活用品や珍しい品まで


売っている商品の幅は広い。


「歩いて見てまわるだけでも結構楽しめますね。」


周三は観光気分を楽しんでいた。



 カノレル雑貨店から20分ほど南に歩いた距離に


ヴィノサラという地域ある。


海に面していて船からの輸送が盛んで物流が多い。



 「うふふ。そうね。ヴィノサラ市場は


新鮮な食材が豊富な種類で揃ってるし


値段も手頃だから遠くからも買いにくる人も多いのよ。


観光客も多いわね。」



 リアは屋台で食材を手にとって品定めをしながら


献立を色々と考えてる様子だった。



 魚や果物やお肉や野菜や調味料を


購入すると結構な大荷物になった。


周三は紙袋をいくつか抱えている。


「買い物って結構大変ですね。


俺が食べ盛りなばっかりにすいません。


また荷物持ちで買い物をご一緒させてください。


下宿させてもらってる身で


お手伝いしないのは俺の気持ちが許さないです。」



 「ありがとう。気を使ってくれるなんてうれしいわ。


今度ぜひお願いするわね。」



 「ええ!まかせてください!」と周三は胸を張った。



 昨日、ディアナを送って帰ってきた周三は


夕食に出されたシチューやピザや


肉料理やサラダなどのリアの手料理を


沢山おかわりして食べた。


リアの料理はかなりおいしい。


周三はついつい食べ過ぎた。


そのせいで食材が無くなるという事が


これから起こるかもしれない。


(高齢者に買い物でこんな重労働させるのは


勇者として恥ずかしいことだ。)


周三はそう思い買い物の手伝いを


頑張ろうと胸に誓った。



 周三はリアと共に荷物を置くために


カノレル雑貨店に一度戻った。


購入した荷物を台所に置いてから


カノレル雑貨店の通り沿いにあるモナセ商店街を訪れた。


 

 「洗濯もしないといけないのに


着替えが無いのはすごく困ります。」


周三はリアにぼやいた。



 周三はこの世界に来てまだ2日目だから


耐えれているがもうそろそろ限界を感じていた。



 「ここのお店の肌着は


すごく肌触りがよくて評判なのよ。」



「ほう。ではたくさん買ってきます。」


周三は意気揚々と青い建物の紳士服のお店に入る。


紳士服店の店内は下着や肌着が


壁際のワゴンに豊富に陳列されていた。


周三は陳列されている男性物の下着を


親指と人差し指でつまむと


指先を使ってこすり合わせ肌触りをじっくり確かめた。


「うん。肌触りはこっちの生地の方がなめらかやな。」


パンツのサイズも腰の辺りに商品を合わせて確かめた。


「うむ。お股がピシって


引き締まる感じがしそうなのは、こっちのサイズかな。」


周三は神経質なまでのチェックをして気に入った下着を選ぶ。


同じ種類のものを上下20枚も購入し靴下も20枚購入した。


店に飾ってある服の中から


気に入ったズボンとジャケットとシャツを購入した。


「これでもう安心だ。


この世界に着てきた学制服も


元の世界に帰った時にボロボロになってたら


しゃれにならん。


次の日に学校やから誤魔化しきれへんからなぁ。」


周三は心からホッとした気持ちになった。


買い物を終えて


青い建物の紳士服店から出た周三は


リアの姿を目で探した。


他のお店の前でリアさんが知人らしき婦人と


立ち話としている。


元の世界でも普通にある主婦同士の見慣れた光景だ。



 周三がリアに声をかける。



 「あらもう買い物は終ったの?早いわね。」


リアが驚く表情をした。



 「ええ、俺は気に入ったものがあると


同じ種類を複数買います。だから迷いが無いです。」



 「っふふふふ。


即断即決なんて、うらやましいわ。


わたしは買い物していると、


ついつい色々と


目移りして迷ってしまうのよ。」



 「いや、リアさんその気持ちはわかります。


俺も趣味に関わるモノを買う時は


迷いに迷って、迷い過ぎて買えないとかあります。」



 「うふふ。わたしも迷う商品があったとき


買いたいけれど、後悔しないか不安になって


今回は、家に帰ってもう一度冷静に考えて決めてから


明日、買おうって思うことよくありますよ。」



 「それは俺も趣味に関する買い物ではよくあります。


俺の世界ではテレビゲームっていう玩具があって


新品で買うか、もう少し待って、中古で安く買うかとか。」



 「テレビゲームっていう玩具って。


どんな感じの玩具なのかしら。」



 「ここの世界を疑似体験できるような感じの


物語を楽しむ玩具です。」



 「なるほどねぇ。ではシュウはこの世界を


楽しめるって事なのかしら。」



 「すでに楽しいですよ。


えっと、あと歯ブラシとか買ったら


とりあえずこの世界で生活していけそうです。」



 「そうなのね。


それじゃ、あのお店に売ってるから行きましょうか。」


リアは知人らしきご婦人に別れの挨拶をして


黄色の壁のお店を指差した。






 生活用品を一通り買い物を済ませた周三は


カノレル雑貨店の自分の部屋に戻って荷物を置いた。


紳士服店で買った新品の洋服に着替えてから


徒歩15分ほどの距離にある教会に向かう。


教会に到着して中に入ると


神父さんらしき人がいたので


「天使の中村太郎くんはいますか?」


と周三が訊ねた。



 「天使カロウですか?」と神父に問い返された。



 「はい。カロウです。


田中が来たといえばわかります。」と答えた。



 神父は教会の奥にある小さな扉に入る。


しばらくするとその小さな扉から中村が出てきた。



 「おはようさん。田中よう来たな。」


中村は周三に笑顔を向け陽気に挨拶した。



 「おはよう。昨日はありがとうな。」



 「おう、気にせんといて上からの指示でもあるしな。」



 「それでも感謝やわ。


あ、さっきな中村を呼びに行ってくれた神父さんやけど


タロウのタをカと間違えてはったで。」


「ええやないか。


名前くらいなんぼでも間違わせといたらええ。」


中村はぜんぜん気にしていない様子で応えた。



 「でも天使カロウって言われたら


なんか仕事の疲れが出てる天使みたいやん。」



 「いやいや、そうやないで。


田中は大事な事を忘れとる。


みんなが使ってるのは日本語ちゃうねん。


田中は日本語を使ってるから違和感を感じるやろけど


周りの人間は『カロウ』イコール『過労』やないねん。


だから気にせんとき。」



 「ああ、そうか。


そう言われたらそうやな。」


周三はテヘっという顔をした。



 周三と中村は教会を出ると


どこかでお茶をしながらどこかで


お喋りしようという話になった。






 教会から5分ほど東に向かって歩いた所に


アルベルク広場という四角い大きな広場があり


広場の東側には大きな寺院と


寺院に向かって右側に大きな搭が立っている。


広場を囲むようにしてカフェテラスが立ち並ぶ。


フェンティーア都民の憩いの広場である。


中村がそれならこの広場がうってつけと周三を案内した。


この広場で二人はお茶する事にした。


周三と中村はカフェのテラスに座る。


シャツに黒い腰エプロンの爽やかな男性店員が


テーブルに注文を聞きに来た。


中村はコーヒーとアップルパイのセットを注文した。


周三はコーヒーとロールケーキを注文した。



 「中村、ここは俺におごらせてくれ。


めっちゃ世話になったからな。」



 「おお、悪いな。好意に甘えさせてもらうわ。」



 二人は広場の風景を眺める。


コーヒーの香りを楽しんで


スイーツの甘みを堪能してまったりした。



 「この街、マジで好きやわ。」


周三はしみじみ言った。


「たしかにここはええ街やな。


聞いた話によると


この街が大陸で一番美しくて豊かで平和らしいで。


そやから大陸全土から観光客が来るねんて。


田中はこの街から出ん方がええかもな。」



 「そやな、でも魔法学園都市で魔法を習いたいから


そこまでは遠出するかもしれんけどそこまでで俺は満足や。」



 「そうか。それなら、頑張りや。


僕は2日くらい前から都立図書館で


本借りて読んでんねんけどな。


これが第三大陸の地図やねん。」


中村は足元に置いていた肩下げカバンから薄い本を出した。



 「おお!すげぇ!ここは地図のどの辺になんの?」


「ここや。」と指で地図の大陸の一番西を指差した。


国境が線で区切られているので国の大きさもなんとなくわかる。



 「ちっちゃ!フェンティーアちっちゃすぎる。」



 「そやな。でも国の面積が経済規模や人口を


決めるわけじゃない。


国民の幸福度と国の面積は一致するとは


一概には言えんやろ。


この街は観光と海上貿易でかなり潤ってる。


大きな企業からの求人も多い。


そりゃ、貧富の差はあるけれど都民の不満は低い。


普通に働けば、普通に豊かに生活できる。


そういう意味でこの国はすごいな。


それに民主主義国家やからフェンティーアの


政治決定は都民の決定って意識が


かなり進んでる国やと思うわ。


元いた世界でも


民主主義という皮をかぶった独裁主義国は


普通に存在しているし


平和な国ばっかりとちゃうかったやろ。


そんな国に比べたら


ここは日本並みに平和で暮らしやすい地域やと思うで。」



 「ここに送られてきてホンマよかったわ。」


周三は満足げに応えた。



 「そやな。平和が一番や。


フェンティーアって北の海域のずっと向こうには


悪魔が住む第二大陸があるけど


フェンティーアからはかなり遠いし


比較的に近いのは東の海の向こうの


妖精族が住む第五大陸やけど


妖精は閉鎖的やから他国を侵略してはこんやろ。


だから何にも心配が無いと言えるやろな。」



 「ここでのんびり頑張っていくわ。」



 「そうしそうし。そうしたらええ。


ちなみになこの本を借りた訳は竜騎士がおるっていう


ハインベルト公国の位置を知るためやってんけどな。」



 「ああ、それは気になる気になる。」



 「そやろ。僕の構想としては


竜騎士のいるハインベルト公国に行ったなら


もしも竜騎士に僕らが飛竜に乗せてもらえて


飛行が出来ることが可能であれば


ハインベルト公国をハブ空港のような形で利用して


飛竜に乗ってどの国でも飛んでいけるという


構想を練っていてん。」



 「うわ!かしこ!中村かしこい!」



 「しかしや。ハインベルト公国の位置はここや。」


そう言って中村は第三大陸の東端の海に


浮かぶ縦に細長い島を指差した。



 「え?遠い!


遠すぎるわ。この大陸から


海をちょっとだけ越えてるやん!」



 「そやねん。


フェンティーアは第三大陸の西の端で


ハインベルト公国は大陸の東の端のそのまた向こうや。


ここからハインベルト公国に向かっても


着くまでに第三大陸の各国に


行けてしまうという事実。


交通機関として国内線での利用という計画に


使うには絶望的な位置やな。


だからこのプランはボツや。」



 「それは残念やなぁ。


大陸の中央くらいの位置やったら


まだ希望もあってんけどなぁ。


悔しいわぁ。」



 「僕も悔しい。


僕には翼があるけれど自分の翼で


世界中を飛び回るほどの体力はまだないからな。


ハインベルト公国がフェンティーアから


遠い事実を知った事とは別に


僕はより一層に悔しさを覚えさせた事実を


この本で発見してん。」と中村は苦い顔をした。



 「なになになに?気になるわ!」


周三は興味津々に訊ねた。



 「田中ってこの世界が球体やと思てるやろ。」



 「え?地球は丸いのは当たり前やん。」



 「それはあっちの世界の話や。


こっちの世界は違うようやねん。」



 「え?じゃぁ平べったかったりすんの?」



 「そう、その通りや。


その本の話ではどうやら世界は平べったくて


一人の大きなおっさんが裸で支えとるみたいやねん。」



 「マジで!!!!


世界支えるってそのおっさんすごすぎるやろ。」



 「うむ。すごい。


世界を支えてるなんて偉いおっさんやな。


この世界で最も偉大な縁の下の力持ちやわ。


この世界ではそのおっさんは


偉い人第一位を獲得してる男やと僕は評価しとる。


このページを見てみぃ。」と中村は本のページをめくった。


そのページには平らな世界を


持ち上げている巨人の絵が描かれていた。



 「うわ!


大きな裸のおっさんが平べったい世界を持ち上げてる!


しかもめっちゃ苦しそう!


海から滝みたい水が落ちてきてるやん。


こんなんおっさんが濡れて風邪ひくで。


これはかなり過酷な労働環境やな。」



 「そやろ。


休憩をまわしてくれるような交代の人もおらんかもしれん。


それどころか、24時間労働の可能性が高い。」



 「なんか、、、なんか俺、申し訳なくて涙が出そうやわ。」



 「田中、それは僕も同じ気持ちや。


だから感謝の気持ちをおっさんに


僕は、一言だけでも伝えたい。」



 「中村、この巨人さんをおっさん呼ばわりするのは失礼やで。


そんなに偉い人やのに悪いやろ。おっさんではなく紳士でええやろ。」



 「お、おう、うっかりやったわ。


この裸の紳士に伝えたかったんや。」



 「わかるわ。めっちゃわかる。


この偉大な紳士に会いに行くときは俺も一緒に行くからな。」



 「田中そのときは頼むわ。この紳士がもしも


うたた寝して膝がかっくんてなったら大地震になってまう。


紳士が労働環境に切れて、投げパイみたいに


この世界をどっかの星に投げて


世界がベチャ!ってなったらこの世界は終了のお知らせや。


それやのにこの世界の人間は当たり前やとおもてんねん。


それはとても悲しいことやで。


誰かの苦しみの上で甘えている。


そんな人間たちの業の深さを感じたわ。」



 「ええこと聞いた。俺も知らんかったら同罪やった。


もし飛竜に乗ることができたら一緒に世界の向こう側に行こうよ。」



 「おう。一緒に紳士に挨拶しにいこう。」と2人は固く誓った。


中村と田中の友情は、より深くなっていた。

素敵な日曜日をお過ごしください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ