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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
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対談

 周三はフェンティーア北東海域の偵察飛行中に

ユンディー教団の艦隊を発見し着艦する。

教団幹部関係者と思われるブラッドフォードという男性が

着艦した周三に近づくとフェンティーア都市国家に

用事があって使節として向かっている途中だという。

海賊艦隊は東に向かったという情報も周三に教えた。

周三は武装艦隊が国に入るのなら

何かしらの許可証があるのか?と訊くと

ブラッドフォードは許可証を艦内で見せたいという。

周三はその申し出を断ったが勇者にお茶をもてなさねば

我らの恥になると説得され周三は艦内に向かう事にした。


 ブラッドフォード以下4名に伴われて周三は艦橋の階段を上る。

「教団ってお金持ちなんですね。こんな立派な軍艦を6隻も

編成して海外に使節を送るなんて大国なみの経済力がないと

なかなかできる事ではないと思うなぁ。」と

周三は背の高いブラッドフォードを見上げながら言った。

「ははは。たしかに教団は経済力があるかもしれません。

おかげ様で信徒の皆さんの信仰心により教団は栄えております。」

「それって信者さんのお布施だけでこの経済力なんですか!?」

「いえ、それだけではございませんが教団の経済活動については

わたくしどもはあまり口外せぬようにしております。

あまりお金の話を聖職者が外部に言いふらすのは品性を疑われます。」

「それは、おっしゃる通りだと思います。」


 第二艦橋の扉を先行する兵士が開けると

全員が第二艦橋内に入った。

「機械が沢山置いてありますね。」と

周三が興味ありげに設置されている機械を見る。

第二艦橋内には望遠鏡と通信機器らしき装置と

大きなモニターが天井から吊るされていた。

だが乗組員の姿は見えない。

予備に使われる艦橋のようだった。

「この艦橋は普段は使っておりませんので

さぁ、こちらのテーブルにどうぞ。」

ブラッドフォードが自らテーブルの椅子を引いて

船の前方側の椅子に周三に着席するように促した。

向かい側にブラッドフォードが座ると

兵士2名が二人乗りほどの広さのエレベーターに

乗り込むと扉が閉まり下降した。

「すぐにフェンティーア都市国家への入国許可証をお見せいたします。

お茶と菓子も用意いたしますのでどうぞおくつろぎください。」

ブラッドフォードは柔らかな口調で言った。

残りの兵士2名もエレベーターに乗り込んでこの場を去った。

兵士を置く事で警戒していると思われるのは無粋だと

ブラッドフォードは考えたのだろう。

「この艦隊はどちらから来られたのですか?」と周三は訊ねた。

「八大公国のひとつ、グランデン公国からです。

ここから遥か東に位置する大国です。」

「へぇ~。そうなんですか。俺はまだ地理に詳しくないので

よくわからないですがいつか旅をして色々な国を見てまわりたいです。」

「グランデン公国にお越しの際はわたくしがご案内いたしましょう。」

「ありがとうございます。グランデン公国は美しい国ですか?」

「はい。首都は美しい建物が多く、人々も温和です。

わたしくはグランデン公国の西部の田舎の出身ですが

通っていた大学が首都にありましたので

首都の素敵なお店も何件かご紹介できます。

グランデンの風景はきっと勇者様もお気に召すと思います。」

「ブラッドフォードさんは黒のスーツがお似合いでお洒落ですよね。

かっこいいし、何だか、敷居の高い高級なお店じゃないんですか?

俺、一般庶民の出なのでそういうお店は緊張しちゃいますよ。」

「あははは。勇者様から庶民の出という言葉を聞くとは新鮮ですね。

カンベイン王もたしかフェンティーア都市国家の漁師の子息だったとか。

庶民から勇者は選ばれるのでしょうか。

いや、誤解しないでください。わたくしの家系も貴族ではありません。

ですからわたくしも庶民の出です。

学生時代は仕送りだけではなかなか厳しくて

激安な食堂も沢山知っております。」

「そうなんですか。親近感がわきます。

俺って公務員だし下宿先に居候させてもらう身なんですよ。

将来は独立して一人暮らしとかしたいのでお金貯めてるんです。」

「なんと。公務員。勇者様はフェンティーア都市国家の元首になる事も

それどころか、この第三大陸の皇帝にだってなれる存在ですのに

公務員の地位に甘んじておられるとは。本当に驚きました。」

「いやぁ。俺はこの世界でのんびり暮らせたらそれだけで幸せなんです。

お金もお給料はたぶん普通の公務員さんよりも高いと思います。

それで十分じゃないですか。戦争が無ければ仕事も無いですから。

でも、税金泥棒な生活がしたいとか言ってるわけじゃないですからね!」

「はははは。わかっておるます。」

兵士の一人がお茶と菓子をトレーに載せてエレベーターから降りてきた。

菓子と紅茶をテーブルに置くと兵士はエレベーターに乗り、その場を去った。

「なにぶん、長い航海ですので女性の給仕を乗せておりません。

兵士の手での給仕をお許しください。」とブラッドフォードは謝罪した。

「いや、女性に興味はありますけれどまだよくわからないんで。

過剰な期待とかしてませんでしたよ。本当ですよ。」

「その口調って期待していましたね。正直なお方だ。」

「いやぁ。まいったなぁ。正直言えば

女子が持ってきてくれたらいいなとは思ってました。

でも、聖職者の船に若い女子がいたら品位を疑われますよね。」

「そういうことです。若い女性が艦内にいると

兵の規律が損なわれて無駄にトラブルが発生する恐れがありますからね。」

「ブラッドフォードさんはご結婚は?」

「いえ、何かと忙しい身でしてなかなか出会いがなくまだ独り身です。」

「かっこいいんですからその気になればすぐ結婚できるでしょう。」

「褒めて頂けてうれしいですが本当に出会いがないのです。

兄弟は多いのですが全員が結婚し子供もいるので実家に兄弟が集まると

子供たちの世話を兄弟に押し付けられて大変ですよ。

しかし、子供は好きなので結婚は出会いがあればすぐにでもしたいです。」

「そうですかぁ。立ち入った事を聞いてしまってすみません。」

「いえいえ、お気になさらず。勇者様は恋人はおられるのですか?」

「あえて言うなら募集中ですね。

今度、学生になる予定なのでその時にでも見つけようかと。」

「ほう。学生になられるのですか。どちらの学校ですか?」

「まだ入学が決まっていないので。具体的には言えません。

でも、まだ俺は子供だし勉強も大切でしょ。」

「ごもっともです。勉学はとても大切ですね。

わたくしは勇者といえばカンベイン王の知識しかありませんでしたので

このような事を申しては失礼かもしれませんが

もっと好戦的で野心家な方なのかと思い込んでましたが

とても温和で平和的な方で驚きました。」

「俺をわかってもらえてうれしいです。

俺って平和を愛してますね。かなりの平和主義者なんですよ。」

「では、もしもの話ですが海賊艦隊がこの近くにいたら

全部沈められるおつもりでしたか?」

「いいえ。地元に帰ってもらえるように交渉するつもりで来ました。」

「おひとりでですか?なんとも。あはははは。」

「おかしいですか?」

「いえ、そのような形の勇気もあるのだな。と感心しました。

わたくしは貴方という勇者と出会えてうれしく思いました。」

兵士がエレベーターから降りてくると書面をブラッドフォードに手渡した。

「うむ。これです。フェンティーア都市国家への入国許可証です。」

ブラッドフォードは書面を周三に手渡す。

周三は文面は読み取れるがその書面が本物の入国許可証か判断できはしない。

「たしかに入国許可証ですね。」と周三は本物だと認めた。

「これでわたくしどもへのお疑いは晴れましたね。」

「はい。ですのでこの艦艇6隻は帝国軍港に停泊して頂きます。」

「それはどういう意味でしょうか?」

「いまフェンティーア都市国家は他国との戦争状態にあります。」

「なんと!それは知りませんでした。」

「つい最近の事なので無理もないです。

ぶっちゃけて言えば、フェンティーア都市国家を守る帝国軍が不在なのです。

本来ならそんな状態で武装艦隊を入国させるわけにはいきませんが

ブラッドフォードさんは聖職者でありますし

遠い国から来られて引き返すというのも不憫ですので許します。

勇者の許しを得たと言って頂ければ誰も疑わないと思う。

入国は許しますが艦隊で首都に侵入されるのは国民の不安を煽りますので

軍港にて停泊して頂いてそこから目的地に向かって頂きたいのです。

移動は公共の小型船舶が充実しております。

もしも不便とおっしゃるならわたしが船を手配してもかまいません。」

「いやいや。戦争とは物騒ですね。こちらも大変な時に武装艦隊で

押しかけて申し訳ありません。では、そのようにいたします。」

「こちらも無理なお願いをしてすみません。」

「いえいえそんな事はありません。感謝をしております。

わたくしどもを信用してくださりうれしく思います。

しかし、フェンティーア都市国家に危険はありませんか?

わたくしどもの安全も考えねばなりませんので。」

「もう敵はいません。もう戦争は終了しました。」

「戦争は終了したのですか。」

「終結したと信じたいだけかもしれないですが

もうフェンティーア都市国家を攻撃するだけの戦力が付近に

いない気がするんですよね。

もちろん、あとでこの辺を偵察しますけれど

一番怪しげな艦隊が敵では無いことがわかりましたからね。」

「やはりわたくしどもを疑ってはおられたのですね。無理もないですが。」

「ええ。でも、ユンディー教団と聞いた時からはこの武装艦隊が

フェンティーア都市国家を攻撃するなんて思っていませんでした。」

「はぁ。なぜでございますか?もしよろしければご教授ください。」

「もしも、この武装艦隊がフェンティーア都市国家を攻撃しても

戦略的目的がなければただのテロリストになってしまうでしょ。

悪魔や海賊がテロをするなら理解できますが教団はそれができないはず。」

「わたくしどもはテロができませんか。」

「できませんね。だって信者は一般人で普通の職業についています。

暗黒騎士だって教団からお給金が出ないから

アルバイトで生計を立てていると聞きました。

教団はお金持ちですがそれは教団がお金持ちというだけですよね。

教団は豊かな財源でこんな立派な軍艦を所有している。

教団は何かしらの経済活動をされているのだと思いました。

しかし、もし、テロリスト教団だと世界から位置づけされたら

お商売はしにくくなるし、教会は破壊されるし、信者は人々から差別される。

アルバイトは解雇されるでしょうし、商談は契約してもらえない。

そうなったら信者からのお布施は期待できないですよね。

教会を立てるのための物件も貸してもらえなくなるし

賃貸契約の更新もできなくなったしますよね。

もっとも怖いのは財産の凍結や没収されてしまうこと。

国際社会からそんな理不尽な扱いを受ける存在になってしまったら

教団の維持は難しくなるはずです。

だから教団は政治的な意味でも『傭兵』という位置付けで

軍事活動をしているのだと思いました。

あくまで憶測ですが当たらずともハズれていないのではないですか?」

「驚いた。勇者様の言う事は的は得ていると感じました。

しかし、もしも、的が外れてフェンティーア都市国家を

わたくしどもが攻撃したらどうなさいます?」

「それは教団が起こした事件ですので警察や帝国軍の仕事です。

俺の今回の仕事は西からの脅威に対する防衛軍の責任者です。

もし、そんな事になったなら俺は全力で阻止しますけれど

おそらくですがブラッドフォードさんはしないでしょ。」

「なぜわたしを勇者様はそう見ましたか?」

「えっと。ブラッドフォードさんが好戦的な猪武者なら

ここには海賊艦隊がひしめきあっていたかもしれませんからね。

しかし、実際には、ここには教団の艦隊しかいなかった。

海賊艦隊は東に逃げたのでは。とブラッドフォードさんは言いましたよね。

では、なぜ逃げたのでしょう?この艦隊に恐れをなしたのでしょうか。

俺はある人物からこの海域にものすごい数の海賊艦隊がいたと

情報を得てここに来ました。ものすごい数なのに海賊が逃げた。

そして、その艦隊を追おうとする俺を

ブラッドフォードさんはここに引き留めている。

逃がしたとも考えられますが逃がすというのは

何かしらの脅威が近づいてきているから逃げるのでしょう?

西から来る脅威って俺しかいないっぽいんですよねぇ。

フェンティーア都市国家が攻撃されない自信の一つは

カンベインの呪いです。

教団単独でフェンティーア都市国家を侵略するなんて

カンベインへの宣戦布告じゃないですか。

そうなったら教団関係者にどんな呪いが発動するかわかりません。

暗黒騎士は神の奇跡に対抗できるチカラはあると聞きましたけれど

カンベインの呪いに対抗できるチカラはあるのでしょうか?」

「参りましたね。カンベインの呪いを持ち出されると何も言えません。

その呪いを全世界の信者にばら撒くような行動は

聖職者としては本来ならばすべきではないでしょう。」

「そういう事で俺はユンディー教団を信じます。

信じる者は救われると今だけでも俺は信じます。

というわけで俺は自分の軍艦に帰りますね。今夜は祝勝会があるんです。

海賊の艦隊については東に向かったというのなら追いません。

ユンディー教団のこの艦隊は軍港に向かってください。

教団艦隊も東に向かうような事があれば俺は追わなければならなくなります。」

「それはわたくしどもへの疑いは解けたという事でよろしいのでしょうか?」

「はい。教団の皆さまを詮索いたしませんし取り調べもしません。

俺は平和主義者なので波風を立てずに解決したいんです。」

「そうですか。勇者様に信用して頂けたことに感謝します。

では、信用に報いるべくフェンティーア都市国家の

帝国軍軍港に向かいこの艦隊を停泊させましょう。」

「ご協力ありがとうございます。

ちなみにフェンティーア都市国家にある帝国軍軍港の場所はご存じですか?」

「それは、およその位置はわかります。それにこの艦隊が近づけば

帝国軍の哨戒艇が接触してくるでしょうから

その時に帝国兵士の方に哨戒艇で誘導をして頂きましょう。」

「わかりました。」

周三は目の前のチョコレートクッキーを数枚頬張ると紅茶で流し込んた。

「ご馳走様でした。

すごくおいしかったです。」とブラッドフォードに礼を言った。


 周三はブラッドフォードに伴われて第二艦橋を出た。

ブラッドフォードは艦尾まで周三を見送るためについてきた。

周三はヘルメットとタオルを巻くとゴーグルをつけた。

「では、フェンティーア都市国家でまた会いましょう。」と

周三はブラッドフォードに別れの挨拶をしてグリフォンに跨る。

「勇者様、道中お気をつけて。わたくしはお話しができて光栄でした。

わたくしの故郷をぜひご案内したいのでグランデンにもお越しください。」

「もちろん。グランデン公国にも行かせてもらいます。

その時は素敵な場所に案内してくださいね。ではまた。」

そう言ってブラッドフォードに手を振ると

周三を乗せたグリフォンは上空に浮上して東の空に飛び去った。

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