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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
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海賊艦隊

 周三はフェンティーアの東の海域偵察に向かう途中に

上空で箒に乗った少女に出会う。

その少女は魔法学園都市の大魔導師リリアンと名乗った。

リリアンは東の海域に敵がいるので魔法学園都市の軍隊で

敵の艦隊を撃退していいかと訊ねてきた。

周三はその申し出を断り、敵を交渉してからだとリリアンに主張する。

リリアンは周三の意見に了承すると敵の捕虜を検体で使いたいから

譲ってほしいと提案される。周三はもしもそういう事になったら

お譲りしますよ。とリリアンの申し出を了承した。

リリアンは周三と別れて東の空に消えて行った。


 フェンティーア都市国家の北東の海域で

2000もの中型艦が隊列を組まず

ひしめき合う蟻のように航行している。

旗艦は比較的後方に位置していた。


 旗艦の第一艦橋に将と思わしき人物が艦長席に座っている。

豪華な衣装を着た青年が小走りで艦長席の男の耳元で小声で囁く。

「ブラッドフォード卿。

卿からの書状を部下から受け取り読ませてもらった。

無線にてカエデから連絡があったそうですね。

西の影国強襲軍船団は勇者によって将が討たれ

全軍敗走したそうじゃないですか。

それに勇者は軍艦から東に飛行したとも言っていたそうですね。

指揮の全権を任されている卿に今後の事を

直に伺いたいからこの船までわざわざやってきたのだ。

自分はこれでも海賊艦隊の総大将だからな。」

艦長席に座る黒いスーツを着た男が葉巻を吹かしながら

「。。。そうだな。王子にも相談に乗ってもらおうか。

とうとう次世代の勇者が降臨した。

辺境の低級悪魔ごときでは勇者には勝てなかった。

さて、この大艦隊はどう行動するべきか。」

「マルク枢機卿の指示通りフェンティーア都市国家に

突撃をかける選択以外は無い気がいたすのですが。」

「うむ。しかし。人間の軍ではなぁ。

カンベインの呪いが第三大陸を

覆っているこの状況ではただの人間などはあまり役には立つまい。

こうしている間にも勇者は艦隊を発見し何か行動を起こすやもしれぬ。

これだけの戦力を勇者に殲滅されたらこちらの戦力を

回復させるまでにどれだけの時間と労力と財力がかかるのか計り知れん。

真祖公は永遠の時を生きておるから損害など気にせぬかもしれぬが

俺たちは限られた時間で結果を出さねばならん。

中央海域の有力な海賊団がほぼ全団がここに集結しておる以上は

全滅させられては帝国とカノレル海洋貿易会社に利するのみ。

旗艦と数隻を残して全軍撤退させるのが得策やもしれぬ。」

「一戦も交えずに撤退というのは

自分らは海の戦死の誇りに傷がつきます。

ぜひ、勇者との一戦に参加させてくださいませ。」

「おまえ!バカか!だから学の無い海賊などと手を組みたくないのだ!」

そう言うとブラッドフォードは目の前の豚を軽く蹴飛ばした。

豚は蹴られてコロンとこけるとまた体勢を戻して

その場をグルグルと回っていたが元気よく艦橋内を走り回り始めた。

「ったく。勇者に敵対する感情で勇者に敵対する言葉を

人間が吐くなど気でもふれたのか。

おい。海賊王の第五王子がカンベインの呪いで豚になったぞ。

だれかここからこの豚を倉庫にでも閉じ込めておけ。」

軍服を着た兵士が数人駆けつけると豚を捕まえて艦橋から出て行った。

「海賊王が豚になった息子を見て泣き叫ぶ姿を見るのが辛いのう。

カンベインの存在さえもいまだに大きな障害であるというのに

次世代の勇者まで現れるとは俺らは

永遠にアウェーでの戦闘をさせられ続けるということか。

天主様から直接の加護を受けた騎士『闇黒天将』のみが

勇者と対等に戦えるというが闇黒天将の存在は

古の書物の少しの記載があるのみだという。

闇黒天将とカンベインが戦ったという記録は存在しない。

それは上層部が何か事実を隠しているのか。」

「あら。豚を持った兵士たちとすれ違ったと思ったら

海賊王子が呪いにかかったのかい?浅はかだねぇ。」

そう言いながら白いスーツスカートのラテン系の女性が

ブラッドフォードの前に歩いてきて立ち止まる。

「エイミーか。おぬしはどうする。残るか?

それとも撤退するか?俺はどちらでもかまわぬぞ。」

ブラウンの綺麗な長髪で長身のエイミーはブラッドフォードを

美しい髪と同じブラウンの瞳で見つめた。

「報告は部下から聞いたよ。

こちらの動きに勇者が気づいたようだね。

そういってももうフェンティーア都市国家の領海だ。

気づかれるのは時間の問題だった。

だったら。そうだねぇ。

ここにいたら勇者様がお越しになるのかい?」

「おそらくな。」

「だとしたら決断は早いほうがいいね。

海賊艦隊の御輿である海賊王第五王子パットが豚になっちまったんだろ。

海賊艦隊の指揮系統は完全に混乱しちまうしね。

そんなんじゃ戦いにならないんじゃないかい?

火器なんて勇者にどこまで通用するか怪しいからね。

だったら少数精鋭でいいんじゃないの?

わたしは闇黒天を数人引き連れて西に向かうよ。

勇者って言ったってここまで高速で移動できる人数なんて限られるだろ。

勇者のいない軍とならわたしも結構やれると思うの。

輸送ヘリを一機使ってもいいかい?」

「ほう。勇者がこちらに来る隙に敵軍に打撃を与えるのか。

いいだろう。勇者をただ待っていても面白くない。

勇者が来たら俺が丁重にお迎えしよう。

勇者を接待している間に無線でそちらに連絡する。」

「フェンティーア都市国家の帝国軍には

帝国軍のエリートが揃ってるらしいからね。

いい腕試しになる。楽しみだねぇ。

うずうずしながらあんたの連絡を待ってるよ。

ここであんたが戦闘を起こす気が無いなら連れて行くメンバーは

強い奴ばかり連れていくけれどいいかい?」

「問題ない。」

「ブラッドフォードは本当にいい男だよ。大好きさ。」

「フン。冗談はいい。さっさと向かうがいい。」

「は~い。じゃあ、あんたが死なないよう祈ってるよ。」

「うむ。お前も生きて帰らねば許さぬからな。」

「うれしいねぇ。もしわたしが死んだらあの世で叱ってくれていいよ。」

そう言ってエイミーは第一艦橋を去って行った。


 ブラッドフォードは各隊の指揮艦に無線にて指示を出した。

「暗黒騎士指揮下の6隻以外の艦艇はすべてイムド諸島に帰還せよ。

パット王子がカンベインの呪いにより指揮不能に陥ったためだ。

海賊艦隊の総大将が不在となった為、海賊艦隊は作戦を中止する。

海賊艦隊1番隊を指揮するモナーク将軍を頂点とする指揮系統を構築し

速やかに艦隊を反転して撤退されよ。

あくまで抗戦の意思のある将は旗艦ルクセンビュリュック号にて。

詳細については機密性が高い為、

直に諸将に説明いたすので旗艦にお越しくだされ。

この作戦は暗黒騎士団所属艦艇のみでの作戦を遂行することとする。」

その指令に各海賊艦に動揺が走った。

不満を抱く指揮官たちが旗艦に集まりだした。

暗黒騎士団が手柄や利権を独り占めしようとしていると思ったものたちだ。

海賊は利に貪欲である。

ここまで来て帰れなんて命令は素直には従えない。

事前に27名の海賊指揮官から無線で旗艦に向かうと連絡があり

第一艦橋に27名の海賊艦隊の指揮官が全員集まった。

ブラッドフォードは居並ぶ海賊指揮官たちに向かい合うと

「君たちの勇気は称賛に価する!

西の友軍は勇者1人に撃退されてしまったとの報告を受けた。

暗黒騎士団は勇者と向き合い話し合いをしようと思っている。

しかし、それが不服な指揮官がおられるなら手をあげられよ。

勇者と敵対すると表明する事は死と同義。

そのような勇敢な戦士がおられるのなら

海賊艦隊の指揮権を移譲しようではないか。

諸君の意見をお聞かせいただきたい!」と大声で叫んだ。

王子がなぜ呪いにかかったのかをこの言葉で指揮官たちは知る事になった。

その場はどよめきも起こらずシーンと静まり返った。

何かリアクションをすれば豚になるかもしれないという緊張感。

喉元に剣の切っ先を突き付けられているようなものだ。

戦士の誇りはある。しかし、戦場で死ぬならまだしも

豚になって帰国なんてことになれば名誉を失い

呪いを恐れたものたちから命を奪われ家族は奴隷にまで身分を落とすだろう。

おそらく王子も帰国したら病死扱いで、かん口令が敷かれると予想された。

「ブラッドフォード卿の撤退命令にわしは従う!」と

海賊服を着た老齢の指揮官が叫んだ。

「俺も撤退に異存なし!」と青年指揮官が叫ぶと

「異議なし!」「異議なし!」と堰を切ったようにその場に響いた。

ブラッドフォードは大きく頷くと

「ならば諸君は急がれた方がよい。

もう勇者はこちらに向かっているそうだ。」と一同に伝えると

27名の海賊艦隊の指揮官は逃げるように第一艦橋を出て行った。

「教団上層部のお歴々にはどう説明しようか。」とブラッドフォードは天を仰いだ。

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