フェンティーア海域大返し
周三はフェンティーア都市国家に
別働隊が侵入してくると予想した。
ロアンにその事を伝えてグリフォンを召還してもらい
単独でフェンティーア都市国家に引き返す事を決めた。
周三は第二艦橋のエレベーターに乗り込むと
ひとつ上の階のボタンを押した。
扉が閉まりエレベーターが起動し上昇し
エレベーターが停止し扉が開く。
エレベーターを降りて前に進み左の階段を上り
フロアに出ると艦長席がフロアの中央にある。
艦長席にヴォルグが座り
その横でロアンが立ってヴォルグと話をしていているのが見えた。
「これはシュウ殿。どうなされました。」と
周三に気付いたヴォルグが声をかけてきた。
「ちょっと気になる事があるのですが
少しお話して大丈夫ですか?」と周三が応えた。
「どうぞ。こちらの席へ。」とヴォルグが立ち上がって
左横の席に手を差し伸べると周三は手を左右に振ると
「ここで大丈夫です。」と断った。
「では、わたしは失礼してヴァルキリー隊を
第五大陸に帰還させる準備に向かいます。」と
ロアンは2人に伝えて歩き出すと
「ロアンさんちょっと待って。」と周三がロアンを制止した。
「はい。」とロアンは立ち止まった。
周三はヴォルグとロアンに向かって
「俺たちはしてやられたかもしれません。」と切り出した。
「どういうことですか?」とロアンが言った。
「いまフェンティーア周辺の軍は全軍がここにいます。
それは天使軍がフェンティーア都市国家を守っているからです。
しかし、ギヨク将軍からの情報を聞いてみると
影の国を操っている謎の悪魔が存在する事がわかりました。
その悪魔は第三大陸に潜伏しているらしいです。
そこで気付いたのですが、もしも、その悪魔が人間の勢力も
操っているとしたらと考えました。」と周三が言うと
「そんな可能性があるのですか?」とロアンが言い、周三は頷いた。
ヴォルグは立ち上がって両手を机に置くと
「それは東から攻められる恐れがあると
おっしゃるのですな!」と言った。
「ええ。その通りです。
陸地からならまだ時間に余裕があると
おもっていましたが先ほど
もしも海上からならと考えたのです。」と周三は言った。
「海の勢力ですか。それは水軍か、海賊かですね。」とロアンが応えた。
「ええ。おそらくは海賊があやしいのではと思ったのですが
海賊なら炎の海域を通れば何の障害もなく全速で
フェンティーア都市国家に近づく事ができるはずです。
なので俺がちょっと行って確認してきます。
だからロアンさんにグリフォンの召還をお願いしたいです。」と周三が言うと
「わかりました。すぐにご用意します。召還に少し時間がかかります。
ですからわたしはすぐ艦橋を降りて準備します。
シュウは後からゆっくりでいいので艦首に来てください。」と
ロアンは言うと階段を急いで下りて行った。
「おれたちは全速でフェンティーア都市国家に向かえばいいですか?」と
ヴォルグが訊いてきた。
「いいえ、全速ではなくてもいいのですが
なるべく早くフェンティーア都市国家に
着くような速度で航行してください。」と周三が言うと
「もうすでにフェンティーア都市国家に向けて航行しているのですが
連合軍として隊列を組んで航行するのは
今の速度で目いっぱいですな。」とヴォルグが説明した。
「はい。ではそれで大丈夫です。
天使軍は人間の同士の争いに介入しません。
攻めてくるのが人間の勢力の場合は
フェンティーア都市国家の警察官だけで防がないといけなくなります。
それだと警察官が多いフェンティーア都市国家といえども
戦力的に不安です。
俺は1分1秒でも早くフェンティーア都市国家に戻って
多くの怪我人や死者が出る前に食い止めれたらとおもっています。」と
周三が説明すると
「そんな!?天使軍は動かないとは。
戦闘に慣れた海賊相手に警官隊だけでは確かに心もとない。
シュウ殿。何とぞ我が国をお救いください。」とヴォルグは
両手を額の前で合わせて握り締めると
神に祈るかのように周三に言った。
「はい。でもまだ可能性の段階ですが全力は尽くします。」と
周三はヴォルグに応えた。
「では、ヘルメットとゴーグルとマフラーをお借りしていいですか?
マフラーが無ければタオルでも構いません。」とヴォルグに頼むと
「すぐに用意させましょう。」と応え側にいる男性乗組員に
それらを用意するように指示した。
男性乗組員は左の階段を急いで下りてエレベーターに向かい走り出した。
「俺は必ず戻りますので祝勝会の準備はしておいてください。」
周三は笑顔をヴォルグに向けるとそう言った。
「これは心強い言葉ですな。
おれたち軍艦フェンティーア号のクルーは
シュウ殿を信じて待っております。
戦艦があるというのに何も出来ない自分がもどかしい。」と
ヴォルグは肩を落とした。
「いえ、裏で戦争を操ってる悪魔は人間同士を
武力衝突させて殺し合わせたいのかもしれないです。
軍艦で海賊を殺すのは敵の思惑に乗る事になるかもしれない。
俺が動ける範囲内では敵の武装解除させるように
全力を尽くして頑張りますが俺の体はひとつなので
これからは第三大陸は茨の道を歩く事になる可能性があります。
いずれ犠牲を出さないというのは単なる理想論になるかもしれません。
それでも今回だけは俺は1人の犠牲を出さずに解決したいんです。
だから、この戦いには勝っても
根本的には何も解決しない事だけは覚悟しておいてください。」と
ヴォルグに説明した。
「うう。なんとも厄介な。」と言うとヴォルグは椅子にドスンと腰掛けた。
「お待たせしました。持ってまいりました。」と
男性乗組員がゴーグルとヘルメットとタオルを周三に手渡した。
マフラーは季節はずれで手に入らなかったようだ。
「ありがとうございます。」と周三は男性乗組員に礼を言った。
「では、俺の勝利を信じて待っていてください。」と
ヴォルグに向かって言って手を振って駆け足で階段を下りた。
エレベーターの横の扉を近くにいた乗組員が開けてくれた。
「ありがとうございます。」と
周三はその乗組員に礼を言うと扉から外に出た。
周三は艦橋外部の階段を駆け下りて艦首に向かった。
艦首の方向で大きく何かが光った。グリフォンが召還されたのだろう。
周三は艦首にたどり着くとグリフォンが座っていた。
「ちょうど召還が終りました。」とロアンが周三に言った。
「ありがとうございます。ヴァルキリーの皆さんに挨拶できず残念です。
みなさんによろしくお伝えください。」と周三はロアンに言った。
「わかりました。皆に伝えておきます。
もしよろしければわたしも一緒に参りましょうか?」とロアンが言うと
「まだ可能性の段階ですから大丈夫です。必ず無傷で戻ります。
俺はロアンさんに頼りまくってますからね。
そろそろ俺も独りで出来る事はしないといけません。」と周三は応えた。
「そうですか。その言葉を信じて
シュウのご無事なお帰りをお待ちしています。」と
ロアンは真剣な顔で周三に言った。
「はい。でも現場に敵がいないのが
一番いいなとはおもっていますよ。」と周三は笑顔で言うと
馬具に足をかけてジャンプしてグリフォンに乗った。
「もうグリフォンの騎乗にも慣れましたね。」とロアンは言った。
「だいぶ乗りましたからね。」と周三は応えた。
命綱をロアンにつけてもらうとヘルメットと
ゴーグルを装着してタオルを口元に巻いた。
「じゃ、アルフレッド。
フェンティーア都市国家に向けて出発しようか。」と
周三は言ってからロアンに向かって
「では、ロアンさん行ってきます!」と言って敬礼すると
グリフォンは翼をはためかせた。
グリフォンは垂直に上昇した。
グリフォンが10mほど空中に浮き上がると
「このまま前に加速してもらって大丈夫だよ。」と
周三がグリフォンに言った。
「わかりもうした。」とグリフォンが応えた。
「田中周三!アルフレッドで出ます!」と
ロアンに向かって叫んで再び敬礼すると
グリフォンは前方に向かって一気に加速した。
グリフォンはあっと言う間にロアンの視界から小さくなっていった。
こんばんは。




