別働隊の存在
周三と中村と甘根とシエルとギヨクは
新たなる敵である真祖について語り合った。
そのあと中村がそろそろヴァルキリー軍が
第五大陸に帰国すると言ったので
みんなで挨拶に行こうという流れになった。
シエルはギヨクを連れて炎の国の要人室に連れて行くと言うので
周三と中村と甘根の3人で
ブリュンヒルデやスクルドに挨拶に行く事にした。
シエルはギヨクを連れてエレベーターに乗って下降した。
「シエルらと一緒にわしらも
降りたらよかったんちゃうけ。」と甘根が言った。
「お。そやったな。でも、エレベーターがキツキツになるし
俺らは後でもええやん。別に急がへんやろ。」と中村が言うと
「ちょっと待って。」と周三が言った。
「さっき中村が言ったことがひっかかってんねん。」と
周三は悩む様子を見せた。
「僕が言ったことって何や?」と中村が不思議そうな顔をした。
「なんか気になることでもあるんけ?」と甘根が言った。
「うん。俺らはもし東から真祖の息のかかった勢力が
来てるかもと考えた。」と周三が言うと
「それがどないしてん。」と中村が言った。
「俺はその勢力が来るなら地上から来ると思い込んでしまってた。
海から来るとしたらどうや。」と周三が言った。
「あ!俺も人間の勢力やったら地上からとおもってた!」と
中村はうっかりしたという顔をした。
「え?海からやったら帝国の海軍が東にはおるんちゃうん。」と
甘根は疑問の顔を浮かべた。
「いや。僕もうっかりやったわ。炎の国の水軍って何であるねん?」と
中村が甘根に向かって言った。
「ん?それは海賊が多いからやで。」と甘根が言うと中村が
「それやん!海賊の勢力はどの国にも
所属していない人間の勢力やんか!」と言った。
「あ!そうけ!」と甘根も気付いた。
「まだ可能性の段階やけどな。
でも、俺らはフェンティーア都市国家から3日の距離におる。
情報が入った頃には手遅れになっとるかもしれん。
タロウ。天使軍は食い止めてくれへんねやろ?」と
周三が中村に確認すると
「もしフェンティーア都市国家に海賊が侵入してきても
天使は人間を見殺しにする。
天使は怪我人の治療や避難の誘導はするかもしれんけれどな。
それが天使やねん。天使は人間より上位の存在やろ。
人間に武力を行使するのをよしとはせんのや。
天使の人間への武力行使は弱者に対して無慈悲な行為になる。
人間の問題は人間が解決せなあかん。
それが試練という考え方なんや。」と中村は悔しそうな顔をした。
「俺はちょっと不安に思う事があんねん。」と周三が言うと
「まだなんかあるんけ?」と甘根が言った。
「シエルの真祖についての説明がどうもひっかかる。」と周三が言った。
「ん?なんでや?」と甘根は疑問を返した。
中村は考えたような仕草をしてから
「僕らは泥沼に引きずりこまれようとしてるんかもな。」と言うと
「そやねん。ギヨク将軍という存在について
考えるとそう思ってん。」と周三が言った。
「どういうことや?」と甘根はわかっていない。
「まず大魔法についてや。
あれだけの大規模な魔法の仕掛けやのに
そないに重要視してないって事がおかしいやん。
手間も人員も予算も投入した大魔法がメインの任務では無いというのは
影の国の発想なら考えられない。
何故なら普通の思考から考えたら費用対効果を求めるからや。
でも今回のギヨク将軍の作戦は貴重な軍船や貴重な高位魔術師たちを
無駄死にさせていいという計画やで。
ギヨクさんは将軍やから人間か天使に殺されてくれたら
第三大陸への侵略の口実に十分だなんて計画なんだったら
船一隻でギヨク将軍に100人くらいの部下をつけて
フェンティーア都市国家に突っ込ませればええやん。
その方が費用対効果は抜群にいいやろ。
船一隻やったら誰にも警戒されずにフェンティーア都市国家に
乗り込めたはずや。天使には瞬殺されるとは思う。
でも、それで任務は達成できたわけやろ。
俺らはギヨク将軍が軍船団で海域に侵入してきたから
釣られてフェンティーア海域と隣接する各大陸の全軍を
ギヨク将軍の水軍の殲滅作戦に投入した。
それは大魔法の存在があったからでもあったわけやけど
俺らは単純に釣られただけなんちゃうか?
だって今はフェンティーア都市国家は無防備やで。」と
周三が心配そうな顔をした。
「ギヨク将軍の水軍は
わしらを釣る餌というわけけ。」と甘根も理解した。
「僕らはとんでもない敵を相手にしてるんかもしれんなぁ。
真祖についてシエルの言ってた事を憶えてるか?」と
中村が甘根に言うと
「すまん。忘れた。」と甘根は答えた。
「ええよ。シエルはこう言ってた。真祖は戦わない。
ただの死の化身。ゆえに王ではなく、目的もなく、突然現れ突然姿を消す。
後には大量の死体だけが残る。真祖には敵も無く味方も無い。と言うた。
多分、古文書かなんかの一説から引用したんかもしれんけれど
わかりやすく説明すると、真祖は自分の手は汚さない。
無所属であり目的も無い。誰も真祖の姿を知る人はいない。
真祖は無意味に人を殺す。大量に人を殺して死体だけ残るって意味やで。
今、考えるとこんな怖い悪魔がおるんかと思うわ。」と中村が言った。
「怖すぎる。ヤバすぎるわ。
元の世界に帰りたくなった。」と周三が言った。
「ん?なんでそんな怖がるねん。やっつけたらええやんけ。」と
甘根は言葉の核心に気付いていない様子だった。
「甘根。わかりやすく説明するわ。
例えば学校で体育館で全学年集会があったとするやろ。
先生も生徒も全員が体育館に集まってる。
そこに一人の生徒がダイナマイトで自爆して
体育館の中の全員殺害したとする。
ある日、この自爆した生徒の親は見ず知らずの人物にこの計画を頼まれた。
この親は自分の貯金のほとんどを使って
どうにかダイナマイトを手に入れると
自分の子供に知らない人物の指示の通りに命令をした。
子供は疑問を抱きながらもなぜか了承した。
その子供は命令通りに学校で体育館の先生や生徒を道づれに自爆した。
頼んだ人物に動機は無く親にも動機は無く死んだ生徒に動機も無い。
こんな犯罪が元の世界で普通に存在するか?
僕らはこういう相手を敵にしようとしてんねんぞ!
今回の遠征で言えばダイナマイトは分解の大規模魔法。
頼まれた子供はギヨク。頼まれた親は影の国。
見ず知らずの人物は真祖や。
目的が無いから失敗してもええわけや。
味方でも無いから影の国の軍がどんだけ被害を受けて失敗してもええ。
真祖の操り人形の人間の武力勢力があるとしたら
その勢力を僕らが相手にしたら僕らは
ただただ人殺しさせられ続けることになるかもしれん。
そして無意味に死体が大量に転がる。真祖は何も傷つかない。
僕らは負のスパイラルに引きずり込まれる。そういう話や。」と言った。
「わしらは意味もなく人殺しさせられる事になるんけ?」と甘根が言うと
「そや。考えてみたら恐ろしいことや。
真祖は僕らの常識を超えてたわ。」と中村は応えた。
「俺は今からグリフォンに乗ってフェンティーア都市国家に戻る。
海賊がフェンティーア都市国家に来たとしても
海賊に俺が勇者と言えば撤退するかもしれん。
もし撤退しなかったらギヨク将軍対策に考えてたある必殺技がある。
命を奪わずに社会的に抹殺するという恐ろしすぎる技ゆえに
さっきまで封印しようと思ってた技や。
ギヨク将軍との一騎打ちには使わなかったのは
ギヨク将軍にはネヴェシス姫の家臣になってもらって
これからやってもらおうと思う事があったから
一騎打ちではこの必殺技は使わなかった。
でも話し合いが通じない相手には躊躇なく
この必殺技を使える男に俺は成長したんや。」と周三が言った。
「なにか非人道的な行為をするんか?」と
中村が怪訝な表情を周三に向けた。
「いや。ある意味、人道的やな。ただ悲しみが残るだけや。
この技を広く宣伝したら誰も俺に関わらなくなるかもしれんから
技の解説を君たちにするつもりは無い。」と周三はきっぱりと言った。
「なんやおもわせぶりやんけ。教えてほしいわ。」と
甘根が気になる様子を見せた。
「う~ん。もしその技を使用してしまったら懺悔として教えるかもな。
いや、友達を失くす恐れがあるから言いたくないけれど
俺の気持ちが楽になるから言うかも。」と周三が応えた。
「おう。そうけ。じゃ絶対その技を使ってや。」と
甘根は笑顔で周三に言った。
「あははは。コウジ。礼を言うの忘れてたけれどコパンさんにな。
コウジの名前を使って脅して帰ってもらった。
前もってコウジには名前を使うでって
言ってたけど悪者にして申し訳ない。」と周三が言った。
「ええよ。影の国は、前から、わしら炎の国を恨んどるからな。」と
甘根は気にしていないようだった。
「コウジありがとう。
じゃ、サクっとフェンティーア都市国家に行って
もし敵が近づいて来とったら
敵を退けてサクっと帰ってくるわ。」と周三が言った。
「田中。変わったな。
前の田中やったら敵と戦うのを躊躇してたやろ。」と中村が指摘した。
「まあね。俺は早く戦争を終らせたいねん。
毎日のんびりしたいからな。
だかって戦いが好きになったわけやないで。
マジで真祖はヤバいと思うもん。
だからまた真祖対策をみんなでゆっくり話し合おう。
ほな、早速やけれど俺は行くわ。
今、水軍がいない炎の国の領海を通ってきてるとしたら
海賊はスイスイと進めるから、もうフェンティーア都市国家に
着いててもおかしくないかもしれん。」と周三が言った。
「ああ。わしも行きたいわ。けどわしやと
敵を殺してしまう技しか持ってない。
寸止めとか苦手やねん。」と甘根が悔しがった。
「田中、気をつけてな。怪我とかすんなよ。」と中村が周三に言った。
「おう、ありがとう。
じゃ、ロアンさんとこに行ってグリフォンを召還してもらうわ。」と周三は
中村と甘根に言って手を振ると周三はエレベーターに向かって走り出した。
こんにちは。




