第五大陸
周三は甘根と中村とシエルの4人は食堂で朝食をとっていた。
周三は空腹を満たしたのでドリンクが置いてあるテーブルで
コーヒーを入れて中村と甘根とシエルがいるテーブルに戻った。
周三はコーヒーに一口つけると
「この後はブリュンヒルデさんところに行って
ヴァルキリー2000人を目撃しに行こか。
俺は一騎打ち前にテンションを上げときたいからな。」と言った。
「わしも楽しみや。」と甘根が嬉しそうに言うと
シエルが軽蔑の眼差しを甘根に向けながら
「王子。すごくいやらしい顔をしてる。」と指摘した。
その様子を見て中村が笑った。
「ははは。シエル。そりゃ甘根も男やで。
昔から女好きで有名や。」
シエルは無表情な顔を中村に向けると
「王子は特定の恋人を作ろうとしない。」と言った。
中村は意外そうな顔をしながら
「甘根。彼女作らへんのか?」と訊いた。
甘根は中村に顔を向けると悩んだ顔をした。
「う~ん。作る気はあんねんけど
わしって王子やん。なんかその立場で国民に手を出すのは
プライドが許さへんっていうか。なんか嫌やねん。」
「そういえば前にも部下には手を出したくないとか言ってたな。」
そう周三が指摘すると甘根は
「ああ。そやで。だから第三大陸とか第五大陸とか別の大陸の女の子と
付き合いたいねん。」と応えた。
仲村は納得した様子で
「なるほどな。天使を彼女にするのは立場的には難しいと思うけれど
人間や妖精族やったら彼女にするのは問題が無いかもしれんな。」と
甘根に感想を述べた。
「じゃ、あとでブリュンヒルデさんにヴァルキリーは異性交遊を
許されていますか?と訊いてみようか。」と周三が言った。
シエルは不満げな様子で
「王子は悪魔の国の王子のくせに悪魔の嫁をもらわないのか。」と言うと
「そんなんわしの自由やろ。悪魔が悪魔の嫁をもらわなあかんって
法律でもあるんけ?」と抗議すると
シエルは無表情に「そんな法律はない。」と応えた。
「まぁ、恋愛は自由でええんちゃう。」と周三は言った。
「部下が言うとったけれど
帝国は悪魔との婚姻が認められてるんやて。」と中村が言った。
周三は意外そうな表情で
「神の加護を受けてる第三大陸で悪魔と
結婚できるって法律がゆるすぎちゃうんか?」と中村に言うと
中村は少し考えるような仕草で
「なんか魔王と初代皇帝が仲が良かったらしくてな。
魔族と人間の婚姻を許す事を法律に加えたんやて。
天界は悪魔と人間の婚姻の許可する法律については黙認したらしい。
救国の英雄の一人が自分の国の法律をどうするかについて
天界がどうこういうのも野暮な気がしたんとちゃうか。
炎の国のイフラート王もカンベインの舎弟やしな。」と応えた。
「そういや、ギヨク将軍もゲルグ皇帝と魔王は
仲良さげに談笑してたって言うてたな。」と周三は言った。
「では、わたしとシュウが結婚しても問題ないな。」と
シエルがニヤリとした表情で言った。
周三はシエルに真剣な眼差しを向けると
「え?シエルは俺と結婚したいの?」と問いかけた。
シエルは顔を赤くして「ほんの冗談だ。」と言った。
「あら。残念。」と周三はシエルに笑顔を向けた。
「じゃそろそろブリュンヒルデさんとこに行こうか。」と
甘根が言うと周三が
「そやな。」と立ち上がり自分の食器をまとめ始めた。
中村も食器をまとめながら
「ヴァルキリーって神らしいから全員が美人やろな。」と言うと
甘根が驚いた様子で
「へ?神って神様なんけ!?」と言った。
周三も驚いた表情で
「俺、ヴァルキリーって妖精さんかと思ってた。神ってすごいやん。
神様に気安く喋ってしまったけれど大丈夫かな。
神様の女子を物色しに行くってなんかちょっと後ろめたいわ。」と言った。
「いや。僕らは第三大陸の神様の支配化やから別に関係はないやろ。
別の大陸の神様やから不遜を働いて言いわけではないけれど
特にお咎めを受ける事もないと思うで。
もしも、苦情を言われたら素直に謝罪しりゃええんや。」と
中村は冷静な顔で天使とは思えない発言をした。
「コウジがもしもヴァルキリーと結婚したらお嫁さんは神様やで。
生まれた子供はめっちゃ強いんちゃう。」と周三は言った。
「わしも嫁が女神っていうのは気分ええやろな。」と
ご機嫌な様子だった。まんざらでもないらしい。
「とりあえずブリュンヒルデさんにその辺の質問してみようや。」と
周三は言うと返却口に食器を持って歩き出した。
他のみんなも食器をまとめて食堂奥の返却口に向かった。
食器をみんなは返却口の台の上に返すと食堂を出ると
4人はエレベーターに向かって歩き出した。
4人はエレベーターに乗り込むと周三はひとつ上のボタンを押した。
エレベーターが起動して上昇するとすぐに止まり扉が開いた。
4人はエレベーターから出ると豪華な中央ロビーから艦尾に向かった。
ずっと廊下を真っ直ぐ歩いて行くとだだっ広い無機質なフロアに出た。
そこには若い女性が大勢座っていた。とても賑やかで優しい話声が響く。
「これは。。。。腐女子向けアニメイベントの会場とか
男性人気アイドルのライブ会場とかそういう場所に見えてくるね。」と
周三はそう形容した。
中村は周三の言葉に首を傾げると
「そういう会場ってこんなに美人ばっかりの会場では
無いんとちゃうやろか。」と天使とは思えぬ毒舌を吐いた。
「うひょ~!ええやん!みんなすげぇ神々しいな。」と甘根が言うと
「そりゃ神様やからな。」と中村が軽くつっこみを入れた。
「シュウもタロウも王子もなんだか子供っぽいですね。」と
シエルが冷ややかな目線を向けて言ってきた。
周三はほくそ笑みながら
「シエル。俺らは年齢的にはまだ子供やねんで。
これからの男子やねん。温かく見守りなさいよ。」と言った。
「ふ~ん。」とシエルは周三の言葉を軽く流した。
周三はちょっとシエルの態度に不満であったが気にせずに
近くに座っているヴァルキリーの一人に声をかけた。
「ブリュンヒルデさんかスクルドさんはいますか?」と訊ねると
「はい。お呼びしてきますね。」とヴァルキリーは
立ち上がりフロアの中央に走って行った。
フロアは絨毯が敷き詰められており
毛布や飲み物や菓子などが置かれいた。
ピクニックとかキャンプといった雰囲気で明るい様子だが
暗い雰囲気だとニュースでよく見る避難所の風景に見えるだろう。
ヴァルキリーはみんな女の子座りや三角座りをして楽しそうに
お喋りを楽しんでいる。とても華やかな空間が広がっていた。
周三は甘根の姿が見えないと思って周りを見渡すと
甘根は6人組のヴァルキリーの輪に混じって座って喋っていた。
周三は甘根の行動力に素直に驚かされた。
周三は恋愛では甘根には絶対に敵わないと思った。
ブリュンヒルデとスクルドを
呼びに行ってくれたヴァルキリーが2人を伴って帰ってきた。
「シュウ。シエル。いらっしゃい。」とブリュンヒルデが手を振った。
「ブリュンヒルデさんどうもです。
スクルドさんもおはようございます。」と周三も手を挙げて挨拶した。
シエルも明るい表情を向けながら
「ブリュンヒルデ。スクルドおはよ。」と挨拶した。
「やぁ2人ともおはよう。」とスクルドも挨拶を返してきた。
「そちらの天使様は?」とブリュンヒルデが訊いてきた。
「彼は大天使であり俺の幼馴染のタロウです。」と周三が紹介した。
「第一大陸の大天使中村太郎です。よろしく。」と言うと
「はじめまして。大天使タロウ殿こちらこそよしなに願います。
わたくしはヴァルキリーの指揮を
任されているブリュンヒルデと申します。」と
ブリュンヒルデは右手を差し出した。
「どうも。」と中村も右手を出して握手した。
「わたしは副将のスクルドです。以後お見知りおきください。」と
スクルドも右手を出した。
中村はスクルドとも「よろしく。」と握手した。
「お二人とも僕もタロウと気軽に呼んでください。」と
タロウが言うとブリュンヒルデは笑顔で
「わたくしどもも呼び捨てでかまいません。
どうか仲良くしてください。」と言った。
「わたしもスクルドと呼んで頂いて結構ですよ。」
「ありがとうございます。もう少しお話して
親しくなれば呼び捨てで呼ばせてもらいます。」と中村は応えた。
「この子はミストというの。
仲良くしてあげてください。」とブリュンヒルデは
周三に頼まれて2人を呼びに行ったヴァルキリーを紹介した。
「2人を呼んできてくれてありがとう。」と周三が礼を言うと
ミストは、はにかみながら
「いえいえ。勇者様だったんですね。
ミストです。よろしくお願いします。ではわたしはこれで。」と
挨拶すると落ち着かない様子ですぐ逃げるように去って行った。
「俺ってなんか嫌われてますか?」と周三はブリュンヒルデに言うと
「いいえ違いますよ。ミストは男性に慣れていないんです。
私共は初対面の男性と喋る機会はあまり無いです。
特に若い男性と喋る事なんてほぼありません。
それゆえ、どう振舞っていいかわからず緊張したのでしょう。」と
ブリュンヒルデは説明した。
「そうなんですね。出会いが少ないんですね。」と周三が言うと
「いかにも。」とブリュンヒルデは笑顔で応えた。
「では、このあたりで座りましょうか。」と
ブリュンヒルデが言って絨毯の上に腰をおろした。
スクルドもシエルも中村も周三も腰をおろした。
5人は輪になって座ると周囲のヴァルキリーたちが
ジュースとグラスそれに菓子の載った皿を
周三たちの輪の中央に置いていった。
ブリュンヒルデの右に周三が座り
その右回りに円をスクルドと中村そしてシエルの順に腰を下ろしていた。
シエルの右横に見知らぬヴァルキリーが座ると
そのヴァルキリーがグラスにジュースを注ぎ5人の前に置いた。
「今日は第二大陸の王子様はいらっしゃらないのですか?」と
ブリュンヒルデが周三に訊ねた。
周三は苦笑いを浮かべながら
「コウジはあそこにいます。」と指を差した。
ブリュンヒルデは周三の指の方向に目をやると
甘根がヴァルキリーに膝枕してもらいながら談笑して
楽しそうに盛り上がってるのが見えた。
「ははは。さすが王子様ですね。あの娘たちも楽しそうだ。
人の心を掌握する天性の才能があるのかもしれませんね。」と
ブリュンヒルデは微笑んだ。
「コウジはたしかにモテます。」と周三は応えた。
「女神様って異性交遊してもいいんですか?」と周三が訊ねると
「はい。異性交遊というのは解釈の仕方にもよりますが
意中の男性がいれば婚姻は自由です。」とブリュンヒルデは応えた。
「いえ、あのですね。コウジが別の大陸の女性と結婚したいと言ってたので
ヴァルキリーはどうなのかなと思いまして。」と周三が言った。
「なるほど。結婚前提でしたら何も問題はありませんよ。」と
ブリュンヒルデは笑顔で応えた。
「それは大丈夫だと思います。あとお訊きしたい事が
あるのですが第五大陸というのはどういう場所なのでしょうか?
俺は第五大陸についてほとんど知らないんです。」と周三は言った。
ブリュンヒルデは少し考える様子を見せながら
「そうですか。第五大陸はかつてカンベイン王が一人でやってきて
妖精の国を占領したのもご存じありませんか。」
「知りません。」
「そうですか。第五大陸はカンベイン王の支配下だった時期が
あるのです。ゆえに勇者ともゆかりのある大陸です。」
中村がそれ聞いて
「カンベインという御仁は本当に底知れませんね。」と感嘆を漏らした。
「ええ。カンベイン王が第五大陸に上陸した際に
カンベイン王に対して攻撃してはならないと
わたくしどもは大神から止められておりました。
わたくしどもの大神はカンベインの強さをご存知の様子でした。
自衛軍を組織しようという意見もありましたが
大神の命令でわたくしどもは静観の姿勢を取りました。」
「カンベインって各大陸の神に承認された存在って感じがしますよね。
カンベインさんは各大陸で好き勝手やってもお咎めが無いですからね。」と
周三が言うとブリュンヒルデはフフフと笑うと
「シュウもその承認された存在ではありませんか。」と言った。
「え!?俺は他国を侵略なんてしませんよ!」
「シュウはそうなのでしょうね。
カンベイン王は妖精王を降伏させると義兄弟の契りを結びました。
その後、すぐに政権を妖精王に返しています。」
「それはイフラート王もそうみたいですね。」と中村が言った。
「ええ。炎の国もそうらしいですね。
ですのでカンベイン王の意向に妖精王は逆らえません。
全大陸戦争時に妖精族は戦死者が多数出てしまい
人口が減ってしまった事を妖精王が悩んでいると聞いて
第五大陸にまたカンベイン王がやってきました。
カンベイン王はヴァルキリーを神から賜るようにと
妖精王に助言したといいます。
カンベインは第三大陸からは
1000人の人間を第五大陸に移住させました。
今はその移住してきた人間たちの人口が増えております。
第五大陸で人間族の国を作りブリティンと国名をつけました。」
「第五大陸に人間が住んでるんですか!?」と周三が驚いた。
「はい。妖精族の国と人間の国とわたしたち神族の国と、ほかにも
色々な種族の国家があり
第五大陸の王は妖精王でいいのかという意見が
各方面の種族の族長から出始めた事がありました。
カンベインに任命されたともいえる妖精王に異を唱える事は
とても危険な事なのですがカンベインが消息を絶って500年以上経ち
カンベインへの恐怖心が薄れてきたのでしょう。
妖精王も大陸の王というのは邪魔臭いと
公言する自由を愛する気質の王ですから
第五大陸の真の王を決めようと言い出して
大預言者マリンに妖精王は第五大陸の王の選定を相談します。
するとマリンは妖精王に対して王選定の剣を作るように進言したのです。
妖精王はカリバーンという名の宝剣を作ると大神に献上します。
その剣は神の意思を込められて大神からマリンに託されました。
そのカリバーンはマリンによって聖なる丘の大きな岩に刺された。
この剣を岩から引き抜いた者を
第五大陸の真の王とするとマリンは布令を出します。
各種族の族長がその剣を抜くことに挑戦しましたが誰も抜けませんでした。
しかし、最近、突然現れた少女がカリバーンを岩から抜きました。
名前を浅野五月と言うそうです。
今はアーサー王と名乗っております。」と
ブリュンヒルデが説明すると周三と中村は驚きの表情で目を合わせた。
「浅野って2-Eの浅野ちゃうか。」と周三が中村に言うと
「五月って名前やから確実やろな。
僕たちが知らん羽生の仕業やろうな。」と中村が返した。
「コスプレ好きオタク女子の浅野がファンタジーの世界に来たんか。
さすが羽生たちの人選は的確やな。」と周三は納得した。
「浅野は側近はイケメンで周りを固めとるやろな。」と中村は苦笑いした。
ブリュンヒルデは目を丸くすると
「シュウとタロウとアーサー王はお知り合いですか?
それはなんという奇遇なのでしょう。」と嬉しそうな表情で言った。
「まぁ。学校の同級生です。」と周三は応えると中村に向かって
「機会を見つけて第五大陸に行かなあかんな。」と言った。
「甘根も連れてな。」と中村は応えた。
スクルドが口を開いた。
「わたしから報告ですがシュウが言っていた国家機関には
わたしが行く事になった。よろしく頼みます。」と周三に言った。
「そうなんですか!?でもスクルドさんは軍の副将なんでしょ。
いいんですか?」と周三が訊ねるとブリュンヒルデが
「だからいいのではないでしょうか。」と笑顔で周三に言った。
周三は申し訳なさそうにしながら
「確かに。軍を指揮できるという条件に合いますね。
ありがとうございます。戦争が終ったらすぐに設立に動きますので
決まったらすぐにご連絡します。」と
周三はブリュンヒルデとスクルドに言って頭を下げた。
その後も周三たちはしばらく雑談を楽しんでいると
乗組員が走りながらシュウたちの元にやってきた。
「失礼します。敵と思われる水軍を目視で確認しました。
勇者様には第一艦橋にお越し頂くようにと艦長からの伝言です。」と
その乗組員から報告を受け、周三は立ち上がった。
「では、みんな。俺はちょっとくら行ってくる。
ギヨク将軍に勝利して帰ってくるわ。」と落ち着いた笑顔で言った。
スクルドは少し驚いたような目で周三を見ると
「やはり勇者様ですね。
とても男らしくて素敵だと感じました。」と感想を述べた。
「ありがとうございます。」
ブリュンヒルデは周三の左手を両手で握ると
「ご武運をお祈りしています。」と言って励ました。
「がんばります。」
中村も立ち上がると真剣な表情で
「ほんじゃ、僕も補給船に戻るわ。
田中の勇姿を楽しみにしてるで。」と周三に言った。
シエルも立ち上がると
「シュウ頑張って。怪我しないように。
わたしは王子を連れて軍船に戻る。」と周三に言った。
「じゃ、俺は準備があるから先に行くわ!」とみんなに手を振ると
エレベーターのあるロビーに向かって周三は一人で走り出した。
おはようございます。




