朝
周三は第二艦橋に戻ったあとに
第二艦橋の給仕をしてくれてたステラという見習い海技士と出会う。
周三はステラに感謝を伝えた。
ステラが第二艦橋を去ったあとにベットに寝転がり
恋愛とは何かについて悩んだあとにすぐに眠りついたのだった。
「シュウ!朝飯に行こうや。」という声が
聞こえ周三は体を揺らされた。
「う。。。。うん。。。」と周三は目をこすりながら上体を起こした。
周三の足の辺りに掛け布団の上からコウジが馬乗りで座っている。
熟睡してる男子の体に馬乗りになって起こすのは
幼馴染の女の子がすると相場が決まっているものであって
幼馴染の男の子がするべきではないぞ。と
周三は心の中で甘根に苦情を言った。
「おっけおっけ。行こう。」と周三が眠そうに言うと
コウジはベットから降りた。
コウジは外側からベットのカーテンがパッと開くと
明るい日差しが周三の目に飛び込んできた。
「シュウおはよう。」と
コウジの後ろに立っていたシエルが周三に声をかけた。
「シエルおはよう。」と周三は挨拶を返す。
周三はソファーに目を向けると中村が座っていた。
「田中起きたか。おはようさん。
ほな、田中が用意出来たら食堂へ行こか。
もう自分らヴァルキリーと会ったんやってな。
でもヴァルキリー2000人全員を
見たわけちゃうんやろ。食事の後に見に行かんか。」と
天使とは思えないおっさんじみた提案をサラリとしてきた。
「タロウおはよう。それは絶対に行こう。」と周三は親指を立てた。
周三はダルそうにベットから出ると
立ち上がりクローゼットから軍服を出して着衣した。
今日はおそらくギヨク将軍との一騎打ちがある。
一騎打ちに私服ではギヨクに失礼かなと周三は思ったからだ。
軍服を着た周三は「用意できたよ。ほな。いこ。」と皆に言った。
周三の着替えをソファーに並んで座って待っていた3人が腰をあげた。
周三と甘根と中村とシエルは肩を並べて
エレベーターの方向に歩き出した。
エレベーターの扉の前に4人は立つと
扉のボタンの位置に近い中村が下に向かうボタンを押した。
すぐエレベーターが下から第二艦橋に到着し扉が開く。
4人はエレベーターに乗り込んだ。
3つ下の階のボタンを周三が押すと扉が閉まり
エレベーター下降した。
しばらく下降するとエレベーターが停止し扉が開く。
4人はエレベーターを降りて食堂に向かって歩き出した。
廊下ですれ違う乗組員たちは真剣な顔で忙しい足取りだ。
周三たちに気付くと乗組員たちは立ち止まり軽く会釈する。
乗組員たちが話しかけてこないのは
大事な一騎打ちの前に余計な事を言わないように
気をつかっていたのかもしれない。
「お昼ご飯までには敵と接触するのかなぁ。」と周三が言った。
「どうやろなぁ。」と甘根は周三に返事した。
「田中には勝算があるんやろ。
それやったらいつでも準備は出来とるんやろ。」
そう中村が言うと周三は
「まぁ~そうやけど昼前には決着つけて、はよ帰りたい。」と
周三は眠そうな顔して中村に応えた。
「あはは。早いほうがええんけ。余裕やのう。」と甘根は笑った。
「油断は禁物。」とシエルが真顔で周三に言った。
「シエルさんの言うとおりや。油断はすんなよ。」と
中村が言うとシエルがムッとした様子で
「シエルでいい。」と中村に
シエルは思いきり顔を近づけて敬称を拒んだ。
「顔近い!おうふ。そうか。僕もシエルって呼ばせてもらうわ。
僕のこともタロウでええで。」と言うと
「うん。タロウ。」と満足げな顔をシエルは中村に向けた。
中村とシエルの様子を横目で見ながら周三は
「油断はしてないよ。どれだけ悩んだ事か。
悩みすぎておかしくなりそうになったわ。
そしてその向こう側に出たっていうか吹っ切れたんやろな。」と
遠い目をしながら周三は言った。
「シュウはリスクが嫌いなタイプやから大丈夫やろ。」と
甘根が言うとすぐに中村が頷いて
「それはその通りな気がするわ。」と甘根の意見に納得した。
「シュウは臆病ってこと?」とシエルが言うと
周三はシエルを肩で押してから「俺は慎重なの!」と抗議した。
4人は食堂に着いた。
甘根とシエルは大皿を数枚持つと甘根は「お先!」と言って
料理が並べられたテーブルに小走りで向かった。
シエルもはしゃいだ様子で甘根の後を追う。
周三と中村は落ち着いた様子でゆっくりと皿を持って歩く。
周三と中村は定番な料理を適当な量を皿に載せると
食事用のテーブルにその皿を置いて飲み物を取りに行く。
朝の料理はかなり軽め料理が多い。
焼きたてパンの種類は豊富だが
料理はスクランブルエッグやソーセージやベーコンなど
焼き魚の切り身など簡単なものが並べられている。
周三は気付いたがこの軍艦には冷蔵庫がある。
最初は氷が置かれた氷室のような倉庫があるのかと思っていたが
食堂の調理場の奥に大きな冷蔵庫らしきものがあるのに気づいていた。
この軍艦は元いた世界並みの科学力がある可能性を感じていた。
魔導機械だから氷魔法を発動している機械なのかもしれないが
科学だろうと魔法だろうと効果が同じであれば
比べる意味もさほど無い気がした。
周三はオレンジジュースと
コーンスープをテーブルに置いて席に着くと
クロワッサンに切れ目を入れて玉子サラダとレタスを
挟み込むと口に運んだ。
中村は牛乳とオニオンスープをテーブルに置いて周三の隣の席に着いた。
中村は「いただきます。」と言って手を合わせた。
中村は周三に目を向けると
「田中はこの戦争をどう解釈してるんや?」と問いかけた。
「単純では無いとは思ってるで。
でもこの世界に来てまだ間もない俺では
深いとこまではわからんなぁ。」と素直な気持ちを述べた。
「確かにな。僕らでは判断が難しい事が多い。
田中はそれも考慮して一騎打ちを受けたって事やろ。」
「そやな。一騎打ちで勝って敵が引き揚げてくれたら
難しい問題を考えずに済むしとりあえずの問題は解決するとは思うた。
でも勝つ自信がなかったからかなりの博打ではあったけれど
シエルの特訓のおかげでなんとか戦える自信はつけれたわ。」
甘根とシエルがテーブルに料理の皿を数枚置くとジュースを取りに行った。
その様子を気にもせず周三は中村に
「この戦争で得た教訓は生かしたいから
帰国したら有事の際にすぐに連合軍を組織する事が出来る国家機関を
作ろうと思ってんねん。」と明かした。
「それは名案やな。今回の連合軍は偶然の産物やからな。
この戦争で連合軍を組んだ事で生まれた各大陸との繋がりを
システム化するのはええ事やと僕も思うわ。
田中はかなり悩んで考えたんやろなぁ。」と中村が感心した。
「そりゃあ、悩みまくったよ。それで第二大陸から
シエルがその機関に出向してくれる事になりそうやし
第五大陸からヴァルキリー1名が出向してくれる予定やで。
第三大陸からはミュアン少佐が参加してくれることになりそうや。
第一大陸からも誰か一名を出向させてもらえへんかな?」
「ほう。そんなに話が具体的に進んでんねんな。
その面子やともしかしてその機関は
情報の共有機関をも兼ねてるんかな。」
「うん。」
「そうか。自国の正確な情報を引き出せそうな面子やな。
今回の戦争は情報が無い事がずっとネックになってるからな。
情報を共有して各大陸からの意見を聞ける機関は
かなり必要やと思うわ。よっしゃ、帰国したら上と相談してみるわ。
女性ばっかりやから女性の方がええんか?」と中村は周三に訊ねた。
「できれば女性がええな。えっと。勘違いせんとってな。
俺は別にハーレムを作りたいわけやないねんで。
魔法学園に入学するかもしれんから
その機関の面子に俺は勘定してない。
同性同士の方がコミュニケーションが
とりやすいかなと考えただけ。」と周三は動揺しながら言った。
「いやいや。別にハーレムとか勘ぐらへんよ。
確かに若いお姉さんばかりやけれどみんな社会人やからな。
ハーレムなんて空気にはなりそうもないやん。
ミュアン少佐をハーレムに入れるなんていうのは
ある意味で上級者すぎるやろ。ほな、わかった。
女性の天使でお願いって言うとくわ。
そっか。田中は魔法学園に入学できそうなんか。
それはよかったな。おめでとうさん。」
「サンキュ。でも、入試次第やけどな。」と周三は笑顔で応えた。
フルーツが山盛りの大皿と片手にジュースを持って
甘根とシエルが帰ってきた。
甘根とシエルの2人の各皿には
山盛りのソーセージと山盛りのベーコンと山盛りフライドポテト。
山盛りに盛られた数種類のパンと数種類のジャムやバター。
山盛りのスクランブルエッグと目立焼きとゆで卵。
大盛のサラダにたっぷりのドレッシングがかけてあった。
甘根とシエルは席につくとしばらくはひたすら無言で食べていた。
周三と中村はもうすでに食べて終えており皿は空いていた。
周三はソーセージが色々と種類があってとてもおいしかったので
空いた皿を持ってまた料理が置いてあるテーブルに向かって
皿にソーセージを山盛りにしてマスタードと
ケチャップを下品なくらいにかけてからテーブルに戻った。
中村も同じく空いた皿を持つと料理の置いてあるテーブルへ向かい
ベーコンとスクランブルエッグとフライドポテトを山盛りにして
ケチャップを山盛りにかけてから戻ってきた。
周三が向かい側に座る甘根に
「おお。そうや。コウジに聞きたい事があったわ。」
「ん。なんや。」
「第二大陸って第三大陸の食料も豊富って言うてたやん。
それって瘴気の影響で腐らへんの?」
甘根は首をひねった。
「ん?どうなんやろ?シエル知ってるけ?」
甘根はシエルに質問を振った。
シエルは突然に話を振られて食事を止めると
「ふむ。それは魔泉に輸入した食料を全部つけこむ。
食料は魔力を帯びると瘴気の影響を受けなくなる。
液体魔石は水分ではないので食料をつけても食料は傷まない。
一度、魔力を帯びた食料は防腐効果が持続し続けて
何年でも保存がきくようになる。
加工は魔泉以外では無理。
瘴気や魔石で加工しても食料は腐ってしまう。
魔泉に一気につけこむという過程が大切らしい。
魔力を帯びた食材は悪魔にはとても美味しく感じる。」と答えた。
「おおお!それは興味深い話やわ。
その加工を応用したら第二大陸の食糧問題を解決する糸口になりそう。
俺が魔法学園に入学したら先生にどういう理屈なのか訊いてみるわ。
第二大陸は食糧問題さえ解決したら
五大陸で一番豊かな国になる気がすんねん。」と
周三が興奮気味に言った。
甘根が怪訝な顔をしながら
「なんでや?」と周三に訊いてきた。
「だって、魔石って俺らの世界の石油みたいなもんやろ。
この戦艦だって魔石で動いてる。
その動力で電球もつくし冷蔵庫も空調も動いてる。
いずれ車だって発明されるやろ。いやもう発明されてるかもしれん。
飛行機だって飛ぶやろ。魔石を産出する第二大陸の王って
俺らの世界の石油王みたいになるとおもわへん?」と
周三が説明すると甘根はそれを聞いて納得した様子で
「なるほどな。シュウは賢いな。
わしらの国にはまだ伸びしろがあるって事け。」と言った。
「そうや。でも、食糧問題を解決できたらって話やで。
第三大陸の食料を買いまくったら第三大陸の食料が不足してしまう。
それやとお金を出されても第三大陸は食料を売らなくなる。
第二大陸には蛇とか鼠とか蟲とかが生息できてるって事は
何か食糧自給のヒントがありそうな気がする。
魔法学園に入学したらそういう研究があるかもしれへんし
聞いてみたり調べたりしてみるわ。」
「ほんまけ。それはわしの国にとっては夢のある話や。
シュウに期待しとるで。」と甘根は笑顔で言った。
「たしかに食糧問題が解決したら第二大陸は安定するな。
田中は世界に目が向き始めてるのか。
田中はカンベインみたいに世界の仕組みを
変革する存在になるんかもな。」と中村は言った。
「シュウ、勉強、頑張って。」とシエルは周三に向かって言った。
「うん。この世界の人間じゃないからこそ見える事って
沢山あるかもしれんからな。
俺らで解決できる事は解決した方があとあと大きなトラブルに
巻き込まれずに済む布石になりそうやろ。」と周三は言った。
「なるほど。確かに世界が安定すれば戦争は減るからな。
大きなトラブルは減るかもしれんな。」と中村が応えた。
「平和やと勇者なんかいらんのかもしれんけど
勇者がいらん世界の方が健全やと俺は思うねん。」と周三が言うと
「ははは。そやな。」と中村は笑い、甘根はニヤッと笑みを浮かべて
「シュウは戦争が無ければ毎日が休みになるもんな。」と言った。
「闘争を好まない勇者というのは勇者では無い気がする。」と
シエルは不思議そうに言った。
「俺は戦争はまったく好きじゃないよ。
でも今日の勝ちはギヨク将軍に譲る気はまったくない。
もしも戦争が無くなったら勇者の俺は
毎日がお休みで給料がもらえるなんて最高やんか。」と
周三は満面の笑みで言い放った。
「おいおい。公務員の勇者が国民の税金で
毎日遊んで暮らすんか。」と中村は呆れた。
甘根はクスクスと笑いながら中村に向かって
「でも戦争する方がめっちゃ税金使うんちゃうけ。
勇者の給料なんてそれに比べたら微々たるもんや。
勇者の給料は保険みたいなもんなんちゃうけ。」と言った。
「世界から戦争が無くなったら
勇者は職を失うと思う。」と身も蓋も無い意見を述べた。
「職を失うのは困るわ。」と周三はシエルに言った。
中村は呆れた顔をしながら
「田中は今のうちにフェンティーアの職業安定所を
見つけといた方がええかもな。」と言った。
「あははは!もしもの時はわしの国でシュウを雇うで。」と甘根は笑った。
4人はその後もしばらく他愛のない会話をしながら楽しい時間を過ごした。
おはようございます。




