ディアナへの説得
周三は夕食後に第二艦橋の自分の部屋で
明日の一騎打ちについてや
この戦争についても色んな角度で考えていたが
考えがある程度は固まった。
周三は真っ暗になった第二艦橋で
考え事をしていたが考えがまとまったので
フロアの照明の電源を入れて部屋を明るくした。
「コウジに色々と頼まないといけないな。」
周三はテーブルの上に置いてある夕食のプレートが目に入った。
「いつも部屋に夕食を持ってきてくれてるのは誰だろう?
一言お礼を言っておきたいな。」
周三はテーブルに座って給水ポットの水をグラスに注ぐと
プレートの料理に手をつけることにした。
大き目のミートパイが一切れと
ニンニクの効いたキノコ入りソースで煮込んだ豚の角煮と
ポテトサラダと、パンをくりぬいて注がれたシチュー。
それにデザートのプリンがプレートに載っていた。
「あれ?今回のプレートは冷めてるのに美味しいな。」
周三はプレートの料理を完食した。
また、お腹がいっぱいになったので周三はソファーに寝転んだ。
エレベーターの扉が開く音がした。
「失礼します。シュウ。もう休まれてますか?」と
エレベーターの方向から聞き覚えのある声が聞こえた。
「いや、起きてるで。」と返事すると周三は上体を起こした。
エレベーターからこちらに歩いてくるのはディアナだった。
「おお。ディアナ。いらっしゃい。」
「シュウおかえりなさい。とても心配していたのですよ。
敵の軍船に乗り込んで敵の戦略級魔法を解除されたそうですね。
危ない事をしないと言っていたのに驚きました。
しかし、怪我もなく無事に帰ってきたと聞いて安心しました。」
ディアナの表情はとてもうれしそうだった。
周三はディアナに笑顔を向けた。
「ああ。最初は敵の大魔法を解除する気なんてなかったんやけど
大魔法の規模も仕掛けもえげつないものやったから
このまま帰還したら負けるかもしれんと思って
あんまり無い勇気を無理やり絞りだしたわ。
ロアンさんがすごく強かったからなんとか帰ってこれた。」
まぁ、とりあえずソファーに座りなよ。」
周三は向かいのソファーに向かって手を差し伸べた。
「はい。」とディアナは返事して周三の向かいのソファーに座る。
周三はディアナの目を見つめて口を開く。
「実はディアナに色々と話さないといけない事があったんやけど
いきなり戦争に駆り出されてディアナと
ゆっくり戦争以外の話をする機会が無かったな。」
「そうですね。たしかに周三はとても多忙でしたね。」
周三はディアナの言葉に頷くと
「そうだね。それで実はな。俺はこの戦争が終ったら
魔法学園に入学するかもしれんねん。」と切り出した。
ディアナは目を丸くした。
「それは本当ですか!それはあまりにも無責任ではありませんか?
今までなら留学も可能だったでしょうが
しかし、これからはいつ敵がフェンティーア都市国家に
攻めてくるかわからない状況になるやもしれません。
勇者がいなければフェンティーアはどうなるとお思いですか?」
ディアナは少し声を荒げてそう言った。
周三は落ち着いた様子
「それはわかるけど勇者に依存しすぎるのも
不健全な気がしないかい?
もちろん俺もフェンティーア都市国家の
安全保障については考えてはいるで。
だからフェンティーア都市国家の有事の際には
第一大陸と第二大陸と第三大陸と第五大陸の連合軍を
組織して運用できる国家機関をフェンティーアに作るつもりやねん。
各大陸の代表者を各1名選抜してもらい、
フェンティーア都市国家に駐在してもらって
その国家機関で働いてもらおうかなって思ってんねん。
まだフェンティーア都市国家の議員さんには話は通していないけど
たぶんこの戦争に勝てば議員さんも俺の意見は無視できないと思う。」
周三の説明にディアナは困った顔をした。
「たしかにそれは必要な機関だとわたしも思います。
今回の事で帝国はフェンティーア都市国家の
帝国駐留軍の兵力を増強するでしょうが
帝国から遠いこの地に帝国の兵力を集中させるわけにも
いかず帝国の軍部首脳陣も頭を悩ますことでしょう。
敵の兵力に対抗できる兵力を速やかに
かつ安定的に揃えるのであれば各大陸の同盟国に
援軍を要請して速やかに編成できてすぐに連合軍として
命令系統を構築して動かせる組織があれば理想的だとは思います。
しかし連合軍の責任者はあくまでも勇者であるべきでしょう。」
周三は首を横に振った。
「責任者が勇者であってはならない場合もあるんじゃないかな。
今回の事だって敵はフェンティーア都市国家を
攻撃目標に攻めてきているかもわからない。
敵対関係にあるかわからない対象に対して
第三大陸の代表である勇者が連合軍の総大将では
第三大陸は敵にしなくてもいい敵まで敵にするかもしれない。
状況によっては他の大陸の代表が
総大将に就任した方が適任な場合だってきっとある。」
周三の意見にディアナは頷くと
「そこまで考えておられたのですね。」と冷静な声で言った。
「もちろん、俺が総大将になるべき時はもちろん総大将になるけれど
例えば今回の総大将がもしコウジだったらもっと戦いやすかった。
第二大陸の国を第二大陸の国がやっつけるんやからね。
でも、俺が総大将になってしまった。俺がもしも敵とこじれて影の国と
フェンティーア都市国家が戦争状態に陥ってしまったらどうなる?
瘴気に溢れて草木も生えない第二大陸の遥か北に影の国があるんでしょ。
第三大陸が討伐軍を送ったとしても
戦地には調達できる食料が無いしさ。
瘴気で人間の兵士は健康を害しちゃうじゃん。
そんな第二大陸に第三大陸は派兵なんてできないやんか。
じゃあ、ずっとこんな防衛戦を続けていくの?
それは現実的だとはとても思えない。防衛戦なんて消耗戦やんか。
帝国の兵に犠牲が出続けたら帝国の国内は不安定になるんとちゃう?」
周三の言葉にディアナは帝国の内情に
何か思いあたることがあるのか苦しげな顔をした。
ディアナは口を開く。
「それでも勇者がフェンティーア都市国家を
離れる理由にはならないとわたしは思います。
フェンティーア都市国家の唯一の武官であり
第三大陸の武力の象徴でもある勇者が魔法学園都市で
学生生活に入ってしまっては緊急の連絡にも時間がかかり
フェンティーア都市国家でシュウが作るという国家機関も
機能しない気がします。わたしは留学に賛成しかねます。」
「俺は絶対に魔法学園に通う。それはこの世界を深く知る為でもある。
俺は帝国という国の名前は知ってるけど具体的には
帝国がどんな国かはまるで知らない。
第三大陸も具体的な事は何も知らない。
そんな人間が大陸の運命を左右する大きな決断に迫られるわけやで。
それこそ無責任とちゃうんか?」
周三はそう言ってディアナの目を真っ直ぐに見た。
ディアナは目が潤んでいた。
ディアナはしばらく黙っていたが少し声を詰まらせながら
「シュウの言う事は正しい。
あなたはもっと第三大陸の事を知るべきです。
そうですね。わかりました。
シュウが魔法学園に留学している間は
わたしがフェンティーアを全力で守りましょう。」
涙で潤んだ瞳でディアナは周三に笑顔でそう応えた。
おはようございます。




