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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
61/118

天使中村と悪魔甘根

 周三は第一艦橋でシエルから聞いたギヨク将軍の兄の存在を

ロアンに説明して別働軍の存在が

有るか無いかを確認する為の探索の強化を依頼する。

ミュアンからは自軍は長蛇の陣形という縦長の陣形であるが

その先頭に戦艦フェンティーアを持ってくる提案をした。

周三はミュアンのその提案に承諾する。

ロアンから水軍士官のコーラント少将を旗艦に迎える事で

軍船の隊列運動がよりスムーズなものになると提案してきたので

周三はそれも承認する。

ロアンは第五大陸の精鋭部隊であるヴァルキリー隊2000騎が

そろそろ到着するから船尾の物資搬入用の大型ハッチを

開く為に船尾に向かうと言った。周三は第二艦橋に戻るので

ロアンと共にエレベーターに乗るのであった。


 周三とロアンの2人はエレベーターに乗り込んだ。

「ヴァルキリーって別名で戦乙女って言ってましたけれど

みなさん女性の方ですか?」と周三がロアンに訊ねると

「はい。みな少女です。」とロアンは応えた。

1つ下の階と4つ下の階の2つのボタンをロアンが押した。

「2000人も少女が乗り込むんですか!?

それは軍艦の船内はかなり華やかになりますね。」

「ははは。そうですね。しかしヴァルキリーは

船内を歩き回らないと思います。

もしも、シュウがヴァルキリーに会いたいというのなら

船尾の物資保管スペースに足を運べば会えますよ。」

エレベーターが停止して第二艦橋のエレベーターの扉が開いた。

「2000人の女子と出会えるチャンスはこれから先の人生で

絶対に無いと言い切れます。だから田中と中村に相談します。」

周三はロアンに笑顔でそう言ってエレベーターを降りた。

「いい出会いがあるといいですね。」と

ロアンが微笑みながら応えてエレベーターの扉が閉めた。


 周三が第二艦橋のフロアの中央のソファーに行くと

左のソファーに甘根が座り

向かいの右のソファーには中村が座っていた。

「おお!おかえり。」と甘根は周三に向かって右手を大きく振った。

「どうやった?」と中村が周三に向かって訊いてきた。

周三は左のソファーの甘根の右横に腰掛けた。

「ロアンさんが警戒範囲を広げるって言ってくれたわ。」と

周三は中村に応えた。

「それはよかった。

とりあえずロアンさんからの情報待ちやな。」と中村が言った。

「シエルは?」と言って周三がキョロキョロとすると

「ああ。あいつはいまは風呂入っとるわ。」と甘根が応えた。

「そうか。」と周三は返事した。

「シュウ。聞いてくれ。タロウがひどいねん。」と

甘根が周三に言ってきた。

「どないしたん?」と周三が甘根に訊ねると甘根は

「タロウがシエルを天使にスカウトしようとしてんねん。」と

甘根は困った顔をして周三に言ってきた。

周三は中村に向かって

「タロウ。どないしたんや。それはルール違反と違うんか。

俺は以前に深夜のテレビ放送のドキュメンタリー番組を観ててやな。

夜のいかがわしいお店で働く従業員の女の子をライバル店の店員が

お客さんとして来店をしてスカウト行為をする迷惑行為が

多発しているっていう社会問題についての特集を観たで。

天使がそんな迷惑な行為をしてええんか?」と注意した。

「田中。勘違いするな。シエルにはそんな話はしてへんで。

甘根にシエルを天使に戻す気はあるか?と訊いただけや。

田中のいう夜のお店に例えるなら

店長さんに相談してる訳やから筋は通ってるやろ。

僕は甘根に天使に戻す気があるなら

シエルは天使に戻れる可能性が十分にあると教えただけやで。」と

中村が説明した。それを聞いて周三が

「それじゃあスカウトとはちゃうやんか。」と甘根に言った。

「そうなんけ?」と甘根は不思議そうな顔をした。

「堕天しても天使に戻れるもんなんやな。驚きやわ。」と

周三が中村に言った。

「ああ。戻れる場合があるで。

シエルはおそらく余裕で天界から免罪符を勝ち取れると僕は思った。

だからもしもその気があるんやったら

僕の権限で天界へのシエルの罪の免除の手続きを

行ったるでって甘根に言うただけや。」と中村が応えた。

「それで甘根はどう思ってんの?」と周三が甘根に訊くと

「あいつはわしの部隊の大事な戦力やしなぁ。

可愛い部下や。手放すわけないやろ。

もし手放すとしたら婿さんが現れた時やな。

わしは寿退社やったら無条件で認めたるわ。」と甘根は応えた。

「じゃぁコウジがシエルをお嫁さんにしたらええやん。

コウジは王子やねんから俺らと違って跡継ぎが必要やん。」と

周三が甘根に言うと甘根は

「そんなんは考えてないわ。

わしは部下に手を出すとかそういうのは好かんねん。」と応えた。

「でもコウジは悪魔やねんからその程度の倫理違反くらいでは

怒られへんやろ。」と周三が言うと

「わしが嫌やねん。」と甘根は言ってプイっとソッポを向いた。

「そういうもんか。ま、コウジは硬派やからなぁ。

でも、シエルは天使には戻らんと思うけど。」と周三が言うと

「田中、なんでそう思うんや?」と中村が訊いてきた。

周三は中村に向かって

「いやな。さっきシエルが生まれ変わるなら

人間がええって言うとったからな。」と応えた。

「ほんまけ?」と甘根は真剣な表情を周三に向けた。

「ほんまや。」と周三は返事した。

周三は「堕天使は人間になれるんか?」と中村に訊いた。

「おそらくシエルなら人間にもなれると思う。

天界からの罪の免除が認められたら肉体の浄化が始まる。

第一大陸で浄化が行なわれれば天使になれるし

第三大陸の教会で浄化を行なえば人間に戻れるはずやけれど

人間への戻し方は詳しくはあとでうちの天使に訊いてみるわ。

僕はそこまでまだ詳しくはないからな。」と中村は説明した。

「お前らなぁ!悪魔があかんみたいに言いやがって!

シエルが悪魔である事に不満を言ってたんか?」と

甘根はすねながら2人に訊いた。

「いんや。シエルは悪魔で問題ないと言ってた。」と周三が応えた。

「甘根、勘違いするな。

僕は天使という道もあるという選択肢を示しただけであって

別に無理に天使にしようと思ってるわけやないで。

幸せの形は人それぞれやろ。

僕の価値観を押し付ける気持ちは最初っから無いで。

まぁそろそろシエルが風呂をあがってくるかもしれんから

僕が結論を言わせてもらえるならシエルさんは

人間に戻って人間の男性と結婚して

悪魔軍を寿退役するのが一番ええのんとちゃうか。」と

中村が言うと甘根は笑顔になって

「まぁ、それやったら

わしは喜んでシエルをお嫁に出すわ。」と納得した。

「解決してよかったな。」と周三はこの話題を締めくくった。

周三は改まって甘根に向かって

「コウジに訊きたいんやけど

第二大陸って何を大事にして戦うもんなん?

今度の敵って大魔法で全滅覚悟で航行してきてたやんか。

そんな事をして何か得する事でもあるん?」と訊いた。

甘根は考え込んだ。

「なんやろなぁ。悪魔は名誉とか大事にしてるのう。

一族の名声を上げるのが目的ちゃうけ。

それくらいしか第二大陸でもらえるもんなんて無いと思うで。

詳しい事はシエルに聞いてみたらどうや。」と甘根が応えた。

「そやな。」と周三は返事をした。

あ!と周三は大事な話題を思い出した。

「コウジ!タロウ!」と周三がテンションが上がった声で叫ぶと

「どないしたんや?」と甘根が言った。

「なんかあったんか?」と中村が言った。

周三は前のめりになってテーブルに両手を置くと

「なんと!ロアンさんのヴァルキリー隊が

もうすぐ到着するらしい。」と切り出した。

甘根と中村は、それがどないしてん?というような顔をした。

甘根は「ほんで?」と問い返した。

中村は「戦力が整うなぁ。」と応えた。

「ヴァルキリーは全員が少女らしいで。」と周三は小声で言った。

風呂場にいるシエルに聞こえないようにとの配慮だろう。

すると甘根はソファーに立ち上がって

「マジけ!すぐ会いにいこうや!」とテンションがMAXになり

中村はうつむき加減で表情を隠しながら

「2000人の女子って少子化のこのご時勢では

女子高でも見られへんやろな。

ふむ。僕も一緒に見に行くことにしようかな。

僕は天使やからやましい気持ちは決して無いで。」と言った。

ガチャッ!とバスルームから物音が聞こえたので3人はシーンと沈黙した。

「とりあえずヴァルキリーさんたちは

軍艦に着いたばかりで忙しいやろから今行っても迷惑かもな。

女子の第一印象って大事やから今日はやめておいて

明日、昼食の後に挨拶しに行ってみようや。」と

周三がささやき声で提案した。

甘根と中村は無言で頷いた。

バスルームの扉が開くと

シエルが頭にタオルを巻いて戦闘服姿で中から出てきた。

「いい風呂だった。」とシエルは言うと

テクテクと歩いてバーカウンターにあるグラスを取り

ソファーまで来ると中村の横に座った。

シエルはテーブルの上に置いてあるジュースの瓶を持ち上げて

ジュースをグラスに注ぐとグラスの中身を一気に飲み干した。

「おいしい。」とシエルは元気な声で言って

グラスをテーブルに置いてまたジュースをグラスに注ぐと

ソファーにもたれかかり長い足を組んだ。

シエルの服装は鎧の下に着ている戦闘服なので色気も何も無い。

周三はシエルに向かって

「普段着とか持ってきてないの?」と言うと

「そんなものは持ってきていない。」と応えた。

甘根が周三に向かって

「シュウ、戦場にお洒落着を持ってくる悪魔は確かにおるにはおる。

でもシエルは普段でも鎧以外の服装を見たことがない。」と言った。

「そうか。」と周三はいうと静かに目を瞑った。

周三は目を開くと口を開いた。

「戦争が終ったらシエルに感謝の気持ちとして

お礼に素敵な衣装をプレゼントしたい。

シエルを連れてみんなでフェンティーアの街でもブラつこうか。」と

周三が提案すると甘根は

「シエルもたまにはシャバの空気を吸わなあかんで。」と賛成した。

「ええんちゃう。

僕らはいっつも男ばっかりでスイーツを食べに行ってるからな。

女子がおった方がバランスが取れると思うわ。」と中村も賛成した。

「うん。いこう。」とシエルはうれしそうに返事をした。

周三はシエルに向かって「シエ姉、質問やねんけど

悪魔って何の得も無いのに任務として命令されたら命をかけるもんなん?

ギヨク将軍って捨て身の任務やん。任務に成功しても

何か得する事があるんかな?って疑問やねん。」と訊くと

「炎の国は鉄火場では損得という感覚は薄い。

その場の雰囲気で命を懸ける悪魔が多い。

イフラート王の影響かもしれないがその代わり我が軍は強い。」と

シエルが言うと周三は「嫌な影響だな。」とポツリと感想を述べた。

「他の国の悪魔は一族の繁栄が目的。

軍功を挙げたり任務に成功すると一族の位が上がる。

昔の王たちは軍功を挙げた悪魔個人の位だけを上げていたけど

魔王ゼネシスの王朝からは個人ではなく一族の位を上げるようになった。

それからは一族の為に命を捨てるという考え方の悪魔が増えた。

ゼネシス王朝以前は戦死は無意味だったけれど

一族のために意味のある死という価値観が生まれた。

一族の名誉や名声は彼らにはとても大事。

一族の位が高いとその一族の悪魔は出世がものすごく早くなる。

一族の位が低いと頑張ってもなかなか出世ができなくなった。

だから悪魔は一族のために命を懸ける。」と説明した。

周三は頷いた。

「なるほど。個人の実力主義の社会だったのが

家格による格差社会に変化したんか。

すごく参考になったわ。

俺はしばらく外で一騎打ちの作戦を練る。

みんなはここでゆっくりとしていってや。」

そう言うと周三は立ち上がった。

中村もソファーから立ち上がった。

「僕もそろそろ補給船に戻るわ。

補給船に部下が全員待機してるからな。

情報が欲しいからちょくちょくこっちにも寄らせてもらうわな。

明日ももちろん寄らせてもらう。じゃまたな。」と言うと

中村は軽くみんなに手を振ってからエレベーターに向かった。

「中村また明日な。甘根とシエルはゆっくりして行ってな。

夕飯も一緒に食おう。」と言って周三はみんなに手を振る。

「おう。夕飯も楽しみやな!」と甘根は手を振った。

「わたしがついていかなくても大丈夫か?」とシエルが言った。

「ありがとう。でも大丈夫やから。」と周三は笑顔で応えた。

「シュウ。頑張って。」とシエルはちょっと寂しそうに手を振った。

周三はエレベーターの横を抜けて第二艦橋の扉を開けて外に出た。

こんばんは。

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