組み換え
周三と甘根と中村とシエルの4人は食堂で昼食をとった。
食堂での会話でシエルからギヨク将軍には
兄がおりいつも兄弟2人で軍を運用している事実を聞く。
中村からシエルが天使時代は第一大陸では一流の歌い手であり
その歌声は人間の子供の心の成長に良い効果が認められて
第三大陸の、とある孤児院の担当官をしていた事を語る。
先に食堂から周三は出た。
甘根と中村とシエルの3人を食堂に残して周三は第一艦橋に向かう。
甘根とシエルと中村はまだ食堂に残って食事をするというからだ。
その3人は食事を終えたら第二艦橋に向かうと言っていた。
周三はエレベーターに乗り一番上の階のボタンを押した。
周三は第一艦橋に到着した。
フロア内にある階段を上って艦長席に行くと
ヴォルグ艦長が周三を見て立ち上がるとニヤニヤした顔で近づいてくる。
「勇者殿!先ほどまで甲板で特訓されておられましたね。
窓から拝見しておりましたぞ。
勇者殿は第二大陸の女性武官とラブラブレッスンを
されておられましたなぁ。」とヴォルグは嬉しそうに言った。
周三はドキっ!としてヴォルグを見上げたあと艦橋の窓を見た。
艦長は俺の特訓の様子をこの窓に張り付いて見ていたのか。と動揺した。
ヴォルグとロアンとミュアンの3人は
朝と同様に机に地図を広げて座っていた。
乗組員がロアンの隣に椅子を1つ置くと周三はその椅子に腰掛けた。
周三はここで動揺を見せるとややこしい話の流れになると思い
あくまでも落ち着いた様子を装っている。
「ヴォルグ艦長。ラブラブレッスンなどと何を根拠に申されるのです。
あれは真面目な特訓です。確かに女性の武官に指導を受けておりましたが
彼女は俺と今日が初対面ですのでニャンニャンなどは致してはおりません。
艦長には誤解を招く発言はお控え頂きたいです。」と
周三はヴォルグに自重を促した。
「これは失礼しました。おれは勇者殿と女性武官が
肩で押し合いっこなどしながらこちらに歩いてくるのが見えましたので
乳繰り合っているのかと勘繰ってしまいました。
あれも特訓のカリキュラムだったのですね。」と
ヴォルグが皮肉な笑顔を周三に向ける。
「ええ。まぁ。そうですね。
武官から教えて頂いた武術が体当たりの型が多かったので
その当て方を復習しながら歩いていたのです。」と周三は真顔で言った。
「そうですか。俺は第二大陸の武術には全く知識がなかったもので
つい勘違いをしてしまったのでしょうな。申し訳ない。」と
ヴォルグはニヤニヤしながら謝った。
ミュアンが周三を見つめて
「勇者様。うちにも遠慮せずに体当たりしてくださいね。」と
言ってきて周三は苦笑して「機会があれば。」とだけ応えた。
ロアンが思い出したかのように
「第二大陸で体当たりが中心の武術と言えば
ほぼ間違いなく李氏六芒拳でしょうね。
拳聖と呼ばれたリュウウンの弟子のリブンが編み出した拳法です。
リュウウンの弟子の中にはカンベインの仲間のバルキンとゲルグが
いましたのでかなり由緒正しい拳法らしいですよ。」と言った。
「そうなんですか。ロアンさん詳しいですね。」と周三が言うと
「いえ、わたしは詳しくはありませんが
リュウウンは武術にマナや魔力を織り交ぜる技法を編み出したのです。
当時はとても画期的な事でしたので世界的に話題になりました。
わたしも剣術をたしなんでおりますので
その技法について興味があり、第三大陸に移住した折に
フェンティーアの図書館でリュウウンについて
書かれた文献を少し調べた事があるだけです。
詳しく調べなかった理由は
わたしにはマナが備わっていませんので
わたしの剣術には最初から応用はできなかったからです。
ですから、以前、ディアナ姫の剣術について
シュウから質問された時は
具体的なアドバイスはできなかったですね。」と応えた。
「なるほど。そのリュウウンって方は人間なのですか?」
「ええ。人間です。弟子のリブンは
最初は人間でしたが後に悪魔になったそうです。」
「そうなんですね。だから第二大陸でも使われているんですね。」と
頷くと周三は3人を見渡した。
「みなさんにお話があります。」と周三は話を切り出した。
ヴォルグとミュアンとロアンは皆が真剣な顔になった。
「先ほど俺を指導してくれた炎国武官のシエルが言っていたのですが
ギヨク将軍には兄がいて、いつも2人で行動していたそうです。
でも、俺とロアンさんがギヨク将軍と接触した時には
ギヨク将軍の兄はいませんでした。
たまたまその部屋にいなかったのかもしれませんし
別の船に乗っていた可能性もあるでしょうが
そんな重要な人物が我々との交渉の時に顔を出さないのも不自然です。
もしかしたら別働軍が存在しているかもしれません。
ロアンさんには何か情報が入れば教えて頂きたいのです。」
ロアンは真剣な顔で頷くと
「わかりました。他の軍船団の存在は未だ確認されていませんが
不審な船や船団などが航行していないかどうかは
もう少し詳細に人魚やセイレーンに調べてもらいましょう。」と応えた。
「ありがとうございます。」と周三がロアンに礼を言った。
「あの勇者様にご相談なのですが
陣形の配置を換えたいと思ってます!」とミュアンが提案してきた。
「そうなの?今は縦に蛇みたいな陣形だよね。
横に2隊、縦に3隊、その後ろに軍艦フェンティーアで
軍艦の後ろには補給船5隻がくっついてるんでしょ。
それをどのようにかえるのですか?」
「えっとですね。隊列も陣形も変えないんですけれど
この軍艦だけを移動させて陣形の先頭に配置したいんです!」
「それは大胆な組み換えですね。旗艦を先頭にするんですか。」
「はい!絶対その方がいいです。えっと。
ヴォルグさんとロアンさんもそれで大丈夫って言ってくれました!
敵を包囲しちゃうとですね。軍艦の主砲が生きないんです!
それに軍艦は最強の盾にもなっちゃうんですよ!」
「ミュアン少佐に作戦は一任していますので
それでいいですよ。」と周三は返事をした。
詳しく説明を求めるとミュアンは興奮して
説明が抽象的になっていってわかりにくくなるので
理解できる説明の間に承認しておいた方がよいと周三は考えた。
ミュアンは目を潤ませながら
「勇者様はうちのことを
そんなに信じてくれてるんですか!」と感激していた。
続いてロアンが口を開いた。
「あと、第二艦橋のひとつ下の階に
空いている司令官室があるます。
そこへコーラント少将をお迎えしようと思っています。
旗艦に水軍運用の専門家がいないのはかなり厳しいです。
旗艦にコーラント少将をお迎えして
全軍の隊列運動の指揮を一任しようと考えています。」
その提案に対して周三は
「最初は帝国と炎の国の水軍は指揮系統が別々の軍でした。
しかし、それが問題点と気づいたコーラント少将は
炎の国の水軍の将シュトム将軍と
かなり綿密な打ち合わせをしておられました。
ですからコーラント少将を旗艦にお迎えすれば
全体の隊列運動がスムーズに行なえると
俺も思いますので提案に賛成します。」と応えた。
「ありがとうございます。では早速準備いたします。」
「お願いします。」と周三は言った。
ロアンは椅子から立ち上がると
「そろそろわたしのヴァルキリー隊が到着しますので
ヴァルキリー隊を船尾にある物資の搬入スペースに
収容しようと思っています。
船尾の搬入用の大型ハッチを開けなければならないので
今から船尾に向かいます。」と言った。
すると周三も立ち上がった。
「では、俺は部屋に戻ります。」と言った。
ヴォルグも立ち上がると周三に近づき耳元で
「勇者殿。アンの事もお忘れなく。」と言ってきた。
「忘れてませんがアンとはそういう間柄ではありませんよ。」
「おれは勇者殿の父になる覚悟はしていますぞ。」
そう言うとヴォルグは周三に軽くウインクした。
周三は笑顔でヴォルグの目を見つめて
「覚悟をするのは自由です。未来のお父さん。」と応えた。
するとヴォルグは周三の肩を軽く手で叩いてニヤリと笑った。
「ではまた。」と周三はヴォルグとミュアンに手を振ると
ロアンと共にエレベーターに向かって歩き出した。
おはようございます。




