表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
59/118

食堂

 周三とシエルはギヨク将軍との一騎打ち対策の特訓を終えて

第二艦橋の総司令官室に戻るのであった。


 「ただいまぁ。」と元気よく言って

周三は第二艦橋の扉を開けて中に入った。

堕天使シエルも周三の後ろについて第二艦橋に入った。

「おお。ええ感じの時間やんけ。ほな食堂に行こけ。」

そう言ってソファーに寝転がっていた甘根が上体を起こした。

甘根はまだバスローブを身につけている。

「そやな。特訓したらすげぇお腹すいたわ。」

周三はそう言って甘根に頑張った風なアピールをしたが

周三が体を動かしたのは演武を一回しただけであった。

周三はテーブルの上に持ち帰ったジュースのビンを置くと

「ええ特訓が出来たわ。シエルは武術の先生として

素晴らしかったで。コウジに感謝するわ。」と言った。

「そうけ。そりゃ良かった。」と甘根は笑顔で応えた。

シエルがソワソワとしている。

周三はソファーに甘根の向かいのソファーに腰かけると

挙動不審なシエルに気付いて

「シエ姉、どうかしたんか?」と声をかけた。

「シュウ、トイレに行って来る。どこにある?」と

シエルが言ったので周三がトイレの扉を指差して

「そこにあるで。いっトイレ。」とダジャレを交えて教えた。

シエルはダジャレに気付いた様子もなくそそくさとトイレに向かう。

ダジャレにはスルーかぁ。とシエルに関西の突っ込みという作法を

求めるのは欲張りだったかと心の中で苦笑いした。

しかし、真実を言えば周三とシエルとはそもそもの言語が違うので

シエルにダジャレをダジャレとして認識されなかったのである。

「どうや?敵の将軍に勝てそうか?」と甘根が訊いてきた。

「う~ん。ま、勝算はゼロでは無くなった気がする。

あとは工夫やけどそれはゆっくり考えるわ。」と周三は応えた。

「シュウの力になれたんなら良かったで。

さて、わしもとうとうこのバスローブを脱ぐときが来たな。」

甘根はバスローブを脱いで

ソファーにかけていた皮ズボンとタンクトップを着た。

「コウジ、バスローブはそのままソファーに置いといてええで。」

「ええんけ。ほなここに置いとくわ。わしに用意された部屋にも

バスローブが置いてあるかもしれんなぁ。確認せなあかんわ。」

甘根はソファーの上にバスローブを無造作に置いた。

トイレからシエルが出てきた。

シエルは周三と甘根に向かって「お腹すいた。」と言った。

「そやな。食堂いこ。」と周三が言うと

「さ。いこけ。」と言って甘根がブーツを履いて立ち上がった。

周三はシエルをまじまじと見て

「あれやな。シエ姉は鎧を脱いだ方がええんちゃう?

食事の時にゴワゴワして食べにくそうやん。」と指摘した。

「おう。シエル。鎧を脱いでここに置かせてもらっとけや。

後でまたここに戻ったらええ。

ついでにここのシャワーも後で借りたらどうや。」と甘根が言った。

「使ったらええよ。運動して汗をかいたやろからね。」と

周三も甘根の意見に同意した。

シエルは鎧を脱ぎながら自分の体をクンクンと嗅ぐと

「うん。あとでシャワー借りる。」と応えた。

周三がソファーから立ち上がると

3人で揃ってエレベーターに向かって歩き出した。


 エレベーターに乗り込むと4つ下の階に下りるボタンを押した。

「お昼のメニューは朝のメニューとはまた違うんやろうな。」

周三はワクワクした様子でそう言った。

「そりゃ違うやろうな。違ってくれな面白ないやん。

朝はデザートでシュークリームとゼリーとフルーツを食べたから

昼はケーキで攻めたいのう。」と甘根は意気込んだ様子で言った。

「楽しみだ。」とシエルはニコニコしていた。

周三は第二大陸の食事がどんなものかを知らない。

だから質問しようと思った事もあるが偵察の時に

悪魔のワイルドさを目の当たりにしてからは

第二大陸の食事については訊かない方がいいと周三は判断していた。

エレベーターが止まり、3人はフロアに出て艦尾の方角に歩きだした。

しばらく歩くと右手に大きな食堂がある。

ピーク時間である正午よりも前に着いたのだが

食堂は結構混雑をしていた。

テーブルに置いてある大中小の取り皿の中から

3人とも大きい皿を持つと

料理の載ったテーブルに移動して大皿から料理を取り分け始めた。

甘根は大きな海老や肉料理を皿に山盛りに載せて

いったん自分のテーブルに置くとまた新しい大きな皿を取って

料理を山盛りに盛り付ける。

シエルも甘根を見習って同じようにしていた。

周三はとりあえず皿を山盛りに盛り付けてから

ドリンクとスープを取ってテーブルに置いて一皿分を完食してから

お腹の具合を測りつつ料理を追加で取りに行くタイプである。

3人はテーブルに座ると、しばらくはひたすら無言で食べ続ける。

周三と甘根が2人で朝に食事していた時は

乗組員の視線をあまり感じなかったが

シエルは美人で背も高くて翼まで生えてるので

他のテーブルに座っている乗組員たちの視線をすごく感じた。

「こういう食事は久しぶりだ。」と嬉しそうにシエルが言った。

「いっぱい食うとけ。シエルはほんまにラッキーやったな。

シエルはシュウの特訓が終ったら

軍船にすぐに帰還するっていう約束をしたんやろ。

隊に戻ったらもうこんな凝った料理は食べられへんで。」

そう言って甘根は笑った。

シエルは嬉しそうに「うん。」と頷いた。

「ほんでシュウはシエルといつまで特訓する予定や?」と

甘根が周三に訊ねると

「え?さっきで特訓は終ったで。」と周三は応えた。

「そうけ。」と甘根は一言言うと同情の目をシエルに向けた。

最初、シエルは、なぜ甘根がそんな同情の目を

自分に向けてるのかがわからなかった。

食べてるうちにシエルはその事に気付いた。

「いや、シュウにはわたしがしばらくついていた方がいいな。

基礎トレーニングにも付き合う。」とシエルは無邪気な笑顔で言った。

シエルの提案に収蔵は全く興味なさげな様子でエビの皮をむいていた。

「いや。もう大丈夫や。あとは何にも練習する気は無いから。」

周三はシエルに目を向けずにそう返事をした。

シエルは慌てた様子で甘根の方を見る。

「王子からもシュウに言ってください。

基礎トレーニングがどれだけ大事かを。

シュウは全然わかっていないんだ。」とシエルは甘根に話を振った。

甘根はシエルを可愛がっているので

仕方ないのう。という素振りをシエルに見せた。

「シュウ。シエルはわしが面倒見るからシュウの特訓にシエルが

ずっと付き添ってるって事にしといてやってくれるけ。

シュウは口裏だけを合わせてくれるだけでええから。」

「ん。それはもちろんええよ。シエ姉にはホンマに感謝してる。

夕飯も一緒に食べたいしな。」と周三は甘根の提案を承諾した。

「シエル、良かったな。連合軍の総大将の命令やから

誰にも文句は言われへんぞ。

遠慮せんとこの船におったらええで。」と甘根はシエルに言うと

「王子は偉い。」とシエルは笑顔で言った。

「なんや。コウジはシエルにえらい甘いんやなぁ。」

「まぁ、シエルはわしの隊のエースやからな。

大事におもっとんねん。」と甘根は笑った。


 「自分らここにおったんか。」と声が聞こえた。

周三は声が聞こえた方向を見るとそこに中村太郎が立っていた。

「おお!タロウやんか。」と周三が手を振った。

中村は周三たちのテーブルに近づいてくる。

「探したで。田中も甘根もどっちも部屋におらんかったからな。

でも、2人が行きそうなとこはここしかないとは思ったけどな。」

「わしらは食うことくらいしか楽しみがないからのう。」

「それはそやろな。僕も適当に料理取ってくるわ。」

中村はそう言って料理が置いてあるテーブルに向かった。

中村は料理を取りに行って戻ると周三の横の椅子に腰掛けた。

中村の目の前の席にはシエルがいた。

「なんや!その女性から魔力を感じるで!って事は

甘根の配下か。えらく美人やな。ん。

その翼って、もしかして堕天使か?

そう珍しい事でもないか。はじめまして。中村太郎です。」

中村はシエルに向かって自己紹介をした。

シエルは中村を真っ直ぐ見ると

「わたしはシエル。呼び捨てでかまわない。」と応えた。

「僕の事もタロウと呼んでくれたらいい。」と

中村はシエルに返事すると続けて

「女性と一緒やなんてどないしたんや。

この女性は甘根の彼女かなんかか?」と訊いた。

「いや。ちゃうねん。俺が飛行型の悪魔と

一騎打ちをするからその対策のための特訓に

シエ姉は付き合ってくれとってん。」と周三が応えた。

田中は納得した様子を見せながら

「そやそや。田中はこの戦争を一騎打ちで決着つけるらしいな。

その方が損害が出んからええけど

田中にしてはずいぶんと思い切った決断やな。」と意外そうだった。

「なりゆきで仕方なくな。ホンマは一騎打ちも嫌やねんけど

穏便に片を付けるには選択肢がこれしかなかってん。」と周三は苦笑した。

「ほう。偵察だけって言うてたのに大魔法まで解除してきたらしいやん。

田中は勇者として成長してるんやなぁ。」と中村は感心した。

中村は続けて周三に

「一騎打ちの相手ってどんな感じや?勝てそうか?」と訊いた。

「相手はフクロウの顔をした鳥の悪魔やねん。

名前はギヨクっていう将軍なんやけど

今思うとなんか胡散臭いおっちゃんやった気がするなぁ。

俺には戦闘経験が無いわけやし勝てるかどうかって訊かれても

勝てるかもしれんってくらいしかこたえられんわ。」と応えた。

「そうか。ロアンさんが教えてくれたけれど

一騎打ちで負けたとしても味方全員の命は保障されて

すぐに全員を解放してくれるっていう約束なんやろ。

悪魔からそんな人道的な条件を引き出すやなんて

田中は交渉術も結構すごいな。驚かされたわ。」と中村は褒めた。

「ギハクはいた?」とシエルが周三に向かって訊いてきた。

「ギハク?いやギヨク将軍だけ。副将はコパンさん。」

「ギハクはギヨクのお兄ちゃん。いつも2人でいる。

ギハクがいないとおかしい。」とシエルが言った。

甘根が首をかしげた。

「わしはこの世界に来て日が浅いから

まったくわからんが兄貴が一緒におらんのはおかしいのんけ?」

「うん。おかしい。

あの兄弟は2人でひとりの将軍って感じ。」とシエルは応えた。

「敵の水軍がもう一軍あるかもしれんってことかもな。

偵察を強化せなあかんかもしれん。」と中村が懸念した。

周三は考えた込んだ様子で

「確かにそれやったらえらいことやで。

あとでロアンさんに相談してみるわ。ロアンさんなら

遠い海域の情報も人魚さんの力で掴めるかもしれんから。」と言った。

中村は頷いた。

「とりあえず偵察の強化は必須やな。

他にも敵の軍船団があるか事実確認が出来ないと

こちらも対策も立てようがないからな。」

甘根はなぜか嬉しそうに口を開いた。

「まぁ別に軍隊がおったらおったで戦えば済む話やん。

わしの出番が無いかもしれんと思ってたから燃えてくるわ。」

周三は呆れた顔をした。

「コウジの自信が羨ましいわ。俺はなるべくなら穏便に済ませたい。

敵を倒しても敵の国とこじれて戦争が長引くような事になったら

俺は戦争ばっかりせなあかんように

なってしまうんちゃうかとホンマに怖いねん。

そうなったらさすがに俺は元の世界に帰らせてもらうで。」

中村は周三の言葉に賛同する様子を見せた。

「そやな。田中の気持ちはわかるわ。

甘根とは違って僕と田中は平和主義なんや。

避けれる戦いはなるべく避けたいよな。

戦争の無い平和な国で育ったのに

命のやり取りをしたいなんて普通は思わへんで。

もしも別の軍船団がいて戦いになるにしても

まずは敵の情報を知って有利に事を運びたいな。

別に軍船団がいたらその船団も大魔法を積んでるかを知りたい。

何か些細な情報でも入ったらすぐに話し合おう。

それにしても甘根の部下のシエルさんは

いい情報を教えてくれた。シエルさんは優秀や。」

「それほどでもない。」とシエルは少し照れた様子で言った。

「ん。あれ?シエルって名前をどっかで聞いた事あるなぁ。

なんやったかな?たぶん本かな。

最近、図書館で借りた本でシエルさんと同じ名前を見た気がする。」

中村が悩みだした。

「シエルは元天使やから名前が第一大陸に残ってるんかな?」

周三がそう言うと中村は

「そうかもしれんな。船では暇で本を読み漁ってるんやけど

シエルって名前は結構見た気がすんねん。。。

ああ。アビエータの聖囀セイテンか。

大天使シエルって名前があったわ。

かつては第一大陸の中で一流の歌唱力を誇った天使や。

2つ名が確か、アビエータの聖囀。」

「へ~。それがシエルなんやったら

シエルってすごい天使やったんやな。」と周三が言った。

シエルは少し考え込んだ様子を見せた。

「もうあまり憶えてない。確かに昔は歌をよく歌ってた。」

「昔は昔、今は今や。

今のシエルはわしの国の特攻堕天使やで。」と甘根は言った。

中村は意外そうな顔を甘根に向けた。

「そうなん?今のシエルさんは甘根の国で武闘派で頑張ってんのか。

シエルさんは天使時代は第三大陸の内の

天使直轄の、とある孤児院の担当官やったよな。

シエルの歌声が人間の子供の心の成長に良い効果があるらしくて

孤児院の担当官に推挙されて天使長から任命されたとか。

天使時代のシエルさんの記述は性格が温和な印象やけどなぁ。」

「まぁシエルの過去についてはもうその辺でええやろ。」

甘根が笑顔で中村にそう言った。

中村は甘根の笑顔に何かを察した様子で

「ああ。そやな。過去なんかどうでもええこっちゃ。

ちょっと最近読んだ本に出てた名前やったから嬉しくて

つい、いらんことまで話してしもうたかもな。

すまんな。この話はここまでや。」と言った。

中村はシエルの過去についての話題をするのをやめた。

おはようございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ