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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
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武術

 周三は敵の将軍ギヨクとの一騎打ちの対策の為に

甘根からギヨクと同じ飛行系の悪魔の

堕天使シエルを紹介してもらう。

周三とシエルは外に出て比較的広い船首の甲板に行く。

周三はシエルに参考のためにと

飛行をしてもらったがその飛行速度のあまりの速さに

絶望した周三はすぐにギヨク将軍との一騎打ちを諦めた。

しかしシエルの涙の説得で

もう一度頑張ろうと、少しだけだが思った周三は

特訓すると服が汚れるかもしれないからと

第二艦橋に周三だけ戻って軍服から私服に着替えた。

そこで甘根からシエルの堕天の理由を

訊かない方がいいと忠告される。

私服に着替えた周三はジュースの入った大瓶を

2本を胸に抱えて外で待つシエルの元に向かうのであった。


 「シエルおまたせ。」

周三は甲板に座ってるシエルに声をかけた。

シエルは笑顔で「おかえりなさい。」と言い、立ち上がる。

周三はふと最初に持ってきたジュースを見ると

2本のうちの1本が空き瓶になっていた。

周三は持ってきた2本のジュースを最初に持ってきた瓶の横に置いた。

「あんまりジュースを飲むとおトイレに行きたなるで。」と

周三はシエルに忠告をした。

シエルは部屋にいた時からずっとジュースをがぶ飲みしている。

「そうね。わかった。」とシエルは返事した。

シエルは自分のお腹を両手でさすりながら「タプタプ。」と言った。

「そらタプタプになるわ。」と

周三は突っ込みを入れて呆れた顔をした。

周三は気を取り直すと

「シエルの説明ってわかりにくそうだからさぁ。

ややこしい話はとりあえず抜きにしようか。

シエルから俺が訊きたい事は2つや。

まずこの世界の武術についてが一つ。

飛行系悪魔の攻略方法がもう一つや。

それをシエルに教えてもらいたい。それ以外は今は教えていらん。

俺はシエルの実践を見て学ぶからシエルのやりやすいように

実践的に俺に教えてくれたらええよ。」とシエルに説明をした。

シエルは少し考え込んでから口を開いた。

「飛行できない武人でも武術が達人ならば飛行できる悪魔でも

達人には敵わない。だからシュウは武術を極めたらいい。」

「ほう。」と周三が頷くとシエルは

「この世界の武術は色々あるけどわたしが教える武術は強い。

だから大丈夫。まず武術の基本は呼吸。

呼吸法の種類は3種類ある。ちょっとわたしを見てて。」

周三は「あいよ。」と返事すると魔眼を発動した。

シエルは肩幅ほどに足を広げて自然な姿勢で立った。

息をゆっくり吐いて息を止めた。

周三の魔眼から見えたものは神経を活性化させる魔力の流れであった。

「今の呼吸が静って呼吸法で感覚を研ぎ澄ませる。

とっても大事な呼吸法。憶えておくといい。」とシエルは説明した。

「オッケー。静やね。」と周三は応えた。

「次の呼吸をやる。」

シエルはそのままの姿勢で膝を少し曲げて両手を正面に少し突き出した。

まるで焚き火に当たっているかのような腕の形をしていた。

そして、息をゆっくり吸って息を止めた。

周三が魔眼で見えたものは運動能力の向上させる魔力の流れであった。

「この呼吸法は発と言って身体能力を強化する。

攻撃や防御で絶対に必要な呼吸法だから憶えて。」とシエルは説明した。

「なるほど。発ね。」と周三は応えた。

「3つめの呼吸をやる。」

シエルは膝を深く落として肘をわき腹につけて引き絞ると

大きく息を吸い込んで止めた。そのあと目を大きく見開いた。

一瞬、大きな魔力の波動が周囲に広がってシエルの体の周りが

魔力の球体に覆われて少しの間だけだが

シエルの体を覆う球体が光を帯びているように見えた。

周三が魔眼から見えたものはお腹に溜めた空気で

魔力が爆発的なエネルギーに変えて発散されて全能力を

一気に向上させるという急激な魔力の流れであった。

「今やった呼吸法は爆と言って必殺の間合いで相手を倒す時に使う。

一定時間だがチカラが爆発的に高まって相手を圧倒できる。

でも、使いすぎるとすぐ魔力もスタミナも切れる。

体への負担がとても大きい。

だからここぞの時にだけ使う。」とシエルは説明した。

「爆ね。了解。」と周三は返事した。

周三は以前にハヤトールがディアナとの剣の練習で

実践していた呼吸法を魔眼で見て会得をしたが

「爆」という呼吸法はそれとまったく同じ原理だった。

「武術は基礎体力が大事。

今から筋力アップのトレーニングを始める。」

シエルが意気込んだ様子で腕立て伏せの姿勢をとる。

周三は手を顔の前で横に振りながら

「それいらない。即効性が低いし筋肉痛でコンディションが下がる。

一騎打ちが1ヶ月後とか期間が開いてるならいいんやけど

今回の一騎打ちは近日中だから筋トレなんかやらない方がいい。」

周三はシエルの提案を一蹴した。

シエルは腕立て伏せの姿勢から立ち上がると

周三を見つめてすごく真剣な顔をしながら

「筋肉は大事。」と言ってシエルは周三に食い下がった。

それに対して周三は「筋トレはパス!」とそっけない態度を取った。

ちょっとすねた様子の見せるシエルに周三は

「ああそうだ。武術なら演武とかある?

あるならそれを全部見せてよ。」と提案した。

シエルは納得いかない様子で「うん。わかった。」と返事した。

「本当にシュウは筋肉いらないの?」とまたシエルが言ってきた。

シエルは明らかな非難の目で周三を見ていた。

やはりシエルは納得いかない様子だった。

「筋肉はもうええから早く演武してみせてよ。」と周三が促す。

「見てもシュウは筋肉が無いから会得は出来ないよ。」

シエルは文句を言いながらしぶしぶ演武を開始した。

背筋をピンと伸ばした姿勢で膝を曲げて腰を落とすと

そこから半歩踏み込んで甲板を強く踏みしめて正拳突き。

そこから演武が始まった。

上段正拳突きに下段正拳突きを何度か変化をつけて行う。

シエルの正拳突きは腕は力まずに柔らかい動きだった。

インパクトだけに気合を入れて打ち込んでいた。

続いて肩を引いて半身の姿勢から

拳を胸につけながら打ち込む肘打ち。

そのまま足を前に強く踏み込んで

半身で拳を頬に当てた状態で肘打ちを放つ。

その肘をほどいて大きな円を描いて腕を回すと

半身で連続して胸に拳を当てた状態で肘打ちで前へと移動する。

そこから相手を掴んで相手を崩す動作からの

中段回し蹴り、上段回し蹴り、下段回し蹴りを

左右の足で連続で行なった。

相手の首を抱え込んだ姿勢からの膝蹴りの連打。

そこからの前蹴りした足をそのままおろして

強く踏み込んだチカラを利用してえぐりこむような形で

相手のみぞおちへの掌底。

その掌底で伸ばした手で相手の腕を掴む動作から

相手を引っ張り込んだ動作に移ってからの頭突き。

その腕を引っ張って相手を後ろに移動させてから

背中への肩での体当たり。

それで弾かれた相手を追い討ちする背中での体当たり。

型の動きが全て円や螺旋を描いた軌道で体を動かしている。

攻撃してるのが右腕なら左腕は次の準備や防御に

常に無駄のない動きで相手を倒す戦術が動きに練り込まれていた。

攻撃と防御が密接に繋がっており攻撃が決して途切れない。

意味のわからない不思議な動きや無駄にしか見えない動きも

魔眼で見ると必要な動きである事がはっきりとわかった。

シエルの攻撃は全てインパクトを重視しているのも理解をした。

そこからシエルは体や腕や足で様々な円を描いた動きをする型を演じた。

その動きは全て防御の型である事が周三は魔眼でわかった。

最後にシエルは片足を強く踏み込んで足を鳴らすと

最初の構えに戻り演武を終了した。

周三はシエルに向かってパチパチパチパチと大きな拍手をした。

「シュウは筋肉が無いからきっとできない。」

シエルは爽やかな笑顔を周三に向けながら言った。

シエルはもうすねてはいないようだが根には持っている。

「でもさぁ。飛行してる相手には

パンチとかキックとか届かへんやん。

それは武術で補えるもんなん?」と周三がシエルに質問をした。

「呼吸法を合わせて使うと攻撃に魔力が乗るの。

シュウはそこに立ってみて。」とシエルが周三に指示する。

シエルは周三の正面から10mくらいの距離を取って立ち止まった。

周三に向かって左肩を前に半身に構える。

「え!?なになになになに?

ほんまに痛いのとかやめてや!」と周三は完全にビビッていた。

「動かない方がいい。動くと怪我する。」とシエルは冷静に言う。

「わかった。動かん。動かん。」と周三は観念して直立した。

シエルは周三に向かってバっと右の拳で正拳突きすると

シエルから10mくらい離れていたはずの周三が

何かに押されたような力を感じて体勢を崩して尻餅をついた。

もちろんシエルの拳は周三の体には届いていない。

なのに周三には胸に何かが当たって押された感覚が確かにあった。

シエルはニコっと笑うと

「今のが拳波。拳から魔力を帯びた衝撃波が出る。

足からでも武器からでも衝撃波を出すのは可能。」と説明した。

「ほう!それはすごい!飛行系悪魔にもそれは有効やわ!

この世界にもRPGのエンチャントシステムみたいなのがあるんやな。」

素直に周三は感心した。

シエルは突然、上半身の鎧を外しだした。

「この技術は防御にも使える。

呼吸で体に流れる魔力を体のどこかに集中するとそこが硬くなる。

わたしはさっきまでタプタプだったお腹が呼吸法で硬化して

すごく硬くなってる。

シュウは軽くわたしのお腹をパンチしてみたらいい。

おもっきりは叩くのはやめた方がいい。

シュウの拳がたぶん割れる。」と鎧を脱いだシエルが説明した。

「うん。わかった。」と周三は返事をすると

ゆっくりシエルに近づき正面に立って軽くお腹をパンチしてみた。

「ん?シエルってお腹に鉄板入れてるの?」と周三は言った。

周三がシエルのお腹に拳を当てて感じた硬さは

筋肉という有機的な硬さとはまったく違う無機質な硬さだった。

「いいえ、服の下はわたしの素肌です。疑うなら服を脱ぐけど。」

シエルが真顔でそう言った。

周三は、まったく。といったような呆れた顔で

「シエ姉、脱ぐのはええけど服の下には下着をつけてんの?」

周三がそう訊ねると「だから素肌だと言っている。

何もつけてない。」とシエルは恥ずかし気もない様子で応えた。

「あらら。それは色々と意味が変わってくるから却下やわ。

下着をつけてたらギリギリオーケーやってんけどなぁ。」と

周三は残念そうに苦笑いした。

「そうか。それはそうかもしれない。失礼したな。」

シエルは少しだけ恥じらい気味に周三に微笑むと

上半身に鎧をつけはじめた。

シエルは鎧を着け終わると腰を落として肘をわき腹につけると

「シュウは体を踏ん張って。」とすぐ正面にいる周三に声をかけた。

周三は目を丸くして「え?怖い!何?何?」と言って身構えた。

ボワっとシエルの魔力が周囲に広がって魔力がはじけたように見えた。

その瞬間に周三は何かの衝撃波のようなもので

体が吹っ飛んだが身構えてたので転倒せずに済んだ。

不意打ちだったら怪我をしていたかもしれない。

「今のが気合で周りの全部の方向の敵を吹っ飛ばす発波って技。

攻撃的な防御で使える。」とシエルは説明する。

「今の技は結構使い道がありそうやな。」と周三は感想を述べた。

周三は魔眼でシエルの武術を全て会得した。

周三はその情報を頭の中で整理する。

「じゃあシエ姉。今から俺の演舞見てみてよ。」

「シュウにはまだ無理だと思う。」とシエルは応えた。

周三は直立し肩幅ほど足を開くと

腰を落として正拳突きをしてそこから演武を開始した。

さっき見たシエルの動作の全てを完璧に再現してみせた。

周三は呼吸法は魔力ではなくマナを使っておこなっている。

マナの補助があるので以前にロアンの演武を

真似た時のような運動不足によるスタミナ切れは生じなかった。

周三は演武を終えると、見たか!というようなドヤ顔でシエルを見た。

シエルは甲板に寝転がって何故か爆笑をしていた。

笑いすぎて声も出ない状態になっている痙攣している。

「シエル!あんた失礼な子やな。

人が真面目にやってんのに!笑うなんて人格を疑うわ!」

周三は不機嫌な声でシエルを批難した。

「あはははははは。。。はぁ。。。はぁ。。。。あはははは!

だって、だってシュウはお肉は柔らかいのに体は硬いね。

蹴りの足が全然、上に上がってなかった。

シュウは筋肉トレーニングよりもまずは柔軟体操。。。。ぶぶぶ。

ぷ。ぷ。。。あははははははははははは!」

シエルは地面をめちゃくちゃ転がりながら笑い続けた。

確かに周三の回し蹴りの軸足からの角度は

上段で約40度、中段で約35度、下段で約25度だった。

上段蹴りで50度以下というのは

周三の回し蹴りは全てがローキックのカテゴリーだったと言えるだろう。

周三の持つ魔眼の力でも運動不足の硬い体まではどうしようもない。

「シエルは失礼なやっちゃな。」と周三は笑顔をシエルに向けた。

「シュウは面白い。気に入った。」

シエルは満面の笑顔を周三に向けてそう言った。

こんにちは。

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