忠告
周三は甘根の部下の堕天使シエルに敵の飛行系悪魔のギヨク将軍との
一騎打ちに向けた対策を教えてもらおうと外の甲板に出た。
周三はまず飛行速度を検証しようとシエルに軽く飛んでもらったが
周三はシエルの飛行速度のあまりの速さに絶望する。
一騎打ちを諦めると心に決めた周三は第二艦橋に戻ろうとするが
シエルは泣きながら周三を引き止める。
さすがに周三もバツが悪くなりもう一度やる気になるが
本気の武術の稽古は軍服がボロボロになりそうなので
シエルを残して第二艦橋に着替えに戻るのだった。
周三は艦橋の階段を上り
第二艦橋の扉を開いて中のフロアに入った。
扉を入って右に進み
そこにあるクローゼットを開けて私服を取り出した。
振り向いた周三はドキっ!とした。
甘根がソファーに一人で座っていたのだ。
「おかえり。もう帰ってきたんけ。」
「いや。着替えにきただけや。すぐ外に戻るけど
どないしたんや。えらいダンディーやんか。」
甘根はバスローブを着てソファーに座り足を組んでいた。
ジュースを入れたワイングラスを指で挟んで回していた。
甘根は周三の方に顔を向けてバスローブの襟元を指でつまんで
「洗面台の横の棚でこれを見つけてなぁ。
着てみたらものすごく気に入ってしもてん。
これ、お土産にほしいわぁ。」と上機嫌の様子だった。
「それはよかったな。よく似合ってるで。
それはそうとコウジ。シエルのお姉ちゃんは
すぐ泣くから困るわ。」と周三はさりげなく甘根に愚痴を言った。
「ああ。確かにあいつは泣き虫やな。
でも、あいつは自分の為には泣かへん。他人の為に泣く女や。
あいつのそういうところを評価してる。
シエルにはシュウのチカラになれるだけの
実力があると見込んでわしは連れてきたんやで。
シュウは黙ってわしの連れてきたシエルを信じてくれたら
わしも友達がいがあるってもんやろ。」
横目で周三を見ながら甘根はワイングラスに入ったリンゴジュースを
一気に飲み干すとテーブルの上にワイングラスを置いた。
「コウジ。。。。渋いやん。かっこええこと言うやんか。
俺は自分の小ささに恥ずかしくなってしもうたがな。
シエル姉ちゃんにちょっとひどい事を言った気もするし謝るわ。」
「そうけ。シュウがそうしたいんやったらそうしたらええ。」
甘根は艦橋の窓の外を見つめながらそう言った。
「うん。そうするわ。」
周三は甘根に背を向けて軍服を脱いでクローゼットに片付けた。
「まぁ別にあいつには謝らんでええけどな。
あいつはそんなん気にしてないやろ。
腐っても元天使やから悪意とかに疎いとこあるからな。
だから人間の悪意にさらされて壊れてしもたんやろなぁ。
シュウが謝っても謝られた意味があいつにはわからんと思うで。
でも、謝る事でシュウが救われるならそうした方がええな。」
甘根はリンゴジュースをワイングラスに注ぎながらそう言った。
「そうかぁ。改まって謝るって空気が重くなるよな。
気まずい空気は嫌やからシエル姉さんには謝らへん代わりに
シエル姉さんのご指導を素直に受けることにするわ。」
周三は着替えながら下着姿でそう言った。
甘根はグラスを回しながら
「それでええんちゃうけ。あとシュウに言うのは忘れてたけどな。
なんであいつが堕天したかは訊かんといた方がええ。
あいつは楽しそうに理由を話すやろけど
まったく楽しく無い話やからな。
わしは何も知らんからシエルに訊いてしもうて
話を聞いたあと後悔したで。
シュウには訊いて後悔する前にわしから忠告しとくわ。
でも、聞くなと言われたら聞きたくもなるやろ。
我慢できなくなったら素直に訊いたらええ。
それが若さというもんや。わしは咎めはせんよ。」
「そうか。忠告ありがとな。俺も重い話は嫌いやわ。
あと他人の過去とかむやみに触れて地雷を踏みたくない。
シエル姉ちゃんの堕天にはちょっと興味があったけど訊かんとくわ。
いまコウジに言われへんかったらたぶん訊いてたで。
コウジってバスローブを着ると大人キャラになるんやな。
俺はそういうコウジもアリやと思うで。」
「そうけ。やっぱり格好から入った方がええんかな。
わしも王子やからな。威厳のある格好とかしてみてもええかもな。」
「ええかも。俺も勇者の鎧とか作ってもらってるで。」
「ええな。わしも威厳のある鎧とか作ろうかな。
でも、鎧って重そうやし蒸れそう。やっぱ学ランを作ってもらおう。」
「いいな。学ランとか改造したらもっと格好よくなるかもやで。
短ランとか長ランとかコウジに似合いそうやん。」
「ええなそれ!学ランを用意してくれたっていう代議士に会わせてぇな。
わしから直接、店とか教えてもらってオーダーメイドで作ってもらいたい。
学ランの裏地に刺繍を入れるのはロマンやと思わんけ?」
「うん。刺繍もええなぁ。
昇り竜とか白虎とかの刺繍はかっこええよなぁ。
見えないところに凝ったおしゃれをするというのはロマンやな。
気持ちわかるで。また代議士さんに会ったら学ランの話をしておくわ。」
「おう!恩に着る!よろしく頼んだで。」
周三はシエルの堕天についてまだ興味はあるが
知ったら嫌な思いするのだったら知らなくてもいいと思った。
私服に着替えた周三はバーカウンターの方に向かう。
「じゃあコウジどうぞゆっくりして行ってな。」
「おう。特訓、頑張ってな。昼飯は一緒に食堂に行こうや。」
「おお!そやそやお昼ごはんも楽しみやな。
シエル姉さんも連れていこうや。」
「ええで。シエルの仕事は今日は全部無しにしてあるからな。」
「なんか俺のせいで迷惑かけてごめんな。」
甘根は右手の握りこぶしの親指を立てた。
「そんなん別にええよ。そのかわり特訓を頑張れよ。」
「オッケー。失望させんように気張ってくるで!」
周三はバーカウンターからジュースの大ビンを2本取り出した。
それを周三は胸に抱えるとシエルの待つ船首に向かうのだった。
おはようございます。




