飛行速度
敵の将軍ギヨクとの一騎打ちへの
対策を立てるべく周三は悪魔である甘根興次に相談する。
甘根は飛行する悪魔への対策は
同じ飛行系悪魔に聞けばいい。と周三に提案した。
甘根の部下の堕天使シエルを周三の部屋に連れてきて紹介する。
周三はシエルと話をしてみるとシエルは口下手である事が判明して
仕方なく前置きなしで実践的特訓から始める事にした。
周三とシエルは第二艦橋から外の甲板に出るのであった。
周三とシエルは軍艦の船首の広いスペースに出た。
「ここなら特訓の場所としては最適だと思うけどどう?」と
周三が言うとシエルは頷いて「いいと思う。」と返事した。
「じゃあ、早速、飛行スピードを見せてよ。」
「わかった。」とシエルは返事すると翼を大きく広げた。
その翼をはためかせてシエルは垂直に飛び上がる。
甲板から20mほど上空でシエルはバック転のように
弧を描きながら船首の左方向へ移動しながらゆるやかに降下して
軍艦の外の海上へと出た。
甲板のとほぼ水平の位置でシエルの体は水平姿勢になった。
その瞬間に翼をはためかせた。
ビュン!と羽音がしたと思ったらシエルは一瞬で
周三の右横を通り過ぎていたのだ。その後に周三の横に風が走った。
「え!?」と周三は驚愕した。
シエルの姿を周三は目では捉えきれなかったのだ。
周三は今度は魔眼を発動し後ろを振り向くと
シエルは船首の右方向の海上に飛び出していた。
シエルは真っ直ぐそのまま船外に100mほど真っ直ぐ飛ぶと
水泳のクイックターンのような動きで体勢を入れ替えた。
シエルは周三の方を向いて水平姿勢で翼をはためかせた。
周三に向かってシエルは直線に加速をした。
すると、あっと言う間にシエルは周三の左横を通り過ぎた。
すぐにまた後ろを振り向くと
シエルは翼を広げて速度を落として軍艦の船べりに足を向けた。
両足で船べりを蹴るとシエルは垂直に飛び上がった。
100mくらい上空まで上昇するとシエルは頭を下に向けた。
そして、上空から一直線に周三に向かって急降下してきた。
一瞬でシエルの美しい顔が周三の頭上に近づくと
シエルは姿勢を上向きにして翼を羽ばたかせてまた上空に飛び上がった。
真上に顔を向けていた周三は上からものすごい風圧を感じて目を閉じた。
シエルは50mほどで両足を抱え込みクルクルと後ろ向きに
回転しながらゆっくり降下して軍艦の左側の船べりの真上で
体をほどくとピタッと船べりの上に直立でシエルは着地した。
周三はあまりにも唖然としてしてしまい開いた口が塞がらなかった。
「シュウ、見てた?今のは軽めの準備運動。
わたしはまだまだ加速できる。」とシエルが無邪気な笑顔で言った。
周三も無邪気な笑顔をシエルに向けた。
「ありがとう。シエル。俺はあきらめがついたよ。
空中で一騎打ちなんて最初から無理だったってちゃんと気付けたよ。
さて、海風が強いし部屋に戻ろう。
明日にでもギヨク将軍の所に行って頭を下げて一騎打ちは断ってくるよ。
お互い全軍で死力を尽くした戦いになるだろうけれど
俺は味方の力を信じて第二艦橋から戦いを見守るよ。」
周三の目は今日の空のように透き通っていた。
シエルは船べりからピョンと甲板に飛び降りると周三の正面まで来た。
シエルは周三の両肩に両手を置いた。
周三が怪訝な表情をするとシエルは
「あきらめるな。わたしがついてる。」と爽やかな口調で励ました。
「俺はシエルがついていても意味が無いってわかったんだよ。
さぁもう部屋に戻ろう。」と周三はシエルに言い捨てると
シエルの両手を振り払って船尾方向に歩き始めた。
シエルは周三の左腕を両手で掴んで周三を止めた。
「わたし、まだ何も教えてない。頑張ればたぶん勝てる。」と
言ってシエルは首をブンブンと横に振った。
「は?たぶんなんだろ!100%で勝てなきゃ俺には意味が無いんだよ。
シエル。せっかく来てくれたのにごめんな。はいさよなら。」と
言って周三はシエルの手を振り払おうとした。
周三は完全に意固地になっていた。
シエルは周三の腕を放さずうつむいてシクシクと泣き出した。
「勇者は頑張らないとダメだよ。だからシュウ頑張ってよ。」と
言いながらシエルは鼻をすすっていた。
意固地になっていた周三だが女性を泣かせるのはバツが悪い。
「う~ん。もう。しゃあないなぁ!もうちょっとだけ頑張ってみるわ。
だから、シエルはここでジュースでも飲みながら少し待っててよ。
俺は部屋に戻って私服に着替えてくる。
特訓をしたら軍服がボロボロになりそうやからね。」
「わかった。シュウ、絶対に帰ってきてよ。」
シエルは嬉しそうな顔を周三に向けて周三の腕から両手を放した。
シエルは甲板に腰をおろすと膝をかかえこんだ。
周三はシエルを見おろて
「でもね。シエルが勝てる方法を教えてくれても
俺が一騎打ちには勝てないと思ったらその時はあきらめるよ。
その時は止めても絶対に無駄だよ!絶対だからね!
だから全てはシエルの指導次第なんだからね!」と言い捨てた。
全てをシエルのせいにして周三はそのまま艦橋に向かって走って行った。
こんばんは。




