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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
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扉の向こう

 その日の放課後。



 (部活動をしていない俺は1人で真っ直ぐ家に帰る。


しかし今日は、神様っぽい羽生が一緒だ。)


  帰り道に学校の近くの公園で


周三と羽生の2人はブランコに隣同士で座り会話をした。



 「チカラに詳しい場所って遠いん?」と周三が質問した。



 「気持ち的には近いよ。」


羽生が無表情にブランコを揺らしながら答える。



「ちょw気持ち的ってどの程度の距離なんよ。


気持ち的でなく物理的に近ければ安心やねんけどな。


ふむむ。


明日は水曜やから次の日も平日やん。


遠くに行って疲れるのとか嫌やねんけど。」



 「週末が良いのかな。」



「それに越したことないんやけどな。


それにあんまり遠い所やったら


家に帰るのも遅くなるから


親にも説明せんと


心配するから邪魔くさいなぁっておもってさぁ。」



 「その心配は無い。


時間もかからない。


全工程の所要時間は1時間くらいで予定している。」



 「1時間!!!はや!!


それやったら何にも問題無いな。


1時間やったら今からでもええくらいやんか。」



 「ふ~ん。今からでもいいのかい?


そんなに田中周三がやる気だとは


思っていなかった。」


羽生は周三に笑顔を向けた。



 周三は羽生の笑顔には


とても優しさがあふれている気がした。


「俺の事は周三とかシュウでいいよ。


羽生の事もユウって呼んでいい?


あだ名で呼び合うのは神様には失礼なのかな?」



 「いや、それでいい。


田中周三の事はシュウと呼ぼう。


私の事はユウで構わない。


それに君にとっては神様ではないから


失礼ではない。


何も気にしなくていい。」



 「そっか。じゃぁ今日行こうか。


山を吹っ飛ばすチカラを


目の前で見せつけられたら


男やったらちょい燃えてくるやん。


今日、目的の場所に行こうぜ。


すぐに電撃は無理でも


静電気を巻き起こして


髪の毛を逆立てるくらいの


コツは身につけて帰りたいわ。」



 「電撃?


なぜ電撃にそんなにこだわるの?」



 「勇者と言えば強力な電撃やろ。


ほぼほぼにRPGゲームのイメージだけなんだけど。」



 「そう。


でも静電気起こせるチカラだとむしろ自身が帯電して


ドアを触ったりしたら自分に電撃が走るのでは?」



 「ああ。そうやな。静電気は諸刃の剣やな。」



 「諸刃?そうなのかな。


私には片刃なイメージしかわかなかったよ。」



 「そうなん?」



 「そうさ。


では、早速だけれど周三は


家に荷物を置いたら制服のままで


この公園にまた来てくれるかな。


貴重品は不要。


財布も電子機器も全部置いてきてくれないか。」



 「全部?


お金とかかからへんの?」



 「お金はおそらく何とかなる。」



 「神様が言うんやったら間違いないよな。


荷物がいらんのは身軽で助かるわ。


こっから家まで3分くらいやから


今から10分くらいで戻れる。」



 「では、ここで待っている。」



 周三は足早に自宅に向かって歩き出した。






 丁度、10分ほどで周三が公園に戻ってきた。



 「おまたせ。」


周三は学制服姿であらわれた。



 「では、行こう。」

羽生はブランコから立ち上がる。



 「で、目的地はどこ?」



 「私の自宅。」



 「自宅?自宅でユウが稽古つけてくれるん?」



 「それでも構わないけれど


おそらくシュウが思うより勇者のチカラは強大だから


練習で勇者のチカラを解放するのはお勧めしない。」



 「え?じゃあ何しに行くん?」



 「チカラの使い方を導きだすヒントをあげたい。」



 「ヒント?なんかまどろっこしいね。」



 「そうだね。


でも、それが早道だと思う。


いきなり大きなチカラを解放しても理解が不足すると


不注意で自分の身を滅ぼしかねない。」



 「そうか。うっかりで電撃で校舎を吹き飛ばしたりしても

俺には時間を戻すチカラが無いから困るもんね。」



 「そういうこと。」



 「ユウってどんなとこ住んでんの?」



 「マンション。」



 「マンションか。一人暮らし?」



 「うん。」



 「一人暮らしって気楽で自由やん。


うらやましい。


でも親と住んでないと


自炊とか洗濯とかは邪魔くさそうやな。」



 「そうかもしれない。」



 「ユウの部屋ってどんなんやろ?楽しみやわ。」



 「きっと普通。ここ。」



 「うわ!めっちゃデカい高層マンションやん!


何階?何階に住んでるん?」

目を輝かせて期待する周三。



「1階。」



「1階!!!


高層やのに無駄無駄感がハンパないな。


でも、普段の暮らしには超便利やね。」



 羽生がマンションの入り口ロビーで

自動ドアのロックを解除した。


マンション内部に入ると


広いフロアにエレベーターが3基あった。


エレベーターフロアの左右に


廊下があり扉が並んでいる。


羽生は周三を連れて左側の廊下を


真っすぐ歩いた。


突き当たりの扉の前に立った。



 「ここだよ」と一言言って


羽生は鍵を開けて扉を開いた。



 「お邪魔します」と


言い周三は玄関から部屋の中を見渡す。


「ひろ!!!!」


玄関も広いし奥のリビングも広々としている。


リビングに入ると


バーカウンターがあり


豪華なシステムキッチンも設置されていた。


ガラス戸から見えたベランダは広々としている。


「それにしても生活感がゼロやな。


しかもベランダから見える景色がなんか地味。


家具もないしモデルルームって感じだね。」



何も無い部屋。


空き部屋と言われた方が納得できる空間だった。



 「そう。


ここに初めて来た時はベランダに


上の階からの落下物らしき物が無数にあった。」



 「プププ。それが高層マンションあるあるなのか。」



 羽生がベランダの窓にある厚いカーテンを閉める。


 「そろそろその場所に行ってもらう。」



 「え?こっから近いんとこ?」



 「うん。ここから行ける。」


羽生が隣の部屋の入り口らしき引き戸を指差した。



 「ホンマにそこから行けるんか?」

周三は疑わしげにニヤニヤしながら


羽生が指さす引き戸に近づいた。



 周三は引き戸をバっと開けた。


周三は室内を見た瞬間。


「ただの和室か~~~~い!」


と大げさに言いわざとらしくズッコケた。


そこはただの畳敷き12畳の和室だった。



 「そう。シンプルな和室だ。


でも、一回閉めてもう一回開くとね。


そこには


君にはきっと未知なる世界が広がってるよ」


羽生は引き戸を一度閉めてからもう一度引き戸を開けた。



 「ホンマかいな。そんなわけないわ。


絶対そんなことないはず。」


周三が引き戸の向こうを見た。



 太陽の光が引き戸の向こうから差し込んだ。


石畳にレンガの建物。


時間はもう夜のはずなのに真っ青な青空。



「すげぇヨーロピアン!


なに?


引き戸の外って


ヨーロッパ連合なEUなの??」


目を輝かせて周三は


完全にテンションがあがっている。



 「いいや、ヨーロッパではない。


こことは違う世界。


魔法や天使や悪魔や


ドラゴンなども存在するんだ。


君のイメージにある勇者のチカラには


詳しそうな世界でしょ。」



 「確かに。なんかオイラわくわくしてきた。」



 「そう。それでは気をつけて行ってらっしゃい。」



 「ちょっ。一人で?マジで?行ってとか言うけれど


どこ行ったらええの?不安やからユウもついてきて~な。」



 「それは無理。


私は存在に割り込む能力を持っているから


あちら側の世界に行っても


戻ってはこれるけれど


周三はこちらの世界から向こうの世界に行くと


こちらの世界に周三の存在が


突然、完全に消えた状態になってしまう。


基本的に周三の存在は1つだからね。


するとこちらの世界は周三が


消滅したと認識し確定させてしまう。


そうなると周三という存在の枠が


消滅してしまって


周三はこの世界には最初から存在しなかった事に


なっていまい戻ってこれない。


だから周三の存在の枠を


私が代理することで存在枠を確保する。」



 「ややこし!


けれど、なんとなく今の説明で理解はできたわ。


でも、1人で行くとなると周りをぐるっと散歩して


すぐ帰ってくるのが精一杯な気がするなぁ。


時間も無いし今日は異世界散歩だけを楽しもうかな。」




 「時間の心配はいらないよ。


君がそっちに行ってる間は


こちらの世界の時間は経過しない。


あちらに何年行っていようが


こちらの時間は進まない。


その間はこちら側の世界の存在である君は


こちら側の世界が時が進まない限り


歳を取らない。


なんの問題もないだろう?


ゆっくり冒険でも修行でも調べ物でもしてきたらいい。」



 「そんな夢のような魅力的なお話を


ありがとうございますだね。


あとあっちに行っても自由に帰って来れるの?」



 「外からこの扉を周三が開けて入ればいつでも戻れる。」


戻ったら、もちろんこの世界の時計の針は回り出すよ。


学校と異世界を両立したいならそれもいいかもしれないね。


 しかし、明日、この世界に異変が起こったら


チカラを使いこなせていないと何も出来ないよね。」


「ああ。なるほど。ある程度は


チカラをつけて戻ってきた方がいいな。


こちら側にいつでも戻れるなら安心した。


あと、ユウとの連絡手段はある?」



 「無い。


こちらの世界の時間が止まってる状態だから。


それに知りたい事は全部あちらの世界にある。」



 「わかった。


とりあえず目指す場所はある?」



 「カノレル雑貨店に行けばいい。


扉の向こうは


都市国家フェンティーアという場所。


水の都として名高い美しい都市。


そちらの世界では大陸のもっとも西に位置している。


もっとも治安がよく安全な場所だから平和な地域。


あちらに行ってすぐに周三が怖い思いをするという事は


おそらくは無いと思う。」



 「そっか、ユウありがとな。


手から静電気ではなく


稲妻を出せる男になって帰ってくるから。


その日までアディオス!」


周三は羽生に別れの挨拶をして


扉の外に勢いよくジャンプして出た。


その背中はとても楽しげだった。

部屋が寒いので春になってほしいです。

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