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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
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停泊所

 周三はカノレル雑貨店で戦艦フェンティーア号の

艦長のヴォルグと初対面する。

ヴォルグはハウルとリアの三男でありアンの父親であった。

周三とヴォルグは挨拶を交わすと

ヴォルグはカノレル雑貨店をあとにした。

周三はハウルとリアとアンの4人で

カノレル雑貨店の奥の間で食事をした。

そのあと自分の部屋に戻り剣を腰に納めた。

アンの提案で周三はフェンティーア議事堂前まで

馬車に同乗させてもらう事になった。

アンと周三を乗せた馬車はフェンティーア議事堂前で

周三を降ろすとアンを乗せた馬車は西に向かって発進した。


 時間はもうとっくに夜なので空には星が瞬いていた。

海風が少し肌寒い。道の脇には街灯があるので視野は広い。

フェンティーア議事堂の敷地の右横には幅のとても広い道路がある。

その道を真っすぐ北に進むと船の停泊所がある。

フェンティーアという国はいくつかの大きな島が繋がった都市だ。

島と島が橋で繋がってはいるが国内でも橋からは遠い目的地には

船で移動した方が陸の移動よりも遥かに移動時間を短縮できる。

フェリー、水上バス、渡し舟、小型ボート、ゴンドラなどの船舶を

国民が利用して交通や輸送を行なっている。

水上バスや小型フェリーはとても高価な魔導エンジンが動力源である。

魔導エンジンは魔石を燃料にして可動する。

フェンティーア国民は水上バスや小型フェリーを

無料で利用できるので徒歩や馬車よりも遥かに速い移動が可能である。

フェンティーアは交通に不便な地理でありながらも

交通にとても便利な国家なのである。

フェンティーア議事堂の裏にも水上バスの停留所がある。

カノレル海洋貿易会社はその停留所を間借りする形で

戦艦フェンティーア号を停泊させていた。

フェンティーア国民は日が暮れると外をあまり出歩かないので

普段は外灯は点灯しないのだが今日は外灯で道が照らされている。

街灯は電灯であり照明はとても明るい。

公共施設などは照明には電灯が採用されている。

フェンティーアの公共機関や公共施設は夜に営業する事は滅多に無い。

だから周三が電灯を目の当たりにする事は無かった。

電球の外灯を見た周三は元の世界を思い出して懐かしい気持ちになった。

周三は議事堂の右横にある道を北に進んだ。

だんだんと道を歩く人が多くなってきた。

それに見えてきた停泊所の場所のあたりは

煌々とした光であふれてひときわ明かるかった。

道が終わるととても広い土地に出た。

周三は目の前のその光景に驚いた。

停泊している軍艦に隣接する大きな広場には人々があふれかえっていた。

数えきれないほどの照明が焚かれていて

21時だというのにまるで昼間のような光景だった。

この大勢の人々は軍艦フェンティーア号の見物人なのだろう。

人々の目は軍艦フェンティーア号に釘付けだった。

見物の人々は軍艦を見あげながら楽し気に会話をしていた。

家族連れは父親が小さな子供を肩車したり

母親が子供を抱っこして軍艦を指さしていた。

この光景だけを見たら大きなお祭りのように見える。

軍艦に隣接した広場には

ある程度広い範囲をポールにロープを張った形で区切られていた。

大勢の警官隊がロープ内に人が入らないように警備していた。

このロープで区切られているエリアの中には

関係者以外は立ち入り禁止なのだろう。

だが周三は関係者だ。

周三はロープ内に入るための入り口らしき場所を発見した。

入り口には長机が置かれていて警察官が関係者の名簿を

照らし合わせて人の出入りを管理しているようだった。

周三が入り口の前に立った。

「関係者受付」と書かれた小さな立て札があったので

その立て札が置かれてある机の前に移動した。

すると、その机の座席に座っている若い男性の警察官に

「関係者の方ですか?」と声をかけられた。

「はい。勇者の田中周三です。連合軍の総司令官です。」

それを返答を聞いた若い警察官は

とても驚いた様子を見せて椅子から起立して周三に敬礼した。

普通ならば私服の周三を見て警察官は疑うと思うがそうはならない。

写真があるわけでもないのに周三は

私服でどこへ行って勇者を名乗って誰かに疑われた事が無い。

そうならない理由がきっとあるのだろう。

周三は何度か不思議に思って、なんで疑わないのか訊きたい。と

思ったがその度に知らない方がいいような気がしてやめた。

「司令官殿。少々お待ちください。」

周三にそう告げると警察官は走ってロープ内に入った。

誰かを呼びにでも行ったのかな。

ロープの入れてくれたらそれでいいのに。と

周三は心の中でぼやいた。

しばらくすると若い警察官は

正装をした高齢の男性を伴って帰ってきた。

「これはこれは勇者様、お待ちしておりました。

ご無沙汰しております。」とその男性は周三に声をかけてきた。

周三は顔を見てすぐにその男性の事を思い出した。

この世界に来たばかりの時に

ザレム議長の使いで周三に会いに来た都議会議員だ。

フェンティーア議会は国会議員と都議会議員が存在する。

国会は都市国家全体の政策を話し合う議会。

国家元首は国会議長。

都議会はフェンティーア都という首都の政策を話し合う議会。

フェンティーア都は都議会議長が首長である。

フェンティーア都市国家には「フェンテーア都」以外にも

地方自治体が存在しており各自治体に市長が存在する。

都内は区で仕切られていて各区に区長がいる。

国会も都議会もフェンティーア議事堂内で会議をしているが

都議会を建設しようという意見も出始めている。

「モンテ議員ご無沙汰しています。」と周三は挨拶した。

「さぁ、こちらへどうぞ。ご案内致します。」

モンテはそう言ってロープ内に入り、周三はモンテの後に続いた。

ロープ内は特に照明が明るい。

整然と大きなテーブルが沢山並べられている。

テーブルの上には料理を盛った皿や酒やジュース類、

それにデザートなどが並べられていた。

エリアの隅の方にある大きなテント内のキッチンでは

調理服を着た料理人が大勢で料理を作っているのが見える。

関係者やその家族らしき人々が小皿に料理を取り分けて

自分で盛り付けると立ちながら食事をしていた。

その中にはチラホラと帝国の軍服を着た人間も混じっていた。

周三は早足でモンテの横に並んだ。

周三がモンテと肩を並べて歩くとモンテが口を開いた。

「この戦争に参加するフェンティーア号の乗組員は全員が民間人です。

戦争に参加する事に皆が承諾をしてくれております。

フェンティーアはフェンティーア国民が守るという誇りからでしょう。

その気持ちに応えるためにフェンティーア国会は

このささやかな歓送会を開かせて頂きました。」と説明した。

「フェンティーアには軍隊が無いですもんね。」

「はい。しかし、それだけで民間人の人々が

戦争に参加する気にはならなかったと思います。

勇者様が戦争に参戦すると聞いて乗組員の皆が勧んで

戦争に参加すると言い出したそうです。」

「え?俺のせいですか?」と周三は困惑した。

「せいというのとは違う気がいたします。

この国を作ったのは勇者カンベインです。

勇者というのはこの国の象徴でございます。

田中周三様という個人が原因というわけではありませんでしょう。

この国の象徴である勇者様とともに国を外敵から守るという行為は

フェンティーア国民にとってはとても誇りに思える行為です。

愛国心といいましょうか。

わたしも若ければぜひ参加したかったですね。」

「戦争なんて参加したって殺したり殺されたりするだけですよ。」

「はい。その通りでございます。

戦争なんてこの国の大半の国民がしたくはないと思っています。

もちろんわたしだって殺したくありませんし殺されたくもありません。

でも、敵が攻めてきたら誰かがこの国を守る為に戦わないといけない。

その誰かになろうと手を挙げてくれた乗組員たちの気持ちは

勇者様には大切に思って頂きたいのです。」

「たしかにそうですね。国を守るという気持ちは尊いものですよね。」

周三は自分の発言の軽率さを悔いた。

周三の右方向から歩いてきた男性がモンテに

近づくと大きな手提げ袋をモンテに渡した。

その手提げ袋をモンテは周三に差し出した。

「勇者様、戦いに赴くのにまだ鎧が製作中との知らせに

ザレム議長も私も本当に申し訳なく思っております。

私どもは、せめて勇者様には軍服だけでも。と思い、

武具店の主人から勇者様の寸法を聞いてこちらでご用意いたしました。

どうかお受け取りください。」と手提げ袋を渡された。

「ありがとうございます。」

周三は素直にモンテに礼を言って手提げ袋を受け取った。

「フェンティーアの代表であり

初代連合大陸軍総司令官でもある勇者様に対して制服も

支給が出来ない国と各大陸各国に思われては

フェンティーア都市国家は5大陸中の笑い者になります。

勇者様にも大変な恥をかかせるところでございました。

どうか私どもの不手際をお許しください。」と

モンテは膝をついて周三に許しを乞うた。

「立ってください。許すも何も俺は全然、気にしていません。」

周三はずっと鎧が届かなくて怒ってはいたが

もらい物でもあるし強くも言えないからその事は水に流す事にした。

「ええ。確かに鎧が届かなくてどうしようかと思っていましたが

軍服を用意してもらえたのでもうその事は気にしないでください。」と

周三が言うとモンテは心から済まなそうなそぶりで

「ありがとうございます。勇者様の寛容なお心に感謝します。」

周三に礼を述べて立ち上がった。

「では、私はこれにて失礼いたします。

軍艦への乗船はあちらに乗船するための移動式の階段が

軍艦に設置されております。

その階段の横に係りがおりますので

係りの者に言って頂けたらいつでもご乗船して頂けます。

船内の案内は乗組員がしてくれますので

乗船したら近くの乗組員に一声お声をおかけください。

もちろんこの歓送会で用意されております料理や飲み物は

どうぞご自由にお召し上がりください。」

言い終わるとモンテは周三の正面に立った。

「勇者様、フェンティーアにどうか未来をお与えください。

連合軍の大勝利と勇者様のご武運を

フェンティーア国民一同は深くお祈り申し上げております。」

モンテは今にも泣きそうな顔で言うと背を向けて去っていった。

モンテ議員は戦略級の魔法の情報を知っているのかもしれない。

戦略級魔法については一般国民は知らされていないかもしれないが

新聞も存在しているので戦争が始まるくらいの情報は

知っている可能性は十分にある。

周三はふと目の前の軍艦フェンティーアに視線を向けた。

「デカ!この戦艦はデカすぎるやろ。なんていうかなぁ。

これはもう近代兵器やろ。」と周三の口から感想がもれていた。

こんばんは。

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