軍議終了後
帝国監督府での軍議の中で軍議の議長であるハシルに
当たり前のように連合軍総司令官に指名された周三。
流されるままなんとなく就任させられてしまった周三は
何がなんだかわけがわからないままで
軍議が終ってしまった。
作戦の全責任者となった実感もないままに
今回の第二大陸の北東にあるという『影』の国が
フェンティーアに
放った水軍をどう殲滅するか作戦を立案したり
各国の軍船団の配置や補給などの調整や
意見交換をしなければいけない立場になった。
それなのに周三は頭が真っ白に
なってしまっているのだった。
周三は軍議を終えて軍議の会場である大会議場を出ると
すぐに廊下で立ち止まる。
会議終了の直後にディアナが
各国関係者の席に赴いていた。
「帝国監督府の総監室にて各国の武官に
集まってもらい細かい意見交換を行ないましょう。」と
ディアナから各国関係者に
対して提案をおこない関係者一同が了承した。
軍事に直接は関わらないフェンティーア国会の
議員や官僚らは
「これから急いで国会を召集する。」と言う議長の指示に動いた。
そそくさと議員や官僚は大会議室を出ていくと
フェンティーア議事堂に向かってしまった。
ディアナは出撃前に「急ぎの書類を少しでも
片付けておきたい。」と言って
帝国関係者と共に総監室に先に行ってしまった。
直前に「周三も私たちと一緒に4階に行きましょう。」と
ディアナに誘われたのだが
「考え事をしてから後で総監室に行く。」と
ディアナの誘いを周三は断った。
「そうですか。なるべく早くきてください。」と
ディアナには言われたが
周三は早く総監室に行きたい気分にはならなかった。
ロアンは、「すみません。
今からやらなければいけない事があるので
お先に失礼をさせて頂きます。
少し集合には遅れますが
4階の総監室には必ず参ります。」と
周三に声をかけて大会議室を早足で出て行った。
周三はぼんやりとしながら廊下の長椅子に腰掛けた。
すると周三の目の前に誰かが立った。
周三は顔を上げて人物を仰ぎ見ると主天使ハシルである。
「勇者殿、改めてごあいさつ致す。主天使ハシルです。
勇者殿とお会いできとても光栄です。」
ハシルは挨拶すると周三に両手で握手を求めた。
周三は気をつけの姿勢で長椅子から立った。
「田中周三です。よろしくお願いします。」
周三はハシルと両手で握手を交わした。
主天使ハシルの隣には
金髪美女の権天使アミテルが控えている。
周三がハシルとの握手を終えると
アミテルは周三の前に進み出た。
「権天使アミテルです。
これからどうぞよしなに願います。
このような形でお会いする事に
なってしまいとても残念です。」
「田中周三です。よろしくお願いします。
はぁ。もう、何がなんだかわかりませんよ。
俺には自信がまったく無いんです。」
春の日差しのようなアミテルの優しい笑顔に
周三はつい本音が漏れてしまっていた。
周三の本音を聞いて主天使ハシルが
「あははは!」と大笑いした。
ハシルは笑いを抑えて
「勇者殿はとても正直なお人柄なのですね。
とはいえ、わたしどもは勇者殿にお任せする身です。
わたしどもも偉そうな事は申せません。
実を言えばわたしどもは勇者殿には
申し訳なくも思っておるのですが
されども第三大陸全土の人々が無条件に
命を預ける事が出来る存在は勇者殿だけなのです。」
ハシルの言葉に周三は余計に憂鬱になった。
周三はこめかみを軽く指でかく仕草で
「はぁ。俺で出来る事は精一杯がんばります。」
周三はハシルに力無い返事をした。
突然、権天使アミテルは全身で周三をギュッと抱きしめた。
周三はいきなりの事でとてもびっくりした。
「わたくしはフェンティーアで
防衛の指揮をとる事になっております。
わたくしは勇者様に全てを捧げる覚悟はできております。
勇者様の作戦の成功とご無事のお帰りを
心からお祈り申し上げてお待ち申し上げております。」
周三は心臓の鼓動が激しく脈打った。
悲しいかな思春期の男の子なのでテンションが上がった。
周三は力いっぱいに
柔らかく豊満なアミテルの身体を抱きしめかえした。
「アミテルさん、大丈夫ですよ。
いま俺、なんだか作戦が成功する予感がしてきました。
俺の予感って当たる時は当たるんですよ!」
周三は予想が当たる時もあれば
外れる時もあるという普通の事柄を
力強くポジティブな表現で発言した。
その直後にアミテルの後ろを通りすぎた甘根とシュトム将軍が
すごくニヤニヤしてこちらを見ていたのが
その2人の生暖かい視線に周三は少し恥ずかしくなった。
周三は顔を背け頬を赤らめる。
ニヤついた甘根は
「シュウ、先に4階行ってるからなぁ!」と
大声で周三に向かって言うと甘根とシュトムは
まっすぐ歩き出してその場を去ろうとした。
甘根に向かって周三は
「おお!
みんなにはもうちょっとしたら
行くって言っといて。」
と大声で返事した。
アミテルは周三の体から離れて
主天使ハシルが周三の前に改めて立った。
「では、わたしどもはこれにて失礼をする。
またぜひお会いしましょう。
勇者殿にご武運があらんことを。」
そう言ってハシルは
微笑みながら周三に一礼すると
階段のある方向に歩いて行った。
アミテルは何故かすごく名残り惜しそうに
周三の両手を握り締めた。
「勇者様にご武運を。
またこのフェンティーアで
再開できるのを心待ちにしております。」
アミテルは周三に真剣な表情でそう言うと
一礼をしてハシルの背中を足早に追った。
周三は体重をまかせて
長椅子にドン!と腰掛けると
ぼんやり天井を眺めてうっとりしていた。
「アミテルさんの体ってやわらけぇ。
あんなにやわらかくてふわふわしたものが
天使というものなのか。
アミテルさんを抱き枕にしたい。なんてね。」
緊急時にそんな不謹慎な発言を周三は自然と口にしていた。
しばらくして廊下の奥の突き当たりにあるトイレから
中村がハンカチで手を拭きながら出てきた。
長椅子に座る腑抜けた顔をした周三に目を止めると
中村は眉間に皺を寄せた。
「おい!田中!まだここにおったんか!4階行けや!」
周三は絶世の美女に抱きしめられた余韻から
田中の怒鳴り声で現実に引き戻された。
周三は不満気な様子で長椅子から腰を上げた。
「そやな。いこか。」
周三は中村にそう返事をすると
中村と一緒に階段の方向へ歩き出した。
こんばんは。




