約束
前回のあらすじ
周三と夕食を共にするためにやってきたアンは
魔法学園の入学案内が届いたと言った。そして
魔法学園の入試案内は周三にも届いたことを告げる。
夕食時にリアから魔法学園の入学案内を受け取った周三は
やっと魔法が習えるという期待に胸を膨らますのであった。
フェンティーアに来て5日目。
早朝に目を覚ました周三は
机に置いていた魔法学園の入試案内を
手に取るとそれを眺めた。
周三は昨日の夜に寝る前に
封を開いて中を確認はしていた。
「そうかぁ。楽しみやなぁ。」とつぶやく。
中に入っていた便箋に
書かれていた文章の内容は
【タナカシュウゾウ殿
貴殿の魔法に関する潜在能力が極めて
優秀である事を認め
魔法学園への入試資格を与えるものとする。
入試の日程については追って連絡を致します。
魔法学園ウルド】と書いてあった。
(俺の魔法の才能が優秀なのだろうか?
魔法について素人の俺が自分の魔法力について
考えても仕方がないっていうのはわかる。)
「やっぱり物理的攻撃よりも
ビームとかが手から出た方が
漫画のヒーローっぽくていいよなぁ。」と
周三は地道で地味な強さよりも
簡単で見栄えが華やかな強さに憧れていた。
それは一般的な中学生が
よく考える傾向の発想ではあった。
入学案内には返信封筒と
受験希望用紙が同封されていたが
書類には色々と注意事項などが書かれてはいたが
結局は【受験する。】という文字に
丸印をつけるだけなので
文字を書類に記入する必要はなかった。
ロアンから教わった剣術の型を
朝に裏の庭で周三は練習した。
練習が終わると
リアの朝の市場での買出しを周三は手伝った。
そのついでに、受験希望用紙を入れた封筒を
通り沿いにあったポストに投函した。
リアと買い物から
カノレル雑貨店に帰宅した周三は
奥のリビングで
周三とリアとハウルの3人で食卓を囲んた。
3人で一緒に食事前のお祈りをすると
ハムエッグとソーセージとサラダと
パンにチーズを乗せたものを朝食に食べた。
デザートには周三は
昨日の残りのホールケーキを
お腹いっぱい食べて
無事に完食を果すことに成功した。
食事のあと、周三は自分の部屋に戻り
修練場に行く準備を整える。
「なんだか生活のリズムが
だんだん出来てきたような気がする。」と
周三は充実感を
少し感じ始めている事に気付いた。
周三は午前9時に帝国監督府の
剣術の修練場に到着した。
周三は昨日にモナセ商店街の衣料品店で
稽古着用に購入したシャツとズボンを着ている。
ハウルさんからもらった細身の剣は
修練場に持ってきてはいない。
外国の役所である監督府に
武器を携帯して入るのは
周三はとても非常識な気がしたからだった。
常に剣を携帯しなければいけないほど
フェンティーアは危険な国では無い。
治安はとても良い。
フェンティーアには軍隊は
無い代わりに警官が多いからだろう。
周三が修練場に入ると
今日も30人ほどが剣術の稽古をしていた。
ふと周三は稽古している人たちを見て
練習してる剣術の流派に
バラつきがある事に気付いた。
剣術をかじる前は
あまり気にならなかった事が今日は気になった。
周三は入り口付近にいたリュークに挨拶してから
目を修練場の奥に向けると
いつものように白いシャツとズボン姿のディアナが
入り口の直線上の一番奥で直立した姿勢で立っていた。
いつ来てもその位置でディアナは立っているので
「あの位置がディアナの定位置なのかな。」と
周三はつぶやいた。
ディアナが周三に向かって歩いてきた。
爽やかな笑顔をディアナは周三に向けながら
「シュウおはよう。
今日からビシビシ鍛えていきますからね! 」と
透き通るような声で恐ろしい事を言った。
周三のテンションは急降下した。
「ディアナおはよう。
俺は別に剣術の試合を
控えてるわけでもないから
軽めの調整でよろしく。」と
やる気の無い声で周三が返事した。
ディアナはムッとした表情をした。
「何を言ってるんですか!
そんな事で強くなれますか! 」と
ディアナに一喝されて
周三のテンションはさらに下がるのだった。
「じゃぁディアナが使ってる剣術を
教えてもらおうかな。」と
周三が元気の無い声で言った。
「いいでしょう。
わたしの剣術は古の剣士ハシュドが
伝えた剣術です。
帝国ではかなりポピュラーな剣術ですので
わたしもお勧めします。」とディアナは
笑顔で言った。
どうやらディアナの機嫌が直ったようだった。
ディアナのその表情を見て
周三はホッとしたがすぐに疑問を抱いた。
(ポピュラー???
帝国で剣術してる人間はみんながあんなに
人間離れした剣術を使うのか? )と
恐怖をおぼえて周三は帝国には行きたくないと思った。
「まず基本の型をいくつかお教えします。」と
ディアナが言った。
周三は困った顔をして
「う~ん。邪魔くさいから軽く剣を交えよう。
そしたら俺は剣術を
体で覚えていくからさ。」と提案した。
「剣術の素人であるあなたが
技を見て憶えるというのですか。
完全に剣術をなめていますね。
わかりました。剣を交えましょう。
あなたにはまず剣術の厳しさを
お教えしないといけないようですね。」と
ディアナがまた不機嫌になった。
周三は邪魔臭くなって
下宿先にもう帰りたくなった。
今日はロアンから練習用にもらった木材を
周三は持ってきていない。
最初からディアナの剣術を習う気でいた。
だから、修練場に置いてある備品の木剣を
当てにしていたのだった。
周三は備品の木剣を手に取った。
ディアナはゆっくり歩きながら
周三から距離を取ると
中段に木剣を構えて深く呼吸して
息を整えた様子を見せた。
ディアナの剣術は
基本は中段の構えという印象を周三は持った。
(不動な剣術だな。)というのが
ディアナの剣術に対する周三の印象だった。
周三もディアナと同じような形で中段に構えた。
「言うの忘れてたけれど打ち込みは絶対に軽くやで。
本気とか無しやからね。
防具をつけてないんやから
怪我とかしたら大変やからね。」と
周三はディアナに対して
練習なのだから手を抜くようにと促した。
「はい。
剣の稽古では多少の怪我は当たり前ですので
お気にはなさらないでください。」と
真剣な目で周三にディアナは応えた。
「ん・・・ちょっと待って!
マジで本気は無しやからね! 」と
周三はもう一度ディアナに注意した。
ディアナは目を閉じて
一呼吸ため息を漏らすと
「わかりました。
手加減はしましょう。」とやっと承諾した。
ちなみに周三が防具をつけなかった理由は
もしも防具をつけたらディアナが
本気で打ち込んでくるような予感がしたからだ。
「では準備ができたら言ってください。」と
周三にディアナは言った。
「了解。」と周三は返事すると
構えを一旦解いて
右腕を回しながらさりげなく魔眼を発動させた。
周三は視線を感じて、ふと周りを見渡すと
稽古の手を止めてこちらの練習を
見てる人が結構いることに気付いた。
少し、注目をされてるのだろうか。
「オッケー。いつでもどうぞ。」と
周三は魔眼を発動させた事で
ある程度は魔眼でディアナの動きを
捉える自信があったので軽い返事をする事が出来た。
それを聞いてディアナは気合を入れて
真っすぐに周三を睨みつけると
「では参ります!」と
周三にディアナは大きな声で言った。
言い終わったと同時にディアナは
左足で床を蹴って直線に向かってくると
上体を落としつつ、
ものすごいスピードで周三との距離をつめた。
そして右の前足を強く踏み込こむと
周三の胴体に向けて
木剣を思いっきり、横になぎ払った。
周三は魔眼で動きを読み取り
ディアナの動きを予測していたので
始めから全力で後ろに飛びのいていた。
ディアナはそんな事はおかまいなしで
大きく右足を前に出して
ものすごい勢いで周三との距離を詰め
逆袈裟で木剣を振り上げてきた。
周三はなりふり構わず
後ろに向かって転がりながら剣を避けた。
ディアナの木剣は空を切った。
ディアナは体をくるりと回して
下段に木剣を溜めると
踏み込んだ足で床を蹴って
周三につめよりながら
次の攻撃動作に入ろうとした。
周三はたまらず「ちょっとたんま!!! 」と
ディアナに向かって叫ぶ。
周三は木剣を捨てて右手の掌を広げて前に出した。
ディアナは周三の言葉を聞いて素直に攻撃を止めた。
ディアナは構えを解いて一呼吸ついて
普通の姿勢になると
「どうなさったのですか?」と
不思議そうな顔をして小首をかしげた。
周三はジトっとした目をディアナに向けた。
「おい! 本気やん。ディアナは本気やん!
本気の攻撃はダメって言うたやろ。」と
周三は言うとゆっくりと首を横に振った。
「本気ではありません。
手心は加えています。」と何食わぬ顔で
ディアナが応えた。
その返事に対して周三はムッとした顔で
「ディアナは本気じゃないかもしれんけどな。
俺が対応できないような攻撃は
俺にとっては本気と同じなの!
もう! ちゃんとしてよ!」と
周三は語気を強めて言った。
ディアナもさすがに
少し落ち込んだ様子で「わかりました。
わたしも少し大人げなかったかもしれません。」と
周三を上目遣いで見つめながら反省の言葉を述べた。
それからのディアナの動きはものすごく遅くなった。
周三は魔眼でディアナの動きを読み取りながら
快適で有意義な練習が出来た。
「シュウ。
だいぶ動きが良くなりましたね。」と
ディアナも褒めてくれた。
それはディアナの率直な感想だった。
「だいぶ楽しくなってきたよ。」と
周三は満足げな様子で
今日はとてもいい汗をかけているなと
実感したのだった。
時計を見ると時間はお昼前になっていた。
ディアナとの稽古の手を周三は止めると
「ご飯の時間やから帰るわ。」と言った。
するとディアナは少し寂しそうな目をして
「そうですか。
残念ですがもう昼食の時間ですね。」と応えた。
周三はディアナと一緒に裏口まで向かう途中、
「シュウ、わたしをいつお茶に連れて
行ってくださるのですか?」と
ディアナは少しすねたような表情で周三に訊いてきた。
周三は表情を変えずに
「俺はいつでもかまわんけど
平日の午後はディアナは忙しいんやろ?」と
ディアナに返事した。
「明日の日曜はわたしは予定が空いています。」
「日曜日ってお店って開いてるの?」
「いいえ、ほとんどの店は
日曜日は閉まっています。
西側区画にある大型の百貨店は
もしかしたら営業しているかもしれません。
百貨店内のカフェはとても評判なのですが
残念ながらわたしは行った事がないのです。」
「もしかしてなら営業していない可能性もあるね。」
「はい。」
「じゃあ無理やん。」
「はい。
ですので提案なのですがわたしの自宅で
お茶をするというのはいかがでしょう?」と
周三にディアナは提案した。
「あのでっかい宮殿かぁ。
いいね! 貴族のティータイムっぽいやん。
宮殿でお茶をするって
すごく興味が沸くわ。
明日の午後に宮殿の正門に行けばいいの?」と
周三がわくわくした表情でディアナに訊ねる。
ディアナは頷き、
「我が家の正門で
守衛に名前を伝えて頂いたら
入れるようにしておきます。」と応えた。
こんにちは^^




