表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
17/118

呼吸

 前回のあらすじ


 ディアナ打倒に燃える周三は


早朝に起きて下宿先の庭で剣術稽古をおこなう。


しかし周三はディアナを倒す作戦の


イメージが固まらず苦慮する。


そんな折に朝釣りから帰宅したハウルが


帰ってきて周三に声をかけた。


ハウルに周三に悩みを打ち明ける。


ハウルはディアナと同じ剣術が使えると言って


周三の剣術の練習に付き合ってくれたのだった。






 ハウルも交えての朝の剣の自主練習を終えると


周三は清々しい顔を浮かべながら


ハウルに向かって周三は


「今朝の練習は俺に素晴らしい実りを


与えてくれた気がします。


ハウルさんには本当に感謝します。


必ず近い未来にディアナを倒せたらいいなって思ってます。


勝利の暁には勝利の報告を真っ先に


ハウルさんにいたします。」と言った。



 ハウルは「ははは。」と笑った。


「お役に立てたのならいいのですが。


ディアナ姫を倒すのは容易なことではありませんよ。


がんばってください。」とハウルが優しい声でこたえた。



 カノレル雑貨店のリビングへ周三とハウルが戻ると


リアがテーブルも朝食のサンドイッチを用意していた。


リアは2人が一緒にリビングに戻ってきたのを見ると


「二人で一緒に


お庭で剣術をされてましたわね。」と微笑んだ。



 リアに周三は「ええ。」とうなずいた。


「ハウルさんに剣術の稽古を手伝って頂きました。


ディアナは剣術の稽古ばかりさせて


俺を剣術馬鹿に育てようとしている。


そんな横暴なディアナに


剣術で勝利して一泡ふかせようと企んでいるんです。


でもこれはここだけの内緒ですよ。


みんなに公言して達成できなかったら


恥ずかしいので。」と周三は照れくさそうに言った。



 リアは「ふふふ。」と笑った。


「そうなのね。ディアナ姫と決闘なんて結果が楽しみだわ。


もしディアナ姫に勝てたらきっと大陸中で話題になるわよ。


ディアナ姫の剣の実力は大陸中に知れ渡っていますもの。


シュウがんばって。」とリアはとても楽しそうに言った。



 リアに向かってハウルは


「シュウは剣術を始めたばかりとは思えない剣筋だったよ。


わたしはシュウはディアナ姫に勝てる未来はそう遠くないと


思うね。」と自信ありげに言った。



 ハウルにリアは嬉しそうな笑顔を向けた。


「ハウルが太鼓判を押したのなら間違いないわね。」と


リアはそう言って周三を見て目を輝かせた。



 周三に対してハウルもリアもとても期待している様子だ。



 ハウルとリアに周三は


「ええ、お二人のご期待に添えるように


全力を尽くします。」と周三は強がってみせた。


しかし本音の所は


まだディアナに勝つための材料が全然揃ってはいなかった。


周三は修練場でディアナに


目を凝らして勝つためのヒントを


掴まないといけないと思いながらも


ディアナ打倒は周三個人の勝手な目標なので


ディアナはその事を知らない。


打倒するのもしないのも周三の自由であり


期限も決まっていない目標なので


焦りというほどの焦りは


周三はまったく感じていなかった。


もともとディアナに周三が負けるのが


当然の結果なので


ディアナに勝てる要素がまったく見つからなければ


周三は修練場でディアナに顔だけ見せたあとは


隅っこで剣を素振りして時間を潰そうと思っていた。


(勝てる要素が見つからない時は


お昼前に稽古を切り上げて帰ってこよう。)と


周三は決意していた。


周三は朝食後に服を脱いで浴室に入ると


朝の稽古での汗をシャワーで洗い流して


気持ちをリフレッシュさせた。


浴室を出て、タオルで頭を拭きながら


周三は2階の部屋に戻った。


周三はベットに座り下着姿でくつろいだ。


「目標が出来ると


心に張りと潤いが生まれるものだな。」と


周三はほくそ笑む。


周三は突然にベットの上で直立すると


右の拳を天に向かって突き上げた。


「わが心に一転の曇りなし! 」と言って


周三は自分に気合いを入れた。


「さて、そろそろ準備して行こうかな。


修練場に行こうと思うと


気が重くてテンションが下がるよなぁ。」と


周三は愚痴をこぼしながらも


周三は衣服を着て


ロアンからもらった木材を片手に持った。


準備が整うと周三は修練場に向けて


カノレル雑貨店を出発するのだった。






 周三は帝国監督府に到着すると


守衛しゅえいに自分の名乗って


許可を得ると監督府に入った。


目の合う職員に会釈しながら監督府の裏口を出る。


裏口からすぐ近くにある剣術修練場に向かった。


修練場に入ると今日も30人ほどの男女が


熱心な様子で剣術の稽古をしていた。



 前回と同じく修練場の中央の


一番奥で直立不動で


周囲の稽古を見守っているディアナがいた。


入り口から入ってくる周三にディアナは目を止めると


小走りをしながらディアナは周三に駆け寄ってきた。


爽やかな笑顔をディアナは周三に向けると


「おはようございます。


シュウよくきましたね。


今日も一緒にがんばりましょう。」と


ディアナは周三をうれしそうな様子で迎えた。



 ディアナの純真な笑顔に周三は戸惑いながら


「おはよう。今日もよろしく。俺がんばるで!」と


空元気な声で周三はディアナの目を見ながら返事した。



 続いて周三はリュークを目で探して見つけると


全力で走ってリュークの目の前に行った。


「リューくんおはようございます!」と


周三はリュークに嬉しそうに挨拶した。



 柔らかな笑顔をリュークは周三に向けた。


「おはよう。シュウくんよくきたね。


今日も頑張ってください。」と


リュークは周三を励ました。



 周三は「がんばります!」と元気よく返事した。



 修練場の壁沿いに並んだ椅子に


周三はディアナを伴って隣同士で座る。



 周三はディアナに声をかけた。


「ねぇディアナ。


とりあえず俺はまだ剣術が何かがよくわからへんから


ディアナが俺に剣術の手本を見せてよ。


ディアナが他の誰かと軽くでいいから


試合形式の練習をするのを俺は見たいな。」と提案した。



 周三の言葉にディアナは嬉しそうな笑顔になった。


「周三はやっとやる気になってくれたようですね。


試合形式ですか。はい。わかりました。


では早速、わたしが手本をみせましょう。」


ディアナは近くで


剣を素振りしていた栗色の髪の男性に声をかけた。


「少し剣を交えましょうか。」と栗毛の男性を


ディアナは手合わせに誘う。



 栗毛の青年男性はディアナに顔を向けた。


不愛想な表情で


「ああ。ぜんぜんいいっすよ。」と承諾した。



 ディアナと不愛想な栗毛の男性は距離を取って対峙した。



 栗色の髪の男性は木剣を握ってディアナの正面で上段に構えた。


ディアナは栗色の髪の男性の正面で木剣を中段に構えた。



 周三は2人の動きが


よく見える位置で三角座りすると


魔眼を発動させて2人の様子をじっと見つめて観察した。



 一呼吸したディアナが「ではまいります!」と


大きな声を発するとそれを合図に試合が始まった。



 栗毛の男性が素早くディアナの距離を詰めて踏み込むと


「キエーーー! 」と奇声を上げて


木剣を上段から振り下ろした。


その動作はかなりスピードが乗っていて力強くもあった。



 ディアナはその男性が振り下ろした剣撃を


すり足で真横に素早く移動しつつ


半身に身をよじって事も無げによけた。



 ディアナが体の軸を


横に移動させた姿に周三は注目した。



 栗色の髪の男性は連続で


木剣を自身の頭上に振り上げて


上段の構えから木剣を振り下ろした。



 上段からの攻撃に対して


ディアナはなぜか前日のように


木剣で相手の木剣を捌く動作を見せなかった。



 あくまで体捌きのみで回避して


男性の攻撃を完璧に見切っている様子だった。



 栗色の男性は「ダアアァァァァ!!!」と叫ぶと


ディアナに向かって大きく踏み込んた。



 男性は先ほどよりも、より上段の構えから


素早く振り下ろし、


素早く上段に木剣を戻して


振り下ろすという攻撃を連続でおこなった。



 ディアナは振り下ろされる全ての攻撃を


体捌きのみでよけきると


栗色の髪の男性が体勢を整えて


もう一度木剣を振り上げようとした瞬間に


ディアナは自分の木剣で


栗色の髪の男性の木剣を真っすぐ突いて弾いた。


ディアナに木剣を弾かれた衝撃で男性は


時間にすればほんの一瞬だが後ろにのけぞった。


その隙にディアナが素早く腰を下ろし


男性の懐に踏み込むと


栗色の髪の男性の右のわき腹の横に


ディアナは自分の体を押し込んだ。



 栗色の髪の男性の前腹に


ディアナは木剣の刃を水平にして軽く当てた。



 「あちゃぁ。まいりましたぁ。


俺の負けです。」とやる気の無い声で


栗毛の男性が両手を上げた。



 栗毛の男性にディアナは頷くと


「ありがとうございました。」と


栗色の髪の男性に言って元いた位置に戻り一礼をした。



 栗毛の男性は「いいえ~。こちらこそ。」と


ディアナに返事をするとその場で一礼して


修練場の隅に向かって歩き出した。



 三角座りしている周三の方にディアナは


向き直って歩み寄ると「いかがでしたか?」と


周三にディアナは


少し緊張気味な表情で感想を訊ねてきた。



 周三は立ち上がる。


ディアナに周三は笑顔を向けて


「2人ともすごかったわ。


すごく勉強になったよ。」と答えた。



 ディアナはホッとした表情をした。


「そうですか。それはよかった。」と


ディアナは満足げな様子を見せた。



 周三とディアナの2人は


修練場の隅まで移動して壁に並んでいる椅子に腰かけた。


ディアナは周三の左隣の椅子に座っている。



 周三は口を開いた。


「ねぇ。今、試合した男の人って強い人なの?」と


ディアナに周三は訊ねる。



 ディアナは大きく頷いた。



「はい。とても強い剣術家です。


あの方は第三大陸の南に位置するダルザニアン公国王太子。


名前をハヤトール殿下という方です。」と説明した。



 「ふ~ん。王子様なんだね。」



 「はい。ダルザニアン家は


全大陸戦争で活躍した騎士の家系であり


ダルザニアン家に伝わる剣術は一刀で


敵を両断するという実戦に特化した剣術として有名です。」と


ディアナは説明を続けた。



 「そうなんだね。


素人目にもかなり強い気がしたもん。」と


周三は言うと


「ええ。」とディアナはこたえた。



 ディアナがいま一瞬だが不機嫌な表情を


見せた気が周三にはしたが


周三の気のせいなのかもしれない。


周三は両腕を組みながら右手の親指と人差し指で


自分のあごを撫でて考え事をしはじめた。



 (なんだったんだ今の試合は。。。。。


人間同士の試合なのか?


ディアナもハヤトールさんもすごすぎるやんか。


魔眼で2人の動きを見ているとハヤトールさんは


ディアナに対してすごく手加減していたのがわかった。


最初から勝つ気なんて無かったのかもな。


というかハヤトールさんの剣術を魔眼で見てみると


剣で打ち合いをする剣術じゃない事がわかった。


一撃必殺の斬撃を繰り出す事のみに特化していて


2手目を考えてない。


防御の型すら無い気もする。


ディアナがハヤトールさんの振り下ろし攻撃を


剣で捌かなかったのはハヤトールさんの剣撃の威力が


高すぎると判断したからやな。


手加減してても相当な威力があるんや。


ディアナの剣術は


自分の剣を敵の剣に当てて、いなしたり


受け流したり、弾いたりして


敵の動きを乱したり


誘導したり、制限したりする事で


試合の主導権を支配する類の剣術や。


昨日、ディアナが1人で5人の男性を


同時に相手をした試合では


5人の男性がバラバラに攻撃しているのにも関わらず


男性5人とも同じタイミングで隙が生まれた。


それはディアナが剣捌きで敵の動きを制御して


次の行動の選択肢を制限することで敵の時間を支配した。


ディアナが意図して作り出した隙なんや。


そんな高度な事を相手の攻撃を見ないで出来るなんて


やはり人間業じゃない。


そんなのが普通なんておかしい。


でもさっきの試合での最後の隙は


ハヤトールさん自身がわざと作った隙やった。


ハヤトールさんが自分で隙を作って


ディアナの攻撃を誘う為のものやったと俺は確信している。


俺はハヤトールさんに対して


一筋縄ではいかへん男という印象を受けたで。


しかしまぁ。


こんなに人間離れした剣術のレベルを


剣術を始めたばかりの俺に求めてくるとは


まったく。。。ディアナってなんて恐ろしい子なの。


でも俺はディアナが嫌いなわけじゃない。


悔しいけれど、むしろ大好きや。


だから信頼や友情をもっと深める為にも


ディアナの過大な勇者への妄想癖を打ち砕いて


夢見る少女から卒業してもらわなければならない。


今回の試合で魔眼は面白いものも見せてくれた。


試合でディアナを魔眼で見たらディアナの体の中から


薄い光が体の外に向かって


半円形に半径2mほど出ていた。


魔眼で解読したら体内のエネルギーみたいなものらしい。


元にいた世界で言うと気功みたいなものなのかな?


でもなんだか気功とも違う気がする。


その光に触れた敵の攻撃や動きを


センサーのように感じ取っていたようや。


これが目で攻撃を追わない秘密と見たね。


他に気付いた事はディアナの動作に


合わせてディアナの各関節が微かに光って見えたのは


体内エネルギーを使って体の動きを強化した際に


発生する現象のようやな。


もしも魔眼が無かったらディアナの超人的な技の理屈が


わからずにほんま俺はドツボにハマってるとこやった。


魔眼を授けてくれたロアンさんどうもありがとう。


ホンマに感謝しています。


ディアナの技や能力は魔眼で盗み取ったとしても


技術レベルが高過ぎて運動能力の無い俺では


技を自分の物にするのには相当な時間がかかるやろな。


しかし、ハヤトールさんの技術は興味深かった。


あの人は試合中に面白い事をしてたのを


俺は見逃さへんかったで。


ハヤトールさんは試合開始のほんの直前に


口から空気を吸ってから


腹に空気をためて自分の体内エネルギーを爆発させとった。


かなり空気を吸う量をセーブしとるように


見えたのはおそらく手を抜いてるからや。


魔眼で解読したらあの呼吸法は


自己の身体能力をほんの短時間だけやけど


爆発的に高める方法や。


ハヤトールさんが本気であの呼吸法を使ってたら


勝負はどっちに転ぶかはわからんかったかもしれん。


ハヤトールさんが最後のほうで気合を叫んでいたけど


最初の「キエー!」という気合とは違った。


あれはチカラを入れたんやない。


逆に腹の空気を出してチカラを抜いてたんや。


それにしてもあの呼吸法は極意を読み取れれば簡単に使える。


俺でも今すぐ使える。


それに振り下ろしの剣術も


一太刀に全てをかけるという姿勢が俺ごのみの剣術や。


ぜひ試合でハヤトールさんの技術や剣術を使わしてもらうおう。


でも付け焼刃では実戦で使えるかがちょっとだけ不安やな。


今から隠れてちょっとだけ練習しよう。


これで俺はディアナに勝つ為の希望も見えてきたわ。


あとはどこまでディアナに


手を抜いてもらうかが勝負の駆け引きやな。


俺のチカラが何倍になろうとディアナの足元にも及ばへん。


だからディアナの実力が俺の足元まで


降りてきてもらわんと俺に勝ち目無い。


でも薄っすらやけれど勝負が出来る気がする。


なんか行ける気がする!


だって俺は剣術始めて2日目やもん!


探せばいくらでも


ディアナに手加減してもらう方法はあるはずや!



 周三は戦略と戦術が決まった事で


ディアナに勝つという無謀ともいえる目標を


達成する微かな可能性を見出しつつあった。

おはようございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ