朝練
前回のあらすじ
エルフのロアン宅で
魔眼のチカラを手に入れた周三は
ロアンの剣舞を魔眼で見る事で
ロアンの剣術の極意の会得に成功する。
周三はロアン宅から下宿に帰宅した。
周三は下宿先のカノレル雑貨店に帰宅すると
リビングのテーブルの椅子にハウルが腰掛けていた。
「ハウルさんただいま。」と周三は声をかけた。
ハウルはラックに顔を向けた。
「おかえりなさい。
ずいぶんと遅かったですね。」
「ええ。色々とロアンさんと
お話ししていたらこんな時間に
なってしまいました。」
周三は笑顔でハウルに説明した。
周三は階段を上り2階の自分の部屋に戻る。
ベットにバンと勢いよく寝転んでゴロゴロとした。
(体がだるい。汗もずいぶんとかいたので
あとでシャワーを軽く浴びようかな。)
「なんかちょっと疲れたなぁ。
やっぱり魔眼の使用すると体力を奪われるのか。」
疲労の原因を周三は魔眼のせいにしていたが
実は単に運動不足の体で急に
過激な運動をした反動にすぎなかった。
「ディアナの剣術は何かがおかしい。
あんな細身の体なのに
なんであんなに素早くて力強い剣が振れるんだ?
意味がわからない。
それに敵の攻撃を見てないのにどうやって
敵の攻撃を察知してるんだ?
やはり化け物か。
そうか。ディアナは人間では無いのかもしれん。
この世界は妖精さんだって
普通に人間と仲良く暮らしているんだ。
ディアナもご先祖さんに
妖精さんがいてもおかしくはあるまい。
それなのに剣術において
あまりにも高いハードルを俺に設定して
自分勝手で理不尽で妄信的な願望を
ただの一般ピープルである俺に
おしつけるとは、う~ん。けしからん!
なんだかディアナに対する怒りが
俺の体をアツくするぜ!
いつか剣術でディアナから必ず勝利をもぎとって
ギャフンと言わせたい!。。。。。。あ!そうだ!
このアツい気持ちを忘れない為に
何かに書いておこう。」
周三は思い立って部屋を出ると1階に下りた。
ハウルが奥の間のテーブルに座って
晩酌をしながら書類を何枚か広げて眺めていた。
周三はハウルに声をかける。
「あの。ハウルさん忙しい所すみませんが
紙とペンと画鋲をお借りできませんか?」
ハウルは周三に笑顔で頷いた。
「はい。わかりました。少しお待ちください。」
ハウルは立ち上がり
部屋の隅の棚の引き出しを開ける。
引き出しの中から紙とペンと画鋲を
持ってきて周三に手渡した。
ハウルから画鋲と紙とペンを受け取った。
「ありがとうございます。
これで俺は今よりパワーアップすることでしょう。」
ハウルにニヤリと笑いながら周三は言った。
ハウルは「ははは。」とおかしそうに笑った。
「それは頼もしい。
何の事かはわたしにはわかりませんが
頑張ってください。」と周三に優しい声でこたえた。
周三は紙とペンと画鋲を持って
2階の自分の部屋に戻ると
周三は机の椅子に座った。
周三は机の上に紙を置いてペンを持った。
紙に「打倒ディアナ!テンチュウ!」と周三は書いた。
その紙を画鋲で机の正面の壁に貼り付けた。
周三は『天誅』の『誅』という漢字が
思い出せなかったので
天誅という字はカタカナで書いた。
「さて、今日はこれくらいにして
疲れを残さない為にもそろそろ寝よう。」
そう独り言を言って周三はランプを消した。
シャワーは朝に浴びることにした。
フェンティーアに来て4日目の朝、
早起きができた周三は
雑貨店の裏側の小さな庭で
ロアンからもらった木材を
剣の代わりにして
ロアンの剣舞を見て会得した剣術の
動きを忘れないようにと練習をしていた。
特に突きの動作の練習を入念にした。
「この突きが俺に勝機を呼び込むと
俺の第六感が告げている気がする。
技のキレを最大限にした状態にしたうえで
ディアナにどれだけ手加減をさせる事ができるかが
勝敗の明暗を分けるだろうな。」
周三はそうつぶやきながら
ディアナの実力をどのようにして
最大限に下げさせる事ができるかという作戦を模索し
自分が会得した付け焼刃の剣術をどのように
効果的に使えるかというシュミレーションを
頭の中でイメージしながら練習をしていた。
そんな時にちょうど趣味の朝釣りから
帰ってきたハウルが
釣り道具を片付ける為に庭に顔を出した。
ハウルは「おはようございます。
剣術の稽古ですかな。」と
優しい笑顔で周三に声をかけた。
ハウルに笑顔を向けて周三は
「ええ。昨日、お借りした紙とペンに目標を
書くことでやる気は最大限に引き出せました。
ありがとうございます。」と力強い声で言った。
「それはよかった。」と周三にハウルは笑顔を返した。
周三の顔をハウルは、じっと見てから
「何かお悩みでもあるのですか?」と問いかけてきた。
周三は頷き「ええ。あります。
やはり俺の顔に出ていましたか。
今日はディアナを倒す気で修練場に向かおうと
思っているんですが
いまひとつイメージが固まらないんです。
俺って剣術経験が全然無いから実戦経験も無いでしょ。
だから、経験からくる判断材料がまったく無いんです。
かと言って今日も見学のつもりで行けば
ズルズルと
ディアナの思うようにされて
ずっとされるがままに
流されていく気がしてならないんです。
どうしたらいいものかと思案中なんです。」
ハウルに正直な気持ちを周三は伝えた。
それを聞いたハウルは庭の物置を開けて
短い箒を取り出してきた。
ハウルはそのホウキの穂先を外すと
木の棒になったホウキを剣のように握って軽く振った。
「では、わたしが
少しお相手しますのでそれを実戦の参考に
なさってみてはどうでしょう。」と提案してきた。
周三は驚いた表情で
「いえ、そんなことできません。
お気持ちはうれしいですけど
ハウルさんが、もしも
お怪我でもしたら大変じゃないですか。」と言った。
周三は自分の顔の前で
右手を何度も横にふった。
ハウルは周三に笑顔を向けながら
「大丈夫です。
わたしもアルブルド剣術をかじってますので
剣術には多少の自信がございます。
しかし、お互い怪我をしては
元も子もありませんので
軽めに練習をしましょうか。」と言った。
周三はそれを聞いて考え込むような様子を見せた。
周三はなにか大事な事を忘れているような気がしたのだ。
そしてしばらくして周三は気付いた。
(あ! ハウルさんは
ディアナとご先祖が一緒だった!)と
周三は思い出した。
周三はその事実に気付くと脳に考えを巡らせた。
(ふむ。という事はハウルさんは
人間以外の別の生命体の血が流れている可能性がある。
それなら十分に参考にはなるな。)という結論に至った。
ディアナは普通の人間では無いという周三の
勝手な思い込みから生まれた仮説は周三の中では
ほぼ確信に近いものにまでに成長していた。
ハウルを見て周三は
「では、軽めに間合いの参考になる程度の
軽い練習をしましょう。
本気は無しですよ。
軽くです。
ほんとに軽くです。」と
周三は何度も軽くという単語を連発しながら
ハウルの正面に立って距離を取りつつ半身で構えた。
何故なら周三はハウルが伝説の剣士の末裔と気付いた事で
ハウルが怪我をする心配から
自分が怪我をする心配にシフトしたからだった。
ハウルが棒を体の正面中段にして正眼に構えた。
周三の左目の魔眼が発動の兆しを見せた。
ん。ヤバい!
周三は左目を押さえて発動を抑え込んだ。
ハウルが心配げに
「どうかなさいましたか?」と周三に言った。
「いいえ、ちょっと目にゴミが入っただけです。」と
周三はハウルに笑顔をむけて誤魔化した。
周三は一息ついた。
(危ない。危ない。魔眼を発動させたら疲れるからな。
ディアナの剣術も分析しないといけないのに
ここで魔眼を発動するのは
体力の浪費というもんや。)と思い自重したが、
魔眼を発動しても実は肉体的には
疲労はしないという事実に周三はまだ気づいていなかった。
周三とハウルは気をとりなおして改めて対峙した。
ハウルが中段に棒を構え、
周三は右肩を前に半身で木材を構えた。
周三は「では、行きます!」と言うと
体全体を使って右手から突きを
ハウルの胴に向かって真っ直ぐ突き出す。
ハウルは体を動かさず軸もブレさずに
両手で握った箒の柄を
周三の木材の横っ面に軽く当て弾いた。
その反動で周三の体はバランスを崩した。
バランスを崩した周三にハウルは踏み込んで
周三の左のわき腹あたり箒の柄を軽く当てた。
箒の柄が周三のわきに当たったが
軽く触れた程度だったので
周三は痛みを感じなかった。
今のハウルの剣筋は間違いなく昨日に
帝国の剣術稽古場で
周三が見たディアナの剣筋と同じものだった。
ディアナと同じ剣術だと確信した周三は
「もう一度お願いします!」と
元気よくハウルに言って木材を正面に構えた。
こんにちは。




