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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
14/118

精霊召喚

 前回のあらすじ


この世界にやってきた直後に


言葉や地理がわからず周三は


立ち往生してしまった。


そんな時にカノレル雑貨店に


道案内してくれた少女「ユメア」と再会を果たして


周三はユメアにケーキをご馳走したのだった。






 周三はユメアとケーキカフェの前で別れたのちに


周三はカノレル雑貨店への帰途についた。



 ユメアの住んでいる寮の位置を


周三はユメアに教えてもらったので


また会う事はできるだろう。


「ユメアとはこれからもちょくちょく会いたいな。」


周三はユメアに高い好感を持った。



 カノレル雑貨店に帰ると相変わらず狭い店内は


観光客とおぼしき人たちで賑わっている。


店を通って周三は奥の間に入ると


テーブルにはリアがいた。



 リアの向かいの椅子に見知らぬ少女が座っていた。


周三は少女をチラっと見て、気にしつつも


リアに「ただいまぁ。」と声をかける。


するとリアは笑顔を周三に向けた。


「おかえりなさい。紹介するわね。


この子は孫のアン。


こちらは勇者の田中周三さんよ。」



「こんにちは。アンです。」


アンは無表情なまま田中周三に向かい挨拶をした。


アンの年齢は周三の1つか2つ年下に見える。


赤みがかった髪で髪型はストレートのロングヘア。


小柄な体格で顔が整っており


将来は相当な美人に成長する素質を周三に感じさせた。



 「はじめまして。俺は田中周三。


シュウって呼び捨てで呼んでくれていいよ。


アンちゃんこれからよろしくね。」


周三はアンにそう言った。



 「わたしもアンと呼び捨てで結構です。」


無表情ままのアンは周三に返事を返した。


アンの不愛想さに周三は


(俺ってこの子に嫌われてるのか?)と懸念した。



 すると、その空気を察したのかリアが


「今日はアンはシュウと食事するのを


楽しみにしていたのよね。


シュウは今日の夜は用事があるでしょ。


だから一緒に食事が出来ないから


内心はとても残念がっているのよ。」


周三にリアは微笑みながら言った。



「おばあさま!


そんな事はありません。


今日はおじいさまとおばあさまに


会いにきたんです!」


アンは妙にムキになった様子をみせた。



 感情をあらわにしたアンを見て周三は少し安心した。


「そっか、それはごめんね。


今日は夕飯をお呼ばれしていて


今からそちらで夕飯を


ご馳走してもらうことになってんねん。


また今度でもゆっくりお話ができたらいいね。」



 「別に気にしてません。」


周三に対して、アンはプイっとそっぽを向いた。






 周三は2階に上がり自分の部屋に戻ると


ベットに寝転んだ。


(いま何時かな?)とディアナから


もらった金の懐中時計の蓋を周三は開いた。


「午後5時半か。


そろそろロアンさんの所に行こうかな。」


周三はそう言ってベットから起き上がる。


ふと何か周三は違和感を感じた。


もう一度、懐中時計を周三は開く。


蓋の裏側に何か文字が刻んである。


中村からもらった天使の指輪の効力で


文字から意味が伝わってきた。


『我、勇者の剣となりて


この身の全てを勇者に捧ぐ』と書いてあった。


「うわ!!! 重た! 重すぎるやん!


お・・・思いが重た過ぎるわ!」


ベットに周三は倒れこむと


うつぶせで寝転がって足をバタつかせた。


体をねじらせて仰向けに周三は寝転がる。


周三は天井を見つめた。


「そや。俺は何も見なかった。


蓋の裏なんて無かったんや。」


自分の中で蓋の裏を見た事実を


周三は無かったことにするのだった。






 カノレル雑貨店を出て通りを南に歩き出した。


出かける時に奥の間を周三が通った際に


「じゃあ行って来ます。」と


周三はアンとリアに声をかけたが


周三を見送るアンの寂しそうな目が


周三には妙に印象に残った。



 「今度、アンとはちゃんと話をせなあかんな。」


周三は独り言をつぶやいた。






 通りを南に行ってすぐの交差点を右に曲がって


真っ直ぐ行くとフェンティーア議事堂がある。


それをもっと真っ直ぐ西に向かう。


通りの4つ目の小さな交差点を


北に行くと坂道があった。


その坂を上ると左手に見えるオレンジ色の土壁の


建物がロアンの自宅である。


三階建ての独特なデザインの一戸建ての建物だ。


ロアンの自宅の小さな庭には


色々な木や花が植えてあり


おしゃれな印象を周三は受けた。


ロアンの家の正面には


1階の入り口と2階につながる階段があった。


2階にも入り口がある。


おそらく1階は家具を作る工房があって


仕事場として区別してるのだろう。



 周三は2階に続く階段を上り


玄関の呼び鈴を鳴らすと


しばらくして、中から足音が近づいてきた。



 午後7時にいつも食事を取ると


ロアンは周三に言っていた。



「では、午後6時半くらいに行きます。」


そう昨日、ロアンに周三は約束をしていた。



 2階玄関の扉が内側から開く。


布で頭と顔を覆ったロアンが玄関から出てきた。


「ようこそお越しくださいました。どうぞ中へ入って。」


ロアンは嬉しそうな優しい声で周三に促す。


「こんばんは。


お招き頂きありがとうございます。」


周三は家の中に入った。



 「こんばんは!よくきたね。」


フェアリーのララーが奥のリビングから


飛んできて周三の肩に座った。



 「こんばんは。俺のマイエンジェル。」


周三はララーに挨拶した。



 直訳すると俺の俺の天使ということになるので


英語の使い方が間違ってるだろ。と


思える周三の言い回しだった。



 奥の広いリビングにはテーブルや棚などが置かれているが


レイアウトがとてもシンプルで周三は清潔な印象を受けた。



 「ロアンさんって奥さんはいらっしゃるんですか?」


周三はふと訊ねた。



 ロアンは首を横に軽く振った。


「わたしはララーとここで2人暮らしです。」



 (ロアンさんはほぼ一人暮らしみたいなものなのに


家事をきっちりしてはるな。)と心の中で周三は感心した。




 テーブルの北側に周三は座った。


丸いグラスを周三の前にロアンは置いた。



 テーブルの上に置いてあるブドウジュースの


ボトルをロアンは持つと


ブドウジュースを周三のグラスに注いだ。



 周三は部屋の周囲を見ると壁に飾られた絵が目に入った。


(グニャグニャした画風だ。)と周三は思った。


壁の絵画は構図や色彩がとってもグニャグニャしていた。


絵の色彩はとても鮮やかで周三は爽やかな印象を持った。


その絵画は何を描いてるかわからないが


上手な絵なのかもしれない。



 椅子もデザインも流線型で独特で遊び心を感じる。


テーブルも細かな彫刻が全体に施されているし造形も美しい。


家具は全般的に芸術性を高く感じた。



 しかし周三は素人なので


(すごく高そうな家具だな。)というくらいの


審美眼しかもちあわせていない。



 リビングの隅のキッチンで


エプロン姿になったロアンが料理を盛り付けている。


細やかな絵付けをした陶器の食器に


牛肉のローストビーフがスライスされて載せられ


ローストビーフの上には粉チーズが振りかけられ


フルーツのペーストをベースにしたソースがかけられた。



 その料理をテーブルにロアンは2皿置いた。


続いて、ロールキャベツが乗せられた皿も2皿置かれた。



 周三の目の前に


1匹の大きな海老の真っ二つにされた半身が


乗ってるリゾットが置かれた。


サラダの皿や野菜のスープがロアンによって


次々とテーブルに置かれていく。



 料理が揃うとロアンはサッとエプロンをはずした。


ロアンは壁際に置いてある細長い椅子を持ってきた。


よく飲食店で見かけるような子供椅子を


背はそのままにして全体的に小さくしたような椅子だ。


それを自分が座る椅子の左横に置いて


ロアンは南側の席に座った。



 小さな椅子にはララーが座った。



 (なるほどね。)と周三は納得した。



 自分の料理から


ミニチュアのように小さな皿に


ロアンは少しだけ取り分けるとララーの前に置いた。



 周三はロアンの様子を見ながら


(ロアンさんはエプロンは外すのに


帽子は取らないんだな。)と


心の中で少しだけ疑問を持ったが


しかし、それほどは周三は気にはしなかった。



 自分の前に置かれたワインが


入ったグラスをロアンは持つ。


「お待たせしました。


では乾杯しましょう。」


ロアンはグラスを前に掲げた。



 「はい。ロアンさん


ご招待ありがとうございます。」


ブドウジュースが入った自分のグラスを周三は持った。



周三も前にグラスを掲げると


ロアンはグラスを前に出して


「我が家へようこそ。」


周三のグラスにロアンは


グラスを軽くあてて音を鳴らした。



 ララーは体の比率に対して


大きなバケツみたいなコップを抱えて


ロアンと周三のグラスに向かって


ララーは飛んできた。


「かんぱい!」と周三のグラスに


ララーはコップを合わせて音をならした。



 「では、いただきます。


すんげぇ~うまそうっすね。」


そう言って周三はフォークとナイフを


手に取ると料理に手をつけた。


料理はどれもとても美味しかった。


(男性なのにとても繊細な味付けをするんだな。)


イケメンが料理が出来る事の破壊力に


ただただ驚愕するのだった。



 ロアンは自分の家具作りの仕事に


ついて話を話し始めた。



 周三の方は下宿先の話題など


他愛の無い話をしながら食事をした。



 デザートにはチーズケーキが出された。


料理の皿を台所に片付けたロアンは


紅茶を準備していた。


テーブルに用意した美しい植物模様が


絵付けされたティーカップに


ロアンはティーポットで紅茶を注ぐと


周三と自分の前にカップを置いた。



 ティーカップの湯気から


漂う紅茶の香りがとてもよい。



 紅茶に一口つけるとロアンが口を開いた。


「お客様の前で帽子を取らず失礼しました。」



 「いえ、全然気にしないでください。」と


周三は答えた。



 「これには訳がありまして。


勇者であるシュウには


話しておきたいのですがわたしは人間ではありません。」


周三に真剣な表情でロアンは言った。



 「え?そうなんですか!?」と周三は一瞬は戸惑った。


しかし、この世界はドラゴンも魔法使いもいる世界と


あらかじめ聞いていたので


周三はそれほどまでは驚いた様子を見せなかった。


ロアンはゆっくりと顔の布を取る。


セミロングの光輝く金髪と整った美しい顔が姿を現した。



 周三はロアンの顔が予想以上にイケメンな事に驚いた。


ロアンは特徴的には人間と何も変わらないとおもったが


しかし、よく見ると耳が尖がっていた。



 (なるほど。)と周三は納得した。


「ロアンさんってエルフですか?」と周三が言う。



 その言葉にロアンが目を丸めた。


そのあとに優しい笑顔になった。


「一目見てすぐにエルフとわかるんですね。


驚きました。


エルフ族をご存知とはさすが勇者様です。


わたしはエルフです。


第五大陸からここに移り住んでおります。」



 「へぇ~。


どうして第三大陸に


住もうとおもったんですか?」と周三が訊ねる。



 「フェンティーアに住んでいれば


長い間会っていない古い親友に


会えるような気がしたんです。


ここは親友の生まれ故郷なので。」



 「そうなんですね。


そのお友達と早く会えるといいですね。」



 「ええ。


シュウはもう勇者の修行は


何か始めているのですか?」と


ロアンは話題を変えた。



 周三は急に悲しげな顔をした。


今朝の帝国第三皇女ディアナとの


監督付修練場でのあらましを


ロアンに周三は話し出した。



 周三から事のあらましを聞いたロアンは


「それは大変でしたね。」と


周三にロアンは同情を示した。



周三は頷く。


「俺、ディアナの剣術を見て


気づいた事があるんです。」と


真剣な表情でロアンの顔を見つめる。



 周三の真剣な表情に


ロアンも真剣な表情になった。


「何に気づいたんですか?」と興味深げに


周三にロアンが訊く。



 周三は少し間をためた。


「あの剣術は人間の技じゃないんですよ。」


あくまで真剣な表情を崩さずに周三は言った。



 「はぁ。そうなんですか。」


ロアンはよくわかっていない様子だ。



 周三は話しを続ける。


「ロアンさん、人間という生き物は目で物を見るんです。」



 「エルフも目で物を見てますよ。」



 「そうなんですね。でもね、ディアナは違うんです。」



 「何が違うんですか?」



 「ディアナは後ろからの


敵の攻撃を見ずに捌いていたんです! 」



 「おお、それはすごい!」


ロアンはやっと理解できて反応した。



「ええ、それで俺は思ったんですが。」



「はい。」



 「どれだけ修行をしても普通の人間では


ディアナみたいにはなれない。という結論に達しました。」


少し自慢げに周三は断言した。



「そうなのでしょうか。」


ロアンはちょっと納得はしきっていない反応を示した。



 そのロアンの反応に周三は少し不満を抱いた。


「別にね、剣術なんて出来なくても


強くなる方法はいくらでもあると思うんです。」



 そう周三が言うと


ロアンの表情は納得したような表情になった。



 「それはその通りだとおもいます。」


ロアンは頷きながら答えた。



 周三は考え込むような素振りをする。


「それでですね。


ふと、俺はなんで剣術やることになったんだっけ?


という疑問に立ち返ったんです。」



 「そうですか。


それでなぜ始めたかわかりましたか?」



「ええ。」と周三は小声でこたえた。


周三はうつむくとすぐに目線をロアンに向けた。


「単に俺はディアナの口車に


まんまとのせられてただけなんですよ! 」


周三は悔しさをにじませた表情でロアンに言い放った。



 「それは難儀でしたね。」とロアンは同情を示した。



 「ええ、ですので剣術はしない。


という決断をしたのですが。。。」



 「どうしたんですか?」


ロアンは不思議そうに周三に訊ねる。



 周三はポケットから金の懐中時計を出す。


その懐中時計をディアナから


もらった、そのいきさつや


金時計が持つ意味をロランに周三は語った。



ロアンは周三の話を聞き終えると


「そうですか。


そんな意味があったんですね。


それは確かに気が重いですね。」と気持ちを察した。



 「ええ。


だから時計を返したい。でも返しに行くと


修練場に行かなければいけない。


無理やり稽古させられて俺はヘトヘトになる。


やっと稽古が終って時計を返して帰れると思ったら


ディアナは時計を受け取らない。


仕方なく帰る。


もう稽古場には近づかない。


するとディアナは下宿先にきっと訪ねてくる。


たぶん最初からめっちゃ怒ってる。


すごく怖い。どうしよう。という悪循環が


俺の脳裏に浮かんだんです。」と周三は力説した。



 「逃げ道がひとつも無いですね。」


ロアンは苦笑した。



 「はい。だから俺は困っているんです。


剣術がすぐ上手くなる便利なアイテムって


妖精の国にはありませんか?」


ロアンに周三はそんな質問をした。



 ロアンは腕を組んで考え込み出した。


「単純に強くなるというだけなら


色々とあるのでしょうが


剣術限定となると難しいですね。


剣術というのは


きっと地道な努力の積み重ねでしょうからね。」


周三に対してロアンが真っ当な返事をする。



 周三は(そうじゃないでしょ。)と


がっかりした表情を浮かべながらも


ロアンの正論に「ですよねぇ~」と言った。



 急に思いついたかのように


ロアンは自分の手を打った。


「強くなるための努力の仕方がわかる。


と言うのはどうでしょうか?」と周三に提案した。



 そのロアンの提案に対して周三は首をかしげた。


「どういうことですか?」とロアンに周三は問い返した。



 ロアンは深く頷く。


「つまりです。


剣技というのは動作のひとつひとつに意味があります。


その動作の意味や技の本質を見極めれれば


ディアナ姫ほどでは


無いにしても剣術でかなりいいところまでは


いける気がしませんか?」


周三にロアンがそう説明した。



 周三はニヤリとした。


「なるほどぉ。


ちょっと待ってくださいね。



いま、頭で中で考えをまとめます。


う~ん。そうか。


要するにそれは他人の技を見抜けたり


盗めたりすれば


剣術の努力は最小限で済むのではないか。と


そう言う意味で合ってますか?」



 周三の答えにロアンは頷いた。


「そのとおりです!」



 周三は難しい表情をしながら


「そんな事が可能なのですか?」という疑問を


ロアンに投げかけた。



 ロアンは微笑みを浮かべている。


「精霊の中には魔眼という種族がいるのですが


ある特殊な魔眼精霊のチカラを眼に宿すと


その眼で見た技や魔法の本質を解読できるんです。」


周三はロアンに説明した。



 「なんと!


そんな便利な精霊が存在しているとは!!!! 」


周三は素直に驚きの表情を見せた。


「その精霊はどこにいるんですか?妖精の国ですか?」


興奮ぎみにロアンに周三は訊く。



 「その特殊個体の魔眼精霊は


わたしが召喚する事ができます。


召喚はできますが魔眼のチカラを


自分の物に出来るかは別の問題です。


もしチカラを得ても発動するのには


膨大なチカラの対価が


必要と言われていますが


勇者であるシュウでしたらそこは問題は無いと思います。」


ロアンが自信あり気で答える。



 周三は考え込む。


(そういえば羽生もチカラは空気みたいなもん。って


言ってたし、やっとその空気みたいなチカラを


使えるようになると思ってええんやな。」と周三は納得した。


「では魔眼のチカラを得るにはどうしたらいいんですか? 」



 「簡単です。


召喚された魔眼を倒せばいいのです。


要するにチカラを認めさせればといいということですね。」


周三には、いとも簡単な事のようにロアンは言った。



 「ん・・・


ちょっと待ってください!


普通の人間が精霊と戦って勝てるんですか?」


周三は不安な表情でロアンに問いかける。



 「魔眼ならおそらく大丈夫です。」


相変わらず自信有り気にロアンは言う。



 ロアンの自信あり気な言葉を信じて


周三はこのチャンスに懸けてみることにした。



 周三とロアンは2人でリビングのテーブルを


部屋の隅に寄せた。



 ロアンは階段を下りて


一階の仕事場からチョークを持って戻ってくると


そのチョークで床にロアンは召喚魔法陣を描いた。



 チョークで描いた召喚魔法陣の前に立って


ロアンは呪文を唱え始める。


「現世に刻まれし全と世を偽りし


虚を真として光を映し眼よ。


ここに来たりてそのチカラを示せ!


汝の名はエービンス! 」


ロアンが呪文を唱え終える。



 召喚魔法陣の中心に光が集まり


やがて光が渦になった。


光の集まりは何かの形に変化していき


その姿が実体となって浮かび上がってきた。



 周三はそれを見ながら


期待と不安でドキドキしていたが


浮かび上がった何かのサイズが


思っていたよりも


かなり小さめな気がした。



 召還されて姿を現した精霊は


ソフトボールくらいの大きさで


全身が丸く正面に大きな瞳がついている。


要するに目玉だ。


目玉にコウモリのような翼が生えていて


鶏のような足が2本生えていた。



 精霊は左足を前にすると右の翼を前にして


貴族の挨拶のようなジェスチャーをした。


「ロアンさまお久しゅうございます。


今日はどのようなご用命でございましょう。」


少し前かがみで


魔眼精霊エービンスはロアンに挨拶をした。


よく見ると瞳の下のほうに


黄色い小さなクチバシがついている。



 「今日はわたしの用事ではないんだ。


こちらのかた


君にチカラを貸して欲しいそうなのです。」


ロアンはエービンスに説明する。



 エービンスは周三の事をチラリと見て


ふんぞり返って、エービンスは周三を


少し見下すような態度を示した。


「そうですか。ロアンさまは


わたしを従えるほどのチカラを


この坊やが持っているとおっしゃるのですね。


左様ですか。


それでは早速ですが


この坊やの実力の程を見せて頂きましょうか。


さぁ!心ゆくまで死合いましょう! 」


エービンスは周三に体を向けると


翼を広げて威嚇のポーズを取った。



 それを見てエービンスの前に周三はしゃがんだ。



 エービンスを囲むようにしてロアンもしゃがんだ。



 ララーは床に座った。


 

 ロアンが口を開いた。


「それでは、わたしが試合開始の合図をします。


それでは、、、、、、、開始!」


ロアンが合図すると



 その直後すぐに周三に向かって


エービンスは「トリャー! 」と真っ直ぐ突進してきた。


鋭い爪のついた足でエービンスは周三のローファーに


シュバッ! っと蹴りを一発お見舞いした。


その衝撃で逆にエービンスはバランスを崩して


よろけてしまった。


エービンスは呼吸を整えて、一度体勢を整えてから


後ろに飛びのいて周三との間合いを取って構える。



 周三はエービンスを眺めながらキョトンとしていた。


周三が攻撃の意思がないと見るや


チャンスとばかりにエービンスは自身の翼で


勢いをつけてジャンプすると


周三のヒザに、トンッ! と頭突きをした。



 周三のヒザに当たったエービンスは


周三のヒザが予想より硬くて


頭が弾かれてしまい、後ろに吹っ飛んだ。


エービンスは不自然な体勢で床に落下した。


「ぐはっ! 」


ドンッ!ドンッ!ドンッ!と床を


エービンスの体は跳ねながら


ソフトボールのように壁まで転がっていった。



 周三のヒザに体当たりした衝撃と落下した衝撃からか


エービンスの白い体は所々が充血して赤くなっていた。


無残に壁際に転がっていったエービンスは


プルプルと震えながらも翼で体を起こし


ふらふらとよろめきながら起き上がる。


「。。。。フフフ。


さすがロアンさまが見込んだ坊やですね。


エービンスはもしかしたら負けてしまうやもしれません。」


少し弱音を吐いていた。



 するとエービンスに向かって


床に座っていたララーが口を開いた。


「だってシュウは勇者なんだよ。


強いに決まってるよ。」



 衝撃の事実を知ったエービンスの体は


ビクっとしてから体から血の気が引いたように


真っ青になった。



 「ほぉ。は~ん。なるほど。


そういうことですか。ふむふむ。」


エービンスはぶつぶつとつぶやき始めて


考え込んでいるような素振りを見せた。


そして、すぐに答えが出たという顔をして


両翼を体の前で合わせる。


「勇者ならその強さも頷ける。


うん。よし! 合格です!


このエービンスがど~んと


勇者様のおチカラになりましょう。」


エービンスは少しうれし気な様子で言うと


両翼を使って拍手をしだした。



 エービンスの拍手を見たロアンは


立ち上がって笑顔で拍手した。



 なんとなく周三も立ち上がり拍手した。



 ララーは座ったままでつられて拍手した。



 周三は魔眼の精霊との契約に成功したのだ。



 「では、契約成立しましたので


勇者様の左目がわたくしの新しい体となります。


では、これからよろしくお願いいたします。」



 「ああ。俺が勝ったんだね。


じゃ、これからよろしくね。」


エービンスの体は光の球体となって


周三の左目に吸い込まれた。



 「シュウ、契約成立おめでとう。」


ロアンが言って周三の前に右手を出した。



 「ありがとうございます。」


ロアンの右手を両手で包み込むように


周三は握って感謝した。


そして周三はロアンに魔眼の使い方についての


キチンと説明をしてもらうおうと思った。

今日は比較的すごしやすい温度ですね。

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