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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
12/118

監督府剣術修練場

 夕方に家具職人ロアンの夕食のお誘いを断り帰宅した。


カノレル雑貨店で夕食を済ませた周三は


台所で水仕事をしてるリアに


「夕飯はエビのグラタンが


とくにおいしかったです。」と話かけた。


話のついでに


周三は下宿代をハウル夫妻に支払う事を提案したが


「気を使ってくれてありがとう。


でもね。そのお気持ちだけで充分ですよ。」と


リアに笑顔でやんわりと


下宿代を支払う事を断られる周三であった。






 周三はカノレル雑貨店の一階の浴室で


軽くシャワーを浴びたあとに階段で自室に向かう。


肩にかけたタオルで頭をゴシゴシしながら


自室に戻った周三は服を脱いで肌着姿になった。


周三はジャンプして勢いよくベッドに横たわった。


「学校も無いし、のんびり過ごして


お給料ももらえるなんて最高な環境だ。


素敵な人ばかりだし


こっちの世界と元の世界の2重生活というのも


悪くないかもしれないなぁ。」


こちらの世界の生活での人間関係や経済面に対して


周三は不満を微塵も感じてはいなかった。






 フェンティーアに来て3日目の朝に


周三は、ハウルとリアと3人で


店の奥の間の居間リビングのテーブルで


パンとスープと


サラダとベーコンエッグというシンプルな朝食を済ませた。


周三はリアと市場まで食材を買い出しに行ったあとに


少し自分の部屋でのんびりしていた。


「今日はずっと寝ていたいなぁ。


姫様には会いたいけれど


剣術とかするんやろ。


そんなのした事が無いからなんだか邪魔くさいんだよなぁ。」


天井を眺めながらボヤいた。


周三は剣術への情熱が薄い。


そう言いながらも約束の時間より


早く着きそうな時間を見計らって


周三はカノレル雑貨店を出て監督府に向かった。


「そろそろ溜まった洗濯物を洗濯もしないとなぁ。」


周三はそんなことを考えながら


カノレル雑貨店の前の通りを南に下り


突き当たりの海沿いに通りを東にトボトボと歩いていた。


フェンティーアは今日も晴天で爽やかな陽気だ。


海風から潮の香りがして


周三は街の散策などをして過ごしたい気持ちにかられた。


しばらく歩いていると四角い大きな建物が見えてきた。


その建物が帝国の監督府である。


周三は監督府の建物の正面に立つ。


しっかりした立派な建物である。


その敷地の奥に見える監督府よりも


はるかに大きな宮殿がディアナの自宅。


おとついにディアナをここまで送り届けた際に


周三はディアナからその事実を聞いた。


「監督府の敷地内に自宅ではなく


自宅の敷地内に監督府がある。が


正しい表現だな。」と独り言を言った。


敷地には宮殿の正門と監督府の正門の二つの門がある。


高い柵で宮殿と監督府の敷地は完全に区切られていた。


監督府の正門の脇に守衛の詰め所があった。


守衛の詰め所の受付窓口から守衛さんに


「すいません。ディアナ姫と約束をしてる田中周三です。」


そう声をかけた。


若い男性の守衛が周三に軽く笑顔を向けて


「ディアナ・アルブルド姫殿下とのお約束ですね。


いま確認いたします。」



 守衛が手元の名簿を確認した。


「どうぞお入りください。」とあっさり通してくれた。


監督府って言うくらいだから警備が


厳重かと少しだけ緊張をしていたが


周三の取り越し苦労だったようだ。



周三は監督府の建物に入った。


監督府は役所である。


1階の広いフロアの各受付窓口は


各部署に仕切られてカウンターが設置されていた。


職員たちが窓口の奥のフロアで事務処理をしていたり


相談窓口で一般の来客と担当の職員が話をしていたり


元いた世界の役所と変わらないような風景がそこにはあった。


(一般人が結構多いって事は監督府って


大使館のような役割も兼ねてるのかな。)


周三はそんな疑問を持った。


周三はフロアの入口正面にある案内窓口の前に立った。


「ディアナ姫と約束しているんですけど


ディアナ姫はいらっしゃいますか?」


周三は女性職員に確認した。



 「承っております。田中周三様ですね?」



 「そうです。田中周三です。」と職員に名乗った。


 

 「では、少々、お待ちください。」


そう言って女性職員が事務所に行く。


しばらくすると、女性職員が戻ってきた。


女性職員の後ろに男性職員が


一人ついてきていた。



 その男性職員が周三に前に立つと軽い挨拶をした。


「わたくしが殿下がおられる修練場までご案内いたします。」



 「よろしくおねがいします。」


周三は軽く男性職員に頭を下げた。


男性職員の案内で裏口から


監督府の庭に出て、柵の扉から宮殿の庭の敷地に入った。


すると目の前にドーム状の屋根の四角い建物が見えた。



 「この建物がアルブルド帝国軍士官の


剣術修練場となっております。」


そう男性職員さんから周三は説明を受けた。



 修練場の建物の手前で男性職員は立ち止まった。


「正面の扉を開けてお入りください。


わたくしの案内はここまででございます。


建物の中に入れば、殿下がおられます。」


男性職員はそう話すと監督府に戻って行った。



 周三は一人で入り口までの正面の横幅の広い階段を上り


目の前にかなり大きくそびえる扉を周三は開けた。


扉を開けると建物独特の臭いが鼻を刺激した。


扉の向こうに目の前に広く四角い空間が広がった。


「学校の体育館みたいな雰囲気やな。」


周三は、ボソっとそう感想をはいた。


四角いフロアの両脇の壁際にはズラリと椅子が並べられており


テーブルなどが置かれていて休憩を取れるようになっていた。


床には赤い絨毯が敷かれており


天井中央に大きなシャンデリアがあった。


大きなガラス窓が四方にあり


太陽光が入って意外と明るい。


体育館というよりもダンスホールといった感じの印象であるが


周三の生活範囲内で


印象の似た建物といえば学校の体育館くらいだった。


軽装の男性たち30名ほどが剣術の稽古をしていた。


おのおのが剣技の型を確かめたり


試合形式の練習をしたりしている。


入り口から中央の直線上の一番奥に


白いシャツと白いズボンにブーツ姿のディアナが


体の正面に木の剣を柄頭に両手に添えて


切先を地面に押し当てて直立不動で立っていた。


ディアナの美しく凛々しい立ち姿を見た周三は


本気度が伝わってきて、下宿先に今すぐに帰りたくなった。


周三に気づいたディアナは笑顔になったがすぐ顔を引き締める。


周三のもとにゆっくり歩いてきた。



 「田中周三殿。よく参られましたね。」


ディアナは改めて爽やかな笑顔で歓迎した。



 周三に何故か、えもいわれぬ恐怖を感じた。


「おはようございます。


今日は見学にと参りました。」


周三は出足からハードルを


下げる発言をして自己防衛に努めた。



 そんな周三の意図は、ディアナには通用しないようで


「今日は田中周三殿の実力をわたくしが


まず確かめてみて


今後の田中周三殿の鍛錬のカリキュラムを


組みたいと思っています。


ですから手加減抜きの


全力を出して頂いてかまいません。」



 ディアナがやる気が満々なのが


痛いほどに周三に伝わってきた。



 ディアナは自分の持つ木剣を周三に渡した。


「ではまずは木剣を握って構えてください。」と言ってきた。



 周三はディアナに促されて木剣を両手で握る。


(剣術の構えってこうだったっけ?)


手探りな感じで木剣を中段に構えてみた。


ディアナは難しい顔をしながら周三の背中にまわる。


周三の背中にディアナは体をぴったりくっつけてきた。



 「まず上段の構えから見ますので


剣の位置はこうです。」


ディアナは手取り足取りで丁寧な指導で


周三を上段の構えに直させた。



 ディアナからはバラの花のような高貴な香りがした。



 ディアナは近くにいた男性から木剣を借りると


木剣を水平にして両端を手で持つと


左足を前にして


右足を後ろにして踏ん張るように腰を下ろした。


木剣の剣身を自身の頭の上の前方辺りに構えた。


ディアナは周三に向かって


「それではその上段の構えから


踏み込みながら


わたしが支えて構えている剣の中央に


思い切り5度打ち込んでください。」と指示してきた。



 その指示に周三は少し躊躇した。


周三は手加減しながら5度打ち込んだ。



 すごくムっとした表情を浮かべるディアナ。


「手加減は無用だと言ったはずです。


思い切りわたしを押し倒す


くらいの気持ちで打ち込んでください。」と


見透かしたような事を言われた。



 周三はあとにひけなくなってしまった。



 「今度は本気でいくから怪我しないようにね。」


周三は精一杯強がりを言った。



 「心配は無用です。」とディアナに無表情に


言われて周三はちょっとへこんだ。



 周三は今度は両手に力を入れて本気で5度打ち込んだ。



 周三の本気の打ち込みに


ディアナの木剣はビクともしなかった。


ディアナは静かに首を横に振る。


「これからあなたには


毎日、修練場に通って頂かないといけませんね。」



 周三にとってはとても恐ろしい事を


ディアナはさらりと言い放った。



 周三は作り笑いと浮かべた。


「いえいえ、それはちょっと。


出来れば週1回くらいのお稽古で


なんとかなりませんか?」


周三は嘆願したがディアナは揺らぐことはない。


「あなたは剣術を甘く見過ぎです。


それではわかりました。


剣術とはどういうものかを


実際に見て頂いた方がよろしいようですね。」


ディアナは周囲で稽古していた男性を5人ほど集めた。


「今からあなたにわたしの剣技を見て頂きます。


それを見ても週1回の稽古でよいとおっしゃるのでしたら


それでも構いません。


お好きなようになさってください。」


ディアナの不機嫌そうな顔に悲しみが滲んで見えた。


ディアナは修練場の中央に


自然な姿勢で立つと


スッと中段に木剣を構えた。



 何も指示されていないのに


5人の男性の全員が胴に防具を着用していた。


男性5人はディアナを取り囲み


おのおの別々な型で木剣を構える。


その5人の男性とは、別の男性が審判をするようで


かなり離れた位置に立った。


「はじめ!」と審判役が号令するやいなや


5人の男性がディアナに向かって一斉に木剣を打ち込んだ。


5人の男性から不規則な剣の速度で


あらゆる方向から


あらゆる軌道で放たれる剣撃を


ディアナは全て事も無げに瞬時に反応し対応した。


ディアナの持つ木剣の動きが


早すぎて周三は目では追いきれない。


驚いた事にディアナは一度も剣を止めていない。


全ての剣撃をしのいだ後にディアナは体をくるりと


一回転させながら木剣を思い切り横薙ぎになぎ払う。


ダーーーーンッ! と


なぎ払われた男性たちはディアナの剣撃にはじき飛ばされた。


5人の男性は皆ががっしりとした体つきをしているのに


5人とも吹っ飛ばされて尻餅をついたり転倒した。


防具をつけていなければ、


その威力で大怪我をしていただろう。


周囲の人々からは感嘆の声と拍手が修練場に鳴り響いた。


隅っこで三角座りをして


その芸術的な剣技を観ていた周三に


ディアナは歩み寄る。



 「あなたにもこれくらいの事は


造作もないほどの力量になって頂きたいのです。」


ディアナは爽やかな顔で言ってきた。



 ディアナのあまりの無茶ぶりに周三は


(ディアナ姫って現実が見えていない人なのか?


おかしな人なのか?)と恐怖を覚えた。


周三はディアナの言葉を無視して


黙ったまま目をしばらく閉じた。



 周三を見下ろしていたディアナは


間をはずされキョトンとした。


しばらく周三を見下ろしていたディアナは


間が持たずに


周三の左側に三角座りをして腰掛けた。



 しばらくその様子を遠巻きで見ていた男性が


周三とディアナに歩み寄る。


周三の目の前に稽古着を


着た背が高くて大きな体の男性が立ち止まった。



 三角座りしている周三とディアナの前に


その男性はしゃがみこんで目線の位置を合わせてきた。


「ふふふ。ディアナ様、


勇者さまは、きっと困っていらっしゃるのですよ。」


優しい声でディアナに男性はそう声をかけた。



 ディアナは眉間にしわを寄せた。


その男性に向かって


「何を困る事があるのですか!


勇者であるならば剣技を極める事は


至極当たり前のことではありませんか!」


ディアナは拗ねて不機嫌そうに声を荒げた。



 目を閉じて三角座りしていた周三は


目の前になんだか優しい人がきた。と


探知すると心の中で


(助けて~!怖いよ~!ヘルプミ~!)と


心の中で救難信号を発していた。



 背の高い大きな男性は柔らかな口調で


「確かに勇者様ならば


剣技を極めるのは普通の事でしょう。


しかし、いくら勇者様でもまだ剣術を


一度も経験された事が無いご様子。


にもかかわらず


アルブルド剣術正統伝承者のディアナ様の


剣の技量をいきなり見せつけられて


このくらいの技量は


勇者様には当たり前でしょう。などと


言われましても


具体的に何も想像がつきにくいのではないでしょうか。


勇者様ならきっと剣術を極められるでしょうが


焦らずにまずはゆっくりと基本から


ご指導して差し上げてみてはいかがですか。」


その男性は至極全うな意見をディアナに言ってくれた。



 ディアナは困った表情を見せると


右隣で三角座りをして目を閉じたままの


周三を寂しそうに眺める。


「オホン。


そうですね。わたしは何を焦っていたのでしょうか。


田中周三殿の気持ちも考えず


自分勝手な願望を


押し付けてしまったのやもしれません。


よく言ってくださいました。


わたしは反省いたしました。


田中周三殿に心から謝罪します。


申し訳ありませんでした。」


ディアナはしおらしい口調になっていた。



 ディアナの謝罪の言葉を聞いて


周三はパっと目を開けた。


周三はスクッと立ち上がると


助け船を出してくれた男性の前に立った。


「俺は田中周三っていいます。


俺はあなたを心から尊敬します。」


目の前には年齢が25歳くらいの


黒髪の優しそうな青年がしゃがみこんでいた。


周三はその男性に握手を求めた。



 「いえ、出すぎた真似をしました。


私は名をリューク・エメドレンと申します。


勇者様はじめまして。」


リュークも立ち上がると柔らかな笑顔を向けて


周三と握手を交わした。



 「俺はあなたをこれから実の兄のように


慕って生きていきます。


俺の事はシュウと呼び捨てで呼んでください。」


周三の目は少し涙で潤んでいた。


周三はそれだけ追い詰められていたのだ。



 リュークは少し驚いた顔を見せてから


「いえそれは失礼なのでシュウくんと呼ばせて頂きます。」


と何故かクン付けで呼ぶと返答してきた。



 「はい。では俺もリューくんと


呼ばせてもらっていいですか?」と周三が返す。


リュークは笑顔で


「全然かまいませんよ。」と甘いマスクで答えた。



 ディアナは落ち込んで小さくなっている。


 

 そんなディアナに目を向けた周三は


「姫様も俺の事をシュウと呼び捨てで呼んでください。


姫様の事はなんとお呼びしたらいいですか?」と声をかけた。



 ディアナは周三を上目遣いで見ながら


「わたしのことはディアナと呼んでください。


呼び捨てでかまいません。」と


少しかすれたような声でこたえた。



 「じゃぁディアナの期待になるべくこたえれるように


用事が無い時は足を運ぶようにするから


剣術に慣れるまでは


スパルタとかやめると約束してくれるかい?」


周三はサラリとディアナに向かって情けないことを言った。



 ディアナの顔は笑顔を取り戻すと


「ええ、


しかし、剣術に慣れるまでですよ。」と調子を取り戻した。


ディアナはリュークに目を向けて


「リュークにも心配をかけました。申し訳ありません。


シュウにあらためてリュークを紹介をしなければいけませんね。」と


ディアナは立ちあがって改まると周三に向かって


「リュークはアルブルド帝国の将軍です。


有事の際は10万の帝国騎士を指揮するほどの


上級の将軍であり帝国の黒騎士リュークと言えば


帝都だけでなく他国でも知らぬものはおらぬほどの


有名な武人なのです。」とリュークを周三に紹介した。



 周三は目を輝かせた。


「リューくんってすごく偉い人なんですね。


それなのに物腰が柔らかくて俺、すごく尊敬します。」



 リュークは少し困った顔をしたあとに


「お二人とも褒めすぎですよ。


勇者様とディアナ様に褒めて頂けるなんて光栄です。」と


リュークは照れくさそうに笑う。


「お二人とも仲直りできてよかったですね。」と


爽やかな笑顔で言うと軽く手を上げて


リュークはその場を去っていった。



 (なんて涼やかなお人なのだろう。)と


周三は心の兄貴に出会えた事が


この修練場に来ることで得た最大の収穫だと確信した。


周三はディアナの顔をチラっと見てから


すぐに修練場の壁に設置されている壁掛け時計をジッと見る。


「もうすぐお昼ごはんの時間だから帰ります。」


周三はそうディアナに伝えた。



 ディアナは少し残念そうな顔をしたが引き留めることなく


「そうですか。ではわたしはこのような格好なので


監督府の中までは参れません。


監督府の裏口まで送りましょう。」とこたえた。



周三とディアナの2人は並んで歩き、修練場の入り口を出た。


入り口の階段を下りると周三は


「下宿先でご飯を作ってくれてるから


外出しても食事の時間に遅れないようにしたいんですよ。


時間は守りたいんで、


今度の給料日に腕時計を買おうと思ってるんです。


一応、さっき、時計の下見もしてきたんです。」と


ディアナに何気なく言う。



 ディアナは何か思いつめた顔で立ちどまった。


ディアナはどことなくわざとらしい仕草で


「そうだ!


仲直りの印にこの時計をシュウにあげましょう。」と


少し上ずったような声で言った。



 ディアナは自身のズボンのベルトどめに手をやると


引っ掛けてあるチェーンの留め金を外す。


ポケットからチェーンの付いた金色の懐中時計を出した。


獅子の絵柄が彫金されている金の懐中時計を


周三に笑顔で見せると周三の手をとって手渡した。



 周三は困惑し


「こんな高そうなもの受け取れないよ。」と


時計をディアナに返そうとした。



 「それはもうあなたにあげたものです。」


ディアナは突っぱねた。


ディアナはおびえたような目をして


首を横に振って受け取ろうとしない。



 周三は困り果てたが、


(ディアナはこの時計を返される事に何か恐怖を感じるのか?


なにかいわくつきの時計とかだったら嫌だなぁ。)と思い


本心から懐中時計を返したいのだが


本人が受け取らないのだから返しようも無い。



 こんな押し問答をしていては昼食の時間に遅れそうなので


「それじゃあ、とりあえず預かっておくよ。またね。」と


周三は妥協した。


周三は監督府の裏口の前でディアナに手を振って分かれた。



 下宿先に急いで帰ると、


リアがムール貝のパスタと


季節の野菜を煮込んで作ったソースが


かけてある白身の焼き魚、そして、


サラダとスープをテーブルに用意してくれていた。


居間のテーブルで周三とリアの2人は食事を始める。


周三はおもむろにポケットから金の懐中時計を出した。



 リアは驚いた表情を見せる。



 「リアさん、


ディアナ姫から金の懐中時計をもらったんです。」と


説明した。



 リアは優しい表情を浮かべる。


「その時計をちょっとだけ見せてもらえるかしら。」



 「いいですよ。」


周三は金の懐中時計をリアに手渡す。



 リアは懐中時計のフタを開けて


フタの裏側をじっと見ていた。


リアは静かに金の懐中時計のフタを閉める。


「シュウ、この時計は絶対に


無くしたりしてはいけませんよ。


とても大事にしてくださいね。


この時計はね。アルブルド帝国の皇帝が


子供を授かると


その子供の為に特注で作らせるものなの。


そうね。その時計は持ち主の生まれた証。


そういう意味合いのものね。


それをあなたにあげたっていう意味を


考えてみたらいいかもしれないわね。」


リアは真剣な眼差しを周三に向けた。


そして、リアは金の懐中時計を周三に手渡した。



 周三は大変なものを受け取ってしまったと


変な汗をかきはじめる。


ディアナに腕時計購入の話をした事を心の底から後悔をした。






書いてたら夜になってました。

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