顕現
周三は真義の両足首を握り潰した。
周三は真義に本気で戦えと言って迫った。
真義は潰れた足首を庇うようにして胡坐をかいた。
「小僧。お前はわしらに何をさせたい。
要求があるのなら聞いてやる。言ってみい。」
「なんで上から物を言うとんじゃ!
うるさいわ!黙ってかかってこいって言ってんのじゃ!」
周三は真義の言葉に耳を貸す気が無い。
「そうか。交渉は決裂じゃな。残念じゃ。」
真義は翼を大きく羽ばたいて後方の上空に舞い上がった。
「白竜皇よ。わしの命はくれてやる!白竜皇よ!ここに顕現せい!!!」
そう言うと持っている刀を両手で持ち
刃を自分の首に当てて思い切り刃を引いた。
首から血が噴き出すと血飛沫が霧のように舞い散った。
その血が神気の霧に変化してどんどん細長く巨大な竜を形作った。
「へぇ~。白竜を顕現させたか。
竜神に喧嘩をバトンタッチして責任逃れか。
あのおっさんはほんまに人間の屑やな。」
周三は空いっぱいに塒を巻く巨大な白竜を眺めた。
白竜皇の体が全て顕現すると
雨雲が発生して日差しを遮って辺りが暗くなる。
ゴロゴロと地面に鳴り響くような雷の音が雨雲から発生し始める。
「フ~ン!美味そうな白ウナギじゃねぇか。」
周三はニヤニヤと笑みを浮かべながら白い竜を見ていた。
白竜皇が周三を威嚇しようと巨大な顔を近づけて大きな口を開いた。
「おい!エービンス。この竜を食っちまおうぜ。」
エービンスからの返事は無い。
今、エービンスの意識領域は全て周三に捧げられているためだった。
魔眼と脳を融合する事で精神力を爆発的に高めた周三は
精神がかなり狂暴化していた。
魔眼精霊は悪魔精霊のカテゴリーに属している。
悪魔の精霊との精神を融合し共有化する事で周三は半神格化している。
神に死の概念は無いが半神となった周三は武力で神を消滅させる事は出来る。
この魔眼との融合術はギヨク将軍との戦いに備えた時期に会得したものだが
ギヨク将軍があまりに弱すぎて使う機会が無いまま終わった術であった。
「クオオオオオオオオオォォォォォォッォ!!!!」
白竜皇は周三に向かって大きな咆哮をあげた。
「うるさいなぁ。国会議事堂内は議員さんたちが
お国のために大事な会議しとるんやで。公務の邪魔をしやがって。
こいつ頭悪すぎやろ。空気も読めんのか!」
周三は白竜皇を強く睨み付けた。
白竜皇が周三を食おうと頭を近づけて来たので
右手で聖剣白羊を腰の鞘から抜くと白竜皇に向かって聖剣を投げつけた。
聖剣はダーツのようにプスっと白竜皇の左目を射抜いた。
「グアオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!」
白竜皇はあまりの激痛に体を丸めると
大きな悲鳴を上げながら真っすぐに上空に舞い上がった。
周囲の雨雲から雷撃が白竜皇の体にどんどん集まっていく。
白竜皇の白い巨体はどんどんと青白い光を纏っていった。
「やべぇな。あんな巨大なエネルギーを地上にぶつけられたら
国会議事堂どころかフェンティーア市が消滅しちまう。」
「しゃあねぇな。白竜皇をぶっ倒すか。」
周三は自分の左目を集中して大量の魔力を注ぎ込んだ。
「白竜皇よぉ。知ってるかぁ?俺って目からビームが出るんだぜ!」
周三の左目の前に手のひらくらいの大きさで真っ赤に光る球体が現れた。
「目標ロックオン!名付けて『魔眼粒子砲』発射!!!!」
周三の左目から放たれた光線は先端がどんどん大きくなりながら加速した。
白竜皇は巨大な力の接近に気づいて
慌てて加速をしながら猛烈な勢いで上空へ上昇した。
白竜皇が西に方向転換しようと速度が一瞬だけ緩まった。
その瞬間、白竜皇の頭部は巨大な赤い光線に撃ち抜かれた。
白竜皇の頭は爆発して四散し
頭部を失った白竜皇は体は地上からは長細い白い糸のように見えた。
「ヒャッハー!やったぜ!大当たり~~~!!!
おっさんの白竜威光弾を魔眼で見て技を盗んで応用したけれど
めちゃくちゃ使えるじゃん。必殺技をゲットだぜ!
拳破と違って体を使って撃たないから無駄が省けて
目標と軌道を撃ってすぐに修正がきくから超優秀だ。」
周三は感想を述べたあとに精神を集中して目を瞑った。
周三の体からドス黒い瘴気がどんどんと膨らんで
空に向かって煙のように立ち上る。
上空で黒い竜のような形を形作りながら上へ上へと舞い上がる。
その黒く巨大な瘴気の塊が白竜皇の体に巻き付いていく。
頭部が無くなっても白竜皇の体は生きていた。
白竜皇の体は得体の知れないものが巻き付いたのを察して上空で暴れ出した。
黒い瘴気の煙が白竜の体に巻き付くと白竜皇の体がどんどんと分解されていく。
まるで黒くて小さなアリたちが大きな虫を
少しずつ少しずつ体を嚙みちぎって削っていくようだった。
「神は存在という概念のみで出来てるからなぁ。
同じ存在のみの概念である神格に存在力を弱らされた状態で
強い存在力に体を侵食されると強い存在力の方に弱った存在が融合されちまう。
神格は神格の存在を奪って取り込む事で能力をも奪う。
神格は神格を倒す事で存在を強くすることができんだよ。」
魔眼が融合している周三には神格を構成するものの意味をクリアに理解できた。
白竜皇はどんどん小さくなっていく。
白竜皇の体から物体が剥がれ落ちるように降ってくる。
周三は落下してくる物体を見つめた。
「おっさん。もう神様をやることからも逃げ出したか。」
ズシャ!!!!!とその物体は広場の地面に落下して土煙をあげた。
広場に落ちてきたのは物体は真義だった。
しかし、真義はもう白竜の鎧は纏っておらず元の派手な意匠の和服姿であった。
周三は真義の体の傍に近づいていく。
真義の体のすぐ傍でしゃがんで
うつぶせで倒れている真義を手でつかんで仰向けにしようとした。
突然、真義は動き出し周三のマントを
右手で掴んで周三の鳩尾に左手の刀を突きたてた。
周三は鳩尾を見ながら頷いた。
「なるほど。。。おっさん。最後に気合いだけは見せたな。」
真義の刀は刀身の根本まで周三の鳩尾を貫いているように見えた。
しゃがんでいた周三は立ち上がると
真義の右手はマントから離れた。
真義は崩れ落ちるように地面にべチャッとうつ伏せに体を打ちつけた。
真義の体はピクリとも動かない。
「結局、竜騎士は誰も降参しなかったか。ナイスガッツ。」
周三は竜騎士たち三名の根性を讃えて軽く拍手をした。
周三の体を覆うように
漂っていたドス黒い瘴気がどんどん体の中に引いていく。
赤く光っていた左目からも光が薄れていった。
周三は鳩尾をさすりながら笑顔で真義を見下ろす。
「おっさん。白竜皇の存在が消えたのに
白竜皇の爪から作った刀が存在できるわけないやんか。」
真義の左手に握られた柄には刀身がついてはおらず鍔から先には何も無かった。
周三は感慨深げに周囲の景色を見渡した。
「これにて一件落着!!!」
周三はそう言って締めるとリリアンの方向に向かって歩き出した。




