お出かけ
裏庭に出ていたハウルとリリアンが奥の間に戻った。
「リリー先生。町にお出かけしましょうか。」
周三はリリアンを誘った。
「そだね。行こう。行こう。」
周三はリアの顔を見た。
「リアさん。何かフードのあるマントみたいなものは無いですか?」
「探せばあると思うけれどどうしたの?」
「いやぁ。まだ戦時中なのにデートしてたら人の目もあるので。」
「あら。そうね。まだ戦争に勝った事を誰も知らないものね。
すぐに探してくるわね。」
リアは階段を上って2階に向かった。
「あたいもジャケットと帽子をシュウの部屋に取りに行こうっと。」
リリアンも2階にあがっていく。
ハウルはテーブルに座り抱いていたペンギンを膝に乗せると周三に
「シュウは今日は用事は無かったのかい?」と訊ねた。
「えっと。北の軍港に行く用事があるんですが
急ぐ用事でもありませんし、リリー先生に色々と学校の事とかを
ゆっくり質問するいい機会なのでそちらを優先しようかなって。」
「なるほど。リリーは情報通だから学校の事以外の質問にも
答えてくれると思うよ。」
「そうですか。質問が思いついたらどんどん質問してみます。」
リアが階段を降りてきた。
「これくらいしかないのだけれど。どうかしら?」
そう言って黒いマントを周三に差し出し周三は受け取った。
「良い生地ですね。サラサラの手触り。」
周三は黒いマントを着用してみた。
「よく似合っているじゃないか。」
ハウルが軽く拍手をした。
「これはいいですね。気に入りました。お借りします。」
「良かったら使って。気に入ったのなら差し上げるわ。」
リアは嬉しそうにそう言った。
「いえ、こんな高そうなものを頂けませんよ。」
「戦勝のお祝いだと思って受け取って頂戴。
そのマントはカノレル家に伝わる勇者のマントなの。
ボタンを見てごらんなさい。竜の首の紋章がついているでしょ。
その紋章は勇者のみに許された紋章だからわたしたちは
身に着ける事が許されないマントなの。
シュウとカンベインだけが身に着ける事ができるものよ。
そのマントも使ってもらえた方が嬉しいに決まっているわ。」
「勇者のマント。。。。かっこいい。遠慮なく頂きます。
大切にします。めっちゃ嬉しい。あ!そうだ!
勇者の鎧のレプリカもあるんだった!
今日はその鎧も着けて勇者気分で町に出ようっと。」
「ハハハハ!勇者だとバレない為にマントを着るのに
勇者の装束で外を歩くのだね。」
ハウルは笑った。
リアはハッとした表情をした。
「あら。そういえばそうね。うっかりしていたわ。
鎧まで着けたらもっと勇者とバレちゃうかしら。
このマントを見つけてつい嬉しくって。ごめんなさい。」
リアはそう言って申し訳なさそうに周三のマントの留め具をつけた。
「いえ、気にしないでください。俺、気が変わりました。
勇者だとバレて町の人にもしも話しかけられたら
戦争に勝ったんだと教えてあげます。
戦争には勝ったんだから責任は果たしたわけですし
文句は言われないでしょ。」
「それはそうね。」
リアは微笑んだ。
「勇者のコスチュームで町を歩くのかぁ。
テンションが上がります。早速、鎧を着てきます。」
「いってらっしゃい。」
リアは周三の肩の辺りを軽くポンポンと叩いた。
周三は階段を上がり自分の部屋だがノックした。
中から反応が無い。下着姿でも気にしなかったリリアンなので
「入りますよ。」と部屋の中に聞こえる程度の声で言って扉を開けた。
部屋の中でリリアンはベッドで寝ていた。
「ちょっと先生!寝ないでくださいよ!出かけるんでしょ!」
周三はベットを横目で見ながらそう言うとマントを外すと
クローゼットにしまっていた黒い学ランを身に着けた。
トルソーに着せて飾っていた鎧を周三は外して学ランの上から着用する。
「最近、仕事が忙しかったから疲れてるんだよ~。
町に行かないで一緒にベッドで寝るという案はどう~?」
リリアンは布団に包まりながら周三に提案した。
「却下!俺だって疲れてるんですからね。
リリー先生、服のままで寝たら服がしわになっちゃいますよ。」
「じゃ~、脱がせて~。」
「いやいや!脱いだらアカンでしょ!出かけるんでしょ!」
「じゃ~、起こしてよ~。」
「リリー先生、生徒になる人に甘えないでくださいよ!」
周三はベッドの脇でリリアンに右腕を差し出した。
周三の右腕をリリアンは両手で掴んだ。
「よいしょ。」と周三は言ってリリアンの上体を起こした。
「サンキュー。あら?カンベインの鎧じゃん。イイネ!」
「そっすか。」
「似合ってるよ~。」
「あざーっす。」
「リリー先生は化粧とかしなくていいんですか。」
「しないしない。若いから大丈夫。」
「10代みたいな事言わないでくださいよ。」
「10代みたいなもんよ。」
「みたいなものっていう意味がわかんないっすよ。」
リリーはベッドを降りると鏡を見ながら首にリボンを締めると
帽子を被ってジャケットを羽織った。
周三は剣を身に着けマントを羽織るとフードを深く被った。
リリアンは周三の左腕に腕を組むと
「さぁ~行こう!」と機嫌良く言った。
「くっつくと暑苦しいですがデートですもんね。
仕方ない。では、行きましょう。」
周三とリリアンの2人は階段を降りた。
リアが目を輝かせながら
「可愛い!お似合いの2人ね。魔法使いのカップルみたい。」
「お洒落なカップルだから、目立ってしまうんじゃないかな。」
そう言ってハウルは微笑んだ。
「シュウに御嫁にもらってもらお~っと。」
リリアンは周三の腕に体をこすりつけた。
「リリー先生って、そんな事言いながら
男が本気になると逃げるタイプって感じがする。」
「あたいって男を追いかけたいタイプに見える?」
「見える。気の無い男も誘惑しそう。結論は。。。ビッチっすね。」
「ビッチ言うな!」
リリアンは周三の脇腹に肘内をくらわした。
周三は痛みを感じなかった。鎧に付与した能力のおかげだ。
「いたいからやめてよ!」と周三は一応、痛いフリをした。
リリアンと行動する時は必ず鎧を着るようにしようと周三は思った。
「まったく仲がいいね。ピン助はどうする?」
ハウルがリリアンに訊ねた。
「ここに留守番させる。邪魔にはならないと思うけれど
邪魔だったら裏庭に出して置いて。」
リアはハウルの膝に乗ったペンギンの頭を撫でながら
「今日は一緒にお留守番をしましょうね。」とペンギンに話しかけた。
「ペンギンなんて動物園でしかお目にかかれないからね。
ピン助を店番に置いておいたらいい客寄せになってくれるよ。」
ハウルも迷惑ではないようだ。
「では行ってきます。」と周三はハウル夫妻に言って
周三は店の入り口に体を向けた。
「また後でね~。」とリリアンはハウル夫妻に手を振った。
「楽しんでおいで。」とハウルは2人に向かって手を振った。
「行ってらっしゃい。気をつけてね。」
そう言ってリアは店の入口まで周三とリリアンを見送った。
入口を出て外に出ると普段と何も変わらない人々の日常風景が周三の目に映った。




