鎧
周三はグリフォンを軍艦フェンティーアに旗艦の途につかせると
下宿先のカノレル雑貨店に帰るのであった。
夕暮れにフェンティーア議事堂の敷地裏の広場で
グリフォンと別れた周三は下宿先のカノレル雑貨店に帰った。
カノレル雑貨店の呼び鈴を鳴らすとリアが扉を開けた。
突然帰ってきた周三の姿を見てリアはとても驚いた様子を見せた。
すぐにリアは歓喜の表情を浮かべて思い切り周三を抱きしめた。
続いてハウルも店のフロアに出迎えに出てきて周三を抱きしめた。
周三はハウル夫妻と奥の間に入るとハウル夫婦に軽く事情を説明した。
ハウルは嬉しそうに頷くと
「詳しい話は夕食を食べながらにしよう。」と言った。
丁度ハウル夫婦は夕食の前だったので
周三は温かい夕食にありつくことができた。
ローズマリーとにんにくと胡椒で味付けされたローストビーフと
トマトベースの魚介のスープ、豆料理、カリッとしたパンという献立。
デザートはティラミスであった。
夕食中、ハウル夫婦は興味深げに周三の話を聞いていた。
周三が敵将ギヨクとの一騎打ちで勝利したくだりの話は
ハウル夫妻は大きな歓声をあげてよろこんだ。
ギヨクに勝利したのは実際は霊体化したエービンスであったが
拳からの波動によって一撃でギヨクを倒した。と
周三はハウル夫妻に説明した。
拳の波動が形になったのがエービンスとも言えるのだから
嘘は言っていないと周三は苦しすぎる言い訳を
自分自身にして罪悪感を誤魔化したが少しうしろめたさを感じた。
周三は下宿先で食事をしているうちに日常に帰ってきたと実感できて
とてもリラックスできたのだった。
「今日のお昼に武器屋さんが来てね。鎧を届けてくださったの。」
そうリアは周三に言った。
「やっとですか。もう鎧の事なんて忘れてましたよ。」
周三は呆れた顔をした。
「はははは。シュウの部屋に置いておいたから
あとで試着をしてみたらどうだい。とても立派な作りの鎧だったよ。」
そうハウルは周三に勧めた。
「そうですね。軍艦での戦闘だから斬りあいなんてしないと
思っていたのに結構、俺が前面に出る場面が多いんですよねぇ。
鎧は必要っす。フルプレートの重鎧はいりませんが軽鎧は必要と思いました。」
周三は鎧に興味が沸いてきた。勇者カンベインが使っていた鎧と同じ形の鎧。
胸当てと左腕の腕当て。左腕のガンレットに小さな盾が装着されたものである。
たったそれだけの部位なのに特注品だから制作に時間がかかった。
周三は食事を終えるとハウル夫妻に
「今日は結構、働いたので疲れました。寝室で寝ます。おやすみなさい。」
そう言って2階の自分の部屋に戻った。
部屋に戻った周三は机の横に
木で出来た上半身だけの模型が置いてあり鎧が着せられていた。
周三は感激して銀色の鎧をすりすりとなでながら
「やっと、やっと会えたね。」と鎧に語りかけた。
周三はベットに座ると少し思案を巡らせる。
周三にはイメージを具現化する能力が存在する。
しかし、周三の想像力や集中力や意思の力などが不安定なので
左目に宿った魔眼の精霊「エービンス」の記憶能力を
自分の記憶能力と連結させて外付けハードディスクのように
運用するという仕組みを実用しようと考えていた。
「鎧に能力を付与しようかな。
エービンス。特定のきっかけによって技能を自動発動するように
設定したらもう能力のカテゴリだよね。
そういうスキルを考えたのでエービンスに記憶してもらいたい。」
「はい。シュウ様。お呼びでございますか。」
「うん。エービンス。鎧という小道具があるとイメージが湧きやすい。
この鎧を装着したらダメージ無効っていう能力を考えた。
能力名は『鉄壁』でいこう。
ダメージが無効なら臆病で痛がりの俺も敵に突っ込めるやん。
俺は魔法中心のアウトファイターになりたかったんだ。
それなのにロアンさんから剣術を習い
シエルから拳法を習ってしまったから接近型の戦闘スタイルが
俺の戦闘スタイルになってしまった。
エービンスを戦闘型の霊体としてイメージして具現化した事で
結局はアウトスタイルを確立はできたけれど
それでも敵の攻撃が怖いから戦いたくないという気持ちは強いねん。
その弱点を補うために敵の攻撃の無効化というスキルを
前に考えてみたけれどイメージがうまく湧かんかった。
不安定では実戦に使えるものでもない。失敗したら怖いやん。
しかし!鎧というわかりやすい道具を得た事でこの鎧を着たら
ダメージを受けないというイメージがはっきりと形にできそうだ。」
「それはよかった。では、イメージが湧いているうちに記憶しましょう。」
「ちょっと待ってよりイメージを固めるため鎧を着てみる。」
「なるほど。」
周三は軽鎧を模型から外すと軍服の上から着てみた。
軽鎧は部位も少なく簡単な蝶番と留め金だけだったので鎧を着るのが
初めてな周三も簡単に着ることができた。
周三は壁に設置された鏡で自分の姿を見てうっとりとした。
「いける!イメージが固まった。エービンス。記憶お願い!」
「はい。『鉄壁』。たしかに記憶しました。」
「エービンス。ありがと。俺のイメージなんだけれど勇者って
魔法も武術も何でも出来るイメージがあるんだけれど
俺は何でもできるが何にもできないというオンラインRPGで
スキルポイントをまんべんなく振ってしまって
弱いキャラになるというありがちな失敗にいきつこうとしてるかも。」
「???オンラインなんとかというのがわたくしはよくわかりません。」
「ああ。それもそうだね。
俺の言いたいことは何でも出来るようになった為に
これといった決め手がない戦士になりそうって事。」
「ふむ。しかし、わたくしめはそうは思いません。
全てを極めればとてつもなく強い戦士になりそうだと思います。」
「。。。。ああ。ゲームならスキルポイントが限られてるけれど
現実の俺のスキルポイントが有限ってわけでもないもんね。」
「シュウ様はすでに相当お強いとわたくしは思います。」
「いやいや。エービンス。俺の強さなんてまだまだだよ。
でもさぁ。この世界に来て思ったんだけれど結構、文化が進んでるから
喧嘩が強いから世界を変えられるなんていう単純なものでもない気がしてる。」
「そういうものですか。しかし、強くないと自分を守れません。」
「そだね。この世界の人たちって強い人が多そう。
エービンス。ありがと。君はもう意識を切ってかまわないよ。
俺ももう寝るよ。明日は北の軍港に行って
ユンディー教の軍艦がちゃんと入港したかを確認しようかな。
飛行体はどうなったかな。誰かが詳細を報告に来るかな。
あかん。眠れなくなりそう。色々悩むのは明日にしよ。」
「では、シュウ様おやすみなさい。」
「エービンスお休み。」
周三は鎧を脱いで模型に着せると軍服を脱いで下着姿になった。
「ああ。シャワー浴びたい。」
そう思った周三は1階に戻ってシャワー室に入ると
シャワーで軽く体の汚れを落とした。
「もう昼はだいぶ温かくなってきたけど水のシャワーって体が冷える。
軽く流したらすぐ体を拭かないと風邪ひくわ。」
体をふいて頭をタオルで拭きながら2階にあがりベッドに横になる。
「なんだかすごく疲れた。。。。。。。寝よ。」
周三は掛布団を体にかけると意識は薄れていきあっという間に熟睡した。




