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選ばれた勇者らしい。  作者: Cookie
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審判

 所属不明の輸送ヘリコプターを襲撃した甘根が捕縛したエイミーを

取り調べをディアナ、中村、甘根の3名でおこなっていた。

闇黒天あんこくてんエイミーは突如、暴れ出しディアナは一刀両断されてしまう。

しかし、中村の天界結界のおかげでディアナは無傷で復活した。

中村は場を仕切り直して取り調べを再開するのであった。


 中村は審問とりしらべの再開した。

中村は嘘発見機の役割をするソウルクリスタルは懐に収めたままだ。

「さっきの水晶は出さなくてええんけ。」と甘根は言った。

中村は冷静な顔で口を開いた。

「もうその必要が無くなった。

今からは審問会を妨害したエイミーさんの審判に映るからな。」

「ほう。そうけ。で。審判ってなんや?」

「甘根。審問っていうのはな。ただの取り調べやないねん。

天界の権威によって執行される神聖な儀式であり手続きやねん。

だから、エイミーさんに事前に説明したはずや。

審問には黙秘権も嘘も罪には問わないが妨害や逃亡には罪を背負うと。

エイミーさんは審問官であるディアナ姫を斬り、逃亡まで計った。

当然、審問を妨害した罪に対して裁いてからでないと審問を受ける資格がない。」

エイミーの顔が緊張する。

甘根は中村の言葉を理解して口を開く。

「ほう。エイミーの罪を裁いてから取り調べするんか。」

ディアナは口を開く。

「タロウ様。エイミーさんをどのように裁くのですか?」

中村は頷いてエイミーに向かって口を開いた。

「エイミーさん。あなたはただの取り調べと

思い込んでるようだったので事前に注意事項を述べたのに残念です。

あなたはユンディー神の騎士と称する暗黒騎士でありながら

審問というものを軽んじて狼藉した事を悔いることになる。

神聖な審問の場で人の権利を尊重されているのにも関わらず

権利を自ら放棄する行為を行い、天界の権威を傷つけた罪は重い。

まず、人間籍をはく奪する事になります。」

エイミーは中村を真剣な表情で見つめて口を開く。

「天使様、人間籍をはく奪されたらどうなるのですか?」

「それは先ほど言ったでしょ。自然消滅します。

もうあなたは人間ではありませんので人権も失効されました。

裁きに対して異議を申し立てても認められる事はありません。

天界結界が解かれた時点であなたはこの世界から消えるでしょう。」

「わかりました。」とエイミーは納得した様子で一言言った。

甘根は中村に向かって口を開いた。

「なぁ。なんとかならんのか。ちょっと可哀想やんけ。」

中村は邪魔臭そうな表情を甘根に向けると

「お前なぁ。さっきエイミーさんが大嫌いやから帰りの航海中に

配下の悪魔のおやつにするって言ってたのを忘れたんか?

お前は大嫌いやから殺すって言ってた人間の命乞いをすんのか?」

甘根は困ったような顔をしたがすぐ笑顔で

「あれは。なんていうか冗談や。ネタやん。わかるやろ。」と言った。

中村はチッ!と舌打ちした後に

「聖人は右の頬を打たれたら左の頬を出すという精神があるらしい。

俺は別に叩かれたがリのマゾいおっさんの話をしてないで。

自分のために叩かれたいのではなく他人に対する慈悲で何度でも許すんや。

慈悲は大切や。しかし、慈悲というものは自己満足で与えるものではない。

まず、被害を受けたディアナ姫がエイミーを許すかどうかやな。

被害者が被害を訴えず許すというならば罪は多少は軽減する余地がある。

ディアナ姫はエイミーさんの罪を許しますか?」とディアナに問いかけた。

ディアナは少し恥ずかしそうに口を開いた。

「。。。わたしが武器の携帯を許可したのでわたしにも責任はあります。

自業自得だと言われたとしても言い返すことはできないでしょう。

わたしはエイミーさんが暴れてもわたしなら勝てると思っていました。

わたしが剣の実力を示せば抵抗する気も無くすだろうと高を括って。

しかし、結果はわたしはなにも出来ずに。。。な。。。ズズッ。。ズ。。」

ディアナは大粒の涙を流して鼻をすすりながら声が震えていた。

甘根が心配そうな顔でディアナを見つめると

「姫さんは不意をつかれたんやからしゃーないって!

正々堂々やったら姫さんが勝ってたと思うわ。」と慰めの言葉を言った。

中村は白けた顔でディアナを眺めている。

エイミーは申し訳なさそうな顔をしていた。

ディアナはポケットからハンカチを出して涙を拭きながら

「。。。そんなわたしがエイミーさんと剣を交えて負けた事に

被害を訴える事ができるでしょうか。

タロウ様のおかげで幸いわたしは命を失わずに済みました。

わたしはエイミーさんに怒りはありません。

許すもなにもわたしはエイミーさんを恨んでいません。

わたしは自分自身が恥ずかしい。

わたしは自分自身に怒りを感じています。」と答えた。

中村は興味無さげな表情で口を開いた。

「そうですか。ディアナさんはエイミーさんを許すそうなので罪は軽減します。

人間籍のはく奪は覆せませんが他大陸への移籍は許しましょう。

妖精王の直臣であるロアンさんが

ここにいれば第五大陸への移籍交渉も出来たのですが。

まずエイミーさんが妖精さんになれる選択肢は潰えました。

天使への移籍は天界の儀式を妨害した罪ですので駄目ですね。

罪を犯して天使になるってどんなんやねんって話ですからね。

あと、ここにいる移籍交渉可能な人材は甘根だけですね。

甘根。エイミーさんを悪魔として引き取る気はあるか?」

「ええで。うちに来てもらうわ。」と甘根は即答した。

中村は頷いた。中村はエイミーの方を向くと

「エイミーさんは悪魔として生きていく気はある?

人のまま消滅したいならその意思を尊重するけれど。」と問いかけた。

エイミーは少し悩んだ素振りをしたがすぐに

「。。。どんな形でもこのまま生きる事が許されるなら

縋りつきたい。それが今のわたしの素直な気持ちです。」と言った。

中村は頷いた。

「はい。それでは審判はエイミーさんが悪魔になる事で結審します。

では、もう審問を再開しません。

もう、人間であるエイミーさんはいなくなりました。

人間であったエイミーさんが悪魔として新しい人生を生きていけるように

エイミーさんにはエイミーさんが背負っていた業について

振り返る機会を与えましょう。

エイミーさんの新しい門出に対して僕からのささやかな贈り物です。

エイミーは困惑した様子を見せて口を開いた。

「ええと。振り返りたいことなどわたしにはないのだけれど。」

中村は首を振ってソウルクリスタルを取り出した。

「そうですね。その通りだと思います。

貴方の魂を込めたこの濁り切ったソウルクリスタルを見てください。

色も爽やかで透き通った青などではなく

殴られたあとの青たんのような群青色。

情熱の赤などではなく炎症を起こした歯茎のような赤茶色。

日光のような黄色ではなく嘔吐のような黄土色。

黒カビのような黒い煤もクリスタル内に充満しています。

これがあなたの心なのです。

あなたが嘘をついても心の濁り方を探すのが大変です。」

エイミーはそれについてどう答えればいいかわからずに

「はぁ。なんだかごめんなさい。」ととりあえず中村に謝罪した。

中村は首をゆっくり左右に振ってから

「言ってませんでしたがソウルクリスタルは優秀な神器です。

その神器としてのポテンシャルについては説明しませんが

エイミー・ライトフットについて僕が振り返りましょう。」

エイミーはフルネームを言われて驚愕の表情を見せる。

中村はテーブルの上にソウルクリスタルを置くと

占い師のようにソウルクリスタルに両手をかざしだした。

中村はエイミーに鋭い目線を送りながら

「貴方には娘がいますね。」と言った。

「。。。。。。。。。。」とエイミーは沈黙した。

「娘は妹さんに預けておられる。」

「あのう。それがどうしたんでしょう。」

「娘さんは火事に巻き込まれて全身に酷い火傷痕がある。」

「ええ。たしかにそうですが。」

「火事の原因はあなたのタバコの不始末。」

「。。。。。。。。。。」

「娘さんを妹さんに預けて妹夫婦に相当な額を仕送りしていますね。」

「。。。。。。まぁ。。」

「貴方は随分と娘さんに会っていないですね。」

「。。。。。はい。。。」

「貴方は娘さんはどうなっているか知りたいですか?」

「。。。元気にしているって妹から手紙をもらってます。」

「では、ここからが僕から貴方へのギフトです。」

「娘さん、いや、ニコラちゃん11歳は生きています。」

「はい。生きているのは知ってます。」

「離れの汚い小屋に住まわされて

家の仕事を押し付けられ奴隷のような生活。

不衛生な環境のために皮膚はいつも化膿しています。」

「え?天使様。それは本当かい!?」

「フン!天使が嘘つくか。

ニコラは学校に通わない。

それは通わせてもらえないのではなく行かない。

理由は火傷の痕をからかわれるのが嫌だからです。」

「。。。。。。。。。。。。」

「貴方の仕送りで妹さんは贅沢されておられます。

妹さんの2人の息子さんも私立の良い学校に通ってます。」

「。。。。。。。。。。。。」

「ニコラはいつもお母さんの事を考えています。

迎えにきてくれる日を夢見て明日への希望にして生きています。」

「。。。。ニコラ。。。。。

信頼できる妹のポリーに預けて安心していました。」

「そうですね。いい妹さんですね。

大嫌いなお姉さんの子供を預かって育てている。

仕送りの金目当てとはいえ預かったんですからいい妹さんです。

仕送りがなきゃ絶対に預かっていなかったでしょうね。」

「え。ポリーがわたしをそんなに嫌ってはいないと思います。」

「あなたがポリーさんにどれだけ酷い事をしてきたか。

どれだけポリーさんに迷惑をかけてきたかを思い出してください。

加害者は都合の悪い事を忘れますが被害者はそうではないですよ。」

「。。。。。。。。。。。。。」

「貴方がニコラちゃんをなぜ妹夫婦に預けたか。

考えてみてください。

貴方と言う人間の醜さを振り返ってください。」

「。。。。。。。。。。。。。」

「貴方のせいで幸せになれない人間がニコラちゃんです。」

「娘には。。。。。すまないとは思っています。」

「貴方の仕送りが送られてこなくなったら

ニコラちゃんはどうなってしまうんでしょうか。」

「。。わ。。たし。。どうしたらいいのか。わかんなくて。

別に娘は悪くなかったんだ。でも。わかんなくて。どうしようもなくて。」

「ですので聖天主教団が運営する施設に

ニコラちゃんを引き取ることにしましょう。」

「ああ。天使様。本当ですか?」

「本当です。だから僕に感謝してください。」

「ありがとうございます。ありがとうございます。」

「ええ。貴方の業の深い罪も許しましょう。

男はみんな浮気するとか男運が無いとか言いながら

ニコラちゃんの父親が当時の旦那ではない事も僕は許しましょう。」

「。。。。。。。。。あれは旦那が先に浮気したからで。」

「そういう貴方の自分勝手な言い訳も許しましょう。

旦那が先に浮気したから

あなたの浮気は許されるという事にしときます。

ですから心置きなく新たに悪魔として頑張ってください。」

「ああ。天使様。感謝いたします。」

「エイミーさん。まだ気づいてませんか?

口頭でのやりとりで取り調べなんかしなくても

このソウルクリスタルに貴方の魂が入った事により

第一大陸に記録されている貴方の個人データや関連データを引き出せる。

人間の管理は第一大陸がしているのです。

だから、嘘も黙秘もどうぞご勝手にって事なのですよ。」

「そうなのですか。

わたしは天使様の手のひらの上で踊っていただけですか。」

「そういうことです。では、エイミーさんの魂は御返しします。

審問会を終了し、結界が解けたら貴方は悪魔です。

魔力が無いと健康面でとても危険な状態になりますので

甘根に魔石をもらって補給してください。

精神が安定したらニコラちゃんに会ってあげるのも良いでしょう。

施設の場所は決まり次第、甘根に連絡いたします。」

「なんだか何から何まですみません。

罪悪感ばかりで申し訳ない気持ちでいっぱいです。

妹にもいつかキチンと謝りたいと思います。」

「悪魔の寿命は長いのでゆっくり気持ちを整理してください。

では、審問会を終わりたいと思いますが

ディアナさん、甘根、2人とも他に何かありますか?」

ディアナは口を開く。

「軍事についての情報についての取り調べはどうするのですか?」

「それはですね。ディアナ姫の立場上、これ以上は深く調べても

利益が無いと判断しました。フワっとさせておいた方がいい事もあります。

ディアナ姫は知ってしまったら動いてしまう性分かもしれません。

しかし、動けば動くほど相手の思うつぼという話も多いでしょ。」

甘根が口を開く。

「なんやそれ。治りかけの傷をいじって化膿するみたいな感じか?」

中村は驚いた表情を見せながら

「近い!だけど近いだけやわ!でも甘根を少し見直した。」と褒めた。

「近かった?マジで。うれしいわ。」と甘根は嬉しそうだった。

「なるほど。深入りする時ではないということですね。

わかりました。わたしはそれでも構いませんがシュウはどう判断するか。」

ディアナは周三の判断はどうかと心配した。

中村は笑顔で口を開く。

「はははは。それは田中が帰ってきたらでええやん。

そのために司令官代行のディアナ姫がいるんやから。」

ディアナは微笑んで

「そうですね。代理にわたしを指名したのはシュウですからね。」

甘根は口を開く。

「じゃ、お開きって事か。ほんならこれから食堂にみんなで

飯を食いにいこうや。もちろんエイミーも一緒にどうや。」

「食事ですか。一緒に行っても良いなら行きます。」とエイミーは了承した。

中村は口を開く。

「甘根は魔石とか持ってないんか?結界解いたらエイミーは魔力不足で

貧血みたいな症状が出るかもしれんぞ。

甘根はニヤッと笑うと

「そんなん。わしの魔力を分けてやればええだけや。」と言った。

「では、わたしもご一緒します。」とディアナも食堂での食事を了承した。

「じゃ、審問会終わるで。結界解くからな。

解いてから殺されたりしたら本当に死ぬから油断しないように。

準備はええな?解くで。。。。天界結界解除!!!」

エイミーは結界が解除されると頭がフラッとしてテーブルに突っ伏した。

「おい甘根!早くエイミーさんに魔力を分けてあげろ!」

「中村!どうやったら魔力って分けてあげられるん?」

「しらんがな。漫画とかやったら粘膜接触的な事ちゃうん?」

「ああ。粘膜って事は。。。チューか!」

そのやり取りを聞いていたディアナは

冷たい目で2人を見ながら口を開いた。

「確証のない適当な事を言っていかがわしい行為をしないでください。

魔石なら乗組員に言ったら

魔導エンジン用の魔石をわけてもらえるはずです。」

「そうなん?ほんならもらってくるわ!」と

甘根は扉を開いて急いで取調室を出て行った。

「タロウ様はそういう無神経なところが無ければ本当に尊敬できる方なのに。」

そう言ってディアナはタロウに向かって呆れた顔をした。

「尊敬されたいという気持ちで行動した方が

よっぽどいかがわしいと僕は思うけれどなぁ。」と中村はつぶやいた。


 甘根は魔石をもらってすぐに取調室に帰ってきた。

甘根は魔石を拳で砕いてエイミーに与えて

魔石の粒を食べさせるとエイミーの体調は回復した。

4人は食堂で食事をするために取り調べ室を出たのであった。

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