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宝石の騎士様4

「ユエリナ!見て、すごく綺麗なお城よ」




馬車の窓から外を見て、広がる光景にはしゃぐミシェレア姉様……正直、貴女のほうが綺麗です。




伯爵家の面々(伯爵は、早く帰ってくるんだぞ!二人とも!婚約なんて気に入らなかったらしなくていいからな!!)に見送られて早半日。伯爵家とはいっても、周りが山々や湖など自然に溢れた伯爵領から離れて主都の、バレスタンに来てはみたのだが、、、さすがは主都というだけあって、何よりもでかい。何よりも騒がしい。

城は、四方を堀と塀で囲まれていて唯一北にある橋でのみ城下町に 入れるようになっていた。橋にも検閲所があって、そこで身分や出身を言わなくてはいけないので念の入った検閲であった。それだけ、主都は重要ということなのだろう。それに、今時期は殿下の婚約者候補を招くということもあり、警護の強化もしたという。




「これは…」





検閲を終えて城下町に入ってみると、思わず感嘆の溜め息をついてしまうほど、美しい白銀の城が見えてきた。塀に囲まれているとはいえ、水の守護を受けている城なだけあって、城下町には大きな噴水や川があり城から透明感のある滝のような水が流れ出て、町に流れる川につながっているようだ。恐らく、この川の水は町の至るところに繋がっているのだろう。城を含んだ城下町を囲んだ堀の中にも水が溢れていたので、最終的にはそこに流れ着いているらしい。

伯爵家から連れてきた侍女たちと姉様が楽しそうに話している横で、私は馬に乗りながら辺りを見回す。確かに綺麗な町だ。師匠とあちこち旅をしたときは中には入らずとも外観だけこの町を見ていた。師匠も、これだけ厚く守護を受ける王も珍しいと称していただけある。城全体を囲うように、大きな守護の力を感じられる。


私たちの住む世界には魔法はもちろんのこと、精霊の存在が強くいる。むしろ、精霊が私たちの使う魔法の原動力といってもいい。私たち自身に魔法を扱う能力というのはなく、周りに存在する自然の力ひ引き出して使わせてもらう、というイメージをもってもらえばいいと思う。なぜ、使わせてもらう、というのかというと、精霊は人を選ぶのだ。精霊に、火の精霊、水の精霊、樹木の精霊、雷の精霊、土の精霊、風の精霊、陽光の精霊、月闇の精霊と多数あるように、精霊の思念も多種多様。人はあくまで、好まれた精霊の力を借りれるに過ぎないのだ。だから、人によって使える魔法も違うし、魔法を使えない人もいる。精霊は、気まぐれで好き嫌いも激しい。だから、精霊に好まれる、というほうが珍しいのだそうだ。


ちなみに、我がルレッタ王国の王族様たちは、水の精霊と樹木の精霊に好かれることが多いらしい。今代の王様は、水の精霊に強く好かれているそうだ。だから、城を彩る¨色¨も水の精霊の特徴を強く引き継いでいるのだろう。





「ねえ、ユエリナ。私、ここに来れて良かったわ。こんな素敵な場所を見れて幸せよ」


「そうですね、姉さ…ミシェレア様。あぁ、危ないのであまり顔を窓から出してはいないです。」


「ミシェレア様、だなんて…私たち姉妹なのよ?」


「ですが、これからは違います。私は貴女の妹ではなく貴女の護衛騎士ユエンとして城に上がるのですから」





キリッと居づまいを正して新しい名を名乗る。ユエリナ、だと明らかに女の名前なのでユエンと名乗ることにしたのだ。名前というのは口に出して名乗るというだけで、私がユエリナではない私になったかのような気分になる。ミシェレア姉様は、何度かユエンユエンと呟いて、間違えてしまうかもしれないわ。と困ったように微笑んだ。




姉様!!そんなに可愛い顔をしてはだめです!するなら、窓から顔を引っ込めてからにしてください!変な虫がよってきます!!






だんだん近づいてくる城は、遠目で見たときよりもさらに大きい。キラキラと光の粒を浴びたかのように光る城に目を奪われながら(まあ、姉様は常にキラキラしてるけどね!)城門を潜ると、そこで待ち構えていた兵士に、名を名乗る。





「アルバティアン伯爵が長女ミシェレア・アルバティアン、陛下の命により登城の許可を願いたい」




なるべく少年の声に聞こえるように低めの声で告げると、門番の兵士たちは慌てて敬礼すると、取り次ぎをするので待ってくれと城のほうに走っていった。その時、ふんわりと髪を撫でるかのように優しい風が吹いた。私は、城を見上げてから、小さく目礼をして兵士たちの帰りを待った。








「ミシェレア・アルバティアン様ですね、お待ちしておりました。私はこの城の宰相をしておりますゼフィオール・エレスタと申します。」


「ゼフィオール・エレスタ様、(わたくし)がミシェレア・アルバティアンですわ。こちらにいるのが、侍女のローザとシェリアです。そして、私の護衛騎士のユエンですわ」


「護衛騎士、ですか?この、少年が…」





兵士が連れてきたのは、なんと城の宰相閣下だった。なんつーもん取り次ぎに連れてきたんだよ。とは思うが顔には出さない。馬車から降りる姉様をエスコートして、宰相の前まで行く。

…宰相でかー。


ゼフィオール・エレスタは、見た目40代くらいのダンディーなおじさんだった。何よりも、でかい。とにかく、でかい。目線を、まっすぐにすると宰相の胸よりもさらに下にくる。私の身長は、女としてはそれなりにあるほうなのに、この差はなんなんだ。

しなりと伸びた手足と、優雅な物腰だが、ミシェレア姉様に、差し出された手を見るにそれなりに、武術もやるのだろう。


この少年、と言ったときに少し困惑していたようだが、それがなんだ。微笑みはしないけど、怯まないように背筋だけはピシッと伸ばす。




背筋は心の現れ。

何時なんどきも自身の誇りを忘れるな




師匠に言われた言葉が頭に浮かぶ。

頭二つか三つくらい上にある宰相に目をやると、すこし目を見開いてからどこか面白がるようにこちらを見ていた。





え、なんだその目は…






「…では、ようこそおいでくださいました。只今、部屋にご案内します。」







宰相は、にっこりと目元を和らげるとミシェレア姉様の手をとり城へと足を向けた。








…さあ、ここからが本番だ!ユエリナ!










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