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宝石の騎士様3

はてさて、ついに来た今日!この日!ミシェレア姉様が王城に赴く時がきました。ん?早い?そりゃそうだろー。姉様が城に行くって知ったのは今日だしね。いくつか、伯爵たちに《約束》させられたけど、なんとか姉様と一緒に城に行けることになって良かった。姉様に、姉様の騎士として城に行くと伝えたら、姉様は驚いていたようだけれどそのすぐあとには、嬉しそうな笑顔を見せて下さった。姉様の笑顔はどんな宝石よりも美しいです、はい。


そしてなんと!すごく、そう!すごく嬉しいことに、姉様も私と離れるのが寂しくて一緒に城に行くことになって嬉しいと言ってくれたのだ!ものすごく素敵な笑顔つきで!ここ、大切だから二度と言おう!素敵な笑顔で!私と!離れたくないと!言ったのだ!姉様が!!


その言葉を聞いた瞬間、私は天にも昇るような気持ちになってしまった。姉様も私と同じような気持ちでいてくれただなんて!なんたる光栄!

私が師匠と修行の旅に出たときも姉様は、寂しそうな顔をして見送って下さった。あの寂しそうに私を見る姉様がなんと儚げだったことか!!すごく自分が悪いことをしてしまっているような気をして、旅の間もしばらくは姉様のことを思い出しては悲しくなっていたっけ………まあ、そのたびに師匠から、辛気くさい顔してんじゃねえ!!って怒鳴られたんだよなー。もうあんな寂しい顔は二度とさせないと誓った私だ。何がなんでも姉様と一緒にいるのだ、私は。




「ユエ、おまえ …よくやるよな」



屋敷の前でミシェレア姉様が伯爵たちや使用人の人たちと別れの挨拶をしているのを待っていると、同じ伯爵家の騎士を勤める同僚の…えーと、名前は……だ、だ、だ…ダリエルだ!そうだ!ダリエル!そのダリエルが、姉様の馬車を連れてやってくる。なんでも始めは卸者をするために雇われてたらしいのだが、もともとは傭兵をやって生計を立ててもいたらしい。彼も元孤児だという。




「ダリエルか、よくやるって何がだよ」


「おまえ、また間違えてるぞ。俺の名前はダリオルだって何回言えば分かるんだ……」





ダリエル改めダリオルは、そんなことを言いながら肩をすくめている。仕方ないだろ!自慢ではないが、私の脳は全て姉様のことでできている。姉様と直接関わりがないと、覚えようとは思えないのだ。




「そこまでいくと、お前の姉バカも本当にすげーよ。」


「姉バカではない。姉様のことを考えたら自然とそれしか頭に入らなくなるんだ」


「病気だな、それはもう…」


「ふん、病気だろうが何だろうが私の全ては姉様のためにあるからな」


「はあ…わざわざ男のフリまでしてか。おまえ、本当にすげーな。」


「男のフリは仕方なくだ。まあ、こちらのほうが都合はいいがな」


「わりと似合ってるのがまた、何とも言えねえけどな」





呆れたようにダリオルが私を見るが、確かに自分で言うのもなんだが私は男装が思ったよりもさまになってるらしい。着付けてくれた侍女さんたちが言うには、孤高の?少年剣士?みたいな感じだそうな。孤高のってなんだ(笑)伯爵たちにも見せたが評判は上々。

「あら、まあ、、、いいわねえ」

「くっ、似合う、似合うのだが、ユエリナはそんな格好ではなく、もっと女の子らしいものを…!」

とかなんとか?似合うか似合わないかは別として、ちゃんと男に見えるかが問題だ。その点に関してダリオルに聞いてみるが、つまらないほど似合うとのこと。つまらないってなんだよ。




「まー、これだと別の心配もうまれそうだけど」


「別の心配?」


「あんま変なやつにホイホイついていくなよ、、おまえ」


「は?馬鹿にしてるのか、それは」


「あと大切な姉君のこととなると、すーぐ暴走するその性格も気をつけるんだな、お前は」


「暴走って、まるで私が色々やらかしてるみたいじゃないか」


「やらかしてるだろーが。この前だっけ?姉君に再三ラブレターを送ってきていた相手の家まで行って、今まで送られてきた手紙の束を相手の顔面に投げつけてきただろ」


「姉様を後妻に欲しいなどとふざけたことを言っていたからな。まったく、50も過ぎているのに姉様のような若く麗しい女性を狙うなんて気持ち悪いじゃないか」


「…はあ、あのあとどれだけ旦那様が苦労したか…その姉君至上暴走主義を城で発揮するなよ。伯爵家に迷惑かかるからな」


「む…」





伯爵家に迷惑かけるな、と言われてしまえば確かに何も言い返すことはできない。ダリオルが言ったように、姉様を後妻に望んでいたロリコン爺は、同じく伯爵の地位をもつ家で、怒ったロリコン伯爵が、伯爵家に喧嘩を売ろうとしたのだ。それはまあ、伯爵が穏便に済ませてくれたらしいが、あれは確かに申し訳なかった。私は貴族という意識(一応養女になってるとはいえ)がなかったのだが、貴族はめんどくさいしきたりやお家同士の交流が必要不可欠。それを危うくしてしまった私を伯爵は、怒らないでいてくれたが、姉様から注意をうけてしまった。その時は部屋に引きこもって泣いた。姉様に叱られるなんて、私はダメな妹だ。

とはいえ、貴族というのは面倒だ。それからは、なるべく注意して行動しようとはするのだが、いかんせん姉様のこととなると、そういうのはどうでもよくなってしまうというか…うーん。




「城ってのは、貴族世界そのものだぞ。姉君のこと考えるのはいいけど伯爵家のことも忘れちゃなんねえ。特に、姉君も伯爵家として城に赴くんだからな」






ダリオルの言葉は、的を得すぎていてさすがに何も言えなかった。私はぶっちゃけ路頭に迷おうが何でもいいがこれまでのご恩もあるし、伯爵家や姉様に迷惑はかけたくない。


でも、幾つかしか歳が違わないダリオルに諭されるというのも、面白くはないけど。





「わかったよ。伯爵家に迷惑はかけないように頑張るよ…裏で」


「おまえ、今小声でぶっそうなこと言わなかったか?それに、伯爵家に迷惑かけるなってのは、ひいてはお前が……」




続くダリオルの言葉は遠くから呼ぶ伯爵たちに遮られらた。苦い言葉ではあったが、わざわざ忠告しくれたダリオルに軽く礼をしてから呼ばれた方に駆けていく。だから、ダリオルが私の背を見ながら呟いていた言葉を私は知らなかった。





「お前が危険な目にあわないようにが、一番言いたいことなんだけど…ユエリナ」







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