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虚晶の賢者――異世界魔法を科学する  作者: kujo_saku
第七章【契りと誓いの帝都】
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第93話「繋がる声」

昼下がりの街道。馬車の揺れに合わせて水晶片が淡く光る。通信機の試作は移動中の訓練として始まっていた。


あとから参加したルッツは予想通り、すぐに使いこなせた。やはり問題はバトル三人組。


俺の発案で、全員を覚えるのは諦めて、一人だけ覚えればいいという事になった。


ダンカンはタリア。カイはミラと、コハルはリーナだ。


それぞれの接続先となる人が講師になって教えていくことになる。



「お前、本当に馬鹿だな……」

タリアが呆れたように言い放つ。


「なんだと!言わせておけば!なんかコツとかねーのか!」


ダンカンは頭を掻きむしり、額に汗を浮かべる。


「そうだな。オウムだって一万回話しかければ言葉を覚えるんだ。回数だ、根性だ!」


「よっしゃー!やってやる!見とけ!」


タリアが肩をすくめる。

(……本当に単純だな。簡単に騙せそうだ。今度、試しに騙して酒を奢ってもらおう…)



---


「カイ、どんなとこが分からない? ほら、魔法陣がこうでしょ……」


ミラはカイが手に持つ水晶を指でなぞりながら説明する。その横顔を、カイはつい凝視してしまった。距離は近く、肩が触れ合う。


「どこ見てるの? ちゃんと聞いてる……?」

「聞いてる!」


カイは慌てて目を逸らす。


「カイなら大丈夫。会わなかった二年間であんなに努力して、びっくりするくらい強くなったじゃない!すぐ出来るよ!」


真っ直ぐな励ましに、カイは姿勢を正した。ミラに失礼だと思い直し、今はこの通信一点に集中し始める。



「……よし、まじめにやる。集中だ」



その横顔の真剣さに、今度はミラが胸を高鳴らせて目を逸らした。



---


リーナはコハルの手に水晶を渡す。


「コハルは感覚派だからな。無理に理屈を追うな。私と繋がるイメージで、図形として覚えろ」


「なるほど!! できる気がしてきた!」


コハルは目を輝かせ、しっぽを揺らす。


数分後――。


「繋がった! リーナと声が繋がったぞ!」




意外なほどあっさりと成功し、コハルは飛び跳ねて喜んだ。


「なんだ、できるじゃないか。他のヤツもついでに覚えるか?」


「別にいい。あとはソウマだけでいいかな」


「……ソウマに無駄に話しかけるなよ」


リーナは苦笑しながらも、どこか満足げだった。



---


馬車の中に笑い声と真剣な声が混じる。新しい力を試すその時間は、ただの訓練ではなく、仲間を繋ぐ確かな絆を深めていた。


 賑やかな訓練の空気の中で、俺は掌の水晶を軽く掲げる。


(これでいいんだ。声が繋がっている限り、誰も一人にはならない)



「……俺は基本的に受信専門でいく。魔力量が少ないから、発信は基本的にできない。けど、緊急時なら虚晶石の魔力を使って発信することは可能だ」


 タリアが頷き、水晶を指で回す。

「それで十分だな。発信はこっちでやる。緊急時に虚晶石無しでも簡易で発動できる方法も考えておくか。」


 ザイルが肩を組むように笑った。


「だな。先生は前に出る訳じゃねえし、基本単独行動はないから大丈夫だろ」


「……でも」

ミラが不安げに口を開いた。


「もしソウマさんが狙われたら?」


 その言葉に一瞬だけ沈黙が落ちたが、俺は小さく笑って答えた。


「ミラ、そういう時のための魔道具でもある。それに、その時は俺も戦う。剣術も覚え始めたしな。あとは、この本にあった“魔法陣への干渉”だ。弱いままでいるつもりはない。最悪の場合、時間稼ぎに徹して誰かの助けを待つ」


 静かな決意の声に、

仲間たちは目を合わせてうなずいた。


「そもそもこの魔道具の最大の強みは、戦闘じゃない。遠くにいる仲間とも、即時で情報共有ができる事だ。帝都に入ってからも情報収集が数倍速く、しかも安全になるだろう」


「よーし!」

ダンカンが拳を突き上げる。



「だったら俺も根性でこの数字地獄を覚えてやる!絶対成功させてみせるぞ!」


「……だから脳筋はそういう気合いばっかりなんだよな」タリアが呆れつつも笑う。


 馬車はきしみを上げて進み続ける。


 通信機の訓練は失敗も多いが、笑い声と叱咤激励に満ちていた。


 その輪の中心で、俺は静かに水晶を見つめる。


(必ず役立てる。誰も犠牲にしないために)




「タリア、ここまで小型化できたからイヤリングにしよう。手もふさがれないし、耳についていれば手に取るよりも動作として不自然じゃない」


「いいね!この商隊の象徴になるようなイカしたイヤリングにしようぜ!」



俺の言葉に仲間たちはざわめき、タリアが「いいね!」と笑った。




こうして小さな水晶は、やがて商隊を象徴する〈繋がる声〉の印へと姿を変えていくのだった。



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