幕間【異郷人」
本日は22時も公開!
新章【契りと誓いの帝都】スタートします!
異郷人。
この言葉は今や特別な響きを持たない。都市の広場を歩けば、商人や職人、学徒の中に異郷人の姿を見かけるのは日常であり、誰も驚かない。
だが古き史料を紐解けば、そこに記された現実はまるで別物であった。
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帝国歴三世紀から四世紀初頭にかけて、各地に突如現れる異郷人の記録は散見される。
しかし、その後を追えばすべてが短期間で途絶する。飢餓、奴隷化、行方不明。
まともに五年以上生きた異郷人の記録は、ただの一例も残されていない。
史家たちは理由を並べ立てた。魔力を持たぬがゆえの無力。差別。庇護を得られぬ生活。
いずれにせよ、当時の世界にとって異郷人とは「短命の存在」であり、それ以上でも以下でもなかった。
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だからこそ後世の我々から見れば、驚きを禁じ得ない。
――なぜ彼らが当たり前に市井に暮らしているのか。
――いつ、どのようにして立場が変わったのか。
今この時代には、その答えはもはや朧げである。
多くの功績は名を失い、人々は「気づけばそうなっていた」としか語れない。
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ただ一つ確かなのは、過去には長く続いた空白が存在したということ。
その空白の中に、歴史を変える一人の異郷人がいた。
――そんなことを、当時の誰が想像できただろうか。
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『黎明記録』
編纂:王立史学院 フロイデン・カッセル




