地磁気逆転を救う職人ナビシステム
2035年、突然の地磁気逆転により従来のナビゲーションシステムは全て使えなくなってしまった、そこでベテランタクシードライバー「源さん」の出番である。都内の道は知り尽くしている源さんが人間ナビゲーションとして交通システムを円滑に運営し都民の危機を救う、という痛快アナログ近未来SF小説。
『地磁気逆転タクシー』
プロローグ:混乱の始まり
2035年2月17日、午前4時——。
突如として、地球の磁場が反転した。
それは、科学者たちが長年警告していた「地磁気逆転」が、誰も予想しなかったほど急激に起こった瞬間だった。GPS衛星は軒並み狂い、コンパスは逆を指し、飛行機のナビゲーションは機能不全に陥った。最新鋭の自動運転車や物流システムは大混乱。都市機能は停止し、東京の交通網は一夜にして崩壊した。
しかし、この非常事態の中で、ある男が立ち上がる——。
第一章:タクシードライバー・源さん
「GPSがダメ? だったら俺が道を教えてやるよ。」
そう言って、年季の入ったハンドルを握るのは源田 龍三、通称「源さん」。都内で40年以上タクシーを運転し続けた、生きる伝説だ。AIナビが登場しても、彼の経験と直感には誰も敵わなかった。カーナビが故障しても、細かい抜け道や渋滞回避ルートを瞬時に判断し、最速で目的地へ導く。その技術と知識は、まるで東京そのものと一体化しているかのようだった。
「おいおい、道に迷ったタクシーが続出だって? 情けねぇなぁ……」
東京タクシー協会は緊急会議を開き、GPSが使えない状況下での対応策を模索するが、解決策は見つからない。そこへ、かつての同僚であり今は協会の幹部となっていた相馬が、源さんに声をかけた。
「源さん、あんたしかいない。人間ナビゲーションとして、タクシー業界を救ってくれ!」
源さんはニヤリと笑い、愛車の旧型タクシーのエンジンをかけた。
「しゃあねぇな。東京の道は、俺の頭の中に全部入ってるぜ。」
第二章:人間ナビゲーション・始動
源さんの仕事は、東京じゅうのタクシー運転手を直接指導し、最適なルートを瞬時に判断して無線で指示を出すことだった。
「銀座方面へ向かうなら、第一京浜はダメだ。旧海岸通りを使え。」
「渋谷行き? 明治通りは混んでるから、千駄ヶ谷経由で行け。」
「空港へ? 首都高は詰まってるから、環七から迂回しろ。」
その精度は驚異的だった。まるで都市そのものが語りかけるように、彼の頭には無数のルートが浮かび、迷うことなく最速の道を選び取る。
「やべぇ……源さんの言う通りにしたら、ホントに渋滞なしで着いた!」
「AIナビより正確ってどういうことだよ!?」
タクシー運転手たちは、次第に源さんの指示を頼りにするようになり、東京の交通は徐々に回復していった。
第三章:都民の命を運ぶ
地磁気逆転の影響は想像以上に深刻だった。交通網の混乱だけでなく、物流の停滞によって病院への医薬品配送が滞る事態に。
「輸血用の血液パックを、板橋から品川の病院へ最速で届けろ。制限時間は30分だ!」
通常なら不可能なミッション。しかし、源さんは迷わず道を指示する。
「環七じゃ間に合わねぇ。目黒通りから五反田抜けて、国道一号線をぶっ飛ばせ!」
無線を受けたドライバーはアクセルを踏み込む。都内の複雑な道を、源さんのナビで迷うことなく進み、見事に時間内に血液パックを届けることができた。
「助かった……源さんがいなかったら、間に合わなかったよ。」
こうして、源さんは人々の命を運び、東京を救っていった。
第四章:最終ミッション
ある日、源さんに特別な依頼が入る。首相官邸からの極秘任務——VIPの緊急避難。
「首相を極秘に安全な場所へ移送しろ。ただし、誰にも気づかれるな。」
東京じゅうが混乱する中、要人の移動は極めて危険。敵対勢力が動いている可能性もある。しかし、源さんは一つ息を吐き、ゆっくりとギアを入れた。
「お前さんらの命、俺が預かるぜ。」
エピローグ:東京を走る男
地磁気逆転の影響が徐々に収まり、数ヶ月後には新しいナビゲーションシステムが開発されていた。しかし、都民の間では、あの混乱の時代に**「東京の道を取り戻した男」**として、源さんの名が語り継がれることとなった。
「地図がなくたって、俺たちには源さんがいる!」
そう、人々は誇らしげに語るのだった。
——そして今日も、東京のどこかで、源さんのタクシーが走っている。
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