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レナロイド03

「――ジェイコブが、バグ・ビーストの創造主だったのか…」


 僕の報告を聞き、天城広河は複雑な表情をした。

 電子涅槃経の転生騒ぎは頓挫し、使徒たちは何処かへ消えていった。ジェイコブ・レインは和宮に連れられ事情聴収を受けている。幾人かの使徒に対し捜索願いや、被害届が出ていたらしい。


「バグ・ビースト――いえ、ディグたちはこの地球から去る決断をしたようです。インフィニットαの消失は免れないでしょう」

「大変な損害だが……もはや自動建設ロボットは、こちらのコントロールを離れ、それを回復する手立てもない。それに新種の生命体相手では、損害賠償を請求する訳にもいくまい。残念だが旅立ちを見送るしかないだろう。それと――計画中だったインフィニットβの開発を急がないとな」


 僅かに苦笑が混じる天城に、僕は言った。


「ディグたちがレナルテ内で捕食をすることはもうないでしょう。それを止めるアンジェラも、もう現れない。この一連の騒ぎも終幕で、僕も…お役御免と言うことでよろしいですか?」

「うむ……そうだな。君には大変世話になったようだ。礼を言う」


 天城は軽く頭を下げた。


「しかし君に改めて頼みたい事がある。…私もアンジェラに逢いたいのだ。私の元へ連れ来てくれないだろうか?」


 顔を上げた天城CEOは、僕にそう言った。


「けど、僕にはもうアンジェラが何処に現れるか判りませんが」

「ジェイコブは…一つ誤解をしている」


 僕の言葉には答えず、天城はそう言った。


「ジェイコブは、私がアンディを受け入れなかったが故に、彼は自殺した。そう思っていたのだね?」

「ええ、そう言っていましたが」

「そうではない。私は受け入れたんだ…アンジェラを」


 天城の言葉に、隣にいたケイトが息を呑んだ。


「私はアンジェラと結ばれた。…が、アンディとはそういう関係にはならなかった。だってそうだろう? 私はノーマルなのだ。だがそれが、彼をより苦しめる結果になってしまったようだ……アンジェラが受け入れられたにも関わらず、アンディは受け入れられない。そのギャップに苦しんだのだろう。しかし、まさか彼が自ら命を絶つとまでは思ってなかった…。アンジェラに会えるのなら、その事だけでも謝りたい」


 天城の神妙な顔を見て、僕は頷いた。


「判りました。もし会う機会があったら、アンジェラにそう伝えます」

「よろしく頼むよ。――ケイト捜査官も、出向はこれで終了かな?」

「そうね。けど、NISやフォッグの動向は、これからも調査するけど」


 ケイトはちらりと僕を見た。僕は知らぬ顔をしておくことにする。


「我々とは大統領警護の打ち合わせが必要です」


 それまで黙っていた国枝が声をあげた。僕は意外に思って口を挟む。


「AMGが、大統領警護?」

「うむ。我々AMGは新しいシステムを今度の大統領来日の際にお披露目する。こういうものだ」


 天城は近くのディスプレイを操作した。傍に大きな画面が映し出される。そこには数体のロボットが映っていた。

 白い顔に黒のゴーグル。全身も黒を基調に白いラインが入ったものであり、日本警察の制服を思わせた。


「レナロイド03だ。大統領警護などの要職警護には今まで生身のSPがついていたが、これはそれに成り代わる機体だ。防弾ジャケットを着ているとはいえ、頭部は剥き出しのSPでは、SP側の被害も大きい。だがレナロイドならば、警護側の人的被害はほぼなくなる」

「これは、自動運転型ロボットなのですか? それとも遠隔操作型?」


 僕の質問に、天城は答えた。


「広い意味では遠隔操作型だね。しかしこのレナロイドは、実はアバターによって操作する」


 天城は画面を切り替えた。そこには灰色のデッサン人形のようなアバターが映っている。


「運転者はこのアバターにフロートする。レナロイドはこのアバターの動きをトレースするようにできているんだ」

「しかし、アバターはレナルテ空間の中しか動けませんが?」


「それはオートマッピング機能で担う。ロボットのモニターに映る視界は、即座に簡易なレナルテ空間として生成され、アバターはそのレナルテ空間を動く形になるのだ」

「なるほど」


 僕はいたく感心した。AMGは、この国の防衛事業も担うつもりなのだろう。それはゲームより、はるかに大きなお金の動く事業だ。が、まあそれは僕には関係ない。


「それでは皆さん、僕はそろそろ退場で」


 僕が笑って見せると、ケイトが僕を一瞥した。何か言いたげな顔を見ながら、僕はその場を去った。



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