モドキの初体験
バグノイドに見られてる。…なんて事は忘れて、途中から僕は有紗に夢中だった。終わった後、ベッドに寝ていると、有紗が口を開く。
「どうだった、モドキちゃん?」
不意に、有紗の身体から夜風エアルが出てくる。ベッドの上に座り直した。
「……凄い体験だった。人間が強い指向性を持つのも、よく判った」
「ホント? よかったあ。これって異文化交流……じゃない、異生命間交流よね」
微笑して裸身を横たえる有紗の傍で、バグノイドはうつむいて妙に縮こまっている。恥ずかしがっている…のか?
「そうだ! 今度はあたしを通すんじゃなくて、自分で感じてみたいでしょ? いい事考えたわ」
有紗がウィンドウを開くと、ベッドの傍にもう一人の有紗が出てきた。いや、サリアだ。
「ね、この身体になっちゃえばいいわ。そうしたら、今度は自分でできる」
「いいのか? これはお前の分身なのでは?」
「いいの、いいの。いつまでもエアルちゃんなのも気になるし」
「有紗を極めて友好的個体と認知」
そう言いながら、バグノイドはベッドから降りると、サリアを抱きしめるようにして融合していった。サリアが意志を持ったらしく、自分の手足を見つめている。
「そうねえ、ちょっと違いを出そうか」
有紗はそう言ってサリアに近づくと、ウィンドウを開いてサリアをいじり出した。
「髪を黒くして…ロングにする。女子高生の頃のあたしみたい。けど、瞳は緑にしとこうか。で、服は――」
サリアの服が黒と白のメイド服になる。ただし……ちょっと露出の多いエッチなメイドだ。僕は思わず驚きの声を洩らした。
「そ、それは?」
「へへー、明くんを驚かそうと思って買っといたんだけど、似合う~! 可愛いわ」
た、確かに似合う。可愛い。それにちょっと少女のような有紗の姿がまた可愛い。いやいや……今は中身はバグノイド。
「可愛い、とは高評価の事だな」
「そ。ほら、こっちに来て」
そう言って手を引くと、有紗はサリアと一緒にベッドに上がってきた。頭に白いレースのカチューシャをつけたサリアが、少しためらいがちの上目使いでこちらを見ている。緑の瞳が、外国の人形のようだ。そんな顔で見つめられたら……堪らないじゃないか。
「ね、キスしてあげて」
有紗に促されて、サリアにキスをする。
「む……」
慣れない感じで、サリアは目をつぶって応じる。なんて初々しい反応なんだ。僕は唇を離すと、有紗に訊いた。
「いいの? 有紗」
一応、浮気になるんですけど。有紗は微笑んだ。
「うん。サリアを気持ちよくしてあげて。…あたしもね」
今度は有紗にキスをする。僕はサリアの胸をメイド服の上から愛撫しながら、有紗の秘所に手を伸ばした。
*
レナルテのセックスには射精がないので物理的限界がない。…とはよく言われることなのだが、筋肉を使わなくても運動すると脳が疲労するので、やはり二回戦目を終えた時には心地よい疲労感があった。
「これでよかったかな?」
僕は、やはりぐったりとなってるサリアに声をかけた。有紗が横から口を出す。
「明くんは真面目な顔してドスケベだからね。よかったでしょ?」
「真面目だからこそ、探究精神が旺盛と言ってほしいな」
「今度は――」
サリアが身体を起こしながら口を開く。妙に真剣な顔つきだ。
「――明の中に入ってみたい」
本気で? 僕は絶句しながら、有紗と顔を合わせた。