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5 桜月ぽめら リスティ&グレタ

 二、三日の入院が必要だというケイトを長野に残して、僕は東京に戻った。そしてその晩、ノワルドの中のバーに出かけた。


「――待った? レオ」

「先にやらせてもらってるよ」


 ライオンの顔のレオが隅のテーブルで飲んでいた。僕は向かいに座る。


「久しぶりだな、元気にしてるか」

「そうだね、ごめん。間が空いちゃって」


 ケイトの仕事に関わってから、全然、ノワルドJにはログインしてなかった。昼間も夜もノワルドで過ごすのは、疲労がたまりすぎるからだ。

 けどレオは屈託のない様子で笑った。


「いや、俺も忙しくしてるからさ。気にすんなよ」

「あ、リスティたちのところに出演してるんだよね」


 レオから事前にその話は聞いていた。というか、本当はマリーネのお別れ動画を公開した後に、僕ら二人と再コラボしたいと言ってきたのだ。けど、僕は忙しいからと言って断り、レオだけが出演することになった。多分、彼女たちが気を使ってくれたんだと思う。


「ああ昨晩、最初のログが上がったみたいだな。俺もまだ見てないけど」

「そう。僕もチェックしとくよ。まだしばらく、そっちのシリーズは続きそう?」

「そうだな。今度のエリア解禁に合わせてるらしいから、エリア攻略までは出番がありそうな感じだな」

「そうか、新エリア――エリア28の発表か」


 忙しさにかまけて、すっかり忘れていた。三日後には『ノワルド・アドベンチャー』を創り出した最古参の会社、B―Rainから新エリアの発表がある。


「マリーネはきっと、前線チームで頑張るんだろうな」


 レオが笑いながら言った。が、僕は前に会った時の事を想いだし、少しよくない感じがした。どうもそれが顔に出たらしい。


「どうした? マリーネから何か連絡でもあったのか?」

「いや、そうじゃないんだけど…。あの『アルティメット・フレイム』って、どうなんだろうなって。ちょっと忙しくて、調べられてないんだけど」

「気になる事でもあるのか?」

「少しね――」


 そう言いかけた時、店の扉が開いて元気な声が響いてきた。


「はーい、レオ! お待たせ」


 そう言いながら大股で歩いてくるのは、大柄の美女である。ウェーブのかかった長い髪を揺らし、胸の谷間も太腿も露わだけど、何故か戦闘服という日本アニメ特有の謎の格好をしている。剣士である『太陽の娘』リスティだ。


 その後ろから静かな笑みを浮かべて、これはまた優雅な美女が歩いてくる。紫の髪をボブにして、長いスカートにマント。こちらは『紫の月光』グレタである。


 人気のコンビ、リスティ&グレタの二人は、僕らの席へやってきた。僕の隣にリスティ、レオの隣にグレタが座る。アバターとはいえ凄い迫力のボディにちょっとドキドキするが、そこは顔に出さない。


「久しぶり、リスティ、グレタ」

「キアラ、元気~。なんか忙しいんだって?」

「そう、ちょっとね」


 僕はリスティに短く答えておく。グレタが微笑みながら言った。


「キアラたちとのコラボのビュー、人気なんだ。またキアラのシナリオで一緒にやれたらいいねって、話ししてたんだよ」

「本当? それは嬉しいな」


 席に二人も美女が来ると、途端に場が華やかになった。飲食をしながら、僕らはしばらく雑談で盛り上がる。その中で不意に、リスティが口を開いた。


「ところで、マリーネちゃんの後は誰か考えてないの?」

「その辺は、俺はキアラに任せてるよ」


 レオが答えて僕を見る。やばい、忙しくて、全然、候補者選びで来てなかった。


「うん、今、探してる最中。なかなかパーティバランスが難しくてね……」

「そう。じゃあとりあえずさ、今度の新エリア、あたしたちと一緒に攻略ってのはどうかな?」


 リスティの言葉に、レオは頷いて僕の方を見た。


「俺は構わないけど、キアラはどうなんだ?」

「いや、新エリアの攻略には行くつもりだよ。なので、僕の方からもお願いします。とはいえ……四人で、治癒系なしか。誰か入れないと」

「マリーネちゃんのレンタルでいいんじゃないかしら。戦闘力は充分だと思うし」


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