表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/115

ドーベル

 ただし、決闘で時壊魔法を使ったことはない。だが俺は決闘でほぼ全勝していた。動画を公開してからは、なお一層申し込みが相次いだ。その全てを引き受けても、俺は負けたことはなかった。

 ドーベルが俺を見ながら、口を開いた。


「あんたに負けてから、俺はプライドをズタボロにされて、ゲームを止めようかと思ったほどだ。だがオレは、オレ自身の力を上げて、アイテム力も上げるために、つぎ込める金はみんなつぎ込んだ。そうして再試合を挑もうとした矢先、あんたは突然いなくなった。もう、このゲームに飽きて消えたんだと思ってたぜ。だが、こうしてまたあんたに合えるとはね。――あんた、運営側の人間だったのかい?」

「違う」


 俺は手短に答えた。ドーベルはなおも問い続ける。


「じゃあ、あの変な黒い化物はなんだ? あれはモンスターじゃねえだろ」


 俺は返事をしなかった。ケイトも何も言おうとしない。ドーベルは肩をすくめた。


「だんまりかよ。まあいい。それよりグラード、オレと勝負しろ」


 ドーベルは俺に挑むような眼でそう言った。


「言っておくが、三年前のオレとは違うぜ。オレは『トゥルー・ソード』で修行もして、加速アイテムも手に入れてる。今のオレなら、あんたに引けをとらないつもりだ」


 『トゥルー・ソード』という言葉に、無意識に俺の身体が反応した。俺は口を開いた。


「いいだろう」

「ちょっと、グラード! あたし達、そんな事してる場合じゃないでしょう?」

「好きにさせてくれ」


 俺はケイトを見る。気の強そうなケイトの顔が、困り顔になった。


「もう、勝手なんだから!」


 俺のウィンドウに決闘の申し込みが来る。俺はYesのボタンを押して、決闘を受けた。

 突然に、辺りの風景が青の沼の傍から円形の闘技場へと変わる。ケイトやアルティメット・フレイムのメンバー達は、客席へと遠ざかっていた。


 闘技場の中にいるのは、俺と奴の二人だけ。

 ビィィィッ、と笛の音が響く。決闘開始の合図だ。

 ドーベルがにやり、と笑って剣を抜いた。見事な長剣だ。何がしかの魔法特性を持つ代物に違いない。俺はクロノス・ブレイカーの鞘に手をかけた。


「加速」


 加速魔法をかけつつ走り込みながら、一気に奴との間合いを詰める。そのまま横なぎに抜刀し、奴の胴を払った。

 が、その刀が空を切る。

 ドーベルが薄笑いを浮かべながら、後退してこちらの刀を見切っていた。


「加速魔法を使うのは、お前だけじゃない!」


 ドーベルが一回転して身体を翻すと、横から剣で斬りかかって来る。俺はその攻撃をかろうじて刀で受ける。と、ドーベルは左掌をこちらに向けていた。


「ボム!」


 掌から炎弾が発射された。一発目は姿勢を変えて躱したが、二発目は動けない腹部に撃ってくる。直撃を喰らう、と思われる瞬間、俺は地面に向かって前転してそれを躱した。

 身体を起こす際を狙い、ドーベルはなおも追撃を撃ってくる。俺はその炎弾を刀で斬り捨てた。


「ハッ! ざまあないな、あのグラード様が地面を這いつくばるとはよ! 見たか、やはり三年前とは違う! 今のオレはあんたにも等しい速さと強さを持っている!」


 ドーベルが息巻いて斬りかかってくる。確かに俺と同様の速さだ。加速魔法で凄まじい連撃を繰り出してくる。俺はそれをなんとか防いでいた。

 そして気づいた。奴はオレより速い。俺が5%速さを上げてるとしたら、奴はもう少し上をいっている。


「オラオラ、防戦一方かよ! どうしたんだよ、最強の剣士はよ!」


 ドーベルは剣技に加え、炎弾を撃ってくる。さらに、剣の鞘から炎の鞭が自動で繰り出されて来た。


「……思い出したぞ」


 攻撃を防ぎながら、俺は呟いた。

 ドーベルが、少し目を見開く。


「挑戦者の中に、金にあかせてアイテムをかき集め、剣技が全くおそまつだった奴がいた。あれはお前だったか」


 俺の言葉を聞いたドーベルの顔色が、一瞬にして変わった。


「貴様――殺してやる!」


 ドーベルが渾身の力で打ちかかって来る。俺はそれを受け止めた。力が拮抗し、ギリギリと刀身が音をたてる。

 顔を寄せたドーベルは、憎しみに満ちた目で俺を睨んだ。


「そうだ! 貴様は負けたオレに向かって『剣技がなっていない』とぬかしやがったんだ! だからオレは『トゥルー・ソード』で師匠について、剣技を学んだ。お前に思い知らせてやるためだ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ